マイクロ法人とは、会社を創業した代表一人が運営する事業形態のことを指します。
マイクロ法人は主に収入増加が見込める法人の節税対策として設立されることが多いですが、「所得税や社会保険料を節減できる」「経費として使える幅が増える」「法人化による信用力の向上により、金融機関から融資を受けやすくなる」などのメリットがあります。
昨今、インボイス制度の施行により、「個人で消費税を支払うならマイクロ法人を設立して節税や社会保険料の節減をしたい」と考えている方もおられるでしょう。
しかし、マイクロ法人といっても定款の作成・認証や法人登記申請が必要になるなど、通常の法人登記手続きと変わりません。
そこで本記事では、マイクロ法人の作り方を手順ごとに解説した上で、マイクロ法人の作り方で注意すべきポイントやよくある質問について解説します。
本年中にマイクロ法人を作りたいと考えている方にとって、悩むことなくスムーズに進められるよう手順を細かく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
マイクロ法人の作り方を手順ごとに解説
マイクロ法人を作る場合は、基本は上記の流れで進められます。
それぞれのステップについて解説いたします。
STEP1.法人設立の準備をする
まずは法人設立に必要な会社情報を決めましょう。
具体的に決める会社情報は以下の通りです。
定款作成に必要な基礎項目 | 内容 |
---|---|
会社形態 | 会社の形態を「株式会社」「合同会社」「合名会社」の3種類から選択する。合資会社もあるが、責任者が2人以上必要なため、一人運営が基本のマイクロ法人を作ることができない。 |
会社名(商号) | 会社名を決める。会社名を決める際は他企業の商標に気をつける。 |
事業目的 | 会社の事業内容を決定する。事業内容に記載のない事業は行えないため注意。事業目的は複数記入が可能だが多すぎると、融資や法人口座を作る際に不利になるので10項目以内に抑える。 |
本店所在地 | 会社の拠点住所を決める。事務所以外に自宅やシェアオフィス、バーチャルオフィスを設定することも可能。事業所を変更する場合は再度登記(法人申請)が必要になるため、引っ越しを予定している場合は、引っ越し後に登記を行う。 |
資本金 | 創業時の運転資金である資本金を決める。資本金は1円から登録可能だが、資本金が少なすぎると事業活動に支障が出たり、法人口座の開設や融資を受けにくくなるので注意。 |
会社設立日 | 会社設立日は会社設立の際の法人登記申請を行った日が会社設立日になる。土日・祝日は法務局が営業していないため、会社設立日は平日のみ設定可能。 |
会計年度 | 会社の会計年度を決める。会計年度は自由に決められるが、一般的には4月1日から翌年3月31日が設定される。会計時期には税務が増えるため、会社の繁忙期を避けるのが無難。 |
役員・株主構成 | 株式会社を設立する場合は役員・株主構成を設定する。最低でも1名以上の取締役を選定する必要があるため、自身を取締役に設定する。株式会社の場合は「だれが」「どのくらい」株を持っているかを示す株主名簿も必要。 |
参考:会社設立に必要な書類は全部で10種類! 書き方や提出方法についてわかりやすく解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee
STEP2.定款の作成・認証を行う
法人設立の準備ができたら定款を作成しましょう。
定款とは会社内のルールをまとめた「会社の憲法」と呼ばれている書類です。
定款の記載内容は以下の通りです。
- 会社形態
- 会社名(商号)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金
- 会社設立日
- 会計年度
- 役員・株主構成
マイクロ法人だけでなく、会社を設立する場合には必ず「定款」を作成し、公証役場にて公証人(正当性を確認する者)の認証を受けなければなりません。
定款認証は株式会社を設立する際に必要になり、定款認証には72,000円〜92,000円の費用がかかります。
ただし、電子定款を作成・認証する場合は定款認証に費用はかかりません。
定款の記載例やテンプレートについては定款の管理・認証を行う公的機関「日本公証人連合会」のHPから確認できます。
全国の公証役場は以下のサイトから確認できます。
STEP3.法人用の判子の作成
