ITアウトソーシング(業務委託)のメリットと委託先選びのポイント

ITアウトソーシングとは、IT関連の業務を外部に委託することを意味する言葉です。

近年では多くの業務にIT技術が使われており、サービスの根本に関わるシステムの設計から外部に委託するケースも増えています。

IT業務は専門知識が求められ、かつ進歩の早い分野なので、アウトソーシングを行うことで品質が安定します。また、採用や教育・育成コストを考えると相対的に安くなるケースが多いです。

ただし社内にノウハウが蓄積しづらく、外部に情報を共有することで情報漏洩のリスクが発生するというデメリットがあります。

本記事ではITアウトソーシングについてメリット・デメリットを踏まえて解説したうえで、ITアウトソーシングを失敗させないための委託時のポイントや、委託先を探すために確認すべきポイントについてまとめています。

記事を読むことでITアウトソーシングをすべき業務を明確に判断できるようになりますし、うまく外部委託できるようにするための勘所がつかめるようになります。


ITアウトソーシングとは、企業内のIT関連業務を外部の事業者に委託すること

ITアウトソーシング(ITO)とは、企業内におけるIT関連の業務を外部の事業者に委託することを意味します。

委託できる業務はシステムの設計・開発から運用まで一任するパターンや、サーバの保守・管理など部分的に依頼するパターンなどさまざまです。

たとえば、以下のようなIT業務を委託することが可能です。

  • サイトの保守運用
  • 社内のインフラの保守
  • IT資産管理
  • PCのキッティング
  • 社内ヘルプデスク対応
  • セキュリティ監視

近年では多くの業務にIT技術が活用されていますが、それらを自社だけですべて管理し運用するためには多大なコストを要します。

専門的な知識を持つ事業者に業務を委託することで、自社の負担を軽減しつつスキルのアップグレードを目指せるというメリットがあります。

参考:IT業務のBPOで依頼すべき業務内容と外部委託に失敗しないための3つのポイント


ITアウトソーシングの種類

ITアウトソーシングは主に以下の4つの種類に分かれます。

  • フルアウトソーシング
  • 運用アウトソーシング
  • ホスティング
  • ハウジング

参考:アウトソーシング | IT用語辞典

フルアウトソーシング

IT業務の一部ではなく、開発から運用までをすべてを一気通貫で委託する形態です。

委託元の企業が業務の委託内容の要件出しを行って依頼します。

例えば企画自体は委託元が行う場合と、企画から設計・開発・運用までを委託先にお願いする場合などがあります。

大規模なものだと情報システム部門を丸ごと外部委託するなどのケースもあります。

運用アウトソーシング

システムの運用業務に絞って外部に委託する形態です。OSやサーバなどインフラ関連の業務を委託するケースが一般的です。

システムの管理やメンテナンス、セキュリティのアップデート、問い合わせ対応などを委託します。

ホスティング

ホスティングはサーバの運用・保守などの業務を委託する形態の一つです。

外部企業からサーバやストレージをレンタルし、その企業に管理・運用を委託します。

運用から保守まで一任できますし、サーバの設置・維持管理の費用をおさえることができます。

ハウジング

ハウジングとはサーバ・ステージ・ネット回線などは自社で用意し、他社のデータセンターに預ける形態です。

サーバの所有権は自社が持ちながら、機器の保守・運用は委託先に任せます。

自社でデータセンターを用意するよりも高いレベルのセキュリティに期待できます。


ITアウトソーシングのメリット

ITアウトソーシングを実施することで、IT業務を専門人員に任せられるので、品質が安定するメリットがあります。

また、社内リソースを割かなくて済むのでコストの削減・生産性の改善にも期待できます。

1.IT業務の品質の安定化

IT分野を専門とする企業・人員に委託するので、業務品質の安定化が見込めます。

IT分野では日々新たな情報や技術が生まれており、ITを専門としていない方がそれらをキャッチアップしていき業務レベルに引き上げるのは困難です。

外部委託することで技術やシステムのアップデートに早期で対応できるようになり、業務品質が高まります。トレンドに素早く対応することはセキュリティ面でのリスク軽減にもつながり、企業としての健全性を保つことにも役立ちます。

2.生産性の改善

IT業務をアウトソーシングすることは、企業全体の生産性の向上につながります。

生産性の向上はアウトソーシング全般のメリットとして挙げられますが、IT分野ではその傾向が顕著です。

アウトソーシングでは事業における企業優位性を高める「コア業務」と企業優勢に影響を与えない汎用的な業務である「ノンコア」に切り分け、ノンコア業務を外部に委託していくのが一般的です。

IT分野では日々新たな技術が生まれ、これらのキャッチアップには多くの工数を要するため、限られた社内リソースで賄うのは困難です。特に中小企業だと人事や総務などと情報システム部を兼務することがありますが、効率的とは言えません。

ITアウトソーシングを実施することで、社内人材のリソースを開放し、自社の競争優位性を高めるコア業務により多くのリソースを投下できるようになります。

3.コストを削減できる

ITアウトソーシングを行うことで、多くのコスト削減が見込めます。

例えば社内でIT業務を行う場合、人材の採用や教育・育成に大きなコストがかかります。これらのコストを考慮すると、相対的にアウトソーシングするほうがコストを抑えられるケースが多いです。

