食品ECサイトの始め方や成功させるコツ、押さえるべき注意点を紹介

自社商品のネット販売を検討しているものの「食品はネットで販売してもいいの?」と疑問を感じている方もおられるのではないでしょうか。

結論、食品をECサイトから販売することは可能です。ただし、取り扱う食品によって資格や許可、守らなければならない法律の確認が必要になるため、食品をECサイトで販売する際は注意しなければなりません。

そこで本記事では、これからECでの食品販売を考えている方に向けて、食品ECサイトを始める手順から解決すべき課題、押さえておくべき法律などを解説していきます。

本記事を読めば、食品ECサイトをスムーズに始められるだけでなく、起こりがちなトラブルや課題を事前に回避することができるでしょう。


食品ECとは

食品ECとは、生鮮食品や加工品、飲料などの食品をECサイト上で販売することを指します。

ECで販売すると全国どこでも配送ができるため、顧客層を広げることができます。

食品を購入するために店舗まで足を運び、購入したものを運ぶ手間を省くことができるため、日常生活で食品ECを活用するユーザーが多いです。

食品ECの販売形態は、大きく以下の3つに分けられます。

食品ECのタイプ説明
一般的な食品EC生鮮食品や加工品、飲料などの食品をECで販売する手法。販売業者だけではなく、生産者や食品メーカーが直接販売する場合も含まれる。独自ドメインを取得して運営するケースや、Amazonや楽天市場などのECモールに出店するケースがある。
ネットスーパースーパーマーケットがECで購入された商品を配送する手法。店舗からの配送が中心であるため、配達エリアが限られる場合がある。
定期配送専門の食品EC定額を支払った顧客に対して、定期的に食品を配達するサブスクリプション型の手法。

食品ECサイトを始めるための手順

食品ECサイトを始めるための手順は以下の通りです。

  1. 販売する商品を選定する
  2. 必要な資格や許可証を取得する
  3. 競合調査を行う
  4. 商品を準備する
  5. 物流網を確立する
  6. ECサイトを構築する
  7. 注文状況を反映できるか試しに注文してみる
  8. 食品ECサイトを公開し受注を開始する

各手順について説明します。

1.販売する商品を選定する

まずはECで販売する商品を選定します。商品選定の際には事業者側が売りたい商品ではなく、顧客に求められる商品を売るという考えで選びましょう。

ECで食品を購入する場合、ユーザーは以下のようなニーズを持っていると考えられます。

  • 生活に必要なものを購入したい
  • 限定商品を購入したい
  • プレゼントのために購入したい
  • 流行りの商品を購入したい
  • 持ち運びがしにくいものを家に届けてもらいたい

この中から、企業が提供できる価値を考慮し、販売する商品を選定しましょう。

2.必要な資格や許可を取得する

販売する商品が決まったら、営業許可や必要な資格を取得しましょう。

営業許可が必要になるのは、自分で食品を製造・加工を行う場合です。

例えば、以下のような業種は営業許可が必要になります。

分類法許可業種条例許可業種
調理業飲食店営業、喫茶店営業
製造業菓子製造業、
あん類製造業、アイスクリーム類製造業、
乳製品製造業、食肉製品製造業、
魚肉ねり製品製造業、清涼飲料水製造業、
乳酸菌飲料製造業、氷雪製造業、
食用油脂製造業、
マーガリン又はショートニング製造業、
みそ製造業、醤油製造業、ソース類製造業、
酒類製造業、豆腐製造業、納豆製造業、
めん類製造業、そうざい製造業、
かん詰又はびん詰食品製造業、
添加物製造業
つけ物製造業、
製菓材料等製造業、
粉末食品製造業、
そう菜半製品等製造業、
調味料等製造業、
魚介類加工業、
液卵製造業

処理業乳処理業、特別牛乳さく取処理業、集乳業、
食肉処理業、食品の冷凍又は冷蔵業、
食品の放射線照射業

販売業乳類販売業、食肉販売業、魚介類販売業、
魚介類せり売営業、氷雪販売業
食料品等販売業

引用:営業許可種類一覧|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

ただし、営業許可の対象や取得方法は自治体や保健所によって異なるため、地域の保健所・自治体に問い合わせましょう。

また、営業許可に合わせて食品衛生責任者の資格も必要になります。この食品衛生責任者とは、食品製造業や飲食業など、食品に関わる事業所で食品衛生の管理を行うための資格です。