定款の作成・認証ができたら、法人用の判子を作成しましょう。
法人設立する際に用意する判子は以下の通りです。
- 代表者印(実印)
- 銀行印
- 角印
ゴム印(会社名や住所などが書かれた印鑑)は、契約書や請求書の作成、会社封印などの際に役に立ちますが、この時点で用意しなくても問題ありません。
会社の実印はお近くのハンコ屋さんでも作成できますが、最近ではオンライン上でハンコを作成できるサービスもあります。
STEP4.資本金の払込みを行う
定款で定めた「資本金額」を法人で利用する口座に振り込みます。
法人用口座を別で作成する場合は法人用口座に、個人口座を法人で併用する場合は個人の口座に資本金額を振り込みましょう。法人口座を開設する銀行選びにお悩みの場合は以下の記事を参考にしてみてください。
参考:【2024年最新版】法人口座を開設できる銀行おすすめ15選を比較!選び方も紹介│LISKUL
振り込みが必要になるため、「口座にもともと資本金額分が入っていた」場合では資本金の払込みとはならないため注意してください。
また資本金の払込みが完了したら「払込証明書」を発行しましょう。
払込証明書の発行方法は以下の通りです。
- Word、またはGoogleドキュメントで証明書を作成する
- 払込があった通帳のコピーを印刷する
- 証明書と一緒に通帳のコピーを同封する
払込証明書は法人登記の申請時に必要になりますので、資本金を払い込んだタイミングで作成しておきましょう。
払込証明書のサンプルについては法務省の「添付書面の記載例」のPDFの6ページにある「払込証明書の例」を参考にしてください。
STEP5.登記申請を行う
資本金の払込みが完了したら、必要書類を揃えて管轄の法務局で登記申請を行いましょう。
登記申請では「登記申請書」を作成し、必要書類を揃えた上で管轄の法務局で「登記申請」を行わなければなりません。
その際に必要になる書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款
- 発起人の決定書(発起人議事録)
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 設立時取締役個人の印鑑証明書
- 払込証明書
- 印鑑届出書
- 印鑑証明書
これらの用紙を全て揃え、管轄の法務局に提出します。法人の登記申請方法は「法務局窓口で申請」「郵送で申請」「オンラインで申請」の3つがありますが、提出書類の不足や不備がないかを確認しながら提出したい方は窓口での申請がおすすめです。
その際、会社の本店所在地を管轄する法務局で申請する必要があります。管轄の法務局については法務局のホームページをご覧ください。
参考:管轄のご案内|法務局
会社設立時に法務局に提出しなければならない書類って何があるの? | 起業に関するお役立ち情報 | GMOあおぞらネット銀行
STEP6.印鑑証明書や登記簿謄本の取得
登記申請や会社設立が完了したら印鑑証明書と登記簿謄本を取得しておきましょう。
印鑑証明書と登記簿謄本はオフィスの賃貸契約時や営業に必要な許認可を取得する場合、金融機関からの融資や補助金を受ける場合に必要になります。
発行時には1枚あたり数百円かかりますが、利用シーンが多いので最低でも3〜5枚は発行しておきましょう。
参考:マイクロ法人を設立しよう!メリットとデメリット、作り方を徹底解説 | 起業・創業・資金調達の創業手帳
STEP7.各種公的機関での手続きを行う
法人設立後は各種公的機関で必要な手続きも済ませておきましょう。
以下の表に各種法的機関での手続きと手続き場所をまとめました。
提出場所 | 手続き |
---|---|
税務署 | ・法人設立届出書 ・青色申告の承認申請書 ・給与支払事務所等の開設届出書 ・源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書 |
都道府県税事務所 市町村役場 | ・法人設立届出書 |
年金事務所 | ・健康保険・厚生年金保険新規適用届 ・健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 ・健康保険被扶養者(異動)届※1 |
労働基準監督署※2 | ・労働保険の保険関係成立届 ・労働保険の概算保険料申告書 ・就業規則(変更)届 ・適用事業報告書 |
ハローワーク | ・雇用保険適用事務所設置届 ・雇用保険被保険者資格届 |
