ブランドエクイティとは?構成要素や向上させる戦略まで一挙紹介!

ブランドエクイティ_アイキャッチ

ブランドエクイティとは、消費者の心に残るブランドの価値です。

この価値を高めることで、企業は顧客の忠誠心を深め、市場での競争力を向上させることができます。

高いブランドエクイティは、企業にとって長期的な利益増加や安定した顧客基盤の維持、新たな市場への進出など、多くのメリットをもたらします。

しかし、ブランドエクイティの構築と維持には、戦略的なマーケティング活動と顧客との持続的な関係構築が必要です。

また、市場や消費者ニーズの変化に応じてブランド戦略を柔軟に調整することも求められます。

そこで本記事では、ブランドエクイティの基本概念やその重要性、効果的な構成要素と向上戦略、測定方法などを詳しく解説します。

ブランドエクイティの向上を目指す方は、ぜひご一読ください。

目次


ブランドエクイティとは

ブランドエクイティとは、あるブランドが持つ価値のことを指し、消費者の認知度、信頼性、関連性、そしてその他の要素によって形成されます。

この概念は、ブランドが市場でどれだけの力を持っているか、どのように消費者の購買行動に影響を与えるかを示す指標として使用されます。良好なブランドエクイティを持つ企業は、一般的に高い顧客ロイヤルティ、製品やサービスに対する強い認識、そして結果として高い市場シェアを享受することができます。

ブランドエクイティの構築は、企業が長期的に成功を収めるために不可欠です。

これは単にロゴやスローガンを認識されること以上の意味を持ち、消費者との深い感情的な結びつきや、製品の質に対する一貫した信頼を築くことを含みます。

したがって、ブランドエクイティは、企業の総合的な戦略の中核となるべきものであり、その価値を高めることは、競争が激しい市場において企業が優位に立つための鍵となります。

参考:11個の要点でちゃんと理解する「ブランディングってなんなのよ?」│LISKUL


ブランドエクイティが注目されている背景にある3つの要因

ブランドエクイティが近年注目されるようになったのは、デジタル化の進展と消費者行動の変化や、市場での競争激化などが影響していると考えられます。

1.デジタル化の進展と消費者行動の変化による影響

ブランドエクイティが注目を集める理由の一つは、デジタル化の進展によってブランドと消費者の関係が変化したことにあります。

ソーシャルメディアの普及により、消費者はブランドの評価を積極的に共有し、広範囲に影響を及ぼすようになりました。

このため、強力なブランドエクイティを確立することが、企業の競争力を維持する上で不可欠です。

2.市場の飽和と競争の激化による影響

市場の飽和と競争の激化も、ブランドエクイティが重視される要因です。

多くの業界で製品やサービスが同質化する中で、消費者はブランドが代表する価値や社会的責任に基づいて選択を行うようになりました。

これにより、ブランド自体が顧客の決定において重要な要素となっています。

3.ブランドの透明性が求められるようになった

デジタル時代におけるブランドの透明性の重要性も増しています。

消費者は企業の倫理的な行動や持続可能な取り組みを高く評価し、その期待に応えられない場合、ブランドの信頼性が損なわれる可能性があります。

企業はブランドの信頼性を維持し、ブランドエクイティを高めるために、透明で誠実なコミュニケーションを心掛ける必要があります。


ブランドエクイティと類似した言葉との違い

ブランドエクイティはしばしばブランド価値やブランドアセットと混同されますが、これらの用語は異なります。

項目ブランドエクイティブランド価値ブランドアセット
定義消費者の認識と感情に基づくブランドの内部的な価値市場でのブランドの金銭的評価企業が持つブランド関連の資産全体
焦点消費者との関係性と感情的結びつき経済的な評価と市場での影響力商標、知的財産、契約など具体的な要素
戦略的重要性ブランド戦略の核となる概念で、消費者のロイヤルティと信頼を築く上で中心的な役割を果たす企業財務に直接影響を与え、投資の魅力を高める要因となる法的・契約的な保護と価値の維持に重点を置く
利益の源泉ブランドへの愛着や信頼から生じる消費者の購買行動ブランドの市場価値としての認識、高い価格設定や市場支配力に貢献ブランド関連資産の有効活用からの直接的な収益機会

ブランド価値との違い

ブランドエクイティは消費者の認識と感情に基づくブランドの内部的な価値です。

これに対して、ブランド価値は市場でのブランドの金銭的評価であり、しばしば企業財務に直接的な影響を与えるものです。

通常、ブランドエクイティが高いとブランド価値も高くなるため、両者は相互に影響し合います。ただし、ブランドエクイティは消費者との関係性を深めるための戦略的アプローチであり、ブランド価値は経済的側面に重点を置いたアプローチです。

