「マーケティング業務を外注しているが、改善提案や実施のスピードに不満がある」
「マーケティング業務をインハウス化して、外注コストを抑制したい」
「外注するとどうしても社内にノウハウが溜めにくい」
マーケティング業務を外注する企業の多くが、このような課題を抱えています。
こうした課題を解決するためにインハウス化を検討し実践しているが、なかなか上手くいかない企業が少なくありません。
本記事では、そもそもマーケティング業務をインハウス化すべきか?というよくある疑問に対し、まずマーケティングのインハウス化のメリット・デメリットを整理してお伝えします。
そして3つのインハウスのパターンをご紹介し、自社に合ったインハウス体制の選び方、またインハウス化の進め方について解説します。
目次
インハウスマーケティングのメリット・デメリット
マーケティング業務をインハウス化すべきか?あるいは代理店やコンサルティング会社などに外注すべきか?というのは、過去多くの人達が議論を続けてきてなお答えの出ない、非常に難しい問題です。
この問題に対処するためには、まずインハウス化するメリット・デメリットをきちんと把握しておかなければなりません。
以下、「コスト」「情報・ノウハウ」「成果」の3つの観点から整理します。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
コスト | ・外注コストを削減できる ・コミュニケーションコストを削減できる | ・社内人件費がかかる ・教育、体制構築のコストがかかる ・前金制になるのでキャッシュフローに悪影響がある |
情報 ノウハウ | ・社内にノウハウを蓄積できる ・業界特有の知見を活かしやすい | ・プロの専門知識を活用できない ・最新の情報のキャッチアップが難しくなる |
成果 | ・全体最適化がしやすい ・スピード感が増す | ・軌道に乗るまでは成果が悪化する可能性がある ・十分にリソースを確保できないと作業にばかり時間が取られてしまう ・代理店経由でしか実施できないメニューやシステムを活用できなくなる |
メリット(コスト)
多くの企業がインハウス化する目的の一つに挙げるのがコスト面での改善です。
インハウス化することで、コスト面では以下のメリットが得られます。
- 外注コストを削減できる
- コミュニケーションコストを削減できる
外注コストを削減できる
当然ながら、インハウス化することで外注コストを削減できます。
特にWeb広告の世界では、広告費に料率をかけた分が手数料としてかかるのが通例です。広告費の20%というのが多くの広告代理店が採用している料率です。
成果の良し悪しに限らず外注コストが掛かってしまうので、特に成果が伴わない場合は外注コストの削減は大きな意味を持ちます。
また外注コストは、社内にコスト削減の動きがあったときに真っ先に議論の対象になるので、外注コストの削減はそうしたことをなくして安定的な運用にもつながっていきます。
コミュニケーションコストを削減できる
外注先とのコミュニケーションコストを削減できるのも大きなメリットです。
広告運用・SEO・サイト制作・コンサルティングなど、マーケティングで外注できる業務は多岐にわたり、それぞれの専門の会社に外注することはよくあります。
また広告運用と言っても、戦略設計やプランニングを得意としている会社もあれば、入稿や入札といった作業系の業務を得意としている会社もあり、それぞれ使い分けるケースもあります。
このように非常に多くのプレイヤーが関与することになるのがマーケティング業務であり、その分コミュニケーションコストも比例して掛かってしまいます。
しかしインハウス化すれば、社内なのでコミュニケーションがしやすくなりますし、プレイヤー数も減るのでコミュニケーション量自体も減らすことができます。
外注を活用する場合、外注先との打ち合わせやメール、チャット、電話などの連絡で一日の大半が過ぎてしまうことも少なくありません。コミュニケーションコストの削減は、生産性の向上にダイレクトに影響を与える非常に重要な要素です。
デメリット(コスト)
インハウス化により外注コストやコミュニケーションコストを削減できる一方で、以下のデメリットも存在します。
- 社内人件費がかかる
- 教育・体制構築のコストがかかる
- 前金制になるのでキャッシュフローに悪影響がある
社内人件費がかかる
インハウス化すれば社内の人件費は当然かかります。これはインハウス化するにあたって避けられないことであり、一概にデメリットとは言い切れません。
デメリットとなるのは、インハウス化した方が外注したときよりもコストが掛かってしまうケースです。
