開業を検討しているものの、資金がどれくらいかかるのか不安に感じてはいませんか?
特に店舗を必要とする事業の場合、物件購入費や内装工事費などもかかるため、開業には高額な費用が必要となります。
しかし開業時にどのような費用がかかるのかを洗い出し、それぞれ対策を立てることで開業費用を抑えることが可能です。
この記事では、多くの個人や法人のキャッシュフローに関するアドバイスをしてきたファイナンシャルプランナーである筆者が開業資金を抑える方法を9つ紹介します。
※本記事はGMOあおぞらネット銀行株式による寄稿記事です。LISKUL編集部監修のもと公開しています。
開業資金の内訳
開業資金は、大きく設備資金と運転資金の2種類に分けられます。
設備資金とは、事業を始める設備を購入するにあたって一時的に必要になる資金、運転資金は事業を維持するために継続して必要な資金のことです。
【設備資金の例】
- 物件購入費
- 内装工事費
- 設備購入費
- Webサイト製作費
- 固定電話やFAX回線の設置費用
【運転資金の例】
- 人件費
- 広告宣伝費
- 原材料や商品の仕入れ費用
- 外注費用
- 家賃
- 光熱費
- 通信費
- 消耗品費
- 税金
最初にかかる開業資金を節約する方法
開業当初は設備費用がかかるため、多くの資金が必要になるでしょう。
しかし開業してから事業が安定するまでの間に、「想像以上に人件費がかかった」「追加で広告が必要になった」など、不測の運転資金が必要になる場合もあるため、設備投資はなるべく抑えておきたいところです。
以下、設備投資を節約する主な方法を紹介します。
物件購入費を節約する方法
開業にあたり物件を購入しようとすると多額の資金が必要になるうえ、固定資産税や都市計画税などの税金もかかります。
開業資金を節約したい場合、物件を購入せずに始められる方法も検討してみましょう。
自宅を事務所にする
自宅を事務所にすることで、開業にあたり新たに物件を購入したり借りたりする必要がないため、費用が抑えられます。ただし賃貸住宅に住んでいる場合は、事務所として利用できない場合があるため、オーナーや不動産会社に事前に確認が必要です。
参考:株式会社LIFULL|個人事業主の契約形態は? 賃貸物件を借りる際に知っておくべきポイント
また事業を今後拡大していくうえで、事業所所在地として自宅の住所が多くの人の目に触れることになります。自宅の住所を知られたくない人は注意しましょう。
知人に店舗や事務所を借りる
通常の飲食店の営業時間外に別の事業主が飲食店を営業する「間借り」営業や、知人の事務所の一画を借りる「間貸し」を利用することで、物件購入費用を抑えられます。
参考:東京リバブル株式会社 間借り営業とは?開業の相場やメリット・デメリット
ただし自身の判断だけでリフォームや新しい設備を導入したりできないため、経営の自由度が制限される可能性があります。
バーチャルオフィスを利用する
バーチャルオフィスとは物理的なスペースを貸し出すのではなく、事業用の住所を貸し出すサービスのことです。
実際に店舗を購入したり借りたりするよりも、費用が少なく済む傾向があります。
参考:コクヨ株式会社 働き方用語辞典 「バーチャルオフィス」
レンタルオフィスを利用する
レンタルオフィスとはオフィスをレンタルしているサービス全般を表します。
事業者向けに提供されているスペースの一画をレンタルする仕組みであることから、既に机やイス、インターネット環境といった事業に必要な設備が整備されており、開業資金が抑えられます。
参考:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 レンタルオフィスとは?その他の形式との違いや活用するメリット、活用事例を解説
郊外で店舗・事務所を構える
一般的に都心以外では、都市部に比べて家賃や物件価格が安い傾向があります。
立地を重視しない業態や、郊外を売りにした事業などの場合、郊外で店舗や事務所を構えることで物件購入費用を抑えられるでしょう。
参考:株式会社テンポスドットコム パン屋開業に必要な費用は?抑えることはできる?
内装工事費を節約する方法
内装工事費とは、給排水設備や電気・ガス設備といったライフラインの他、看板や広告を取り付けるサイン工事や、事業所や店舗の装飾、セキュリティ設備の設置など幅広い費用を指します。
内装工事費は幅広いため、見直せる部分が多いかもしれません。
相見積もりを取り、安い価格の業者に依頼をする
内装工事費は複数から相見積もりを取り、安い業者に依頼しましょう。
また、内装工事費はさまざまな項目があるため、相見積もりで比較をすると不要な費用や、必須な費用が見えてきます。
開業してから追加で内装工事をすると運転資金に影響を与えてしまうため、不明な点があれば、なぜこの内装が必要なのか、あるいは不要なのかを十分確認することが大切です。
内装工事を自分で行う
内装工事のうち、できるものは自分で行えば工事費用がかかりません。
ただし素人の工事で開業後に不具合が生じてしまい、休業を余儀なくされたり、結局専門業者に工事を再依頼することになったりする場合があります。
参考:株式会社テンポスドットコム DIY内装工事で飲食店を開業するメリットや注意点について
居抜き物件を購入する
居抜き物件とは、前のお店が使用していた設備や什器を引き継いで利用できる物件のことです。
例えば飲食店の場合、厨房や給排水設備、イスやテーブルなどの設備が引き継げれば、新たに購入したり内装工事をしたりする必要がないため費用が抑えられるでしょう。
また、開業までにかかる準備時間も短くできる可能性があります。
参考:株式会社テンポスドットコム 飲食店を開業する人必見!居抜き物件にかかる開業資金とは?
