メディアミックスの成功例5つと成功するためのポイント、注意点を解説

メディアミックスとは、商品・サービスを、テレビやラジオ、インターネットなど複数のメディアを活用して認知を拡大する広告手法のことです。

また、マーケティング用語としてのメディアミックスとは、小説・マンガなどの原作を、アニメ・映画・ゲームなど他の様々なメディアに展開して、収益性の高いコンテンツに成長させることを指します。

様々な媒体に同時多発的に情報を掲載することで、幅広いターゲットにアプローチできるうえ、それぞれのメディア同士で互いに補完・相乗効果も狙うことができます。

しかし、以下のような課題をお持ちではないでしょうか。

「自社の商品やサービスをメディアミックスで認知度を高める方法は?」
「メディアミックスの成功事例を知りたい」
「メディアミックスで失敗しないためにはどうすればいいかわからない」

そこで本記事では、メディアミックスの成功例に見る共通のポイントは何か、また実際にプロモーションに活用する場合の注意点などについて、解説します。

この記事を読めば、実践例から効率よく成功ポイントを学べ、具体的な企画に活かせるようになります。


メディアミックスの成功例5つ

早速、メディアミックスに成功した事例を5つご紹介します。

メディアミックスはコストがかかる分、費用対効果をしっかりと見極める必要があります。

  • ポケットモンスター(株式会社ポケモン)
  • 鋼の錬金術師(株式会社スクウェア・エニックス)
  • ちはやふる(講談社)
  • クラフトボス(サントリーホールディングス株式会社)
  • アットホーム株式会社

これらの事例からチェックしていきましょう。

ポケットモンスター(株式会社ポケモン)

「ポケットモンスター(ポケモン)」は、日本のコンテンツのなかで、メディアミックスに最も成功した事例です。

キャラクターのメディアミックス総収益のランキングでは、ポケットモンスターが1位となっており、総収益は921億ドル(約10.1兆円)を記録しています。

メディアミックスの戦略としては、ゲーム事業、アニメ・映画事業、カードゲーム事業、ライセンス事業などで、多くのメディアを活用し、多角的にコンテンツを展開してきました。

ポケットモンスターは1996年に発売されたゲームが始まりでしたが、同年にカードゲームを発売、翌年にはアニメ放送を開始するなど、早いスピードで各市場に参入しました。

ゲームそのものの面白さだけではなく、雑誌やテレビなど多くの媒体でプロモーションを展開することで、お菓子やキャラクターグッズなどに商材を展開し、購買意欲をかきたてることに成功した事例と言えます。

参考:「2.メディア・ミックスの推進」|文部科学省

鋼の錬金術師(株式会社スクウェア・エニックス)

「鋼の錬金術師」の事例は、原作漫画からアニメ、ゲーム、原画展など様々な事業にコンテンツ展開で功奏したものです。

原作の単行本を5巻まで発行したタイミングでテレビアニメ化されました。

2003年に放映する前までの1巻あたりの発行部数は、15万部でしたが、放映と同時に発行していくことで、アニメ放映終了後に150万部まで部数が伸びたのです。

テレビアニメを放映するために、5億円という多額の提供料を払う必要があったものの、アニメ効果による漫画の売上がアップしたため、早い段階で損益分岐点をクリアを達成しました。

なお、ストーリーの展開も緻密に計算されていました。

テレビアニメ化された際には最初は原作通りの展開でしたが、まだ原作に描かれていない部分をアニメオリジナルのストーリーとして細かく入れ込んでいたことがポイントです。

原作とは異なる部分をアニメに入れてはいましたが、世界観を損なうことはなかったため、結果的に新規ファン、原作ファンの双方から人気を博しました。

参考:メディアミックス成功の鍵を握るものとは?|谷口剛司|note

ちはやふる(講談社)

漫画が原作の「ちはやふる」は、実写版映画への展開の成功事例です。

漫画が発行された後の3部作で、それぞれで映画興行収入10億円を達成しました。

出版されている単行本の数が多い漫画の場合、ドラマや映画で実写化する際は、原作のストーリーを簡潔にまとめないといけないため、制作の難易度が高くなりがちです。

しかし、ちはやふるの実写化の場合、前編、後編、完結編の3作品で作られたため、キャラクターの背景や伏線を表現を省かずに公開することに成功しました。

また、完結編では原作に書かれていなかったストーリーを展開したものの、逆に原作のファンから高い評価を受けました。

映画化するにあたって、あらかじめ原作者から先の展開を聞き、それを踏まえて脚本を執筆したことがポイントとなっています。

参考:『ちはやふる-結び-』が大傑作となった8つの理由! | cinemas PLUS

クラフトボス(サントリーホールディングス株式会社)

