インバウンドとは?外国からの訪問者を引き寄せるインバウンド対策ガイド

インバウンド_アイキャッチ

インバウンドとは、海外から旅行者が訪れることを指す言葉です。

近年の国際的なグローバル化やデジタル技術の進歩などの影響でインバウンドは増加しており、注目が高まっています。

インバウンドは、自治体や企業などにとっても大きな利益をもたらす機会であり、需要が増加している今こそ対策することが急務です。

しかし具体的には、何をすればよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、インバウンドの基礎や、注目される背景、メリットやデメリット、主要な対策や進め方、注意点などの情報を一挙に紹介します。

インバウンド対策の実施を検討の方は、ぜひご一読ください。


目次

インバウンドとは

インバウンド(Inbound)とは、外国からの旅行者が国内へ訪問してくることを指す言葉です。

彼らは、文化、食、自然、または娯楽などの魅力を体験することを目的としており、訪れる側だけでなく、受け入れる側にとっても多大な利益をもたらします。

具体的には、観光によって生じる収益が地域経済に直接的な貢献を行い、さらには地域の伝統や文化の保存、さらには新たなインフラの整備や雇用機会の創出につながることがあります。

国際的な理解の促進という文化的な側面も重要で、インバウンド観光は地域間の架け橋として機能することもあります。

参考:事例で学ぶ! インバウンドマーケティングを自社で始めるために必要な条件│LISKUL
   年々上昇する訪日中国人のデータから見た中国インバウンドの現状と未来│LISKUL
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インバウンドが注目される背景にある要因4つ

インバウンドは近年急速に増加しており、注目が高まっています。

ここではその背景にある4つの要因をご紹介します。

1.グローバル化の進展による異文化交流の増加

近年、航空交通の発達と経済のグローバル化が進む中で、異文化間の接触が以前にも増して容易になっています。

国際会議やグローバルビジネスの拡大、留学や研修プログラムの普及などの影響により、文化的な多様性が促進され、相互理解が深まる一方で、観光地としての魅力が国際的に認知されやすくなっています。

2.経済が発展している国でのレジャー支出が増加している

特にアジアや南米など、経済的に急速に発展している地域では、中間所得層の増加が著しく、これに伴いレジャーへの支出が増加しています。

これらの地域の人々が国外への旅行に出ることが多くなると、国際旅行市場の需要が拡大し、インバウンド観光が注目される要因となっています。

3.デジタル技術の進化で魅力が伝わる機会が増えた

インターネットの普及とともに、旅行に関する情報が指先一つで手に入るようになりました。

SNSや旅行レビューサイトがリアルタイムで情報を提供し、観光地の魅力を広く伝える役割を担うようになっています。

また、オンラインでの旅行予約システムの進化は、国境を越えた旅行のハードルを大幅に下げ、より多くの人々が海外旅行を楽しむきっかけを提供しています。

4.政府の観光促進政策の影響もある

多くの国々が、観光業を国家経済の重要な柱と位置づけ、積極的な観光促進策を展開しています。

ビザ発給条件の緩和、観光キャンペーンの実施、国際的な観光展示会への参加などがそれにあたります。

これらの政策は、訪問しやすい環境を整えることで、より多くの外国人観光客を国内に引き寄せ、経済活動を活性化させる効果を持っています。


インバウンドとアウトバウンドの違い

次に、インバウンドと似た用語のアウトバウンドとの違いについて説明します。

インバウンドは外国からの訪問者がある国に入ることを指すのに対し、アウトバウンドはその国の居住者が外国へ旅行することを指します。

項目インバウンドアウトバウンド
市場の方向性外国人観光客を国内に引き寄せる。国際的マーケティングと多言語サービスが必要。国内居住者が外国を訪れる。旅行者は外国の文化や環境に適応が必要。
経済的影響外国からの訪問者による消費で直接的に国内経済を刺激。地域の雇用創出に寄与。国内資金が外国へ流出。国際間の経済交流を促進し、外国との関係構築に役立つ。
政策と戦略ビザ発給緩和、国際空港の整備、多言語観光案内所の設置など受け入れ体制の充実など。海外安全情報の提供強化、旅行保険の普及など、国民が旅行しやすい環境の整備など。