ブランドアセットとの違い

ブランドアセットは、企業が持つブランド関連の資産全体を指します。これには、商標、知的財産、ブランド関連の契約などが含まれます。

一方、ブランドエクイティは、これらの資産が市場内でどのように認識され、評価されるかに焦点を当てた概念です。

つまり、ブランドアセットは具体的な要素の集合体であり、ブランドエクイティはそれらが生み出す影響力や価値を示します。


ブランドエクイティを高める3つのメリット

ブランドエクイティを高めることは、企業にとって多くの利益をもたらします。

これには市場での優位性の確保、顧客の忠誠心の向上、そして長期的な収益増加が含まれます。

強力なブランドエクイティは、競争が激しい市場において企業を際立たせ、消費者の選択の決定的な要因となり得ます。

1.市場での差別化を図れる

ブランドエクイティが高い企業は、類似の製品やサービスを提供する競合他社と比較して、消費者により魅力的に映ります。

これは、ブランドに対する強い認知度と好感度が、消費者の購入決定に直接的な影響を与えるためです。

結果として、企業は新しい顧客を引きつけやすくなり、既存顧客を維持しやすくなります。

2.顧客の忠誠心を向上できる

高いブランドエクイティは、顧客の忠誠心を強化します。

顧客がブランドに対して肯定的な感情を持つことで、繰り返し購入する確率が高まり、顧客生涯価値(CLV)が増加します。

これは、マーケティングコストの削減と効率化にもつながり、長期的には企業の利益増加に寄与します。

参考:顧客ロイヤリティとは何か?高めるための具体的な方法や事例も紹介│LISKUL

3.長期的な収益の増加を期待できる

ブランドエクイティを高めることで、企業は製品やサービスに対してプレミアム価格を設定することが可能になります。

消費者は高いブランドエクイティを持つ製品に対して高い価格を支払うことを厭わないため、収益性が向上します。

また、強いブランドイメージは新製品の成功率を高め、市場への導入が容易になります。

ブランドエクイティの向上は、これらの直接的な経済的利益だけでなく、企業の全体的な市場地位と持続可能性にも寄与します。

次の章では、ブランドエクイティの構成要素を詳しく解説し、これらの要素がどのように組み合わさってブランドエクイティを形成するかを説明します。


ブランドエクイティの構成要素

ブランドエクイティを構築する上で重要なのは、その構成要素を理解し、それぞれを効果的に管理することです。

ブランドエクイティの評価と向上には、アーカーモデルとケラーモデルが広く用いられています。

アーカーモデルはブランド資産を複数の要素に分解して評価するのに対し、ケラーモデルはブランドに対する消費者の感情や知識に焦点を当てています。

これらのモデルは、ブランドエクイティを形成する基本的な要素を明確に定義し、ブランドの価値をどのように測定し向上させるかについての洞察を提供します。

アーカーモデルの5つの要素

1.ブランド認知(Brand Awareness)

ブランド認知は、消費者がブランドをどれだけ認識しているか、そしてそのブランドが思い浮かぶ頻度を指します。

高いブランド認知は、消費者が購買決定を行う際の選択肢としてブランドを容易に思い出すことを意味します。

2.ブランド忠誠度(Brand Loyalty)

ブランドへの忠誠心は、消費者が繰り返し同じブランドを選ぶ傾向にあり、他のオプションが存在してもそのブランドを好むことを示します。

これは、顧客保持と長期的な収益に直結します。

3.知覚された品質(Perceived Quality)

消費者がブランドの製品やサービスを評価する際に感じる品質の印象です。

知覚された品質は、実際の製品体験に基づくこともあれば、マーケティングによる影響もあります。

4.ブランド関連性(Brand Associations)

ブランドに関連付けられるさまざまな要素(イメージ、感情、体験など)です。

これらは消費者がブランドについてどのように感じ、考えるかに大きな影響を与えます。

5.その他のプロパティ(Other Proprietary Brand Assets)

特許、商標、著作権など、企業が保有するブランド関連の資産です。

これらは競合他社との差別化を助け、ブランドの独自性を保護します。

ケラーモデルの3つの要素

1.ブランド認識(Brand Salience)

ブランドがどの程度目立っているか、また、消費者の意識の中でどれだけ存在感があるかを測ります。これは、消費者がブランドをどのように思い出すかに関連しています。

2.ブランドイメージ(Brand Image)