※1 扶養者がいる場合のみ必要
※2 従業員を雇い入れる場合に必要
参考:【会社設立後の手続き】法人登記で終わりじゃない!事業開始までにやるべきこととは? | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee
マイクロ法人は一人で事業運営を行うため、従業員は必要ありません。そのため、基本的には労働保険の加入は必要ありません。労働保険は労働者を守るための保険であり、経営者には適用されないからです。
従業員を雇い入れる場合は、上記の表の「労働基準監督署」での手続きが必要になります。法人登記後の手続きでわからないことがあれば、公証役場や司法書士等、税理士などに相談しましょう。
参考:会社設立時は一人社長でも社会保険加入が必須!手続きの流れ・必要書類を解説! | マネーフォワード クラウド会社設立
マイクロ法人を作る際に押さえておくべき注意点5つ
マイクロ法人を作る際に、あらかじめ押さえておくべき注意点は以下の通りです。
- 本業と別の業種を選ばなければ税務調査の対象になりやすい
- 事業収入が赤字でも税金を支払わなくてはならない
- 法人の事業所にバーチャルオフィスを設定している場合は法人口座を開設しにくい
- 会社の資本金が少ないと各所への信用度が低くなる
- サラリーマンの場合は社会保険料の節約ができない
それぞれの注意点について解説いたします。
本業と別の業種を選ばなければ税務調査の対象になりやすい
マイクロ法人を設立する際、本業とは別の事業内容を選ばなければ税務調査の対象に選ばれやすくなります。
同じ事業内容でマイクロ法人を設立した場合、意図的な所得分散と見なされ、「この企業は脱税をしているのではないか?」「同じ事業で法人を設立しているなら、個人・法人で切り分ける必要はないのではないか」と税務署が不審に思い、税務調査にはいられやすくなります。
別の事業内容を選ぶといっても全く異なる業種を選ぶ必要はありません。例えば、本業でWebライティング業を行っており、マイクロ法人では「アフィリエイト事業」を事業内容にするなど、近しい業務であるものの提供先や提供している価値が違う場合は別事業として判断されます。
また、マイクロ法人を設立したものの「事業実態がない」場合も注意です。
法人設立後に他の企業と取引がない、売り上げや活動実績がないものの、役員報酬だけ支払っているような場合には脱税が疑われ、強制調査(強制的な税務調査)が実施される可能性があります。
国税局から脱税を疑われないためには「本業とは別の事業でマイクロ法人を作る」「マイクロ法人設立後は事業運営実績を作る」などの対応が必要です。
参考:マイクロ法人とは?作り方や個人事業主が設立するメリット・デメリット|起業・開業あんしんガイド|弥生株式会社【公式】
ペーパーカンパニーは違法?実態のないダミー会社を作るリスクを解説|起業・開業あんしんガイド|弥生株式会社【公式】
事業収入が赤字でも税金を支払わなくてはならない
マイクロ法人設立後は事業収入が赤字でも税金を支払わなくてはなりません。
赤字でも支払わなければならない税金は以下の通りです。
税金の種類 | 特徴 |
---|---|
法人住民税の均等割 | 法人住民税の均等割は事業規模によって設定される税金。東京都の場合は、資本金1,000万円以下で従業員が50人以下の場合は赤字でも7万円の法人住民税の均等割が発生する |
消費税 | 前々年度の年売り上げが1,000万円を超える課税事業者に課税される税金 |
法人の場合は法人住民税の均等割と消費税を支払わなければなりません。
利益に応じて加算される法人所得税と異なり、企業の取引があった場合や、取引がなくても法人であるという理由だけで税金を支払わなくてはなりません。
法人住民税の均等割は事業規模によって設定される税金です。東京都の場合は、資本金1,000万円以下で従業員が50人以下の場合は赤字でも7万円の法人住民税の均等割を支払わなければなりません。
また、インボイス制度により免税事業者のメリットがなくなった現在では、取引をする上で課税事業者に配布される登録番号を求められるケースも増えるでしょう。
このことから赤字でも取引をする場合は、消費税の支払いを求められます。源泉徴収税の課税対象となる記事作成やデザイン作成の依頼を行う場合には取引時に源泉徴収税の支払いも必要です。
