ヒューマンエラーは、人間が仕事をするうえでは切っても切り離せない問題です。
しかし「何から始めればよいかわからない」「そもそもシステムエラーとの違いがわからない」といった疑問から、ヒューマンエラー対策に踏み切れていない方も多いのではないでしょうか?
実はヒューマンエラーには種類があり、それぞれの原因や対応策が異なります。
本記事では、人間の作業においてどうしても発生しやすい「ヒューマンエラー」について、発生原因や対策方法、対策に成功した実際の事例などをご紹介します。
この解説を最後までお読みいただければ、ヒューマンエラーを防止するために何から始めればよいのかが明確になります。
また、掲載している対策を実際にお試しいただくことで、効率的にミスを減らし、他の業務に注力できるようになります。
初心者の方にも丁寧にわかりやすく解説しますので、ご安心ください。
ヒューマンエラーとは
ヒューマンエラーとは人が行った行為が原因となり引き起こされる失敗や過誤・ミスなどを指します。
先入観や思い込み、見落としなどが要因となる場合もあり、多くの場合引き起こした人に悪意はありません。
ヒューマンエラーの結果生じるトラブルや事故については、簡単にやり直せるものから取り返しがつかないものまで幅広いのが特徴です。
ビジネス現場における具体例を見ていきましょう。
- 業務中のケガ:(例)紙で指を切る、高所から荷物を落としてしまう
- 誤発注:(例)数字入力ミス、確認ミス、期日の勘違いなどにより、誤った発注を行う
- 情報漏洩:メールの送信ミスパソコンのセキュリティ対策不足などにより、情報漏洩が起きる
ヒューマンエラーの種類
ヒューマンエラーは無意識の行動による「ついつい・うっかり型」エラーと、意識的な行動により引き起こされる「あえて型」エラーの大きく2種類に分類できます。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ついつい・うっかり型
ついつい・うっかり型のヒューマンエラーとは、無意識の行動により引き起こされるエラーのことを指します。
「そんなつもりではなかったのについついミスをしてしまった」と思うような経験がある人は少なくありません。
たとえば、「電話番号の聞き間違いにより、異なる相手に電話をかける」「数値の入力ミスにより、異なる金額を振り込んだ」「日程の勘違いにより、会議に無断欠席してしまう」といった事例が該当します。
意図しないエラーを引き起こす要因は大きく次の4つに分類されます。
- 記憶エラー:覚えていたはずなのにうっかり忘れたために起こる
- 認知エラー:間違った思い込みや勘違い、見落とし・見間違え・聞き間違えなどにより起こる
- 判断エラー:油断や知識不足、思い込みなどで判断を誤るために起こる。連絡や連携の不足により、情報不足により引き起こされることもある
- 行動エラー:あらかじめ決められた方法や手順を間違えるために起こる
あえて型
あえて型のヒューマンエラーとは、慢心や自己顕示欲による手抜きによって起こるエラーです。
例えば、「慣れたので確認作業を勝手に省略した」「ベテランだからマニュアル以外に書かれていないことにも手をつける」など、当事者にある程度の意図をもって行動した結果エラーにつながるものが該当します。
ヒューマンエラーが起きる原因
ヒューマンエラー対策のためには、原因の把握が大切です。
ここでは、ヒューマンエラーが起きる原因についてみていきましょう。
- 集中力・注意力の低下
- 固定観念による思い込み
- 知識・経験の不足
- 決められた手順の省略
- 予想外の事態の発生
参考:ヒューマンエラーの原因12選|ヒューマンエラーの分類や事例、防止策など基礎知識を解説 |RICOH Chatbot Service
集中力・注意力の低下
集中力・注意力が低下すると、見落としやチェック漏れなどが生じやすくなります。
長時間労働や炎天下の作業などによる疲労や睡眠不足などが引き起こす心身機能の低下により、集中力や注意力が低下することは少なくありません。
日々、同じ業務や単調な反復作業を繰り返す中で、無意識のうちに注意力が低下することもあります。
注意力の低下は自分で強く意識できないため注意が必要です。