ただし引き継いだ設備や什器が老朽化していて、すぐに使えなくなることもあるため、状態を十分確認しておきましょう。
また、内装や設備を引き継ぐときは「造作譲渡料」あるいは「店舗資産譲渡料」といった費用がかかります。
設備購入費を節約する方法
事業を運営したり、販売する商品を製造したりする際に必要な設備を用意する資金のことで、主に機械や備品、車両、ソフトウェアなどの費用が挙げられます。
以下、設備購入費を節約する方法を紹介します。
中古設備を購入する
事業に利用する設備は、必ずしも新品である必要はありません。新品でなくてもよいものは、中古の設備を購入することで、設備費用を抑えることができます。
ただし中古設備を購入する際は、事業をするうえで必要な性能を備えているか確認しましょう。
不用品の譲渡サイトを活用する
譲渡サイトを活用することで事業に必要な設備を無料、あるいは安価で調達できます。
譲渡サイトとは、不用品の販売や、無償の譲渡を仲介するサイトのことで、自分の事業に必要な設備が掲載されていることもあります。
設備をリースする
リースとはリース会社が設備を購入し、利用者に長期間貸し出すサービスのことです。
リースを利用すれば、設備購入でまとまった資金を用意したり銀行からお金を借りたりする必要がなく、毎月のリース料の支払いで済みます。
しかしリース料が定期的に発生すると、運転資金の増加につながるため注意が必要です。
Webサイト制作費を節約する方法
利用前に店舗の情報や企業情報などを検索する可能性があるため、開業時にWebサイトを用意する必要があります。
以下、Webサイト制作費を節約する方法を紹介します。
Webサイトを自分で制作する
自分でWebサイトを作れば制作コストを抑えられます。
またすべて自分でできなくても、画像やロゴマーク、文章、キャッチコピーなどを自分で考えることでWebサイトの制作費用を抑えられることがあります。
参考:ランサーズ ホームページ制作の費用相場を一覧に!依頼するなら業者・フリーランスどっち?
フリーランスに制作を依頼する
Webサイトを制作できるフリーランスに依頼する方法もあります。
多くのフリーランスがいるため、比較をして高品質かつ、安い価格で対応してくれる業者に出会える可能性があります。
参考:エックスサーバー株式会社 ホームページ作成を個人やフリーランスに依頼するときの費用を解説
開業資金の調達方法
開業資金の調達方法として、主に次の5つが挙げられます。
- 融資
- ビジネスローン
- 補助金・助成金
- 出資
- クラウドファンディング
それぞれ詳しく解説します。
融資
もっともシンプルな方法は金融機関から融資を受ける方法です。融資を受けた後は返済の義務があり、元本と利息を併せて返済していきます。
融資を受ける場合は事業計画の内容をもとに所定の審査があり、審査に通過すれば融資が受けられます。
ただし開業資金の融資を希望する場合、金融機関は事業でどれくらいの利益を出せるのか予想がつかないため、説得力のある事業計画の内容や資金の使い道を提示する必要があるでしょう。
参考:株式会社M&Aサクシード 資金調達とは?分類や方法、メリット・デメリットを公認会計士が解説
開業資金の融資を受ける場合、日本政策金融公庫を利用する方法もあります。
日本政策金融公庫とは国が100%出資している政府系の金融機関です。新創業融資制度という創業・スタートアップ支援を目的とした融資制度があります。
また、制度融資を活用するのもひとつの手です。制度融資とは地方自治体と金融機関、信用保証協会の3つが連携して提供している融資制度のことです。制度融資は地方自治体が貸付原資の一部を負担しており、なおかつ利用者は信用保証協会の保証を受けられることから、低金利で審査に通りやすいというメリットがあります。
ただし制度融資は地方自治体、金融機関、信用保証協会それぞれで手続きが必要なため、資金調達までに時間がかかります。
参考:GMOあおぞらネット銀行株式会社 銀行のプロパー融資・国の制度融資・県や市区の自治体の制度融資の特徴
ビジネスローン
銀行や信販会社、消費者金融などが提供しているビジネスローンで開業資金を調達する方法です。
ビジネスローンには審査があり、審査に通過すれば融資が受けられます。中には即日融資が受けられるビジネスローンもあるため、急ぎで融資を受けたい方は検討してみましょう。ただし一般的なローンに比べて、金利は高めです。
参考:税理士法人 ベリーベスト ビジネスローンとは?損しない資金調達のために知りたい5つのこと
補助金・助成金
特定の事業、かつ要件を満たした場合に、国や自治体から補助金や助成金が用意されている場合があります。一般的には返済不要で、起業前後どちらでも申込み可能です。
ただし金額に上限があるため、自身の希望通りの金額がすべてまかなえるとは限りません。また、募集期間中に申し込まないと利用できない、受け取りまでに時間がかかる、といったデメリットもあります。
参考:ベンチャーサポート税理士法人:起業の世界Vol.15 出資、融資、補助金・助成金の違い
出資
個人投資家やベンチャーキャピタルに出資を求める方法です。自身に信用力がなくても、事業内容に賛同が得られれば開業資金が調達できる可能性があります。
原則、返済義務はありませんが、出資者から経営についての干渉を受け、経営の意思決定に影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。
参考:GMOあおぞらネット銀行株式会社 ベンチャーキャピタルを通じて資金調達するメリット・デメリットと審査のポイント
クラウドファンディング
インターネットなどを通じて、不特定多数の投資家から小口の資金を調達する方法です。事業について多くの投資家の賛同を集められれば、クラウドファンディングの種類によっては返済義務なしで資金調達ができます。
しかし資金調達までに時間がかかり、目標金額に達しないと資金調達ができないクラウドファンディングもあります。
参考:金融広報中央委員会 クラウドファンディングが世の中を変える!?