サントリーホールディングスが発売するコーヒー飲料「クラフトボス」は、現代のオフィスワーカーをターゲットにした商品として、メディアミックスで成功しています。

2017年に発売開始以来人気となり、2021年にはシリーズ累計販売本数約30億本を突破したほか、フジサンケイグループ広告大賞において「メディアミックス部門優秀賞」を受賞しました。

広告クリエイティブにおけるポイントのひとつは、社会情勢やオフィスワーカーの働き方の変化を背景に、新しいライフスタイルをイメージできるものとしてしっかりと描きこんでいる点です。

テレビCMでは、新しい働き方を実践しているIT企業を背景に、缶コーヒーにはない角がなく丸みのあるシルエットがポイントのボトル自体が見栄え良くなるよう、細やかなところまで配慮して表現されました。

その印象的なシルエットは、SNSでシェアされることも想定していました。

また、新聞広告では「どこでもワーク」をコンセプトに、これからの新しい働き方に関するメッセージをテキストで掲載。

他の媒体にも同様のメッセージを掲載し、発信しました。

テレビCMが、視覚的な印象や雰囲気を伝えることで商材が持つ価値観や世界観を訴求したのに対し、新聞広告など他メディアでは、社会情勢や世相をベースに知的共感を呼ぶアプローチを採用しています。

メディアの特性を生かしながら、自社商品をどんな人物がどのようなシチュエーションで、どうやって楽しめるのかを具体的に伝えることで、新規・既存双方のユーザーに訴求することができると学べる事例です。

参考:「クラフトボス」の新聞広告「どこでもワーク!by どこでもボス!」 | ブレーンデジタル版

アットホーム株式会社

不動産情報サービス「アットホーム株式会社」は、メディアミックスとしてテレビCMとYouTube動画広告を活用し、施策効果の改善に成功しています。

同社では、テレビCMとYouTube動画広告のどちらにも同じコンテンツを流用していましたが、それぞれのメディアの特性の違いに着目し、最適化を行いました。

テレビCMYouTube動画広告
メディア地上波Web
訴求できるユーザー・不特定多数の人
・興味がないこともある
・興味を持った人のみ

テレビCMは不特定多数の人に情報を届けることができる一方、深く商品やサービスを理解してもらうことは難しいです。

一方、YouTube動画広告はテレビCMとは情報のスピード感が違います。

そこでテンポ感をアップし、メッセージもシンプルにすることでWeb媒体に適したクリエイティブに変更しました。

結果、YouTube動画広告接触者による検索数はそれまでの3.2倍に向上させることに成功しました。

既存のクリエイティブをさまざまなメディアに流用するのではなく、企画段階からWeb展開も意識することで、広告効果を高めることができるようになります。

参考:Think with Google「段階的なYouTube 広告活用でマーケティングをデジタル化
   事例から学ぶテレビCMとYoutube広告の併用のメリット・コツ | LISKUL


メディアミックスに失敗した例2つ

一方、メディアミックスに残念ながら失敗してしまった事例もあります。

一番最初に展開したメディアで失敗したり、さらに手を広げようとして失敗したりといったケースです。

要因のひとつには、原作から変わってしまいユーザー離れが起きてしまったことが考えられます。

具体的に見ていきましょう。

ビブリア古書堂の事件手帖(株式会社KADOKAWA)

原作と大きく乖離する設定で失敗してしまったのが「​​ビブリア古書堂の事件手帖」です。

失敗の要因は、主人公の容姿や、主人公の妹が弟になっている、キャラクターの性格の変更など原作をドラマ仕様に大幅に変更したことが、ファンの期待を大きく裏切ってしまった点でした。

2011年から刊行されている小説が原作の同作品は、2013年にドラマ化されました。

その際、ドラマオリジナルの仕様として登場人物が変更されたことによって原作ファンから批判の声が多く上がってしまい、ヒットにつながりませんでした。

原作自体は累計700万部を記録、スピンオフ作品も出るほどの人気作でしたが、期待するファンが多かった分、批判の嵐になってしまったのです。

FINAL FANTASY(株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス)