「普段と同じ業務を行っているのに、今日は何故かミスをしてしまった」という場合も、ここに当てはまります。
過労や睡眠不足、過度なストレスを避けるといった、集中力や注意力を保つ工夫が必要です。
参考:ダブルチェックの方法7つとミスが起きる原因、対策方法を解説
固定観念による思い込み
先入観や固定観念などによって思い込みや勘違いが発生し、結果的にヒューマンエラーが起きることがあります。
固定観念や先入観が誤っている場合、結果として行う行動も誤っていることが少なくありません。
「本当は明日が期限なのに、書類の提出期限を来週末だと思い込んでいたため準備が間に合わない」「本当はA社なのに、今日の打ち合わせ先がB社だと思い込んでいたため異なる書類を準備してしまった」といった事例が該当します。
固定観念や先入観が正しい場合でも、条件が異なると答えが変わる可能性があります。
しかし、思い込みが強い場合、行動時に自分で誤りに気づくことが困難です。
できるだけそのような誤りを防ぐためには、固定観念や先入観にとらわれていないか、常に自問自答することが必要です。
知識・経験の不足
業務に関する知識や従事経験が足りていないためにヒューマンエラーが生じることがあります。十分な経験を積んでいない、新人に多く見られる傾向です。
知識や経験が不足していることに気づかず「自分は分かっている・できる」と強く思い込んでいる場合も、ヒューマンエラーが生じやすいため注意が必要です。
十分な知識や経験が身につくまでは、「先輩や上司などの経験者と一緒に行動する」「実行前に経験者の意見を聞く」などの工夫を取り入れましょう。
決められた手順の省略
決められている手順を勝手に省略すると、ヒューマンエラーにつながります。
仕事に慣れてきたことによって、効率化を図ろうと意図的にいつもの手順を省略したくなることがあります。
時間がないことを理由に、普段は行っている確認作業を省略することで、それがミスにつながる可能性があります。
たとえ十分にその作業になれたと感じていても、勝手な省略を行わず、決められた手順を守ることでエラーを防ぎやすくなります。
確認作業を行ってミスをなくすために、きちんとマニュアルを活用することが大切です。
予想外の事態の発生
システムエラーや災害などの不測の事態が起きた場合、パニックになりミスを引き起こす可能性があります。
予期しないことが起きたとき、気持ちが焦って冷静な判断ができない場合もあるでしょう。
予想外の事態に冷静に対応するためには、普段からさまざまな事態を想定し対応策を講じておくことが欠かせません。
頭の中でシミュレーションするだけではなく、実際に訓練を行い非常時にも対応できるよう準備が必要です。
ヒューマンエラーを防止するための方法
多くの人はヒューマンエラーによる事故等の発生を防ぎたいと考えています。
人によるミスを完全になくすことは困難ですが、対策による低減が可能です。
ここからは、ヒューマンエラーを防止するための方法について紹介していきます。
- 過去に発生したミスをリストアップして周知する
- 機械・デジタルツールを導入する
- 業務を単純化する
- 対策・優先すべき事項をマニュアルにまとめる
- 日頃から情報共有しやすい職場環境をつくる
過去に発生したミスをリストアップして周知する
軽微な事故や些細なものを含めてリスト化し、社内に周知しましょう。
過去の失敗事例は、ヒューマンエラー予防のための貴重な情報となります。
リストアップすることで、これまでに他の人がどのような理由でヒューマンエラーを起こしたのか把握し、自分もしないよう気を付けようという意識を高めることができます。
各エラーに対する対応策を事前に講じられるため、過去と同様のヒューマンエラーによるミスやトラブルの再発防止につながります。
具体的なリストアップの仕方については厚生労働省が出しているマニュアルを参考にしましょう。
機械・デジタルツールを導入する
ヒューマンエラーを防止するためには、RPA(Robotic Process Automation)を代表とした、機械やデジタルツールの導入が効果的です。
参考:【2022年最新】RPAツール比較17選!プロが教える絶対に失敗しない選び方
ヒューマンエラーの発生が想定できる作業をピックアップしましょう。
