営業戦略とは?売上目標を最大化する戦略の立て方と活用すべきフレームワーク

営業戦略とは企業の利益目標を達成するために立てられる中長期的な営業方針・計画を指します。

中長期で実現したい目標に対する基本方針となるので、慎重に策定することが大切です。

しかし、「売上を達成につながる、意味のある営業戦略」はどうやって立てればいいの……?とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

営業戦略を立てる際には市場や競合企業、顧客の状況・属性や、自社の置かれている状況などを調査して、営業における課題を抽出していきます。

これらの情報を踏まえ、「自社の強み」「競合に負けない能力・特性」を最大限に活かした営業戦略を立てていきます。

この記事では営業戦略の立て方や大事な考え方について解説したうえで、営業戦略を立てるのに役立つフレームワークや、営業戦略から営業戦術を考える方法についてまとめています。


営業戦略とは

営業戦略とは、業績向上につながる中長期的な営業活動の方針・計画のことを指します。

営業の最終目標は「売上の向上」ですが、営業戦略を決めずに営業マンが各々の考えで動いてしまうと効率的な営業活動ができません。

営業戦略は「利益の獲得」「シェアの向上」といった目標に対して、時間・資金・人材といった限りのあるリソースをどのように活用すべきかを決める指針となります。

営業戦術との違い

営業戦術は営業戦略を達成するための短期的な施策・行動目標を指します。

例えば「年間売上を昨対比130%アップ」という目標が営業戦略とすると、「1万件の電話営業をかける」といったように、戦略を達成するための行動、ストーリーが営業戦術です。

策定した営業戦略を実現させるための具体的な目標で、営業戦略ありきで考えるのが通常です。

営業戦略を決めずに営業戦術を決めてしまうと、成果を上げられなかったときに軌道修正しようにも、方向性・基準が不明瞭で迷走しやすいです。

戦術は戦略ありきで考えるのが鉄則です。


優れた営業戦略は「選択と集中」をもとに決められている

「選択と集中」とは営業戦略を定める上での概念で、「自社の強みとなる事業分野を明確化し、その分野に資源を集中的に投下すべき」という考え方です

企業が所有する資金や人材、時間、情報には限りがあり、分配の仕方によって得られる成果が大きく異なります。

幅広い営業活動に資源を費やすのではなく、得意領域を「選択」して、「集中」して資源を投下していくことが営業戦略を考えるうえで重要です。

特に小規模なスタートアップ企業は大規模企業と比べてリソースは少なく、できることが限られています。網羅的に薄くリソースを投下しても市場競争で勝ち残ることは困難です。

「今期注力すべきこと」を1つに絞ることが大切です。


自社の強みを活かした営業戦略による企業成功事例3選

自社の特長や顧客ニーズを上手く掴んだ営業戦略によって、売上等で成果を上げた企業事例を3つご紹介します。

体験価値を向上させ前年比110%の売上を達成したスターバックスの取り組み

くつろぎの場(サードプレイス)を提供するスターバックス コーヒー ジャパンは、新たなコーヒー体験により顧客体験価値を向上させるために新店舗「リザーブロースタリー東京」をオープンし、前年比110%の売上を記録しました。

具体的な取り組みとしては以下が挙げられます。

  • 高品質なコーヒー豆の焙煎と提供を行う「ロースタリー」を設置
  • 多様なコーヒー体験を提供するための「焙煎所見学ツアー」や「コーヒーセミナー」の開催
  • 美しいデザインと快適な空間を提供する店舗の設計

焙煎所併設の「リザーブロースタリー東京」では、焙煎したてのコーヒーを楽しむことができるだけでなく、コーヒーに関する知識を深めることができるイベントも定期的に開催されます。また、限定の商品や特別なコーヒーメニューも取り揃え、訪れるたびに新しい発見と驚きを提供することで賑わいを見せ、しました。

参照:スターバックス コーヒー ジャパン高成長を維持し、 顧客体験の価値向上のための戦略的な取り組みを発表

グローバルブランドとしての資生堂の取り組み

化粧品の国内シェアトップである資生堂は、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指して2030年に向けた戦略「VISION 2030」を発表しました。

この戦略の重要な要素は以下の通りです。

  • AIやIoTなどのテクノロジーを活用し、顧客のニーズに合ったパーソナライズされたサービスを提供
  • グローバルブランドとしての地位を強化するために、新たな販売チャネルやパートナーシップを活用し、海外市場でのビジネス展開を加速
  • 環境負荷の低減や社会的責任の達成に向け、地球と社会への貢献を追求
  • 資生堂は、これらの戦略を実行するために、組織のリーダーシップや企業文化の変革、そして社員の能力強化を重視しています。また、持続可能なビジネスモデルの構築や社会的価値の創造に向けて、積極的な投資と取り組みを行っています。

    参照:WIN 2023 and beyond│SHISEIDO

    ユーザーを絞って市場価値を上げたクラウドワークス

    爆発的成長を見せたクラウドソーシングプラットフォームを提供しているクラウドワークスは、「なぜ競合が社会に普及しきれていないのか?」の視点から「クラウドソーシングの定義を変える」戦略を打ち出しました。