外注先に提供してもらえていたのと同等の品質・量のマーケティング業務を、社内で賄えなければインハウス化する意味はありません。
どの業務をインハウス化するのか、その際にどれだけ費用がかかるのかを正確に算出しておかないと、上記のようなことが起こりえます。
教育・体制構築のコストがかかる
マーケティングをインハウス化するにあたっては、社内の人材の教育コストや体制を構築するためのコスト(採用など)がかかります。
費用はもちろんのこと、人材育成や採用には時間がかかります。
またそもそも社内にマーケティング人材を育成できる人材がいないことの方が多く、いたとしてもそうした優秀な人材は最前線で実務にあたっているので、人材育成に時間を割くことは難しいでしょう。
そのため外部の教育サービスを活用したり、コンサルタントとして外部から入ってもらう必要があり、その分のコストは掛かります。
また優秀なマーケターの採用は、よほどブランドのある企業でないと難しいのが実状で、採用は進めつつも同時に人材育成も進めなければなりません。
前金制になるのでキャッシュフローに悪影響がある
外注をやめてインハウス化する隠れたデメリットとして、後払い制から前金制に変わるので、キャッシュフローに悪影響があります。
広告代理店を活用する場合は支払いが後払いで、支払いサイトが30日や60日である形が多いでしょう。
しかしインハウス化して媒体との直接取引となると、クレジットカードでの入金や前金制に変わるので、その分キャッシュフローに悪影響が出ます。
メリット(情報・ノウハウ)
メリット | デメリット | |
---|---|---|
情報 ノウハウ | ・社内にノウハウを蓄積できる ・業界特有の知見を活かしやすい | ・プロの専門知識を活用できない ・最新の情報のキャッチアップが難しくなる |
マーケティングで成果を挙げるためには、最新で質の高い「情報・ノウハウ」が欠かせません。
まずインハウス化するメリットとしては、以下の2つが挙げられます。
- 社内にノウハウを蓄積できる
- 業界特有の知見を活かしやすい
社内にノウハウを蓄積できる
インハウス化することで社内にノウハウを蓄積できることは大きなメリットでしょう。
外注を活用していると、外注先に以下の不満を持つケースは少なくありません。
- 期待した成果が得られていないが、ノウハウがないので的確に指摘ができない
- もっとやれることがあるのではないか?
Web広告やSEOなど、各分野において専門知識やノウハウが必要になりますが、社内で実施することでノウハウを溜めていくことができます。
それにより、全社戦略に基づいたマーケティング・プロモーションができるようになり、外注を活用するにしても的確なコミュニケーションができるようになります。
業界特有の知見を活かしやすい
業界特有の知見やノウハウを活かしやすいこともメリットです。
外注を活用する際に、外注先に自身が持っている業界特有の知見を伝えきるのは非常に難しいことです。
たとえばリスティング広告ひとつとっても、不動産業界やECサイトに最適なアカウント構成や運用方法というものが存在します。
事業会社だからこそ知り得るユーザーの特性やサービスの情報を、漏れなくスムーズにマーケティング施策に反映するには、やはりインハウスのほうが適しています。
デメリット(情報・ノウハウ)
情報・ノウハウ面でのデメリットとしては、以下が挙げられます。
- プロの専門知識を活用できない
- 最新の情報のキャッチアップが難しくなる
プロの専門知識を活用できない
マーケティングのプロが持つ専門知識を活用できないことはやはりデメリットです。
様々な事業会社と取引をし、媒体ともつながっている外部の広告代理店・コンサルティング会社の方が、より広範で最新の知識を持っているケースが多いです。
事業会社にはどうしても自社やその周辺の情報しか集まらないため、情報が偏るリスクがあります。
またマーケティングの知見を身につけるには時間的・金銭的な学習コストが必要になります。
どうやって学習をするのか、またそのコストがどれだけ掛かって、会社として支援できるのかは事前に検討しなくてはなりません。
最新の情報のキャッチアップが難しくなる
マーケティングは日々のアップデートが激しい分野ですが、そうした最新の情報のキャッチアップが難しくなります。
一定の広告費があれば媒体の担当がついてくれたりしますが、そうでないケースのほうが多いでしょう。
最新の情報に触れる為には、たとえば以下の方法を実践する必要があります。
- 無料で公開されている情報を収集するスキームを構築する