飲食店経営をしておらず、0の状態から食品ECを始める方は、保健所が実施する講習会を受講して資格を取得しましょう。そのために、まずは管轄の保健所に問い合わせしてみるのがおすすめです。

参考:お問合わせ(事業者の方向け)|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局
   全国の保健所検索

営業許可が不要な場合

食品の種類によっては営業許可の取得が不要な場合があります。

例えば以下のような場合は、届出対象外の業種として取り扱われています。

  • 食品・食品添加物を輸入する場合
  • 冷凍、または冷蔵倉庫業に該当しない食品
  • 常温での長期保存が可能なパッケージが施された食品あるいは食品添加物の販売

上記のように、食品の衛生・管理を行ううえで食中毒などのリスクが低い業種は営業許可が不要です。

参考:野菜・果物のネット販売は許可が必要?販売方法やメリット・注意点を紹介!
   営業許可のいらない食品がある?食品販売に関する届出・規制について | おおみ行政書士事務所

3.競合調査を行う

必要な許可や資格を取得したら、すでに同ジャンルの商品を販売している他社を徹底的にリサーチします。

リサーチする場合は最低限以下の項目をチェックしましょう。

  • 商品の販売価格
  • 内容量
  • セット用品
  • 販売ターゲットや商品の切り口

これらを確認し、競合との差別化を図りましょう。

例えば、競合が自社商品の品質よりも低く、安さと量で押し出しているなら、高級感あふれる商品・価格で差別化を図ります。

このように競合にはできない価値を顧客に提供できる商品・価格設定・コンセプトが大切です。

4.商品を準備する

食品ECで販売する食品の営業許可や資格、競合のリサーチが終わったら、商品の仕入れや製造を行いましょう。

ECサイトの制作期間が1〜3ヶ月と考えると、保管スペースや賞味・消費期限を考えつつ商品を準備して行く必要があります。最低でも1週間前には商品を準備しておきましょう。

5.物流網を確立する

顧客に無事に商品を届けるための物流網を確立しましょう。

物流網を確立できていないと、商品配送に遅延が生じたり、顧客トラブルを引き起こす可能性もあります。

物流網の確立では「配送業者選び」に注意してください。商品を正確に届けることももちろん重要ですが、粗利を増やすためには配送料の安い業者や万が一の補償が手厚い業者を選ぶのが大切です。

配送会社大手3社の配送料と補償内容を表にまとめました。

概要サイズ・重さ料金冷蔵・冷凍対応補償
日本郵便60サイズ:25kg以内1,035円~・冷蔵:0~5度
・冷凍:なし
・商品追跡サービス
・30万円までの補償
ヤマト運輸60サイズ:2kg1,160円~・冷蔵:0~10度
・冷凍:-15度
・商品追跡サービス
・30万円までの補償
佐川急便60サイズ:2kg1,125円~・冷蔵:2~10度
・冷凍:-18度以下
・商品追跡サービス
・30万円までの補償

参考:参考:基本運賃表(東京)|日本郵便
   チルドゆうパック|日本郵便
   クール宅急便 | ヤマト運輸
   【佐川急便】飛脚クール便(冷蔵・冷凍品などの宅配・配送サービス)|宅配・配送サービス

配送会社によっては営業所に直接持ち込むことで割引が適用される場合もあります。

配送したい商品の温度や補償、営業所の距離なども考慮した上で粗利が大きくなる配送会社を選びましょう。

6.ECサイトを構築する

ここまでの準備が整ったら、最後に食品ECサイトを構築しましょう。

食品ECサイトとしては、前述したように自社で1から制作する自社EC型と楽天市場やAmazonなどのモールに商品を出品するECモール型があります。

ECサイトの制作期間は、自社で1から制作する自社ECサイトで3〜6ヶ月ほど、モール型ECに出店する場合は1〜2ヶ月ほどかかります。

自社ECは初期費用がかかるものの維持費が安く、粗利が大きくなりやすいです。ただし、SNSやWeb広告など自社で集客を行う必要があるため、マーケティングが苦手な場合は売上の回収が遅くなります。

一方でECモール型はECサイトの作成から出品までが早く、モールの集客力を借りて顧客を集めることができるので、商品が売れやすく売上の回収も早くなりやすいです。

参考:EC(eコマース)とは?ECの種類やメリット・市場規模まで解説
   飲食店の営業許可とは~取得方法と申請の流れ・必要な書類
   ECサイト制作の手順や費用を解説!失敗しないためのポイントとは?