メディアミックスの失敗例の代表とされるのが「FINAL FANTASY」です。

失敗の要因は、3DのCG制作の経験が少ない人材を確保しつつ、脚本の練り直しなど手探りで進めてしまった結果、制作費が膨大になったことが挙げられます。

また、脚本がゲーム制作側でないこともあり、原作の世界観が映画では表現できていなかったとも考えられます。

「FINAL FANTASY」は、シリーズが15作出ているほどの人気RPGゲームで、2001年にフルCGのSF映画を公開。

ハリウッドスタッフと手を組み、1億3700万ドルをかけて制作したものの、興行収入は全世界で8513万ドルで終わり、アメリカでも日本でも予定より早く公開打ち切りとなってしまいました。

参考:メディアミックスはスマホ時代では常識!?成功例と失敗例を紹介|ザ・マーケティング


メディアミックスで成功するためのポイント4つ

以上を踏まえて、メディアミックスで成功するためのポイントは4つあります。

・カスタマージャーニーを意識してメディア戦略を立てる
・メディアの特性を理解した上で選択する
・各メディアに合わせて訴求方法を変える
・​​各メディアの担当者同士で連携を行う

順に解説していきます。

カスタマージャーニーを意識してメディア戦略を立てる

メディアミックスを成功させるためには、カスタマージャーニーを意識した上で、どんなメディア戦略を立てるのかを考えるのがポイントです。

まず、自社が想定するターゲットが商品やサービスを購入するまでに「どのメディアに接触し、どのようなタイミングで、どのような行動を起こすのか」といった心理や行動を、事前に予測しておきましょう。

その上で、ターゲットに確実にリーチするためのメディアを選びます。

例えば、商品やサービスの認知促進が必要な段階では、イメージや世界観が伝わりやすいメディアを選ぶ必要があります。

比較検討段階では、イメージや概要よりもさらに具体的な使用感がイメージできたり価格がわかったりしやすいメディアを活用する、というふうにです。

ユーザーが期待する情報と、企業側が提供する情報がかけ離れてしまった場合は、商品やサービスの購入には至らず断念することが多いので注意しましょう。

そのためには、ターゲットのプロファイリングが欠かせません。性年代・ライフスタイル・居住エリア・嗜好性・購買行動などなるべく詳細に調査しましょう。

参考:5分でわかるカスタマージャーニーとは?取り入れ方や分析のコツを事例とともに解説|LISKUL

メディアの特性を理解した上で選択する

メディアミックスは、多くのメディアを使えば良いというわけではなく、メディアの特性を理解した上で、必要なものを選ぶということが重要です。

訴求したいポイントを明確にした上で、活用するメディアを選びましょう。

以下にメディアの特性を簡単にまとめました。

種類メリット主なターゲット訴求目的
テレビ・短期間かつ膨大なリーチ数
・ブランドロイヤルティの獲得
不特定多数認知度向上
新聞社会的信頼を得られやすい一般紙や経済紙、専門紙などに合わせた読者層商品・サービス理解促進
雑誌特定ターゲットへの効率的なリーチ特定ターゲット商品・サービス理解促進
ラジオ比較的低コスト不特定多数認知度向上
SNS早い段階で情報拡散できる年齢・性別などセグメント可新商品・サービスPR

「商品やサービスをまずは知ってほしい」という場合は、まずテレビやラジオから活用していく、あるいはSNSで先行PRしていき、他のメディアを活用してユーザーを巻き込んでいく方法が考えられます。

また「ある程度認知は上がっているので、より購入に近い距離からアプローチをかけたい」という場合には、より深い情報を伝えるメディアとして、新聞や雑誌といったメディアを検討します。

ただし、先ほどお伝えしたとおり、全てのメディアを使うべきというわけではありませんので、注意してください。

参考:マス広告とは?デジタル広告との違い・効果を高める併用メソッド | LISKUL

各メディアに合わせてクリエイティブを変える

メディアミックスにおいて複数のメディアを使う場合は、メディアの中で商品・サービスの世界観や特徴など打ち出したい内容が活かされるよう、広告クリエイティブを最適化する必要があります。

例えば、テレビや動画をアップロードできるSNSの場合は、動きや音声で表現することができますが、雑誌や新聞などのアナログメディアの場合は、静止画とテキストでの表現に限られます。

それぞれのメディアによってできる表現が異なりますので、特性に合ったコンテンツを展開するようにすれば、シナジー効果が期待できます。

例えば「クラフトボス」では、テレビCMで商材のデザインや新時代の感覚を視覚化し、感性に訴えかけるアプローチを行い、新聞広告では世相や時代性に着目したテキストメッセージで、知性に訴えかける手法を取りました。