- 各種コミュニティに参加する
- ウェビナーや勉強会に参加する
- 同業他社やマーケターと交流する
- 支援会社から情報をもらう
メリット(成果)
メリット | デメリット | |
---|---|---|
成果 | ・全体最適化がしやすい ・スピード感が増す | ・軌道に乗るまでは成果が悪化する可能性がある ・十分にリソースを確保できないと作業にばかり時間が取られてしまう ・代理店経由でしか実施できないメニューやシステムを活用できなくなる |
体制を変更するからには、成果面でもそれまで以上に改善する必要があります。
成果面でのメリットとしては、以下が挙げられます。
- 全体最適化がしやすい
- スピード感が増す
全体最適化がしやすい
個別最適化になりやすいアウトソーシングと違い、インハウスでは全体最適化がしやすいメリットがあります。
まず事業戦略があり、そこからブレイクダウンしてマーケティング戦略が設定され、さらに具体的なマーケティング施策への落とし込みとなります。
インハウスであれば会社の戦略の理解を十分にできているので、上記を実施しやすくなります。
しかし、分野ごとに外注先を使い分けているときなどは特に、その分野ごとのトレンドやテクニックにばかり目が行き、個別最適化しやすい傾向にあります。
たとえばWeb広告のバナー一つとっても、最新のトレンドやテクニックに合わせて作成するのではなく、事業戦略・マーケティング戦略に沿って作成すべきです。
インハウス化でマーケティング施策の全体最適化がしやすいことは大きなメリットです。
スピード感が増す
インハウス化により、スピード感を増してマーケティング施策を実施できます。
外注している場合、施策を実施しようと考えてから、依頼をして実行されるまでにはどうしても時間が掛かってしまいます。
逆にスピード感を増して施策を実施させようと外注先に無理な依頼をしていると、ミスが起こって重大な問題につながるリスクがあります。
また無理な運用体制は維持することができないので、業務委託の解除を申し出されることもありえます。
その点インハウスであれば自分ですぐに対応することができるので、マーケティングのスピード感は確実に増します。
デメリット(成果)
インハウス化することで、成果的に悪化するリスクは承知の上で実施しなければなりません。
- 軌道に乗るまでは成果が悪化する可能性がある
- 十分にリソースを確保できないと作業にばかり時間が取られてしまう
- 代理店経由でしか実施できないメニューやシステムを活用できなくなる
軌道に乗るまでは成果が悪化する可能性がある
インハウス化が完全に実現するには時間が掛かるので、軌道に乗るまでは成果が悪化する可能性があります。
特に急激な体制変更をしてしまうと、成果が悪化する危険性が高くなります。
成果を維持、あるいは向上させつつ体制を切り替えるためには、段階的に時間をかけてすすめる必要があります。
たとえば、まずは戦略立案やアカウントプランの設計といった上流工程からインハウス化し、広告の運用などの作業系の業務は当分外注のまま進める、といった方法が考えられます。
十分にリソースを確保できないと作業にばかり時間が取られてしまう
インハウス化に必要なリソースを十分に確保できていないと、作業系の業務にばかり時間が取られてしまい、戦略策定などのコア業務に時間が割けないという事態が起こり得ます。
インハウス化するにあたって、これまで活用できていた外部リソースを活用できなくなるので、その分のリソースを内部に確保する必要があります。
しかしその想定が甘く、社内のメンバーですべてのマーケティング業務を実施しなくてはならなくなり、結果として広告運用やレポート作成などの作業系の業務にばかり時間が掛かってしまう、ということがよくあります。
本来社内の人材は、戦略策定や組織づくりなどのコア業務に集中すべきですが、すべてをインハウス化しようとするとこうしたことが起こり得ます。
代理店経由でしか実施できないメニューやシステムを活用できなくなる
代理店が独自に媒体社と取り組みを行っているようなメニューやシステムがある場合は、それらは活用できなくなります。
また媒体社と直接取引となると、各媒体社と個別にやり取りをしなくてはならないので、その分コミュニケーションコストがかかります。
媒体の仕入れにも工数がかかるので、結果的に大手メディアとの取引ばかりになり、中小メディや専門メディアとの取引が減ってしまうことも起こり得ます。
インハウスマーケティングの3つのパターン
ここまでインハウス化のメリット・デメリットをご紹介しましたが、それぞれを踏まえた上でインハウス化をするかどうかを考える必要があります。