注文状況を反映できるか試しに注文してみる

食品ECサイトが完成したら注文状況を正しく反映できるか、試しに注文してみましょう。

その際は以下のポイントを確認します。

  • 注文数の表示
  • 注文価格の表示
  • 注文受付メールの送付状況

ECショップでありがちなのが、「販売価格の桁数が間違っていた」「掲載した商品の画像が間違っていた」「受付メールが送付できていなかった」などが挙げられます。

実際に注文し、注文受付メールの配信ができているかまで必ず確認しておきましょう。

食品ECサイトを公開し受注を開始する

注文状況を正しく反映できるか確認ができたら、ネット上に公開しましょう。

ネット上に公開した後は、アクセス数の確認や商品の入れ替えなどを行いながらECサイトを改善していく必要があります。

ECサイト開設後の売上アップについては、以下の記事にて事例やコツをまとめています。

参考:5つの事例から学ぶ、ネットショップを成功させる9つの運営のコツ
   ネットショップの売上を飛躍的にアップさせるポイント16選


食品ECサイトにおける4つの課題

食品ECサイトを成功させるコツはありますが、成功よりもまずは「失敗しないこと」が何よりも大切です。

食品ECには必要な許可や資格、事前に知っておくべき課題が多く、EC運営初心者の方は失敗しやすいのが特徴です。

食品ECの運営で失敗しないためには「食品ECにおける課題」を理解しておく必要があります。

食品ECサイトの運営における課題は以下の通りです。

  • 実際に見て、味を確かめてから購入したい層が多い
  • 取得すべき営業許可や資格が多くすぐに販売を開始できない
  • 配送料や手数料といった販売にかかる費用負担が大きい
  • 近所のスーパーやコンビニと比べて利便性が劣る

実際に見て、味を確かめてから購入したい層が多い

食品は実物を見たり、試食してから買いたいという需要があるため、商品購入につながりにくい可能性があります。そのため、試食できないEC販売は不利と言われます。

EC販売は試食ができない分、商品の説明を詳しく書いたり、一度口にしてみたいと思えるような写真を投稿するなど、工夫しなければいけない工程が多いです。

取得すべき営業許可や届出資格が多く、すぐに販売を開始できない

食品ECには前述した通り、事業を開始するまでに販売する食品に合わせた営業許可や自治体への届出、資格が必要になるだけでなく、食品ECサイトを構築しなければならないため、すぐに販売を開始できません。

営業許可を取得する場合は、以下のような厳しい条件が決められています。

  • 資格を取得するための審査
  • 営業を行うための施設整備
  • HACCP(食中毒など発生させない衛生管理の手法)に基づいた衛生管理

そのため、知識の習得や施設の準備に時間がかかり、中々販売を始められないことがあります。

参考:改正食品衛生法の営業許可と届出(令和3年6月1日から施行)|「食品衛生の窓」東京都福祉保健
   HACCPに沿った衛生管理の制度化|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

配送料や手数料といった販売にかかる費用負担が大きい

食品は一つ当たりの利益が低いだけではなく、1,000円前後の配送料や販売価格から1~12%前後のオンライン決済の決済代行手数料がかかるため、事業者の費用負担が大きくなることがあります。

また、配送料が無料かどうかで購入判断するユーザーもいます。

顧客から送料をとれば粗利は大きくなりますが、送料がかかるとスーパーで購入したほうが安くなるため、食品ECの利用率は低くなります。

また、食品ECを運営するための維持費や在庫管理、倉庫等を借りる場合は、賃料もかかります。

このように、食品ECでは商品を販売するごとにコストがかかるため、事業者側の負担が大きくなります。

参考:基本運賃表(東京)|日本郵便
   チルドゆうパック|日本郵便
   クール宅急便 | ヤマト運輸
   【佐川急便】飛脚クール便(冷蔵・冷凍品などの宅配・配送サービス)|宅配・配送サービス 

