カスタマーサクセスとは、顧客の成功を最重視するマーケティング概念のことです。
商品やサービスをよって提供する直接的な価値にとどまらず、顧客の事業や生活に、顧客が望む成功をもたらすために積極的に活動するのがカスタマーサクセスの考え方です。
カスタマーサクセスの概念は、近年のサブスクリプションビジネスの増加に伴って生まれました。
サブスクリプション型モデルでは解約率を下げることが不可欠ですが、そのためには従来の方法で顧客満足度を上げるだけでは不十分で、「顧客に成功をもたらす」ことが必要となったためです。
カスタマーサクセスは米国を中心としてバズワードとなり、その流れは国内にも押し寄せています。
いまや、カスタマーサクセスを知らずして効果的なマーケティングは難しいといっても過言ではありません。
よって本記事では、今後のマーケティング活動において重要な意味を持つ「カスタマーサクセス」について、基本から詳しく解説します。
本記事のポイント |
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「カスタマーサクセスとは何なのか知りたい」
「初めてカスタマーサクセスに取り組んでみたい」
…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、あなたは「カスタマーサクセスの基本的な考え方」はもちろん、カスタマーサクセスをどう実践していけば良いのか、わかるようになります。
カスタマーサクセスを実務に活かせば、今までにない大きな成果を挙げられるようになるでしょう。
ではさっそく「カスタマーサクセス」を解説します。
目次
カスタマーサクセスとは
まずはカスタマーサクセスの基礎知識からご紹介します。
カスタマーサクセスとは顧客の成功を最重視するマーケティング概念
カスタマーサクセスとは、一言でいえば「顧客の成功を最重視するマーケティング概念」のことです。
“顧客の成功を重視する”と聞くと、
「カスタマーサクセスって、顧客第一主義やお客様は神さまです、のような考え方のこと?」
と疑問に思う方もいるかもしれません。
確かに、従来の顧客第一主義とカスタマーサクセスには共通点があります。それは「顧客を大切にする」という思いです。
一方、明確な違いもあります。それは「カスタマーサクセスは、“カスタマーの成功”という価値を、積極的に創造する」という点です。
カスタマーサクセスは「待ち」ではなく「攻め」の姿勢が特徴です。積極的に顧客に働きかけて、顧客を成功へと導いていきます。
すなわち、カスタマーサクセスで提供すべき価値は、扱っている商品・サービスなどの「モノ」にとどまりません。
商品・サービスなどを利用した先にある、顧客の成功体験の創出にコミットして、顧客を成功させるために活動するのがカスタマーサクセスの実践なのです。
カスタマーサクセスの目的
では、カスタマーサクセスは何のためにあるのでしょうか。
カスタマーサクセスの目的は、
「顧客ロイヤルティを高めてリテンション(既存顧客との関係維持)につなげること」
といえます。
顧客ロイヤルティとは、顧客があるブランドや商品・サービスに対して感じる信頼や愛着のことです。顧客ロイヤルティが強くなればなるほど、その顧客は、ブランドや商品から離れにくくなります。
言い換えれば、「カスタマーサクセスとは、顧客ロイヤルティを高める有効で強力な手段」なのです。
カスタマーサクセスによって、顧客は自分の事業や生活において、望む成功体験をします。この成功体験は、従来の顧客満足では到底なし得なかった深い喜びを顧客にもたらすのです。
結果として顧客ロイヤルティは高まり、顧客は商品・サービスの継続を決定します。
マーケティングに携わったことのある方ならば、あらゆるビジネスにおいて、利益を高めるために顧客ロイヤルティの向上が欠かせないことは、ご存じでしょう。
2020年代のマーケティングにおいて、顧客ロイヤルティを高めるために必須の概念として注目されているのが、カスタマーサクセスなのです。
カスタマーサクセスが注目されている背景
なぜ2020年代のマーケティングにおいてカスタマーサクセスが重視されているのかといえば、ビジネスモデルの主流が、従来の「売り切り型」から、月額で定額利用料を徴収する「サブスクリプション型」へ変わったためです。
サブスクリプション型のビジネスモデルで成功のカギを握るのは、いかに解約を防止して継続率を高めるかといえます。
そこで、従来の「顧客第一主義、お客様は神さまです」といった概念よりもさらに先を行く、「顧客に成功させるカスタマーサクセス」という概念が必要になってきたというわけです。
従来は自社のサービスを利用していただくところまでがゴールでしたが、さらにその先の「顧客の成功体験」までを実現することで、顧客との長期的な関係を維持する役割を担うのが、カスタマーサクセスです。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