設備資金に加えて運転資金を抑えることも重要
開業して事業がスタートすると、それ以降は継続的に運転資金(ランニングコスト)がかかります。
運転資金はただ収支がプラスになれば良いわけではありません。今後、設備の老朽化や事業の拡大などで新たな設備資金が必要になることもあるでしょう。
そのため、事業利益の一部を将来の設備資金として、計画的に確保できるのが望ましい状態といえます。運転資金は定期的に見直す余地がないか検討してみましょう。
運転資金は固定費から優先的に見直そう
運転資金は固定費から優先的に見直すと効果的です。固定費とは、定期的に支払いがあり、かつ毎回金額があまり変わらない支出をいいます。
固定費が運転資金の見直しで有効なのは、一度見直すと、それ以降は手をかけなくても効果が継続するためです。
代表的な固定費の例としては、通信費や保険料、銀行口座の各種手数料などがあります。
固定費を節約する具体的な方法
固定費を節約する具体的な方法をご紹介します。
通信費の節約方法
通信費を節約する場合は、まず費用の内訳を把握しておくことが重要です。
通信費には、「インターネット回線費用」「固定電話代」「携帯電話代」「FAX代」「フリーダイヤル代」などが含まれます。特に、「インターネット回線費用」は大きな節約効果を得られる可能性が高いので、優先的に見直してみましょう。具体的な確認ポイントは以下のとおりです。
- 現在の月額料金は適切であるか
- 使用していないオプションサービスの契約がないか
- プランに含まれている特典を有効活用できているか
保険料の節約方法
保険料であれば、ある程度事業規模が大きくなり、車の台数や倉庫、工場、事務所などが増えてくると、1つの保険にまとめたほうが保険料は抑えられます。
具体的には、以下のようなことで保険料を抑えられます。
- 自動車保険であれば、1台1台ばらばらに契約するよりも、「フリート契約」「ミニフリート契約」を活用する
- 火災保険であれば、事業者が保有する倉庫や工場といった建物にそれぞれ火災保険をかけるのではなく、各物件をまとめて契約する
銀行口座の手数料の節約方法
銀行口座の各種手数料には、振込手数料やインターネットバンキングの利用料金などが含まれます。こういった手数料を節約したい場合は、ネット銀行の法人口座を活用しましょう。
中でもGMOあおぞらネット銀行の法人口座は振込手数料が安く設定されており、24時間使えるインターネットバンキングの口座利用料も無料なためおすすめです。
「創業手帳」会員を対象に行ったアンケート調査によると、法人口座を検討する際に重視すべきポイントの1位は「振込手数料が安い」でした。
また、「口座維持費がかからない」も3位と上位に入っています。1件あたりの手数料は少額でも、事業を継続していけば大きな差になってくるので、開業時に十分検討しておきましょう。
参考:2023/08/16 「創業手帳」会員に法人口座開設アンケート実施 起業検討中&創業間もない企業さまが選ぶネット銀行 半数超がGMOあおぞらネット銀行を選択 | お知らせ・プレスリリース
銀行口座を選ぶ際には、振込手数料や口座維持費といった固定費が事業に影響を与える重要なポイントになります。どの銀行口座が適しているか、詳細な比較については以下の記事をご参照ください。
参考:【2024年最新版】法人口座を開設できる銀行おすすめ15選を比較!選び方も紹介│LISKUL
まとめ
開業資金は大きく、開業準備などで一時的にかかる設備資金と、事業を維持するために継続して必要になる運転資金に分けられます。
開業資金は融資や助成金・補助金などの方法で調達することもできますが、開業後に急な支出が発生する可能性もあるため、極力抑える方法を検討しましょう。
また開業後は運転資金が継続的にかかりますが、運転資金も定期的に見直して、将来、発生するかもしれない新たな設備投資に備えておくことも大切です。