参考:法人は最低いくら税金を支払うの? 赤字決算の対処法を徹底解説|マネーイズム
法人の事業所にバーチャルオフィスを設定している場合は法人口座を開設しにくい
マイクロ法人の本所在地をバーチャルオフィスに設定している場合は、法人口座が開設しにくくなる可能性があります。
法人口座の開設時に本店所在地がバーチャルオフィスだと「マネーローンダリングや悪徳企業の金銭のやり取りが行われる可能性がある」と見なされ、法人口座開設の審査に落ちやすいです。
というのも、銀行はマネーローンダリングに関わると経営リスクがあるために、未然に防ぐための対策を行っており、法人口座を開設する際に徹底的な審査が行われます。
その際、本店所在地がバーチャルオフィスで登録されていると「事務所を借りておらず信頼性に欠ける」「マネーローンダリングが発生した場合に対策がしづらい」などの理由から審査に通らない可能性があります。
もちろん、事業運営や個人情報をしっかりと開示することでバーチャルオフィスでも法人口座を作ることはできますが、実在する事務所を本店所在地にする場合と比べると法人口座を開設しにくくなります。
バーチャルオフィスで法人口座を開設する場合は、銀行側に以下の書類を提出し、信頼してもらうことが大切です。
- 契約書や取引先との請求書を提出する
- 固定電話の取得や事業実態が確認できるホームページ、パンフレットを提出して判断材料を増やす
参考:A法人口座は簡単に作れない|専門家の声|法人のお客さま|住信SBIネット銀行
法人口座開設の方法まとめ!必要書類や金融機関の選び方を解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee
また一部の銀行では、バーチャルオフィスの住所を使用しても口座開設が可能な場合があります。
たとえばGMOあおぞらネット銀行では、登記されている法人所在地がバーチャルオフィスでも口座開設が可能です。
参考:法人設立後の口座作成におすすめ!GMOあおぞらネット銀行の法人口座とは?
会社の資本金が少ないと各所への信用度が低くなる
法人設立時の資本金は1円から設定することが可能ですが、少ない資本金で設定すると各所への信頼が低くなるため注意が必要です。
資本金は事業の元手であり、事業運営に使えるお金を示しています。資本金が少ないと、事業運営を行うためには借入をしなければならないと判断されます。
借入をしながら事業運営をする場合、必ず返済が付きまとうため、取引先や金融機関に「返済できずに倒産するリスクがあるのでは」といった不安を与えてしまうのです。
そうなると、取引してもらえなかったり融資をしてもらえなかったりなど、信頼が必要な取引の全てが不利になります。
そのため、資本金は1円で設定するのではなく、最低でも1年は事業運営ができる程度の資本金を設定しましょう。おおよその目安として、200~1,000万円ほど用意しておくのがいいでしょう。
参考:資本金1円で会社設立ができる? | マネーフォワード クラウド会社設立
マイクロ法人を設立しよう!メリットとデメリット、作り方を徹底解説 | 起業・創業・資金調達の創業手帳Webマーケティングの基礎知識|絶対知っておきたいポイントを5分で解説
サラリーマンの場合は社会保険料の減額ができない
サラリーマンの場合、社会保険料は企業が支払っているため、マイクロ法人を設立したところで社会保険料の減額はできません。
社会保険料の節約になるのは、国民健康保険や国民年金に加入している個人事業主やフリーランスです。
社会保険料の負担額は役員報酬によって決まるため、役員報酬を少なくすれば社会保険料の節約につながります。
ただし、サラリーマンでも役員報酬で給与を支払う形をとれば「給与所得控除」を利用することができ、経費として計上することができます。
経費の幅も増えるため、サラリーマンでも所得税や住民税の節税は可能です。
しかし、サラリーマンの場合は社会保険料を本業を行っている企業が支払うため、節減効果はありません。
マイクロ法人を作る際によくある質問
ここからは、様々なサイトや知恵袋などでマイクロ法人を作る際によくされている質問と、それに対する回答について解説します。
マイクロ法人を設立する際と設立後に分けているため、事前にチェックをしてください。
マイクロ法人設立時のよくある質問
マイクロ法人を設立する際によくある質問5つと、それに対する回答をまとめています。
自宅の住所を公開せずに作る方法はある?
