OpenAIのChatGPTを筆頭に、企業の働き方を大きく変化させている生成AI(Generative AI)。生成AIは広告業界の業務とも親和性が高く、日々生成AIを利用した新サービスや機能が発表されるなど、活用が進んでいます。
『LISKUL』を運営するSO Technologies株式会社では、2023年5月22~23日に、インターネット広告業務を広告代理店(広告会社)に委託している広告主438人を対象にアンケートを実施し、「広告代理店の生成AI活用」に対する広告主の考えや対応方針について調査しました。
今回は、アンケート調査結果を2つの記事に分けてご紹介しています。2本目の調査結果はこちらをご覧ください。(【調査】広告業界に広がる生成AI、64.4%の広告主が事前案内が必要と主張|インターネット広告代理店の生成AI活用に関する調査)
本記事では、広告主の業務における生成AI利用頻度とその利用用途、委託先の広告代理店が生成AIを活用する事に対する考え、所属企業の対応方針に関する結果をまとめています。
※本調査における生成AIとは、学習データを基に新たなデータや情報、オリジナルコンテンツを創造できるAIのことを指します。画像生成、動画生成、音楽生成、文章生成、データ処理タスクなどが対象です。
本調査の詳細は下記リンクより、無料でダウンロードできますのでぜひお手元においてご覧ください。
インターネット広告代理店の生成 AI 活用に関するアンケート調査レポート(無料)
目次
インターネット広告に携わる広告主の生成AI利用率は
89.1%
広告主である回答者に対し、業務におけるChatGPTなどの生成AIの利用頻度を調査したところ、「週1~2回程度」が40.4%、「ほぼ毎日」が27.2%、「月に1~2度」が21.5%となり、89.1%が生成AIを利用していると回答されました。(n=438、単一回答)
具体的な業務内容ではアイデア出しやブレストが70.0%、文章作成が54.4%、情報収集が52.3%、議事録作成が50.5%の順に多くなっています。(n=390、複数回答)
また、「現在は利用していない」「利用したことはない」と回答した方に理由を聞いたところ、「使いこなせる自信がないから」「使い方がわからないから」がそれぞれ35.4%、「プライバシーやセキュリティに不安があるから」が22.9%という結果でした。(n=48、複数回答)
広告代理店の生成AI活用にも76.2%が肯定的
委託先の広告代理店が生成AIを活用することをどう思うかについて、回答者自身の考えにもっとも近いものを聞いたところ、「活用してもよいが、一定のルールやガイドラインが必要」が最多で47.0%、次いで「積極的に活用してもよい」が29.2%となり、76.2%が肯定的な意見という回答結果になりました。
一方、「活用しないでほしいが、ルールやガイドラインがあればやむを得ない」が13.9%であり、肯定的・否定的のいずれにしてもルールやガイドラインを必要と考える広告主が過半数の60.9%となりました。また、「明確に禁止すべき」と考える広告主は4.8%でした。(n=438、単一回答)
以下にて、生成AI活用に対する考えの回答理由をご紹介します。
<「積極的に利用してよい」「一定のルールがあればよい」の回答理由(一部)>
- 早く最先端に慣れた方がいい
- 業務が大幅に時短になるから、効率がよいから
- リスクより、実益がたかい
- 使った上で問題が出てきたら話し合う
- ルールは策定しておきたい(トラブル防止)
- 責任の所在を明らかにする必要性がある
- 今後必要な技術だが、倫理ルールがまだ十分でない
<「ルールがあればやむを得ない」「禁止すべき」の回答理由(一部)>
- 未知のリスクが整理されていない
- 総合的 俯瞰的に判断をして適切だと考える
- リスクがあると感じてるため
※回答者の記述内容をそのまま記載しているため、誤字脱字等がある場合があります。
広告主企業の対応方針は「申告が必要」「一定のルールに則り利用を許可」が53.6%、「許可をとる必要はない」が28.8%。利用前提の意見が大多数に
回答者の所属する企業にて、業務の委託先企業が生成AIを活用する場合の対応方針について調査したところ、「ルールやガイドラインはないが、利用には申告が必要」が最多で30.8%、次いで「許可を取る必要はなく、自由に利用してよい」が28.8%、「一定のルールやガイドラインに則った上で利用を許可している」が22.8%と続く結果になりました。また、「利用は許可していない」はわずか6.6%でした。(n=438、単一回答)