消費者がブランドに対して持つ感情的または心象的なイメージです。

このイメージは、広告や消費者の経験によって形成され、ブランド選択に大きく影響します。

3.ブランド関係(Brand Relationships)

ブランドと消費者の間の相互作用の質と深さを指します。良好なブランド関係は、顧客忠誠心や推奨行動につながります。


ブランドエクイティを測る方法

ブランドエクイティの測定は、その強さと市場での影響力を評価し、ブランド戦略の有効性を確認するために重要です。

測定には定量的なアプローチと定性的なアプローチがあり、それぞれブランドの異なる側面を詳しく評価します。

定量的測定方法3つ

1.市場シェア分析

市場シェアは、ブランドの製品が市場でどれだけの割合を占めているかを示す指標です。

たとえば、あるスマートフォンブランドが市場の30%を占めている場合、そのブランドエクイティが強いことを示しています。

市場シェアが高いほど、ブランドは競合に対して優位に立っていると評価されます。

市場シェアの増加は、広告キャンペーンや製品改良の効果を反映していることが多く、ブランド戦略の成功を示す指標として利用されます。

2.価格プレミアム

価格プレミアムは、ブランドが同種の競合製品に比べてどれだけ高い価格を設定できるかを測定します。

たとえば、高級時計ブランドが同じ機能を持つ他ブランドの製品よりも顕著に高い価格で販売されている場合、これは強いブランドエクイティの表れです。

価格プレミアムが大きいブランドは、その製品に対する消費者の信頼と認識の高さを示し、結果としてより高い利益を生み出すことができます。

3.顧客生涯価値(CLV)

顧客生涯価値は、一人の顧客がブランドにもたらす総収益の推定値です。

顧客がブランドに忠実であればあるほど、そのCLVは高くなります。

たとえば、あるコーヒーショップの顧客が毎週2回訪れ、平均して10年間続ける場合、その顧客のCLVは非常に高くなります。

この指標は、顧客獲得コストと比較され、マーケティングの投資収益率(ROI)を評価するのに役立ちます。

定性的測定方法3つ

1.ブランド認識調査

消費者に対して実施されるアンケートを通じて、ブランドの認知度やイメージの質を測定します。

例として、消費者に「このブランドをどの程度知っていますか?」や「このブランドの製品をどのように評価しますか?」といった質問をすることがあります。

これにより、マーケティング戦略が目標とする市場セグメントにどれだけ効果的に到達しているかが評価されます。

2.焦点グループ

特定のターゲットグループを選定し、ブランドの製品や広告に対する感想を深掘りします。

たとえば、新しい製品のプロトタイプを消費者に試用してもらい、そのフィードバックを集めることで、製品開発やマーケティング戦略の改善点が明らかになります。

焦点グループは、消費者の生の声や深い感情を捉えるために特に有効です。

3.ソーシャルメディア分析

ソーシャルメディア上でのブランドに関する言及や感情を分析することで、ブランドのオンラインでの認知度と評判を評価します。

たとえば、ツイッターやインスタグラム上でのハッシュタグ分析を行い、ポジティブな言及の割合や、ブランドに関連する話題がどれだけバイラルになっているかを測定します。

この分析により、ブランドエクイティのオンラインコンポーネントを評価し、必要に応じてソーシャルメディア戦略を調整することができます。

これらの測定方法を適切に組み合わせることで、ブランドエクイティの全体的な評価が可能となり、マーケティング戦略の効果を具体的に把握し、改善策を講じることができます。