インバウンドは海外からの訪問、アウトバウンドは国内から海外への旅行を指す

インバウンド観光は、外国からの訪問者を対象としているため、国際的なマーケティング戦略や多言語対応のサービスが必要です。

これにより、国内の観光地や施設は外国人観光客を引きつけるために、文化的な違いや言語の壁を乗り越えるための努力が求められます。

アウトバウンド観光は、国内居住者が外国を訪れる活動であり、旅行者は外国の文化や環境に適応する必要があります。

これに伴い、国内の旅行会社や政府は、安全な旅行情報の提供や旅行者のサポートに注力します。

インバウンドは国内経済を潤し、アウトバウンドは資金が流出するものの国際関係を強める

インバウンド観光は外国からの訪問者による消費を通じて、直接的に国内の経済に貢献します。観光収入はホテル、レストラン、交通機関、観光地の経済活動を刺激し、地域の雇用創出にも寄与します。

アウトバウンド観光は、国内の資金が外国へ流出する形となるため、国内経済への直接的な貢献は少ないです。しかし、国際間の経済交流を促進し、長期的には外国との良好な関係構築に役立つことがあります。

受け入れ体制の強化や、安全性の強化など、政策の戦略も異なる

インバウンド観光を促進するための政策は、ビザの発給緩和、国際空港の整備、多言語の観光案内所の設置など、国際観光客の受け入れ体制の充実に焦点を当てています。

アウトバウンド観光の促進には、国民の旅行しやすい環境を整えるために、海外安全情報の提供強化や旅行保険の普及などが含まれます。


インバウンドが生み出す3つのメリット

インバウンドが持つメリットは経済、文化、そして国際認知の3つの領域にまたがります。

そしてそれぞれが地域の持続可能な成長や、国際的な協力に寄与しています。

1.経済的な利益が創出できる

外国人観光客の増加は、直接的にホテル、レストラン、小売業、そして交通業界などに大きな収入をもたらします。

これらの業界での収益増加は、地域経済に大きく寄与し、新たな雇用機会を創出すると共に、地方自治体の税収を増やし、公共サービスやインフラ整備への投資拡大を可能にします。