広告代理店が生成AIを利用してよい・利用して問題ないとする業務領域は「リサーチ」が最多。予算関連・議事録・メール文面作成などで否定的な意見が2割を超える
広告代理店の各業務領域に対する生成AI活用への考えを聞いたところ、「積極的に利用してもよい」「利用して問題ない」を合わせた肯定的な回答がもっとも多かった業務は「広告配信する商品・サービスのリサーチ」で66.9%、次いで「競合・市場リサーチ」の54.5%となりました。また、すべての業務領域で「利用して問題ない」あるいは「どちらでもよい」の回答が多数派となっており、業務内容によって利用に反対する広告主は少ないと考えられます。
一方、「控えてほしい」「絶対に利用しないでほしい」を合わせた否定的な回答の上位としては、「予算調整のアドバイス」が21.9%、「議事録作成」21.4%、「メール、チャット文面の作成」21.0%が挙がっています。(n=438)
以下にて、いずれかの業務領域での活用に対して否定的な回答をした理由を一部ご紹介します。
<「控えてほしい」「絶対に利用しないでほしい」の回答理由(一部)>
- 該当の作業については人手を介したほうがよくて、機密事項に関わることでもあるためそのような判断(広告予算策定、予算調整のアドバイスなど7項目)
- 急な対応ルートの確保や関係性を構築している部分、責任の所在を明確化してもらいたい部分などには生成AIを使用すべきではない(広告予算策定、広告クリエイティブのコンセプト設計など7項目)
- 画一的な回答しか返ってこないから(広告クリエイティブ関連の5項目)
- 定型的な結果を懸念しているから(レポーティング作業、メール・チャット文面の作成)
- 大きな間違いがおこりそう(広告データ集計・分析)
- 専門性を疑うことにつながるから(広告入稿作業、レポーティング作業、議事録作成)
- レビューは人間の方が正確だと思うので(広告結果に対するレビュー作成)
※回答者の記述内容をそのまま記載しているため、誤字脱字等がある場合があります。
まとめ
本記事でご紹介する調査結果は、改めて以下のようなことがわかりました。
- 自社商品・サービスのインターネット広告に携わる広告主の生成AI利用率は89.1%と高い
- 広告代理店の生成AI活用に肯定的な広告主が76.2%
- 広告代理店の業務への生成AI活用に対する広告主企業の対応方針は「申告が必要」「一定のルールに則り使用を許可」が半数以上。「許可していない」はわずか6.6%
- 生成AIの活用をよしとする、広告代理店の広告関連業務は「リサーチ」が最多。予算関連・議事録・メール文面作成などで否定的な意見が2割を超えた
今後、広告業界では生成AIのさらなる活用が進んでいくと考えられます。広告主の企業方針として、利用を前提とする回答が8割を超える結果となりましたが、広告代理店が活用する場合には広告主への通知や申告、ガイドラインの作成などの対応も考えていく必要があると考えられます。
なお、LISKULでは本記事で紹介した内容に加え、回答者の属性データ、インターネット広告予算、記述式のその他回答をまとめた資料をダウンロード可能です。下記リンクより、ダウンロードできますので、ぜひご覧ください。
インターネット広告代理店の生成 AI 活用に関するアンケート調査レポート(無料)
調査概要
調査対象:自社商品・サービスのインターネット広告を広告代理店に委託している企業の経営者・事業およびマーケティング責任者、現場担当者
調査期間:2023年5月22日~23日
有効回答数:438人
調査方法:株式会社ジャストシステム「ファストアスク」によるインターネットアンケート
調査主体:SO Technologies株式会社
※本調査における生成AIとは、学習データを基に新たなデータや情報、オリジナルコンテンツを創造できるAIのことを指します。画像生成、動画生成、音楽生成、文章生成、データ処理タスクなどが対象です。
※集計時に小数点2位以下を四捨五入しているため、総計が100.0%とならない場合があります。
※今回の記事は本調査の結果の一部です。
また生成AI活用時に広告主への事前通知が必要か、具体的な通知手段、広告主データ利用の許容範囲など、広告代理店が他にも気になる点は以下の記事でまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
【調査】広告業界に広がる生成AI、64.4%の広告主が事前案内が必要と主張|インターネット広告代理店の生成AI活用に関する調査