海外進出とは、企業が海外の市場へ参入することで事業の拡大や新たな機会の獲得を目指すビジネス戦略のひとつです。
海外の市場へ進出することで他にもブランドのグローバルな認知を獲得したり、市場のリスクを分散したり、生産性を向上させることもできます。
しかし、文化の違いや、法規制を理解するハードルが高く、どのように進めてよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、海外進出の基礎や、類似施策との比較、メリット・デメリット、海外進出の進め方、海外進出の際の注意点などの情報を一挙に解説します。
海外進出をご検討中の方は、ぜひご一読ください。
目次
海外進出とは
海外進出とは、企業が商品やサービスを海外で提供することにより新たな機会を獲得するビジネス戦略のことです。
海外に進出することにより市場を拡大したり、収益の拡大、国際的なブランドの認知向上など多くのメリットを見込むことができます。
しかし、海外進出には多くの初期投資が必要となるケースも多く、成功にはリスクが伴います。また、その国の文化や法規制などへ適応する必要もあります。
海外進出5つのメリット
まずは、海外進出を行うことで期待できる代表的なメリットを5つご紹介します。
1.市場を拡大できる
海外市場に進出することで、新しい顧客を獲得できる可能性があります。
顧客獲得に伴い、売上の増加やビジネスの成長も見込めます。
2.国際的なブランドの認知向上
海外進出することにより、企業のブランド価値を高めたり、国際的な認知向上につながる可能性があります。
3.新たな経験を積みビジネスの柔軟性が高まる
他国の市場にて、異なる文化への適応を試みることで、ビジネス戦略の柔軟性が高まる可能性があります。
4.コストを削減できる
人件費や原材料費の安い国に進出することにより、生産コストを削減し、経営効率を向上できる可能性があります。
5.リスク分散
他国の市場へ進出することで、市場リスクを分散し、安定したビジネスポートフォリオを構築することができる可能性があります。
海外進出5つのデメリット
次に、海外進出のデメリットを5つご紹介します。
1.大きな初期投資が必要
海外進出を行うためには、事前の調査から、パートナー獲得、販促開拓など、大きな初期投資が必要となることがあります。
2.文化や言語の壁がある
海外進出では、異なる文化や言語への適応が必須となります。
既存の事業が受け入れられづらい場合には、大きな変更や挑戦を余儀なくされる可能性があります。
3.法規制を理解する必要がある
海外に進出するためには現地の法規制の理解が必須です。
事前調査で競合がいない場合には、そもそも規制されている可能性もあるので注意しましょう。
4.運営が複雑になる
各国の文化や宗教、法規制に適応する必要がある以上、市場ごとに運営や管理の方法は異なる可能性があり、運営や管理が複雑になる可能性があります。
5.為替リスク
異なる国に進出するということは、用いられる通貨も当然異なります。
異なる通貨間で取引を行う際には、為替レート変動のリスクが伴います。
海外の消費者を狙った3つの事業拡大施策の違い
次に、海外消費者を狙った代表的な事業拡大戦略を3つご紹介します。
海外消費者を狙った事業拡大施策には、海外進出、越境EC、インバウンド対策の3つがあります。その中でも海外進出は「多くの投資を必要とする代わりに成功時には影響力のあるブランドイメージを構築できる」という特徴を持った比較的ハイリスクハイリターンの施策です。
項目 | 1.海外進出 | 2.越境EC | 3.インバウンド対策 |
---|---|---|---|
戦略 | 海外の市場に進出 | 自国から海外の顧客にオンラインで販売 | 他国からの訪問者を対象としたビジネスを展開 |
主な特徴 | 現地での店舗設立や製造施設の建設など、多くの投資を必要とする。 | オンライン販売、低リスク・低投資、配送や税関の課題 | 多言語サービス、文化的適応、訪問者流れに依存 |
利点 | 市場の深い理解と影響力のあるブランドイメージを築く機会 | 少ない初期投資で国際市場にアクセス | 比較的低リスクで国際市場を探る |
課題 | 高いコミットメントとリスク | 現地の消費者の好みの理解が必要 | 訪問者の流れに大きく依存 |
1.海外進出
海外進出は、直接的な国際展開を指し、企業が物理的に新しい市場に進出することを意味します。