また、観光業への直接的な投資が他の産業への波及効果を生み、地域全体の経済活動を活性化させることもあります。

2.文化的な交流の促進が期待できる

観光を通じて外国人と地元住民が交流することで、相互の理解と文化的な尊重が育まれます。

例えば、地元の言語や伝統、芸術、食文化などを外国人が学んだり、評価を行ったりします。

これにより、地元文化の継承者や伝統工芸の職人がこれらの新たな刺激を受けたり、彼らの活動が国際的な舞台で認知される機会が増えたりします。

3.国際的な認知度が向上する

インバウンドが盛んになることでその地域や国の国際的な認知度が高まり、それが国際会議や大規模なスポーツイベントなどの開催地としての選定につながることがあります。

このようなイベントの誘致は、さらに多くの外国人を引き寄せ、国際的なビジネスのチャンスを創出することが期待されます。

また、国際的なメディアの注目を集めることで、その地域の観光や文化がさらに広く紹介されることにもつながります。


インバウンドのデメリット3つ

インバウンド観光は多くの利点を持つ一方で、環境、経済、文化の各面で一定の課題も抱えています。インバウンドは増加しているので、これらデメリットへの対策は急務です。

1.環境への負荷が増加している

観光客の急増は、特に自然保護区や人気の観光地で環境への負担を大きくします。自然環境の破壊、水源の枯渇、ごみ・排水の問題などの発生にもつながります。

このような影響は生態系のバランスを崩し、絶滅危惧種や生物多様性に悪影響を及ぼすことが懸念されます。

2.観光地の生活コストが増加する

観光地となる地域では、不動産価格の高騰や日常品の価格上昇がみられることがあります。

この結果、地元の住民が生活する上でのコストが増大し、特に低収入層にとって住みにくい環境となることがあります。

これはジェントリフィケーションと呼ばれ、元の住民が経済的理由でその地域から追い出されることにもつながります。

3.文化的な摩擦が生まれる可能性がある

外国人観光客と地元住民の間で文化的な理解が不足している場合、文化的な摩擦や衝突が生じることがあります。

観光客のマナーや行動が地元の文化や慣習に合わない場合、地元住民の不快感を引き起こすことがあり、場合によっては社会的な緊張を生むこともあります。


インバウンド対策9つ

次に、インバウンドのデメリットを抑えてメリットを享受していくための対策について見ていきましょう。

地方自治体向け、企業向け、観光協会や非営利団体向けに分けて3つずつご紹介します

地方自治体向けの対策

1.インフラの整備とアクセシビリティの向上

企業や自治体は、観光地へのアクセスを容易にするために、交通インフラの整備に注力する必要があります。

これには、空港や駅のアップグレード、公共交通機関のルート拡張、観光バスサービスの提供などが含まれます。

また、障害を持つ人々を含むすべての訪問者が利用しやすいように、アクセシビリティの高い設備を整えることも重要です。

2.安全対策の充実

観光地としての安全性を高めることは、訪問者を引き寄せる重要な要素です。

警察のパトロールを強化したり、緊急時の対応プランを整備することで、訪問者に安心して滞在してもらうことが可能です。

また、健康リスクに対する対策、例えば清潔な公衆トイレの提供や衛生管理の徹底も重要です。

3.観光情報センターの設置と機能強化

観光情報センターを戦略的な場所に設置し、多言語に対応可能なスタッフを配置することで、外国人観光客が必要な情報を容易に入手できるようにします。

これらのセンターは、地図、ガイドブック、イベント情報、交通機関の詳細など、観光に関連するあらゆる情報を提供することが重要です。

企業向けの対策

1.デジタルマーケティングの活用

現代の観光マーケティングにおいてデジタルツールの活用が不可欠です。

企業や自治体は、ソーシャルメディア、オンライン広告、SEO(検索エンジン最適化)、インフルエンサーマーケティングを駆使して、潜在的な訪問者に向けた情報発信を強化しましょう。

これにより、ターゲットとする市場に対して直接的にアプローチし、訪問者数の増加を目指します。

参考:デジタルマーケティングとは?今さら聞けない基礎知識と代表的な手法を解説│LISKUL
   インフルエンサーマーケティングはなぜ流行している?その実践方法・活用事例も紹介