    具体的な取り組みは下記のとおりです。

    • 個人が自分のスキル、経験を活かして、オンラインで働けるエンジニアとデザイナーのユーザー獲得に特化
    • ユーザー視点でプロジェクト単位の単価の大きな仕事のみ掲載可能

    余った時間でお小遣い稼ぎするというイメージの強かったクラウドソーシングを、オンラインでフルタイムに近い仕事をできるという時代に合わせて変化させました。

    参考:コンセプト明確化から同質化戦略へ移行。クラウドワークスが明かす、後発で市場を席巻する事業戦略


    営業戦略を立てるためのステップ

    1.市場環境の把握

    自社商材・サービスに関する市場の動向を把握することから始めていきます。

    市場の状況によって営業戦略は大きく変わります。

    「自社の製品へのニーズがあるユーザー層」「他社の参入数(競争率の高さ)」などによって、営業戦略の内容は変わります。

    市場環境を把握せずに戦略を立ててしまうと、効果的な施策を打ちだせない可能性が高まります。

    参考:5分でわかる市場調査とは?4つの種類と代表的な6つの方法を徹底解説

    2.自社の営業状況の分析

    市場についての理解が深まったら、自社の営業活動の現状に目を向けましょう。
    分析の際には定量・定性の両方で分析していきます。

    定量分析

    営業活動を具体的な数値に落とし込むことで、自社の営業力や効率などが可視化され、客観的に現状を判断できるようになります。

    数値化の例としては以下のようなものが挙げられます。

    • テレアポにかかる平均時間
    • テレアポの商談化率
    • 資料準備から商談にかかる平均時間
    • 商談1件当たりのコスト

    このように営業活動を数値で把握できるようにしましょう。

    例えば、営業支援ツール(SFA)を活用することで、「いつ」「誰が」「どの企業に」「どのような」営業活動を行ったかを定量データで分析することが可能になります。

    定性分析

    定量的な分析ではなく、自社が所有する定性情報の分析を平行しておこなっていきましょう。

    「顧客からの質問の内容」「商材に対する感想・要望・クレーム」など、数値には落とし込めない情報を収集することから始めます。

    定性分析を行うことで定量情報だけでは掴みづらい顧客のリアルな声が目に見えるようになります。

    3.営業課題の明確化

    市場・自社分析の結果から、自社の営業活動における課題を抽出していきましょう。

    市場状況や景気など自社だけで解決できる課題ばかりではありませんが、できるだけ多くの課題をリストアップし、その中から本質的な自社の課題を絞り込んでいきます。

    課題を明確にしていく中で、考えられる対応策をセットで考えていきましょう。

    4.自社の強みを最大化する戦略の立案

    「選択と集中」の理論に基づき、コアコンピタンス(自社の強み)を中心に営業戦略を立案していきます。

    コアコンピタンスは「競合他社にはない独自の技術」「他社を圧倒する能力」など、ユーザーを強く引き付ける自社独自の価値を表します。

    営業戦略ではコアコンピタンスを活かした戦略を立てることが重要です。

    コアコンピタンスは開発チームやマーケティング部など別部署を対象にしたヒアリングや、顧客の声がヒントになりやすいです。


    営業戦略を立てるうえで使うべき分析のフレームワーク

    営業戦略を立てるうえで使うべき分析のフレームワークは以下の4つです。

    • SWOT分析
    • PEST分析
    • 4P分析
    • 3C分析

    営業戦略の立案では顧客視点・企業視点それぞれから見た自社の強みや弱み、社会・市場情勢が営業活動に与えるであろう要素などの洗い出しが先決です。

    今回紹介する4つのフレームワークは営業戦略を立案するうえでの要素の確認に利用できます。

    SWOT分析

    SWOT分析とは、自社の強み(Strength)や弱み(Weakness)と、社会や市場の変化で自社にプラスに働く機会(Opportunity)、マイナスに働く脅威(Threat)を洗い出し、事業戦略の方法を考えるフレームワークです。

    SWOT分析を行うことで、営業戦略で注力していくべき部分を明らかにし、事業課題、市場機会の発見もできます。

    SWOT分析は商品の強み→弱み→機会→脅威の順に分析していきます。その際、「内部環境」「外部環境」に分けて実施することが重要です。

    また、各項目それぞれに注目するだけではなく、「弱いところを補うために強みを活かせないか」など項目をクロスして考える「クロス分析」も効果的です。

    詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてみてください。

    参考:【図解】SWOT分析とは?ビジネスパーソンなら知っておくべき基本フレームワーク

    PEST分析

    PEST分析とは、政治(Politics)・技術(Technology)・経済(Economy)・社会(Society)の4つの観点からマクロ環境(外部環境)を分析するフレームワークです。

    PEST分析をすれば、政治・経済・社会・技術の外部環境が自社にどのような影響をもたらすか把握できます。法改正による不測の事態に備えたり、競合他社の技術不足を察知して、競合優位性を築くことができます。