ここでよくあるご質問にお答えしましょう。
「カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは?」というご質問です。
一言でいうなら、カスタマーサクセスは能動的で、カスタマーサポートは受動的です。
カスタマーサクセスでは、能動的に先回りして顧客の課題を解決し、成功への手助けをします。先手・先手が特徴です。
顧客を成功させて解約率を下げることを意図しているので、KPIは解約率やLTVとなり、組織の位置付けはプロフィットセンター(利益に責任を持つ部門)です。
一方、カスタマーサポートでは、顧客から要望があって初めて対応します。利益を上げるのではなく、コストを下げる“効率性”が重視され、組織の位置付けはコストセンター(コストに責任を持つ部門)です。
▼ カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセス | カスタマーサポート | |
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対応の仕方 | 先回り型 | 要望対応型 |
KPI | 解約率・継続率・LTV | 効率性 |
組織の位置付け | プロフィットセンター | コストセンター |
時折「カスタマーサクセスは、カスタマーサポートの上位版」と勘違いしている方がいるのですが、このようにカスタマーサクセスとカスタマーサポートには明確な違いがあり、活動内容も異なります。
組織としても、カスタマーサクセス部とカスタマーサポート部は、別チームとして設置する必要があります。
参考:カスタマーサポートとは?役割や顧客満足度を向上させる方法を解説
カスタマーサクセスで重視する3つのKPI
さて、前章までカスタマーサクセスの基礎知識をお伝えしてきました。
これからカスタマーサクセスを実践で使いたいとお考えの方は、
「カスタマーサクセスでは、どんな指標を重視し、具体的にどんな数値の改善を追い掛けるのか?」
という点が気になるのではないでしょうか。
カスタマーサクセスでは、重視するKPIが3つあります。
- チャーンレート(解約率)/継続率/離脱率
- LTV(顧客生涯価値)
- NPS(ネット・プロモータースコア)
これらを理解することは、「カスタマーサクセスでは、何を大切に考えるのか」を理解することにもつながります。さっそく見ていきましょう。
(1)チャーンレート(解約率)/継続率/離脱率
1つめは「チャーンレート(解約率)」です。
サブスクリプション型ビジネスモデルであれば、ある期間の顧客の解約数を稼働契約数で割った値がチャーンレートになります。
サブスク以外でも、例えば通販の「定期便」であれば同じくチャーンレートを指標とし、サブスク・定期便以外のモデルの場合には、継続率(リピート率)を指標とします。
「カスタマーサクセスが機能し、顧客に成功体験がもたらされれば、チャーンレートは下がる(顧客はサービスを継続する)」というのが、カスタマーサクセスの基本的な考え方です。
(2)LTV(顧客生涯価値)
2つめは「LTV(顧客生涯価値)」です。
LTVとはライフタイムバリュー(Life Time Value)の略で、ある顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益のことです。
通販事業に関わってきた方にとってはおなじみの概念ですが、近年のサブスクリプション型モデルの台頭で、再び注目を集めています。
(1)でご紹介したチャーンレートが低下すれば、当然LTVは上昇しますから、チャーンレートとLTVは表裏一体といえます。
参考:LTV(顧客生涯価値:Life Time Value:ライフタイムバリュー)とは?計算方法と広告活用での成功事例
(3)NPS(ネット・プロモータースコア)
3つめは「NPS(ネット・プロモータースコア)」です。
NPSとは一言でいえば「推奨度」です。
カスタマーサクセスの目的は“顧客ロイヤルティを高めてリテンション(既存顧客との関係維持)につなげること”とお伝えしましたが、顧客ロイヤルティの指標となるのが、前述のチャーンレートとLTVです。
そして、チャーンレートとLTVだけでは測りきれない、さらに強い顧客ロイヤルティの指標となるのが「NPS(推奨度)」となります。
顧客ロイヤルティが強固になれば、顧客は自分がその商品・サービスを利用するだけでなく、他者に推奨しようとします。
この推奨度をアンケートなどで可視化して、カスタマーサクセスの指標とします。
参考:NPSとは?計算方法から活用事例まで、導入に必要な基礎知識を徹底解説!