次の章では、ブランドエクイティを具体的に向上させる戦略について詳細に解説します。


ブランドエクイティを向上させる戦略

ブランドエクイティの向上は、企業の市場での地位を強化し、消費者との関係を深めるために不可欠です。

以下で紹介する戦略は、ブランドの認知度、好感度、顧客の忠誠心を高めることを目的としています。

1.一貫性のあるブランドメッセージ

ブランドメッセージの一貫性はブランド認識を強化し、消費者の信頼を築く基盤となります。

すべてのマーケティングチャネルと接点で同一のメッセージと価値を繰り返し提示することが重要です。

たとえば、Appleは製品のデザインと機能性を重視し、「使いやすさ」を核としたメッセージングで一貫性を保ち、消費者に強烈なブランドイメージを植え付けています。

このように一貫したメッセージは消費者の記憶に残りやすく、ブランド選択の際の優先事項となります。

2.高品質の製品やサービスの提供

製品やサービスの質が高いと、消費者の満足度が向上し、これが直接的にブランドエクイティに反映されます。

品質が高いと評価されるブランドは、顧客のロイヤルティを獲得しやすく、長期的に安定した収益を生み出すことが可能です。

たとえば、トヨタは品質と耐久性において高い評価を受けており、これがブランド忠誠心を促進し、リピーターを増やす要因となっています。

3.カスタマーエクスペリエンスの向上

顧客体験を向上させることは、ブランドエクイティを強化する上で非常に効果的です。

すべての顧客接点で一貫した高品質の体験を提供することにより、ブランドに対する肯定的な印象が強化されます。

たとえば、Amazonは顧客の利便性を最優先に考え、迅速な配送と簡単な返品プロセスを実施しており、これが顧客満足度を高め、ブランドエクイティの向上に貢献しています。

参考:カスタマーエクスペリエンスとは?3分で分かる効果と3つの成功事例│LISKUL

4.強力なビジュアルアイデンティティの構築

ブランドのビジュアルアイデンティティは、消費者がブランドを識別しやすくするために非常に重要です。

ロゴ、色使い、タイポグラフィは、ブランドの「顔」となり、広告や商品パッケージングを通じて一貫性を持たせる必要があります。

たとえば、Nikeのシンプルなスウッシュロゴは、世界中で即座に認識され、スポーツと高性能を象徴するイメージを強化しています。

5.デジタルプレゼンスの強化

デジタルプレゼンスを強化することで、ブランドエクイティを大きく向上させることができます。

ソーシャルメディア、ブランドのWebサイト、デジタル広告を通じて、ブランドのストーリーや価値を一貫して伝えることが重要です。

SEO戦略を最適化することで検索エンジンでの視認性を高め、より多くの潜在顧客にリーチすることが可能です。

たとえば、スターバックスはソーシャルメディアを活用して顧客との積極的なコミュニケーションを行い、ブランドへの愛着を深めています。

新しいフレーバーやキャンペーンを即座に共有し、顧客のフィードバックをリアルタイムで取り入れることで、ブランドと消費者との関係を強化し、ブランドエクイティを向上させています。


ブランドエクイティに関するよくある誤解4つ

最後に、ブランドエクイティに関するよくある誤解を4つ紹介します。

誤解1:ブランドエクイティは大企業だけの関心事

多くの中小企業やスタートアップが、ブランドエクイティは大企業のためのものと考えがちです。

しかし、実際にはどんな規模の企業にとっても、ブランドエクイティは極めて重要です。

強いブランドエクイティは、小規模企業が競争で生き残り、成長するための重要な要素となります。

たとえば、地域コミュニティ内で高いブランド認知度と信頼性を築くことができれば、顧客基盤を拡大しやすくなります。

誤解2:ブランドエクイティは即効性がある

ブランドエクイティの構築は、一夜にして達成されるものではありません。

持続可能なブランドエクイティを築くには、長期間にわたる一貫した努力が必要です。

強いブランドを築くためには、継続的なマーケティング活動、顧客との関係構築、品質の維持が求められます。

短期間で結果を期待することは、しばしば失望につながるため、根気強い取り組みが必要です。

誤解3:ブランドエクイティはマーケティング部門だけの責任

ブランドエクイティは、企業全体の努力によって形成されます。

しばしば、マーケティング部門だけがブランドエクイティの構築に責任を持つと考えられがちですが、実際には製品開発、カスタマーサービス、人事部門など、全ての部門がブランドエクイティに影響を与えます。

たとえば、顧客サービスの質が直接顧客のブランドに対する感情や忠誠心に影響を及ぼすため、組織全体でブランド価値を支持し、強化する必要があります。

誤解4:ブランドエクイティは数値で完全に測定可能

ブランドエクイティの多くの側面は定量的に測定可能ですが、完全に数値で評価することは難しい場合があります。

ブランドエクイティには定性的な要素も含まれており、顧客の感情やブランドに対する態度など、数値化しにくい要素が影響を与えます。

たとえば、ブランド忠誠心や顧客満足度は直接的な売上げには結びつかないことが多いですが、ブランドエクイティの重要な構成要素です。


まとめ

本記事では、ブランドエクイティの定義やその重要性、向上させるための具体的な戦略について解説しました。

ブランドエクイティは、消費者の認知度や感情によって形成され、企業が市場で競争優位を得るために不可欠な要素です。

高いブランドエクイティは、顧客の忠誠心を向上させ、長期的な利益をもたらします。向上のためには、一貫したメッセージ、高品質の製品、優れた顧客体験、そしてデジタル戦略の強化が求められます。

まずは、自社のブランドエクイティを測定し、効果的な戦略を練りましょう。