近所のスーパーやコンビニと比べて利便性が劣る

ECサイトでは注文後に商品が届くまで数日かかるため、その場で商品を選んで購入できるスーパーやコンビニと比べて利便性は劣ります。

食品を購入する場合は近所のスーパーやコンビニの方が利用しやすいため、別の付加価値をつけて商品設計を行わなければなりません。

例えば、ただ果物を販売するだけでなく「ワケあり商品」として大量・低価格で商品を売り出すなど、「ここでしか買えない」と顧客に認識してもらうことで、売り上げアップにつながりやすくなるでしょう。


押さえておくべき食品の販売に関する法律

食品ECを始める前に押さえておきたい法律や条例は以下の通りです。

種類概要
食品表示法食品の安全性を示すための食品の表示ルール(ラベルなど)を定めている法律。製造者・加工者・輸入者・販売者は必ず守らなければならない。
景品表示法商品やサービスの品質や内容、価格を偽って不当に商品を販売しようとする事業者から消費者を守るための法律。製造者・加工者・販売者は必ず守らなければならない。
計量法食品の内容量を正しく記載することを定めた法律。製造者・加工者・販売者は必ず守らなければならない。
米トレーサビリティ法米や米を使った加工品で品質上の問題が発生した場合、流通ルートの特定や産地・生産者の告知を行うなどして、消費者への健康被害を防ぐための法律。製造者・加工者・輸入者・販売者は必ず守らなければならない。

参考:食品表示法の概要 「食品衛生の窓」東京都福祉保健局
   食品に関して景品表示法違反が問題となった実例
   計量法における商品量目制度|栃木県
   米トレーサビリティ法の概要|農林水産省

それぞれの法律について詳しく解説します。

食品表示法

食品表示法とは、食品の安全性の確保と消費者が安心して手に取れるように、食品の成分等や原産地、原材料の記載を厳格に定めている法律です。

虚偽の原材料や原産地、数値を表示した場合は、2年以下の懲役、または200万円以下の罰金が課せられます。

食品表示法では販売する食品の商品表示ラベルに以下の8つの記載が必要になります。

  • 名称
  • 原材料名
  • 内容量
  • 添加物
  • 消費期限または賞味期限
  • 保存方法
  • 製造者の名称及び住所
  • 栄養成分表示

ラベルへの記載は求められているものの、現行の食品表示法はECサイトが適用外となるため、ECサイト上での表示の必要はありません。

ただし、消費者庁の「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック」では、義務ではないものの「記載をすることが望ましい」という旨が記載されています。

今後の法改正によりECサイト上でも上記の8つの記載が必要になる可能性があるため、ECサイト上でも食品情報を記載しておきましょう。

栄養成分表示やアレルギー表示が義務化されるなどのルールの変更も行われているので、食品表示法について再度確認しておきましょう。

食品表示法については、東京都福祉保健局が作成した資料が参考になります。

参考:食品表示を見てみよう| 東京都福祉保健局

景品表示法

景品表示法は、商品やサービスの品質や内容、価格を偽って不当に商品を販売しようとする事業者から消費者を守るための法律です。

事業者がこれに違反すると処置命令(行為の差し止め)や課徴金納付命令が下され、不当にあげた利益の一部が没収されてしまいます。

景品表示法で注意したいポイントは以下の3つです。

種類内容
優良誤認表示商品が実際よりも優良であるかのよう誤認させる表示
有利誤認表示価格や商品の量、アフターフォローを通常よりも誇大に見積もり、誤認させる表示
その他誤認させるおそれがある表示の禁止おとり広告や誇大広告等を行い、実際には在庫にない好条件の商品をおとりにして他の商品購入を促す

例えば、健康食品の広告コピーに「栄養成分が他社商品と比べて2倍」と記載しているものの、実際には他社商品と同等の量しか入っていなかった場合は景品表示法に抵触する恐れがあります。

景品表示法については、消費者庁が発行している景品表示に関するパンフレットを参考にしてください。

参考:よくわかる景品表示法と公正競争規約(令和4年1月改訂)[PDF:9.9MB]