カスタマーサクセスはすべての企業にとって重要な概念
カスタマーサクセスという概念が生まれた背景には、
「サブスクリプションモデルにおいて収益を上げるためには、どうしてもカスタマーサクセスが必要だった」
という事情がありました。
では、カスタマーサクセスとは、サブスクリプションモデルのためだけのものでしょうか。答えはNOです。
カスタマーサクセスは、すべての企業にとって必要であり、ビジネスの根幹となる概念です。
なぜなら、カスタマーサクセスは、あらゆるビジネスにおいて、顧客ロイヤルティを強烈に高める大変有益な手段といえるためです。
サブスクリプション以外のモデルにおいても、顧客ロイヤルティを高めてリピート率を向上させることは、業績向上に必要不可欠です。
顧客の価値観が多様化し、さまざまなモノがあふれる現代では、顧客ロイヤルティを高めるために「顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)」の重要性が叫ばれています。
では最高の顧客体験とは何かといえば、もちろん「成功体験」です。
つまりカスタマーサクセスは、どんな企業にとっても、顧客ロイヤルティを高めるために重要な概念であることは間違いありません。
カスタマーサクセスの3つのメリット
あなたの企業でカスタマーサクセスに取り組んだなら、どんな成果が期待できるのでしょうか。
カスタマーサクセスの3つのメリットをご紹介します。
メリット1:チャーンレート(解約率)・離脱率が低下する
1つめのメリットは「チャーンレート(解約率)・離脱率が低下する」ことです。
顧客が解約するときはどんなときか?といえば、それは「失敗した」と感じたときです。
例えば、
- サービスを導入したにもかかわらず、売上が上がらなかった
- 商品を購入したにもかかわらず、期待していた効果が出なかった
…こんなときに、顧客は解約します。
カスタマーサクセスでは、これらの失敗を先回りして防ぎ、顧客を成功体験へと導きます。
よって、チャーンレートを下げて、顧客の流出を防ぐことができるのです。
メリット2:既存顧客の客単価が向上する
2つめのメリットは「既存顧客の客単価が向上する」ことです。
カスタマーサクセスにおいては、顧客の成功体験を維持し続けるために必要なサービスや商品があれば、積極的に利用を促します。
あるいは、必要なサービスや商品があれば新規開発して、顧客のために提供することもあります。
すると、結果的には「アップセル」「クロスセル」が促進されていくのです。
▼ アップセルとクロスセル
アップセル | 現在利用している商品・サービスよりも上位で高額の商品・サービスを販売する |
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クロスセル | 現在利用している商品・サービスに加えて、関連する商品・サービスを販売する |
つまり、カスタマーサクセスでは、“既存顧客に販売するもの”は増えていきます。結果、既存顧客の客単価は向上し、定期収益が生み出されていくのです。
メリット3:顧客満足度と推奨度が向上する
3つめのメリットは「顧客満足度と推奨度が向上する」ことです。
カスタマーサクセスによって顧客に成功体験を提供すれば、顧客満足度は著しく向上します。
顧客満足度は顧客ロイヤルティを向上することにつながりますが、加えて「推奨度」も向上していきます。
カスタマーサクセスは、既存顧客のLTVを高めることはもちろんですが、副次的な効果として、推奨による新規顧客の獲得数が増えるというメリットも持っているのです。
莫大な広告費をかけなくても、いわゆる「口コミ」によって新規顧客が増えていく仕組みができあがります。
カスタマーサクセスのデメリット
カスタマーサクセスには、マイナス面もあります。3つのデメリットを見ていきましょう。
デメリット1:初期投資が必要になる
1つめのデメリットは「初期投資が必要になる」ことです。
カスタマーサクセスで生み出すのは「顧客の成功体験」という無形の価値です。そして、この顧客の成功体験はひとりひとり違うという点が、カスタマーサクセスのコストを引き上げます。
ひとりひとり異なる顧客の成功体験を作り上げるためには、時間と費用がかかるためです。
さらに付け加えるなら、カスタマーサクセスを成功させるためには、カスタマーサクセスの本質を学び、顧客を理解し、マーケティング戦略を立案するスキルを持った人材が必要です。