しかし、インハウスか外注かの二者択一ではなく、それぞれの特徴を踏まえて使い分けることが重要です。
本章では、業務の内製比率に応じた、インハウスと外注活用の3つのパターンをご紹介します。
- フルアウトソース:外部委託メイン
- ハイブリッド:外部委託と内製組織の両立
- フルインハウス:内製組織メイン
フルアウトソース(外部委託メイン)
マーケティング業務を外部委託メインで進めるのがフルアウトソース型です。
施策運用などのオペレーションや、分析・効果測定、そのための計測環境の整備といった様々な業務を外部に委託します。
また上記に加え、マーケティングの根幹をなす戦略立案のサポートを受けるケースもあります。
メリット
フルアウトソース型のメリットは以下の通りです。
- マーケティング人材のコストが抑えられる
- 戦略立案から施策の運用まで一気通貫で支援を受けられる
- 外部からの情報提供が受けられる
- 大量作業の効率化が可能
- 突発的な作業にも対応可能
- メディア・バイイングが必要ない
- 売掛取引が可能
自社にない「情報・ノウハウ」をアウトソース活用で補完したり、適切に外部委託を活用することでコストや成果面でも改善が期待できます。
デメリット
フルアウトソース型のデメリットは以下の通りです。
- ディレクション能力のある人材が必要
- 外注先とのコミュニケーションコストが掛かる
- 外注部分のコントロールが難しい
- 外注先の担当者変更のリスクが有る
- 外注先の選定に手間がかかる、難しい
- 日々の実務からの気づきを得にくい
ハイブリッド(外部委託と内製組織の両立)
ハイブリッド型は、外部委託と内製組織の両者を活用する体制です。
自社の状況に合わせて、マーケティング業務を内製すべきものと外部委託すべきものに分けて分担します。
- 戦略立案・設計
- 施策運用
- 分析・効果測定
- 改善のための施策
例えば「1.戦略立案・設計」は自社で行い、「2.施策運用」以降を外注するといった形です。
あるいは「2.施策運用」のなかでも専門性が問われるクリエイティブ作成は外注し、Web広告の運用は自社で行うといったように、ハイブリッド型には置かれている状況によって様々な形が考えられます。
メリット
ハイブリッド型のメリットは以下の通りです。
- セカンドオピニオンとして意見をもらえる
- 課題や問題点の把握が用意
- 専門会社の知見や経験を活用できる
- 最新機能などの提案をしてもらえる
- ブレーンが増えることが戦略・戦術が洗練化される
- 全体視点での改善ができる
- リストデータなどの資産を継続的に保持できる
デメリット
ハイブリッド型のデメリットは以下の通りです。
- コンサルティングや運用などのコストが非常に掛かる
- プラン実行リソースと運用レベルの保持が必要
- 良いコンサルを選定する審美眼が必要
- 良いコンサルとのコネクションが必要
- コンサル契約終了後の引き継ぎのリスクが有る
フルインハウス(内製組織メイン)
マーケティング業務を内製組織メインで進めるのがフルインハウス型です。
先述のインハウスのメリットをすべて享受できる一方で、リソースなどの負担が大きくなり、成果も自社内で出せるだけの体制が必要になります。
フルインハウス体制を構築するためには、自社だけで進めるのではなく外部の支援サービスを活用して、組織の育成支援や勉強会などのノウハウサポートを受けるのが良いでしょう。
メリット
前章の内容を踏まえて、フルインハウス型のメリットを整理すると以下のようになります。
- スピードアップ
- 外部委託費用の削減
- 関連部署との連携強化
- 事業とマーケティングの親和性アップ
- 他のマーケティング施策との連携強化
フルインハウス型を実現できれば、コスト・情報ノウハウ・成果すべての面でメリットを享受できます。
デメリット
デメリットも整理すると以下の通りになります。
- 高度な知見を有したマーケティング人材の育成・採用が必要
- 情報経路の確保が必要
- 担当者の人件費やマネジメントコストが掛かる
- マーケティング施策の客観的な評価が難しい
実現できればメリットの多いフルインハウス型ですが、その難易度は非常に高いので、外部の支援会社のサポートを受けることが必要になってきます。
インハウスと外注の使い分け方
前章ではインハウスマーケティングの3つのパターンをご紹介しました。
自社の状況に合わせて上手く内製と外注を活用することがインハウスマーケティングを成功させるコツです。