これには、現地での法人店舗設立、製造施設の建設、販売店舗の展開などが含まれます。
この選択肢が最もコミットメントが高く、リスクと投資も大きい反面、市場の深い理解と強いプレゼンスを築く大きな機会を提供します。
2.越境EC
越境EC(電子商取引)は、企業が自国から海外の顧客に直接商品やサービスをオンラインで販売する方法です。
このアプローチでは、物理的なプレゼンスを持たずに国際市場にアクセスできます。
越境ECは、相対的に低リスクで、少ない初期投資で始められます。
ただし、配送、税関、現地の消費者の好みの理解などの課題があります。
参考:越境ECとは?市場規模・事例・始め方など、導入検討に必要な要素を徹底解説|LISKUL
3.インバウンド対策
インバウンド対策は、他国からの訪問者や観光客を対象にしたビジネス展開です。
これには、多言語のサービス提供、文化的違いへの適応、特定の国や地域からの訪問者に特化したマーケティング戦略が含まれます。
インバウンド対策は、国際的な露出を増やしつつ、比較的低リスクで国際市場を探る方法として有効ですが、訪問者の流れに大きく依存します。
海外進出の進め方6ステップ
1.市場分析と選定
- 目的:潜在的な市場を特定し、機会とリスクを評価する。
- 方法:人口統計、経済指標、市場の成長率、消費者特性、競争状況などを分析し、最も魅力的な市場を選定する。
2.文化、経済、法的環境の分析
- 目的:現地の文化、経済、法的環境の理解を深め、ビジネス展開の基盤を築く。
- 方法:文化的違い、経済政策、法的要件などを詳細に研究し、適応する戦略を策定する。
3.目標市場に合わせたビジネスモデルの調整
- 目的:現地市場の特性に合わせた効果的なビジネスモデルを構築する。
- 方法:
- 戦略策定:直接投資、合弁事業、フランチャイズなどの進入戦略を選択。
- ローカライゼーションとカスタマイゼーション:現地の文化やニーズに合わせた製品やサービスの提供。
- マーケティングとブランド戦略:現地市場に適したマーケティング戦略とブランドの位置づけを行う。
現地市場に適した製品やサービスを見極めるには、現地の消費者ニーズをリサーチすることが重要です。
海外のニーズは、専門の調査会社を利用すると手軽に入手できます。
例えば、GMOリサーチ&AI社が提供する海外調査サービスを活用すれば、130カ国延べ4億人の消費者にニーズ調査を実施できます。
4.リソースとオペレーションの準備
- 目的:海外進出に必要な資源を確保し、運営体制を整える。
- 方法:人材、資金、物流、技術などのリソースを整理し、効率的な運営体制を構築する。
5.現地での事業開始
- 目的:現地でのビジネス活動を開始し、市場への進出を実現する。
- 方法:計画に従って製品やサービスをローンチし、販売チャネルを確立する。
6.モニタリングと調整
- 目的:市場の反応を把握し、必要に応じて戦略を調整する。
- 方法:売上、顧客の反応、市場の動向などを定期的にモニタリングし、状況に応じてビジネスモデルや戦略を微調整する。
海外進出に必要な5つのスキル
次に、海外進出を行ううえで必要となるスキルを5つご紹介します。
1.文化的感度と適応力
異なる文化や慣習を理解し、尊重する能力。
文化的違いを理解し、それに適応する柔軟性が必要です。
2.コミュニケーション能力
明確かつ効果的にコミュニケーションを取る能力。
これには、言語スキルだけでなく、非言語的なコミュニケーションの理解も含まれます。
3.交渉能力
現地のビジネスパートナーや政府機関との交渉において、企業の利益を最大化する能力。
4.リーダーシップとチームマネジメント
国際的なチームを効果的に率い、モチベートする能力。
多様な文化背景を持つチームメンバーを統合し、共通の目標に向かわせる必要があります。
5.リスクマネジメント
異なる市場に伴うリスクを識別し、それに対応する計画を策定する能力。
参考:リスクマネジメントとは?リスクの種類、対応方法、フレームワークまで一挙紹介|LISKUL
海外進出を成功させるための3つのポイント
海外進出の成功は、適切な戦略と実行力に大きく依存します。
以下の3つのポイントは、海外進出を成功させるために特に重要です。
1.現地パートナーとの関係構築
現地の文化、市場、法規制に精通したパートナーは、新しい市場でのビジネスを円滑に進めるために不可欠です。