カスタマーサクセスが大ブームとなっている現在では、カスタマーサクセス分野の優秀な人材は取り合いとなっています。人的リソースという観点からも、投資が必要な状況です。
デメリット2:効果測定に一定の時間がかかる
2つめのデメリットは「効果測定に一定の時間がかかる」ことです。
初期投資をしてカスタマーサクセスをスタートしても、その効果を測れるようになるまで時間がかかることは、カスタマーサクセスのデメリットといえます。
「せっかく初期投資してアクションを起こしたのに、思ったような結果が得られなかった」というケースは多々あります。
長い目で見れば、カスタマーサクセスは圧倒的な収益を上げることのできる概念ですが、長い目で見る余裕のない企業にとっては、取り組みにくい一面があるのも事実です。
デメリット3:短期的な売上づくりには適さない
3つめのデメリットは「短期的な売上づくりには適さない」ことです。
カスタマーサクセスによってアプローチできるのは、未来の売上です。直近の短期的な売上づくりには、カスタマーサクセスは適しません。
例えば、カスタマーサクセスに取り組むことによって、今月の売上が倍増するようなことは起きないのです。
「短期的な売上を狙うのはやめて、LTVを最大化していくことを重視する」のがカスタマーサクセスの真髄といえるのですが、その理解なしにカスタマーサクセスに取り組めば、何とも無意味に感じられるかもしれません。
カスタマーサクセスの成功事例
カスタマーサクセスは、実際に多くの企業で導入されています。
具体的な成功事例を2つ、ご紹介しましょう。
ラクサス
出典:ラクサス
1つめの成功事例はラクサス・テクノロジーズ株式会社が手がける「ラクサス」です。
ラクサスは、約40,000点ものハイブランドのバッグを月額6,800円で使い放題としたサブスクリプション型レンタルサービスです。
内閣総理大臣表彰『第3回 日本サービス大賞』の受賞、TV『ガイアの夜明け』への登場などで話題となっています。
ラクサスの成功の根幹を担うのが、カスタマーサクセスです。
施策 | 顧客のフェーズを[導入期/定着期/成熟期]の3つに分けてカスタマーサクセスを実施 |
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効果 | ラクサス会員の平均継続率は95% 登録後9カ月以上を経過した優良会員の平均継続率98% |
ラクサスは、会員の平均継続率95%以上という高い成果を挙げています。
ラクサスでは、顧客のフェーズを[導入期/定着期/成熟期]の3つのフェーズに分けて、各フェーズでカスタマーサクセス施策に取り組むことで継続率を高めているのが特徴的です。
▼ 3つのフェーズ別にカスタマーサクセス施策を実施
- 導入期:マッチしたバッグの利用や交換の経験などを通してオンボーディング(導入)を成功させる
- 定着期:ダブルプランの利用促進などを通してラクサスを生活に定着させる
- 成熟期:レンタル商品の購入やCtoCサービスの利用などを通して優良顧客の心をつかむ
「顧客の成功」とは何なのか各フェーズごとに戦略的に定義し、カスタマーサクセスを実践したことが、ラクサスの成功要素といえるでしょう。
出典:日経ビジネス
Sansan
出典:Sansan
2つめの成功事例は、Sansan株式会社が手がける「Sansan」です。
Sansanは、BtoBの名刺管理サービスです。名刺をはじめとしたあらゆる「顧客データ」を連携することで、働き方を変え、企業の成⻑を後押しすることを狙いとしています。
Sansanは、いち早くカスタマーサクセスに取り組み成功した企業として知られ、名刺管理サービスシェア84%・利用企業7000社を誇ります。
施策 | オンボーディングに徹底フォーカスした施策とカスタマーサクセスの世界最先端企業にならった戦略の実践 |
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効果 | クラウド名刺管理サービス「Sansan」の解約率0.60%(SaaS業界ではトップクラスの解約率) |
Sansanのカスタマーサクセスの特徴を挙げるなら、ひとつは「オンボーディング(導入)」に徹底的にフォーカスしている点です。
特にBtoBサービスのカスタマーサクセスでは、オンボーディングが非常に重要とされています。