計量法

計量法は、食品の内容量を正しく記載することを定めた法律です。

商品の量を偽って販売した場合、購入者の利益妨害とみなされ、勧告や違反の公表、改善命令が行われます。

食品の量を低く見積もった場合や、実際の表記よりも多い場合でも正確な計量ではないため、違反対象になります。

例えば、商品を容器包装した後に時間経過で乾燥した場合、計量に差が生まれます。その差を考慮した上で正しい内容量を記載しておくことが必要です。

ただし、食品ごとに内容量の誤差(量目公差)が認められている場合もあります。

計量法についてより詳しく知りたい方は、東京都が作成した計量法に関する動画を参考にしてください。

参考:大切です!食品表示 理解(わか)って作ろう新表示編6 計量法

米トレーサビリティ法

米トレーサビリティ法は、米や米を使った加工品で品質上の問題が発生した場合、流通ルートの特定や産地・生産者の告知を行い、消費者への健康被害を防ぐための法律です。

米トレーサビリティ法に違反した場合は、50万円以下の罰金が課せられます。

また、米トレーサビリティ法では、以下の2点の対応が必要となります。

1.お米、米加工品に問題が発生した際に流通ルートを速やかに特定するため、生産から販売・提供までの各段階を通じ、取引等の記録を作成・保存します。
2.お米の産地情報を取引先や消費者に伝達します。

引用:米トレーサビリティ法の概要|農林水産省

米、または米加工品の対象となる品目は以下の通りです。

  • もみ
  • 玄米
  • 精米
  • 砕米

これらを用いて作られたお酒・餅・弁当などが対象になります。

米トレーサビリティ法について詳しく知りたい方は、農林水産省の解説ページをご覧ください。

参考:米トレーサビリティ法の概要|農林水産省


食品をECサイトで売るコツ

食品をECサイトで売る際は、以下のコツを意識してください。

  • 地域の名産品や特産品など「ここでしか買えないもの」を意識する
  • 食品ECサイトは売る商品・戦略に合わせて構築する
  • オフラインで実績を作る

地域の名産品や特産品など「ここでしか買えないもの」を意識する

食品ECを始める際には、地域の名産品や特産品など、特定地域でしか販売されていないような商品を販売するのがおすすめです。

どこでも買える食品だとスーパーやコンビニの方が手軽に手に入るため、わざわざネットで食品を購入する人は限定的になるからです。

特定地域でしか買えない食品を販売することで特別感を演出し、顧客の興味を引くことができます。

また、名産品や特産品が欲しくてもなかなか現地で購入できない方もいます。このように「ここでしか買えない商品」を販売し、認知を増やすことで継続的な売り上げを目指すことができます。

食品ECサイトは売る商品・戦略に合わせて構築する

食品ECサイトは売る商品や戦略に合わせた構築が大切です。

自社ECを構築するか、ECモールに出店するかによって認知や売り上げアップのスピードが変わります。

例えば、食品ECといっても一から食品を製造販売する事業者もあれば、お店で出している商品をインターネットで販売したい飲食店など、事業者によって売る商品や戦略が異なります。

商品・戦略ごとにおすすめするEC構築方法は以下の通りです。

  • すぐに売り上げを確保したいならモール型ECサイトに出店する
  • 長期的な目線で商品販売を考えているなら自社ECサイトを制作する

すぐに売り上げを確保したいならモール型ECサイトに出店する

早期売上化を目指す場合は、ECモールでの運営がおすすめです。

ECモールでは、楽天市場やAmazonなどすでに集客力がある大型のECモールに出店できるため、早期に売り上げを確保することができます。

ただし、ECモールに出店するための月額費用や販売手数料、クレジットカードや電子マネー、銀行振込を利用する際の決済代行費用がかかります。

ECモールに出店する場合は競合も多く、価格や商品で差別化できない場合は競合商品に埋もれてしまう可能性があるため、注意が必要です。

長期的な目線で商品販売を考えているなら自社ECサイトを制作する

長期的な目線で商品販売を考えているなら自社ECサイトがおすすめです。

自社ECサイトはサイトの構築やドメイン・サーバー等を準備する必要があります。初期費用はかかりますが、ECモールのような出店料や販売手数料がかからないため、長期的な目線で売り上げの最大化を目指す場合は自社ECサイトがおすすめです。