    PEST分析の手順は4つの観点ごとに「自社にどのような影響を与えるのか」という仮説を設定します。

    次に実際に起こっている事実と妄想で考えている解釈を整理します。

    事実と仮説を照らし合わせたら、自社に起こりうる機会(競合の技術者不足による生産停止で競合優位性を築ける)とリスク(法改正で広告の表現が厳しくなり、成約率が下がる)の仮説の裏付けができます。

    参考:マーケティングをまるごとフレームワーク化!押さえるべき8つの枠組み

    3C分析

    3C分析とは、市場・顧客(Customer)自社(Company)競合(Competitor)の3つのCを分析し、これから販売する商品を取り巻く環境や情報を集めるためのフレームワークです。

    3C分析を行うことで、市場や顧客、競合の情報を客観的に把握できるだけでなく、時勢や顧客状況によって変わるニーズを正確に捉えられます。競合と比較したときの自社の強み、自社が顧客から選ばれる理由を発見できるようになります

    つまり、顧客のニーズをとらえ、他社とは異なるポジションの確立を行うために3C分析が用いられます。

    3C分析は「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の順で分析を行います。

    まずは市場・顧客分析を行いましょう。競合分析として、「競合企業の調査」と「各競合の特徴」を調べ、どんな商品を売り、どんな価値を提供しているかを調べます。最後に自社サービスを分析し、顧客との差別化を考えたり、売り方やアプローチ方法を考えます。

    参考:マーケティングをまるごとフレームワーク化!押さえるべき8つの枠組み

    4P分析

    4P分析とは、製品・サービス(Product)価格(Price)販売場所・提供方法(Place)販促活動(Promotion)の4つのPを分析する方法で、営業戦略を考える上での施策立案の過程で用いられるフレームワークです。

    4P分析を行うことで、商品やサービスの効果的な宣伝方法を見つけたり、競合他社に勝つ価格設定などを見つけられます。

    3C分析が顧客の視点からみた分析であるのに対し、4P分析は企業視点での分析ですので、併せて実施するのが望ましいです。

    4P分析は、「製品・サービス(Product)」「価格(Price)」「販売場所・提供方法(Place)(4)」「販促活動(Promotion)」の順に行います。

    参考:マーケティングミックス(4P)とは?事例から学ぶ活用のポイント


    営業戦略を戦術につなげるステップ

    1.中長期目標に対する実行手段を決める

    最初のステップは、中長期目標に対する実行手段を決めることです。

    自社のリソースで可能な範囲で、目的にあった実現可能な戦術、具体的な実行手段を考えることが重要です。

    2.KPIを設定する

    中長期の営業目標を設定したら、次にKPIを設定します。KPIとは、設定した目標をどのように達成するかを現した指標です。

    例えば、「毎月10件新規受注を獲得する」ことが目標であれば、KPIは「毎月50件以上商談を行う」と設定をします。

    設定すべきKPIはさまざまで、営業戦略の立案時に決めた目標(KGI)と連動して考えていきます。KGIの達成に向けて進捗しているか確認できるようなKPIを設定します。

    3.モニタリング

    KPIを設定したら、実際に行動にうつします。同時に、KPIの進捗を目で見える形にすることも大切です。

    KPIの進捗を数字で追うだけではなく、施策の成果が出ているかもしっかりと把握しましょう。

    定めたKPIと進捗の数字に乖離がある場合は、目標の修正か、戦術の変更を検討する必要があります。

    4.改善

    KPIのモニタリングができるようになったら、各戦術を「PDCAサイクル」に当てはめて、細かく改善をしましょう。

    PDCAを回して営業戦術の内容を見直して、精度を高めていきます。

    また、設定していたKPIと実際の数字がかけ離れた結果が出ることもあります。このような場合は数字がかけ離れた原因を特定し、施策を続けるかどうか、原因の部分だけをやめるか、などを判断する必要があります。

    参考:営業戦略の立て方と分析方法を解説-フレームワークを紹介


    まとめ

    営業戦略とは業績や利益向上に向けた中長期的な目標と、それを達成させるための営業方針をまとめたものを指します。

    一方営業戦術は、営業戦略で立てた目標を達成させるための短期的な目標・施策のことです。営業戦略を達成させるために営業戦術を決める、というのが正しい形です。

    自社の強みとなる分野に資源を投下するという「選択と集中」の考え方を踏まえて営業戦略を立てると優れた営業戦略を作ることができます。

    営業戦略は市場環境の分析、自社状況の分析、自社の営業課題の明確化を行ったうえで、コアコンピタンス(自社独自の強み)を最大化するように立案していきます。

    営業戦略を立案する際は3C分析などのフレームワークを活用して行うと良いでしょう。

    営業戦略を立てたら、戦略にのっとった営業戦術を決めていきます。

    営業戦術は「実行する施策の決定」「KPIの設定」「モニタリング」「検証・改善」という4点を決定していきます。

    現場の営業活動の「モニタリング」が定量データによる「検証・改善」を効率的に行うにはSFAの活用がおすすめです。

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