クリエイティブは全く異なりますが「クラフトボス」の世界観は一貫して変わることなく、ブランドイメージの強化に繋げています。

参考:成功事例に学ぶ、クロスメディアの広告のコツと注意点|LISKUL

各メディアの担当者同士で連携を行う

メディアミックスの戦略において、メディア間の連携を意識しながらそれぞれの役割を定義することは重要です。

「FINAL FANTASY」では、ゲーム制作者が映画制作に関わっていなかったことが要因のひとつとなり、失敗に終わりました。

逆に、漫画「ちはやふる」の実写映画化は、脚本作りで原作者と連携が取れていたため、オリジナル要素を加えながらも、ファンから高評価を得ることに成功しました。

小説や漫画といったコンテンツをアニメ化する場合のみならず、メディアミックスの際には、優良顧客(原作ファン)の期待を裏切る展開はご法度です。

商品やサービスが持つ世界観や価値観を各メディア間で共有し、一貫したメッセージを届けることが大切です。


メディアミックスの注意点2つ

メディアミックスを行う際に注意したいのは、以下の2点です。

・適切に予算配分できないと、費用対効果が下がる
・原作と乖離する部分があると失敗しやすい

適切に予算配分できないと、費用対効果が下がる

メディアミックスでは、複数メディアに広告を出稿するため、メディアの数を絞った上で適切に予算配分ができなければ、費用対効果は下がってしまいます。

出稿するメディアを増やせば増やすほど当然ながら費用はかさみますので、多くの場合、目的の優先順位をつけてメディアと予算配分を検討し、費用対効果を考えて広告出稿しなければなりません。

その際には、単純にCPA(顧客獲得単価)のみで費用対効果をはかってしまうことのないよう注意してください。

CPAとは、1件のCVを獲得するためにどのぐらいの費用がかかったかを表す指標ですが、あくまでも参考値のひとつとして捉えたほうがよいです。

CPAが高いからといって出稿を打ち切ると、本来獲得できるはずのユーザーを取りこぼしてしまう可能性があるのです。

メディアの特徴やターゲット層の把握をした上で予算配分をする必要があるのはもちろんですが、それぞれのメディアを切り離して考えて単純にCPAを指標にしてしまってはいけません。

ユーザーの興味に合わせた段階を踏んで、ユーザーがメリットを感じるコンテンツを展開していくようにしてください。

参考:Webマーケティング予算の決め方とその評価方法|LISKUL

原作と乖離する部分があると失敗しやすい

メディアミックスにおいて注意したいもうひとつのポイントは、原作と他メディアで乖離する部分があると失敗しやすいという点です。

特に漫画やゲームなどのエンターテイメント業界ではその傾向が顕著で、先に挙げた失敗例「FINAL FANTASY」や「ビブリア古書堂の事件手帖」が該当します。

必ずしも原作を忠実に再現しなければいけないということではありませんが、原作が大事にしているコンセプトや世界観、また原作ファンが評価しているコアとなる部分は、他のメディアで展開した場合でも活かす必要があります。

予算など様々な制約があったとしても、原作とは全く別物になってしまわないよう各メディア間で連携を取るなどの対策が重要です。


まとめ

メディアミックスとは、商品・サービスを、テレビやラジオ、インターネットなど複数のメディアを活用して認知を拡大する広告手法のことです。

様々な媒体に同時多発的に情報を掲載することで、幅広いターゲットにアプローチできるうえ、それぞれのメディア同士で互いに補完・相乗効果も狙うことができます。

成功事例として真っ先に挙げられるのが「ポケモン」です。

ゲームに始まり、アニメ・映画、カードゲーム、ライセンスなどで多くのメディアを活用した多角的なコンテンツ展開を行っています。

そのほか、原作漫画から映画へ展開した「鋼の錬金術師」や、広告ではテレビCMと新聞などと連動して好評を得ている「クラフトボス」の事例があります。

一方、失敗事例も存在します。

要因のひとつに、原作から世界観が変わってしまいユーザー離れが起きてしまったことが挙げられます。

これらを踏まえ、メディアミックスで成功するためのポイントは4つ押さえるべきです。

・カスタマージャーニーを意識してメディア戦略を立てる
・メディアの特性を理解した上で選択する
・各メディアに合わせて訴求方法を変える
・​​各メディアの担当者同士で連携を行う

また、注意点としては以下の2点です。

・適切に予算配分できないと、費用対効果が下がる
・原作と乖離する部分があると失敗しやすい

これらを踏まえた上で、メディアミックスによるプロモーションを成功に導いてください。

メディアミックスの効果を検証するには?

プロモーション施策を行う上で重要なことは「やりっぱなし」にしないことです。効果検証を行い、改善点を見つけ、次の施策をブラッシュアップすることで継続的に成果をあげることができます。

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