実施方法としては、信頼できるビジネスパートナー、代理店、または現地企業との連携を通じて、市場へのアクセス、販売網の拡大、文化的適応を図ります。
2.サプライチェーンと物流の最適化
効率的なサプライチェーンと物流は、コスト削減と顧客満足度の向上に直結します。
現地の物流システムと連携し、コスト効率と配送効率の両方を最適化する。
また、不測の事態に対応できる柔軟なサプライチェーンを構築します。
3.資金調達とリソース管理
海外進出には大きな投資が必要であり、資金とリソースの効果的な管理が成功の鍵となります。
事業計画に基づく資金調達と、人材、資金、技術などのリソースを効率的に配分し、運用していきます。
参考:事業資金の調達方法全10選!資金調達のコツや注意点まとめ|LISKUL
海外進出で失敗しないために注意すべき3つのポイント
最後に、海外進出で失敗しないために注意すべきポイントを3つご紹介します。
海外進出には多くのリスクが伴います。
以下の3つのポイントに注意することで、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。
1.市場への理解不足
現地市場のニーズや嗜好を誤解することにより、製品やサービスが受け入れられない可能性があります。
徹底的な市場調査と現地での消費者調査を行い、文化的な感覚やニーズを正確に把握します。
現地市場のニーズは、専門の調査会社を利用すると手軽に入手できます。
おすすめの海外調査会社については、下記の記事をご覧ください。
【2024年最新版】海外調査会社おすすめ10選を比較!外資・国内に分けて紹介
2.法規制とコンプライアンス
現地の法律や規制を遵守しない場合、罰金や事業の停止などの深刻な結果を招く可能性があります。
法的専門家の助言を得て、現地の法律や規制に対する理解を深め、すべてのビジネス活動がコンプライアンスを満たしていることを確認します。
参考:コンプライアンス対策で実施すべき12の項目を優先順位順に解説|LISKUL
3.リスクマネジメント
政治的変動、経済的不安定性、為替の変動など、予測不可能な要因による影響。
リスク評価を定期的に行い、危機管理計画を策定する。
また、適切な保険の選択により金融リスクをカバーします。
海外進出に関するよくあるご質問
海外進出を検討中の方に役立つQ&Aをまとめています。
Q.海外進出先の市場調査を効果的に行う方法は?
A.海外進出を考える際、現地市場の調査は非常に重要です。現地の文化、消費者行動、競合状況を理解するために、現地のビジネスパートナーや市場調査会社を活用することが効果的です。
Q.現地法規制の対応におけるポイントは?
A.海外進出には現地の法規制を遵守することが必要です。進出国の法律や規制に関する専門家を雇い、適切な手続きを行うことで、法的リスクを回避できます。
Q.海外進出における文化的な障壁を克服する方法は?
A.異文化理解は海外進出の成功に不可欠です。現地の文化を尊重し、ローカルスタッフとの協力を強化することで、文化的な障壁を乗り越えることができます。
Q.現地のパートナー企業との連携の進め方は?
A.信頼できる現地パートナーの選定は、海外進出の成功に直結します。パートナー企業の選定では、ビジネスの透明性や信頼性を重視し、契約条件を明確にしておくことが重要です。
Q.税制や財務管理における重要なポイントは?
A.各国の税制は異なるため、海外進出には税務リスクの管理が重要です。現地の税務専門家を活用し、適切な税務申告と財務管理を行うことで、経済的リスクを軽減できます。
まとめ
本記事では、海外進出の基礎や、類似施策との比較、メリット・デメリット、海外進出の進め方、海外進出の際の注意点などの情報を解説しました。
海外進出とは、企業が新たな機会を獲得するために海外の市場へと進出するビジネス戦略のひとつです。
企業は海外進出を行うことで市場を拡大するだけでなく、市場リスクを分散したり、国際的なブランド認知を高めたり、業務効率の向上を見込むことができます。
しかし、海外進出を行うためには、多くの投資が必要となるだけでなく、文化の違いや、法規制についての理解、その他リスクマネジメントを必要とします。
これらのポイントに注意して進出のための戦略を検討し実行することで、新しい機会の獲得を見込むことができます。
そして検討や実施の際には、この記事で紹介した情報が一助となれば幸いです。