サービスの利用初期に、機能や使い方を理解してもらうのはもちろん、実際の成功体験をいかに創出できるかで、その後の継続率が大幅に変わってくるためです。
さらに、Sansanはカスタマーサクセスの最先端企業であるGainsight社のツールを利用し、Gainsight社のプラクティスを取り入れている企業でもあります。
出典:Gainsight
「ぜひ自社でもGainsight社のメソッドを学びたい」という方も多いかと思いますが、残念ながらGainsight社は日本市場に進出していません。
しかしながら、Sansanカスタマーサクセス部の山田ひさのり氏が執筆された書籍のなかで、Gainsight社が公開しているプラクティスやSansanでの実践について解説されています。
山田 ひさのり『カスタマーサクセス実行戦略』
まだ国内に入ってきてない最先端のカスタマーサクセスプラクティスを学びたい方におすすめです。
カスタマーサクセスで成果を出す基本の3ステップ
実際にカスタマーサクセスを自社で取り入れ成果を出すためには、どうすれば良いのでしょうか。
まず押さえておくべき大前提は、
という考え方です。
そのうえで、カスタマーサクセスで成果を出すための基本的な流れを、以下の3ステップでご紹介しましょう。
ステップ1:顧客の成功を明確にする
1つめのステップは「顧客の成功を明確にする」です。
カスタマーサクセスを実践するうえで最も大切なことは、何が顧客の「成功」なのか、具体的に深く知り尽くすことです。
ここでいう「成功」とは、商品・サービスを上手に使うことや、商品・サービスが直接的にもたらす効果ではないことに留意してください。
顧客の成功とは
顧客の成功とは、BtoBのサービスであれば、顧客の事業に実際にもたらされた成果や業績です。
具体例を挙げるなら、クラウド名刺管理サービスを利用する顧客の成功とは、名刺をキレイに整理することではありません。
例えば「名刺を活用して営業効率を上げ、成約率を高め、売上を上げる」ことが、成功として定義できるでしょう。
BtoCのサービスであれば、顧客の成功とは顧客の生活に実際にもたらされた成果となります。
レンタルバッグのサブスクサービスを利用する顧客の成功とは、さまざまなブランドバッグをとっかえひっかえ使えることではありません。
例えば「最高のおしゃれをして良い気分でデートを楽しむこと」であったり、「同級生のなかで見劣りしない格好で堂々と同窓会に参加すること」が、顧客の成功として定義できるでしょう。
このような考え方に基づいて、「顧客の真の成功」を定義することが、カスタマーサクセスには欠かせません。
顧客を正しく深く理解するために
顧客の成功を明確にするうえで注意したいのは、実際に存在する顧客たちの実態に即していなければ、意味がないということです。
なぜなら、実態に即していない想像上の定義は、机上の空論であり妄想となってしまうためです。
ここで重要なのは、深く正しい顧客理解といえます。
「顧客を理解しよう」といわれても、実際に何をすれば良いのかわからず困ってしまう──という方は、以下の記事を参考にしてみてください。
顧客理解を深めるたった一つのコツ「顧客視点」の体得方法まとめ
顧客視点の体得方法を解説していますので、顧客を正しく深く理解する一助となるはずです。
ステップ2:成功させられる人を顧客にする
2つめのステップは「成功させられる人を顧客にする」です。
カスタマーサクセスでは、手当たり次第に獲得した新規顧客すべてにカスタマーサクセスのアプローチをしていたら、成り立ちません。
“誰にサービスを届け、誰には届けないのか”を明確にしなければならないのです。
「戦略とは選択と集中である」という言葉がありますが、まさにカスタマーサクセスでも、“誰を選択して集中するのか”を決めていきます。
なぜなら、カスタマーサクセスは、積極的に初期投資を行うことでLTVを高め、未来の売上を獲得する手法です。
投資してもLTVが高まらない相手に投資してしまうと、ROI(投資利益率)が一気に悪化しますので、注意が必要なのです。
どうやっても成功を届けられない相手には、最初から時間やコストをかけないと決め、成功を届けられる相手の成功に集中しましょう。
この実践に役立つのは「ターゲティング」の理論です。誰をターゲットとするか(誰をしないか)を明確にします。
ターゲティングについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
ステップ3:顧客の成功にコミットして活動する
3つめのステップは「顧客の成功にコミットして活動する」です。
顧客の成功を定義し、成功を約束できる相手を顧客にしたら、あとは「顧客にいかに成功体験を感じてもらえるか」にフォーカスして徹底的に実践を繰り返すのみです。
具体的に何をすべきかは、あなたが提供している商品・サービスによって異なりますが、多くのケースでは「ラクサス」の成功事例のように、顧客をフェーズに分けて施策を実践することが有益です。
▼ 3つのフェーズ別にカスタマーサクセス施策を実施したラクサスの事例
- 導入期:マッチしたバッグの利用や交換の経験などを通してオンボーディング(導入)を成功させる
- 定着期:ダブルプランの利用促進などを通してラクサスを生活に定着させる
- 成熟期:レンタル商品の購入やCtoCサービスの利用などを通して優良顧客の心をつかむ
あなたの顧客に最高の成功をつかんでいただくことを目的として、何をすべきか考え、実行しましょう。
カスタマーサクセスを成功させる2つのポイント
カスタマーサクセスを成功させるためには、どんなポイントを押さえれば良いのでしょうか。
2つのポイントをご紹介します。
カスタマーサクセスの本質を正しく理解する
1つめのポイントは「カスタマーサクセスの本質を正しく理解する」です。
国内では、カスタマーサクセスという言葉が一人歩きをしており、本質を理解していない人が増えています。
カスタマーサクセスとは、サブスクサービスの解約率を下げるテクニックでも、SaaSのためのマーケティング手法でもありません。
カスタマーサクセスの本質は「カスタマーの成功を実現するという観点からあらゆる活動を行うこと」にあります。
カスタマーサクセス成功の第一歩は、カスタマーサクセスとは何なのか、正しく理解することにあります。
本記事でも本質的な概念をご紹介してきましたが、実践の前に、ぜひ書籍やセミナーなどで深く学ぶことをおすすめします。
カスタマーサクセスの本質が学べるおすすめの本には『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』があります。
『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』
自社に合うカスタマーサクセスツールを導入する
2つめのポイントは「自社に合うカスタマーサクセスツールを導入する」です。
カスタマーサクセスに本気で取り組めば取り組むほど、「膨大な手間」がかかることに愕然とするはずです。
顧客の成功にコミットすることは、努力だけで何とかなるほど甘くはなく、それぞれの顧客の状況に合わせたパーソナルな対応が求められてきます。
そこで上手に利用したいのがカスタマーサクセスツールです。
ツールによって自動化できる部分は積極的に自動化し、アップセルや退会の兆候を見逃さず、タイムリーな対応ができる体制を整えることが、カスタマーサクセスの成功を支えます。
下記記事では、カスタマーサクセスツールの一つである「commmune(コミューン)」について詳細に解説していますので、あわせてご覧ください。
commmune(コミューン)とは?特徴・機能・使い方・事例まとめ
注目のカスタマーサクセスツール 3選
徐々に国内でも利用できるカスタマーサクセスツールが増えています。ここでは3つのサービスをご紹介しましょう。
pottos (ポトス)
出典:pottos(ポトス)
ソフトウエア開発を手掛けるODKソリューションズが、2020年6月に提供を始めたカスタマーサクセスツールが「pottos」です。
BtoBに特化したカスタマーサクセスオートメーションツールで、顧客のサービス利用状況に応じて、自動的に担当者へのタスク生成や顧客への連絡が行われます。
対応が多岐にわたるカスタマーサクセス担当者を支援するツールとして活用されています。
機能 | 収集・管理・分析・アプローチといったカスタマーサクセスに役立つ多くの機能を搭載 |
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月額利用料 | 98,000 円~(税抜) |
初期費用 | 300,000 円~(税抜) |
HiCustomer (ハイカスタマー)