2.パートナーシップと協業

地域内外の他の観光関連企業や団体とのパートナーシップを強化します。

例えば、航空会社、ホテル、旅行代理店と連携して特別な旅行パッケージやプロモーションを提供することが、訪問者の増加につながります。

また、地域の大学や研究機関と連携して、観光客向けの教育プログラムやワークショップを開発することも有益です。

3.質の高い宿泊施設の提供

観光客にとって宿泊施設は旅行体験の一部です。

高品質かつ多様な宿泊オプションを提供することで、様々なニーズに応えることができます。

例えば、ラグジュアリーホテルからバックパッカーズホステル、伝統的な宿泊施設まで幅広くカバーすることで、さまざまな予算や好みに合った選択肢を観光客に提供できます。

観光協会や非営利団体向けの対策

1.イベントとフェスティバルの開催

地域特有のイベントやフェスティバルを企画し、実施することで、文化的な魅力を前面に出すことができます。

これらのイベントは、特に伝統芸能や季節の祭りなど、その地域の文化を反映したものであれば、外国人観光客の関心を引き、メディアの注目を集めることが可能です。

2.地域連携とステークホルダーの協力

地域内の異なるステークホルダー間の連携は、インバウンド戦略の成功に不可欠です。

企業や自治体は、地元のビジネス、大学、非営利組織と協力し、統一された観光プロモーションを実施することが効果的です。

この協力により、地域全体の魅力を高め、観光客に多様で豊かな体験を提供できます。

3.環境持続可能性の推進

環境に配慮した観光地の開発と維持を促進することで、エコツーリズム市場をターゲットにすることができます。

再生可能エネルギーの利用、廃棄物削減の取り組み、自然保護区の保護といった環境保全活動を積極的に行うことで、環境に敏感な観光客を引き寄せることができます。


インバウンド対策の進め方6ステップ

次に、どのような流れでインバウンド対策を実行すべきかを6つのステップに分けて説明します。

1.市場調査とニーズ分析を行う

成功的なインバウンド対策を立てるための第一歩は、ターゲットとなる観光客の市場調査を行うことです。

どの国や地域からの観光客をターゲットにするのか、彼らの興味やニーズは何かを理解することが重要です。

参考:5分でわかる市場調査とは?4つの種類と代表的な7つの方法を徹底解説│LISKUL

2.目標と戦略を策定する

市場調査の結果を基に、具体的な目標を設定します。これには、訪問者数の増加、滞在期間の延長、消費額の増加などが含まれます。

その目標に合わせた戦略を策定し、どのような対策を講じるか計画を立てます。

3.リソースの確保と予算配分を行う

計画された戦略を実行するためには、必要なリソースと予算の確保が不可欠です。

これには、人的リソースだけでなく、資金、技術、情報など、様々なリソースが含まれます。

4.実施計画の具体化とタイムライン設定を行う

具体的な実施計画を立て、各活動に対してタイムラインを設定します。

この段階で、プロジェクトの各フェーズにおける期限と責任者を明確にし、効率的な進行を確保することが重要です。

5.実行してモニタリングを行う

計画に基づき対策を実行します。

同時に、実行中のプロジェクトの進捗を継続的にモニタリングし、必要に応じて調整を行います。

この過程で収集されるデータやフィードバックは、プロジェクトの改善に役立てられます。

6.評価とフィードバック収集を行う

プロジェクト終了後、その成果を評価します。どの対策が効果的だったのか、どのような課題があったのかを分析し、次のプロジェクトに生かすためのフィードバックを収集します。


インバウンド対策を行う際の注意点4つ

インバウンド対策を行うことで需要を利益に変えていくことを期待できる反面、実行の際には、以下4つの点に注意する必要があります。

1.現地コミュニティと協調する

地元の住民やビジネスとの良好な関係を築くことは、インバウンド対策の成功に不可欠です。地域社会との協力を通じて、観光客にとって魅力的な環境を作り出すことが重要です。

2.観光客が異なる文化を持つことを理解する

観光客が異なる文化背景を持つ場合、その文化への理解と尊重が必要です。文化的感受性を持って接することで、訪問者に良い印象を与え、ポジティブな体験を提供できます。

3.危機管理や備えを強化する

自然災害や事故、政治的不安定など緊急事態が発生した場合の対応計画を事前に準備しておくことも重要です。

緊急時の情報伝達手段や避難計画を策定し、訪問者と地元住民の安全を確保するための措置を講じる必要があります。

4.デジタルセキュリティを強化する

オンラインでの情報提供やサービス提供を増やす際には、データ保護とプライバシーの確保は重要な課題です。

個人情報の取扱いには特に注意を払い、適切なセキュリティ対策を施すことが求められます。


まとめ

本記事では、インバウンド観光の基礎から、なぜ現在注目されているのか、その背景にある具体的な要因、インバウンドがもたらすメリットとデメリット、効果的な対策の進め方、注意すべき点まで幅広く解説しました。

インバウンド観光は、単に訪問者数を増やすことだけではなく、地域経済の活性化、文化交流の促進、国際的な認知度の向上など、多方面にわたる利益を地域にもたらす可能性を持っています。

しかし、インバウンド観光を持続可能にするためには、環境への配慮、地域コミュニティとの協調、異文化への理解と尊重、危機管理計画の整備など、多角的なアプローチが求められます。

このような体系的な取り組みを進めることで、インバウンド観光は地域にとっての貴重な資源となり得ます。

インバウンド対策の実施を検討している方々にとって、この記事で紹介した情報が一助となれば幸いです。