ただし、自社ECサイトの場合は、1から集客の仕組みを構築しなければなりません。

オウンドメディアやSNSを活用したコンテンツマーケティングやWeb広告を活用したプロモーションを行わなければ売上を確保することはできません。

認知を増やして食品を顧客に購入してもらうまでは、予算を消化しながら広告やコンテンツの効果検証・改善を行わなければなりません。

ECモールへの出店に比べてコストがかかるだけでなく、認知獲得や黒字化までの時間は長くなります。

オフラインで実績を作る

オフラインの百貨店やオフラインイベント、ポップアップストアへの出店などで活動の場を増やし、オフラインでの実績を作ることも大切です。

食品ECでは、「有名な店舗」か「有名人」などの知名度がない限り、認知獲得や売り上げ拡大に膨大なお金と時間がかかります。

食品ECの運営と並行して百貨店やオフラインイベントの出店で実績を作り、消費者の口コミをECサイトに掲載したり、実績を公開することで信頼度アップに繋げることが可能です。

また、オフラインでの露出を増やすことでWebメディアやTVへの出演につながり、爆発的な認知の拡大につながる可能性もあります。

百貨店や催事、ポップアップストアの出店は、管理先に問い合わせをすることで出店可能です。

そのほかにも、出店者と物産展事業者のマッチングサイトを活用することで、販売する商品にあった全国の百貨店やデパート、催事に出店することも可能です。

参考:広告費なし低リスクを実現!食品・飲食店ECで売り上げを上げる方法|ECのミカタ


食品をECで販売する際の注意点

ECで食品を販売する際の注意点は以下の通りです。

  • 食品の衛生管理がずさんだと食中毒を引き起こす可能性がある
  • 誇大表示に気をつける
  • 自治体ごとに品質表示に関する独自の条例を設けている場合がある

食品の衛生管理がずさんだと食中毒を引き起こす可能性がある

食品ECで気を付けたいのは、食品の衛生管理です。

食品をECで販売する場合、注文状況によっては保管期間が長くなります。食品の製造時期や保管方法を見誤ると、食中毒の元となる細菌やウイルスが繁殖する可能性があるので注意が必要です。

食中毒を防ぐためには最低限以下3つの予防策を徹底しましょう。

  • 調理の際は手を清潔に保つ
  • 食品を取り扱う器具等は使用用途で使い分け洗浄・煮沸・アルコール消毒等行う
  • 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に保つ

もし衛生管理を徹底できる設備が整っていない場合は、常温で保存期間の長い食品を選びましょう。

そのほかの衛生管理については、東京都福祉保健局の「HACCPに沿った衛生管理の制度化」を参考にしてください。

参考:HACCPに沿った衛生管理の制度化|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局

誇大表示に気をつける

食品の誇大表示は食品表示法の「健康増進法」や「景品表示法」で禁止されています。

特に食品の場合は口に入れるものですから、十分に気を付けなければなりません。

例えば、「食べるだけで10kg痩せる」「食べるだけでガンを防げる」などは誇大広告に該当します。

誇大広告を行った場合は、6か月以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられるので注意してください。

参考:虚偽誇大表示禁止リーフレット

自治体ごとに品質表示に関する独自の条例を設けている

基本的に各自治体ごとの条例が設けられています。食品ECでは全国が販促エリアになるため、食品表示にかかわる各自治体条例を確認しておく必要があります。

例えば、東京都ではカット野菜やフルーツを販売する場合は、加工年月日が必要になります。

参考:カット野菜及びカットフルーツ品質表示実施要領

自治体によって「食品表示が必要な項目」が定められているので、食品ECを始める前に確認しておかなければなりません。

各自治体条例を確認する場合は、自治体のホームページを確認するか、所轄の保健所に問い合わせましょう。

参考:保健所管轄区域案内


まとめ

本記事では、食品ECの始め方から食品ECを始めるにあたっての課題や、クリアしなければいけない法律や条例について解説しました。

食品ECサイトは気軽にネットで販売できるわけではなく、食品を加工する場合は営業許可や衛生管理責任者の資格が必要になります。

また、食品の安全性の伝達や誇大表示の禁止についても理解しておく必要があります。

食品をECサイトで売る際は以下のコツを意識しましょう。

  • 地域の名産品や特産品など「ここでしか買えないもの」を意識する
  • 食品ECサイトは売る商品・戦略に合わせて構築する
  • オフラインで実績を作る

食品ECで食品を販売する際の注意点は以下の通りです。

  • 食品の衛生管理がずさんだと食中毒を引き起こす可能性がある
  • 誇大表示に気をつける
  • 自治体ごとに品質表示に関する独自の条例を設けている場合がある

特に食品ECは口に入れるものを販売するので、食中毒を発生させないための衛生管理が重要になります。