マイクロ法人の本店所在地は、自宅以外にシェアオフィスやバーチャルオフィスで登記することも可能です。
法人化を考えている方の中で「法人登記や開業届に自分の住所を設定したくない」という方もおられるでしょう。
実際に事務所を借りる必要はなく、登記のためにシェアオフィスやバーチャルオフィスを契約すれば事務所を借りる必要がないため、コストを最小限に抑えられます。
シェアオフィスは民間が運営しているものもありますが、最近は自治体が管理するシェアオフィスも増えており、月額数千円で利用できます。
バーチャルオフィスは事業用の住所を貸し出すサービスで、法人登記用の住所貸し出しから郵送物の転送にも対応してくれます。
月額数百円から利用できますが、バーチャルオフィスは法人口座開設や融資の際に不利になる可能性があるため注意が必要です。
参考:マイクロ法人とは?マイクロ法人の作り方と自宅の住所を非公開にする方法を解説 | MailMate
マイクロ法人を作る際は税理士は必要?
マイクロ法人を作る際は税理士が必要というわけではありません。
税理士がいなくても、役員報酬の設定や節税対策をご自身でできる場合は不要になります。
ただし、個人事業主とは比べ物にならないくらいの税務処理や書類が必要になります。不十分な知識で法人税の申告等を行うと不備が発生することもあります。
少しでも税務処理や節税対策に不安がある方は、税理士にまとめて依頼することをお勧めします。
マイクロ法人の業種にもよりますが、税理士への費用は年間10万円〜20万円前後です。
参考:マイクロ法人で税理士は必要?依頼の注意点や費用相場を解説
マイクロ法人は違法?
マイクロ法人に違法性はありません。役員と株式が1人だけの法人を作るだけなので、マイクロ法人設立が罪に問われることはありません。
マイクロ法人設立時に税務署がチェックするのは「法人名義を偽装していないか」「事業活動はあるか」です。特に書類上だけで実際には事業実績がないペーパーカンパニーを作る場合は「脱税」に見なされるため、違法性があります。
マイクロ法人として有効な事業運営を行っており、証拠を提示できるのであればマイクロ法人に違法性はありません。
参考:ペーパーカンパニーは違法?実態のないダミー会社を作るリスクを解説|起業・開業あんしんガイド|弥生株式会社【公式】
「マイクロ法人が可能か知りたいです。」| 税理士相談Q&A by freee
役員報酬はいくらに設定すればいい?
節減対策という観点に立つと、役員報酬を月額45,000円以下に設定しましょう。
45,000円以下にすれば所得税がかからないだけでなく、社会保険料を最安にできます。
役員報酬による給与所得の場合、収入金額から給与所得控除を引いた金額による溢れた分を所得税として支払わなければなりません。
所得税をかからないようにするために、給与所得控除の下限である55万円を下回る給与に抑える必要があります。
社会保険料も同様に役員報酬を63,000円以内にすれば社会保険料の金額が決まる等級が最安の1級に当てはまります。マイクロ法人の設立には社会保険料の節約が最も大きく、年間給与を75万円以内に抑えることで最安値の健康保険・厚生年金保険が適用されます。
役員報酬を0円に設定することも可能ですが、社会保険に加入する権利を失うことにつながりますのでおすすめできません。
参考:マイクロ法人・一人社長における役員報酬の決め方|GVA 法人登記
個人事業主とマイクロ法人の二刀流とは?