どのインハウスのパターンを選ぶかですが、考え方の一つに「予算額×運用負荷」という切り口があります。
運用負荷 | |||
大 | 小 | ||
予算額 | 大 | フルアウトソース | フルインハウス or ハイブリッド |
小 | フルアウトソース | フルインハウス |
フルインハウス:内製組織メイン
内製メインのフルインハウスを採用するのは、予算額に関わらず運用負荷が小さいケースです。
ケース1:予算額大 × 運用負荷小
予算額が小さければ運用負荷も小さくなる傾向にありますが、予算額が大きくても商品点数が少ない高額商材を扱っている場合など、運用工数がそこまで掛からないケースもあります。
特にWeb広告の場合、予算額に比例して委託費用が決まるため、予算額が大きくて運用工数が掛からないのであれば、自社で運用をしたほうがコスト面では良いと言えます。
ケース2:予算額小 × 運用負荷小
広告予算が少なくて、運用負荷もあまり掛からないのであれば、外注せずにインハウス化してしまった方が良いでしょう。
そもそも予算が少ないと、業務を受けてくれる外注業者も少ないので、外注したくても自社で運用せざるを得ないケースもあります。
フルアウトソース(外部委託メイン)
外部委託メインのフルアウトソース型は、運用負荷が大きいときに採用される方法です。
いわゆる代理店丸投げ型との違いは、丸投げ型は戦略の部分から全て丸投げするのに対し、フルアウトソースでは戦略などの考える機能は自社内に持ちます。
代理店に丸投げしていると、結果が悪かった時にその責任をすべて代理店に押し付けることになりがちで、もっと良い外注先はないかとリプレイスすることになります。
しかしそういうスタンスでは同様の事態が起きやすく、どんどんリプレイスして結果的に頼み先がなくなってしまう、ということになります。
ケース3:予算額大 × 運用負荷大
予算額も運用負荷も大きいケースでは、いきなりフルインハウス化するのは難しく、まずフルアウトソース型から始めるのが良いでしょう。
マーケティング人材の質と量が共に求められ、十分な体制が整ってからでないとリスクが大きいからです。
まずフルアウトソース型から始めて、戦略部分を社内で安定的に実施できるようになってから、戦術・実行の部分のインハウス化を進めます。
ケース4:予算額小 × 運用負荷大
予算額が小さいにも関わらず運用負荷が大きい場合というのは、フルアウトソース型で外注を上手く活用しながら、運用の効率化を進めて運用負荷を軽減させることを第一にすべきです。
Web広告であれば、入札やレポーティングなどの作業の部分をツールで効率化して、運用負荷を下げることが求められます。
この状況下でフルインハウス化をしてしまうと、予算が小さいので社内の人材をあまりあてがってもらえず、にも関わらず運用負荷が大きいので、社内の担当者は必然的に疲弊してしまいます。
また作業系のタスクに追われ、業務効率化や本来注力すべき戦略構築などに時間を割くことができずに、生産性が上がっていかないという事態になります。
ハイブリッド(外部委託と内製組織の両立)
ハイブリッド型を採用するのは、予算額が大きくて運用負荷は小さいケースです。
このケースでは「ケース1:予算額大 × 運用負荷小」で述べたようにフルインハウス化するのも良いのですが、外部の支援会社にコンサルティングをしてもらうことで、マーケティング業務の品質を上げることができます。
支援会社を通じて、フルインハウスでは確保が難しい最新情報を入手することもできるので、余裕があれば選択したい方式です。
また自社の抱える問題点やその解決方法自体がよく分からないという場合も、ハイブリッド型でコンサルタントを活用するのが良いでしょう。
新たな事業展開を開始する際や、前担当者の離職に伴い着任した新担当者の経験が浅く、まだスキル・ノウハウが足りない場合には、外部のコンサルタントの支援を受けると良いでしょう。
インハウスマーケティングにおける人材の育成・採用の方法
インハウスマーケティングを成功させるために絶対に欠かせないのがマーケティング人材です。
しかしその需要に対し供給が圧倒的に足りないのが現状です。
マーケティング人材の採用
多くの企業がマーケティングスキルを持った人材の採用に取り組んでいますが、なかなか良い人材が採用できないと悩んでいます。
その理由の一つとして、求める理想が高すぎるというのが考えられます。
Web広告やSEOなどに精通し、クリエイティブも分かって、かつプランニングなどのマーケティング戦略や経営コンサルティングにも通じている人材など…。
残念ながらそんな人材はこの世にはほぼ存在しないでしょう。しかしそうした人材を求めてしまっていて、なかなか良い人材がいないと嘆いている企業が多いです。