「HiCustomer」は、2017年12月設立のHiCustomer株式会社が手がけるカスタマーサクセスツールです。
顧客の利用状況を緑(Good)・黄色(normal)・赤(bad)の3段階で視覚的に管理できるのが特徴的です。
顧客データから、退会やアップセル兆候を検知する、独自アラートの作成が可能で、アクションを取るべき最適なタイミングでアラートが発火します。
機能 | ヘルススコア管理、ライフサイクル管理、カスタムアラート、コミュニケーション管理、SFA/CRM連携など |
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費用 | 要問い合わせ |
KARTE (カルテ)
出典:KARTE(カルテ)
KARTEは株式会社プレイドが手がけるCXプラットフォームですが、カスタマーサクセスツールとしての一面も持っています。
カスタマーヘルスをスコアで可視化し、アップセルや退会の兆候を見逃さず、あらゆるタッチポイントで顧客の成功を支援する機能が搭載されており、カスタマーサクセスを強力に支援します。
KARTEは、リクルート、GMO、Freee、オールアバウトなど、さまざまな業界で導入が進んでおり、その有効性がうかがえるツールです。
機能 | NPSアンケート、個別最適化メッセージ、Live動画、チャット、Slack連携など |
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費用 | 要問い合わせ |
カスタマーサクセスに関するよくあるご質問
カスタマーサクセスに関する役立つQ&Aをまとめています。
Q.カスタマーサクセスを導入するタイミングはいつが適切ですか?
A.サブスクリプション型ビジネスを展開する際や、顧客ロイヤルティを高めたい時にカスタマーサクセスを導入するのが適切です。
Q.カスタマーサクセスで重視すべきKPIは何ですか?
A.解約率(チャーンレート)、顧客生涯価値(LTV)、推奨度(NPS)がカスタマーサクセスで重視される主要なKPIです。
Q.カスタマーサクセスの導入に必要なリソースは何ですか?
A.顧客の成功体験を深く理解するための人的リソースや、顧客データを分析するためのツールが必要です。
Q.カスタマーサクセスにおける、アップセル兆候とは何ですか?
A.顧客が既存サービスを満足に利用し、さらに高機能なサービスや追加商品に興味を示し始めた際の行動や問い合わせを指します。
Q.無料で使えるカスタマーサクセスツールはありますか?
A.一部のカスタマーサクセスツールには、無料プランやトライアルが提供されています。具体的なツールとしては「HubSpot」や「Freshdesk」などがありますが、機能に制限があります。詳細はツールの提供元にお問い合わせください。
まとめ
カスタマーサクセスとは顧客の成功を最重視するマーケティング概念です。顧客に積極的に働きかけ、成功体験を提供します。
カスタマーサクセスの目的は顧客ロイヤルティの向上を通してチャーンレート(解約率)を下げ、LTVを向上させることです。
カスタマーサクセスは、サブスクリプション型ビジネスモデルの台頭によって注目されるようになった概念ですが、あらゆる企業にとって重要です。
カスタマーサクセスで重視する3つのKPIはこちらです。
- チャーンレート(解約率)/継続率/離脱率
- LTV(顧客生涯価値)
- NPS(ネット・プロモータースコア)
カスタマーサクセスのメリットは以下のとおりです。
- チャーンレート(解約率)・離脱率が低下する
- 既存顧客の客単価が向上する
- 顧客満足度と推奨度が向上する
カスタマーサクセスのデメリットは以下のとおりです。
- 初期投資が必要になる
- 効果測定に一定の時間がかかる
- 短期的な売上づくりには適さない
カスタマーサクセスで成果を出す基本の3ステップはこちらです。
ステップ2:成功させられる人を顧客にする
ステップ3:顧客の成功にコミットして活動する
カスタマーサクセスを成功させるポイントとしては、カスタマーサクセスの本質を正しく理解すること、自社に合うカスタマーサクセスツールを導入することが大切です。
カスタマーサクセスを通して顧客の成功のために活動することは、業績向上につながるのみならず、働く人のやりがいにも貢献します。ぜひあなたのビジネスにも、カスタマーサクセスのエッセンスを取り入れてみてください。