個人事業主とマイクロ法人の二刀流とは、個人事業とマイクロ法人を同時に持つことです。
これにより、以下のメリットがあります。
- 社会保険料・所得税・住民税を節減できる
- 経費計上ができる幅が広がる
- 個人事業主よりも信頼を得やすくなる
個人事業主とマイクロ法人に二刀流では、個人事業主の節税である「青色申告で最大65万円の控除」とマイクロ法人の社会保険料節減につながる「55万円の給与所得控除」が適用されます。
それぞれの制度を活用することで、社会保険料・所得税・住民税を節減できるのが二刀流の一番のメリットと言えます。
そのほかにも、経費計上の幅が広がることで、自宅を事務所として計上したり、生命保険料を経費に落とすことができ、節税につながります。
ただし、個人事業主と法人の確定申告を行わなければならないため、税務処理は2倍以上になります。
節税や節減が期待できるものの、事務処理にかかる時間は増えることを理解したうえで、個人事業主とマイクロ法人の二刀流を検討しましょう。
参考:A:マイクロ法人とは?作り方や個人事業主が設立するメリット・デメリット|起業・開業あんしんガイド|弥生株式会社【公式】
マイクロ法人設立後のよくある質問
マイクロ法人を設立した後によくされる質問2つと、それに対する回答をまとめました。
個人用で使っていた銀行口座をそのまま法人用にも使っていいの?
個人で使っていた口座を、法人用として代用すること自体は法的に問題はありません。
しかし、代表者の資産と会社の売上との区別が難しくなるため、企業の財務状況が把握しづらくなる可能性があります。それに伴い、会社の信用度もアピールしにくくなります。
法人口座の開設は任意ではありますが、取引先から信用を得られたり、融資の審査が通りやすくなったりというメリットがあります。
そのため、法人設立後は法人口座を開設するのがおすすめです。
マイクロ法人が赤字でも大丈夫?
マイクロ法人は赤字でも問題ありません。
赤字決算でも倒産するわけではなく、翌年、もしくは数年後に赤字分を利益から相殺するため、節税効果も得られます。
ただし、赤字を翌年に繰り越すためには「青色申告控除」の申請が必要になります。
青色申告控除の申請は管轄の税務署にて、申請書を作成・提出します。
管轄の税務署を調べる際は国税庁のホームページをご覧ください。
参考:国税局・税務署を調べる|国税庁
マイクロ法人は「売上なし」「赤字」で大丈夫です | 節約法人くるくるガオガオ
マイクロ法人にお金がなくなったらどうしたらいいの?
マイクロ法人にお金が無くなった場合、基本的には赤字を翌年に繰り越します。
青色申告控除を活用すれば最大10年は赤字を繰り越すことができるので、10年の間に事業運営を行い、利益と赤字を相殺します。
もしマイクロ法人で利益を確保できない場合は、個人事業から法人に維持費を貸し出して事業を存続させることも可能です。
まとめ
本記事では、マイクロ法人の作り方や注意点、マイクロ法人を作るにあたってのよくある質問について解説しました。
マイクロ法人の最大のメリットは所得税や社会保険料を節税・節減できることです。ただし、マイクロ法人は通常の法人登記と同じ手続きが必要なため、事業内容の調整や定款の作成など入念な準備が必要になります。
特に以下の点には注意してください。
・本業と別の業種を選ばなければ税務調査の対象になりやすい
・事業収入が赤字でも税金を支払わなくてはならない
・法人の事業所にバーチャルオフィスを設定している場合は法人口座を開設しにくい
・会社の資本金を少なく申告すると各所への信用度が低くなる
・サラリーマンの場合は社会保険料の節約ができない
・売り上げが低い場合は個人事業主のままの方が節税できる可能性がある
マイクロ法人の設立は事業や所得の状況によっては節税・節減につながりますが、中には損する方もおられます。まずはご自身が「得する人」の部類に入るのかを確認したうえでマイクロ法人の設立を検討しましょう。