ここで重要なのは、自社に必要なスキルと、外注を活用して補完するスキルを定義することです。
たとえば、Web広告やSEOのオペレーション経験がある人材を採用して、上流工程である戦略立案や戦術設計に携わらせてマーケティングスキルを鍛えていく。
また自社では難しいクリエイティブ制作やシステム構築は外注して、自社ではその機能を持たない。
といったやり方が考えられます。
そうすることで、採用すべき人材のスキルの定義も明確になり、採用活動も進めやすくなるでしょう。
注意が必要なのは、マーケティング業務の下流工程(広告オペレーションなど)の方が人材は多く、戦略立案などの上流工程に行くほど人材は少なくなります。
マーケティング人材の育成
優秀なマーケティング人材の採用は非常に難しいため、社内で育成することが必要になります。
育成の方法としては、主に以下の2つを実施することになります。
- 研修:座学にてマーケティングを体系的に学ぶ
- 実務:研修で学んだことを実務で活かして定着を図る
研修のみでは頭でっかちになってしまいますが、実務だけでは学べる内容に偏りが出ますし、効率も良いとは言えません。
両者を併用することが必要になります。
デジタルマーケティングの研修については、以下で詳しく解説しています。
参考:デジタルマーケティング人材の育成を目指した効果の高い研修の選び方とおすすめの研修企業
また実務での育成は、外部の支援会社に伴走してもらって支援してもらうのが良いでしょう。
社内に優秀なマーケティング人材がいたとしても、最前線で働いているその人に社内の教育までしてもらうことはなかなか難しいでしょう。
インハウス支援会社は、独自の研修プログラムや体系化されたマニュアル・ノウハウを提供してくれるところも多く、提供サービスに育成・研修プログラムが含まれているかはぜひ確認してみてください。
マーケティング人材の育成に関してもっと詳しく知りたい方は以下の資料をご覧ください。
参考:スキルを獲得(リスキリング)させ、インハウスマーケティングを実現させる方法
まとめ
マーケティングのインハウス化を実施するにあたって、まずはインハウスと外注のメリット・デメリットをきちんと把握しておく必要があります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
コスト | ・外注コストを削減できる ・コミュニケーションコストを削減できる | ・社内人件費がかかる ・教育、体制構築のコストがかかる ・前金制になるのでキャッシュフローに悪影響がある |
情報 ノウハウ | ・社内にノウハウを蓄積できる ・業界特有の知見を活かしやすい | ・プロの専門知識を活用できない ・最新の情報のキャッチアップが難しくなる |
成果 | ・全体最適化がしやすい ・スピード感が増す | ・軌道に乗るまでは成果が悪化する可能性がある ・十分にリソースを確保できないと作業にばかり時間が取られてしまう ・代理店経由でしか実施できないメニューやシステムを活用できなくなる |
マーケティングのインハウス化は、必ずしもすべての業務を内製化しなければいけないわけではありません。
自社の状況に合わせて、以下の3つのパターンから最適な体制を選択すると良いでしょう。
- フルアウトソース:外部委託メイン
- ハイブリッド:外部委託と内製組織の両立
- フルインハウス:内製組織メイン
またインハウスと外注の使い分け方の一つの考え方として、「予算額」と「運用負荷」の2軸から考えるものがあります。
大まかに言えば、運用負荷が小さければフルインハウス、運用負荷が大きければフルアウトソース、予算額が大きくて運用負荷は小さいという効率化された運用体制を築けているのであれば、外部のコンサルタントを活用するハイブリッドの選択肢があります。
運用負荷 | |||
大 | 小 | ||
予算額 | 大 | フルアウトソース | フルインハウス or ハイブリッド |
小 | フルアウトソース | フルインハウス |
またインハウス化に必要なマーケティング人材ですが、多くの企業が求めるあらゆる業務に精通した優秀な人材というのは、世の中にほとんど存在しません。
自社に必要なスキルは何か、外注すべき機能は何かを定義した上で、求めるスキルをより明確にすることで採用の可能性が上がります。
マーケティングのインハウス運用にも色々なパターンがあり、会社の状況によって採用すべき体制は異なってきます。
本記事を参考に、マーケティングのインハウス化を実現していただければ幸いです。