可能な作業はデジタルツールや機械に任せることで、ミスを限りなく予防することができます。
業務を単純化する
業務の単純化はヒューマンエラーの防止に効果を発揮します。
複雑で理解が困難な作業は、ヒューマンエラーが発生しやすいため注意が必要です。
必要に応じて新しいアイデアや機器を採用したり、複数人で作業を分担するなど、できるだけ単純化させることでエラー削減の効果が期待できます。
もしヒューマンエラーが絶えない作業がある場合、単純化できるように工夫できないか考えてみるのがいいでしょう。
対策・優先すべき事項をマニュアルにまとめる
対策や優先事項をマニュアルにまとめると、ヒューマンエラー防止につながります。
想定できうる限りのヒューマンエラー対策を掲載したマニュアルを作成して社内で活用すれば、起こりそうなヒューマンエラーを事前に知ることができ、事前に対策を講じられます。
加えて、トラブルが発生した際は、安全を最優先するという認識を、従業員に徹底させておくことが大切です。
優先順位を決めることで、万が一トラブルが起きたときでも冷静に対応ができるようになります。
日頃から情報共有しやすい職場環境をつくる
ヒューマンエラーを防止するためには、情報共有しやすい職場環境が必要です。
ミスが報告しづらい状況下では、軽微なヒューマンエラーは隠蔽されやすくなり、最終的には大きなトラブルにまで発展する可能性があります。
風通しの悪い職場では、重大事故につながらない限り、上司に報告したくない・隠しておきたいと考える社員は少なくありません。
多くの事例を集めるためにも、気兼ねなく失敗を報告できる環境を整えておきましょう。
たとえば日頃からビジネスチャットでこまめに連絡をとったり、悩み事がないか都度確認をするようにすれば、何かミスが発生したときもすぐに伝えやすくなります。
参考:仕事のミスを報告する方法とは?報告をしない影響についても解説 | ビジネスチャットならChatwork
このように、「誰でも気軽に意見が言える雰囲気づくり」や「ミスを報告してきた社員を叱らない」など、職場環境の風通しを良くすることで大きなトラブルを防ぎやすくします。
ヒューマンエラーに関するよくあるご質問
ヒューマンエラーに関するQ&Aをまとめています。
Q.ヒューマンエラーとシステムエラーの違いはなんですか?
A.ヒューマンエラーが人間が原因のエラーですが、システムエラーは組織の体制や使用ツールの不備など、仕組みによるエラーを指します。エラーが発生したときには、エラーを起こした人だけでなく「仕組みに不備がないか?」にも注意しましょう。
Q.ヒューマンエラーが発生した際の適切な対応方法は??
A.ヒューマンエラーが発生した場合、まずは事実確認を行い、影響範囲を特定することが重要です。その後、再発防止策を講じ、関係者にフィードバックを行います。
Q.ヒューマンエラー発生後の従業員教育はどのように行うべきか?
A.エラー発生後の教育では、具体的な事例を基にしたケーススタディの共有や、マニュアル化が有効です。これにより、従業員がエラーの原因と対策を具体的に理解することができます。
効果的、かつ効率的にマニュアルを作成したい場合は、以下の記事を参考にしてください。
参考:【2024年最新版】マニュアル作成ツールおすすめ31選を比較!選び方も紹介
まとめ
ヒューマンエラーとは、人の行為により引き起こされるミスや失敗を指します。
状況により、軽微な事故で済むこともあれば、重大な事故が発生することもあるため注意が必要です。
ヒューマンエラーにはついつい・うっかり型とあえて型の2種類があり、それぞれ発生させる要因が異なります。
また、ヒューマンエラーが起きるのは集中力・注意力の低下や固定観念による思い込みなどさまざま原因があります。
ヒューマンエラーを全て防ぐことは困難ですが、低減させることは可能です。
次の中から自社に適した方法を試してみましょう。
- 過去に発生したミスをリストアップして周知する
- 機械・デジタルツールを導入する
- 業務を単純化する
- 対策・優先すべき事項をマニュアルにまとめる
- 日頃から情報共有しやすい職場環境をつくる
以上のようにデジタル化や機械化により単純作業を軽減しつつ、ミスが生じた場合はすぐに報告できる環境を作り、ヒューマンエラーの削減に努めましょう。