また、他部門と兼務して業務を行う場合、業務の遂行能力が決して高いとはいえず、費用対効果の面からもアウトソーシングが有効です。

IT業務における業務委託をする場合の費用相場については、以下の記事を参考にしてください。

参考:IT業務の業務委託契約の結び方・記載すべき項目・費用相場を解説


ITアウトソーシングのデメリット

IT業務を外部に委託することで社内にノウハウが蓄積しづらいこと、情報漏洩のリスクが生じることなどがデメリットとして挙げられます。

1.ノウハウが蓄積できない

業務をアウトソーシングするため、社内自体にノウハウやナレッジが溜まりにくいというデメリットがあります。

ノウハウがストックされていかないと社内人材の成長が見込めず、社内の人材では業務を遂行しきれないため、アウトソーシングをし続けなければなりません。

ITアウトソーシングを検討する際は、継続的に依頼することを想定したうえで検討する必要があります。

2.情報漏洩リスクがある

外部に業務を委託するので、どうしても情報漏洩のリスクが発生してしまいます。

もちろん情報の取り扱いを前提とした契約のため、ほとんどの企業が情報漏洩リスクを防ぐための取り組みを行っています。

しかし、外部に情報がわたってしまうため、情報が洩れる原因の1つになるという可能性は否定できません。


ITアウトソーシングに向いている業務

アウトソーシングには「向いている業務」があり、これはIT分野においても同様です。

IT業務として、以下のような項目に当てはまるものが向いています。

  • 繁閑期が明確に分かれている
  • ルールの変更がなくマニュアル通りに進められる
  • 技術の進歩が速い

繁閑期が明確に分かれている

期末・年度末などに業務が偏りがちで、それ以外は比較的業務量が少ないなど、繁閑期が明確に分かれている業務はITアウトソーシングに向いています。

繁閑期が明確だと必要な時に必要なリソースが確保できれば良く、わざわざ社員を確保したり、維持するためにコストを割かなくて済みます。

マニュアル通りに進められる

マニュアルにのっとって進められる反復型の業務はITアウトソーシングに向いています。

ITのみならず「意思決定を必要としない業務」はアウトソーシングしやすいです。

まだ社内にマニュアルが存在しなくても、ある程度業務サイクルが確立している場合はマニュアルの制作を含め依頼できます。

ただし内容によっては「派遣」や「バイト」でも十分な効果が見込める場合がありますので、業務の内容と費用を比較して検討しましょう。

技術の進歩が速い分野

IT分野の中でも「技術進歩が速い分野」があり、その分野はアウトソーシングすべきでしょう。自社リソースを投下よりも素早く、安定した品質で対応できます。

例えばセキュリティ対策やSEOを考慮したWebサイト制作などが挙げられます。


ITアウトソーシングをする際の流れ

ITアウトソーシングをする際の流れは、大まかに以下の通りになります。
ITアウトソーシングの流れ

現状の業務内容の明確化や要件定義を行う必要があるため、本格導入までに2~3か月ほど期間がかかることが多いです。

また、業務委託中も、想定通りに稼働できているか社内の担当者が定期的に監視を行う必要があります。

そのため、持続的にITアウトソーシングを行うためには、委託先と定期的なコミュニケーションが必須です。


ITアウトソーシングの委託先を探すときに最低限確認すべきポイント

ここでは委託先を決めるうえで最低限確認すべきポイントを解説します。

ITアウトソーシングの委託先を決める際、実際に話を聞いて10社前後相見積もりを取るのが一般的です。

とはいえ、委託先は数多く、ある程度あたりをつけておかないと決めきれません。

ここでは問い合わせ前に最低限確認すべきポイントをまとめました。

参考:失敗しない情シス業務のアウトソーシング方法・適切な委託先の選び方

情報の取り扱いポリシーが明確に記載されている・情報漏洩保険に加入している

ITアウトソーシングで最低限気を付けなければならないのが「情報の漏洩リスク」です。情報の取り扱いに関する方針が明記されているかどうかを第一に確認しましょう。

どれだけリスク管理していても情報漏洩のリスクを0にすることは難しいので、万が一に備えて「情報漏洩保険」に加入しているかどうかも確認してください。

保険の加入有無は委託先企業のスタンスを把握する一つの指標となりますし、単純にリスクヘッジにおいても重要です。

依頼業務に対応できるか問い合わせの段階で確認する

ITアウトソーシングを委託する際、何を委託するかを明確にしたうえで、委託先の企業がその業務に対応できるかを確認したうえで見積もりをもらいましょう。

一口にITアウトソーシングと言っても対応する領域は企業によって異なります。対応していない業者に依頼できないかを相談しても、時間を浪費するだけです。

まずは問い合わせの段階で「依頼したいこと」を細かく記載し、対応可否を確認しましょう。もちろん、事前にサイトを見て業務内容を見ておくのが得策です。


ITアウトソーシングを失敗させないための3つのポイント

ITアウトソーシングを実施する際、以下の3つのポイントを意識すると失敗しにくいです。

  • コストでアウトソーシングすべきか判断しない
  • 事前に委託内容を明確にする
  • 「内製への切り替え」を考えない

参考:DXの推進事例21選から見えた、成功のための4つのポイント

コストでアウトソーシングすべきか判断しない

ITアウトソーシングを依頼する際、コスト面の優位性だけで判断するのは避けましょう。

業務の品質は外部委託先によって大きく異なります。また、委託先の得意領域などの変数もあるため、安さを重視して委託先を決めてしまうと、品質面で満足できずに費用対効果が悪くなるケースもあります。

コスト削減率の高さよりも、求める業務品質に達しているかを軸に委託先を選びましょう。

事前に委託内容を明確にする

委託前の段階で必ず委託内容についてすり合わせ、責任の範囲含め文書(SLA)に残しておきましょう。

業務内容やトラブル発生時の対応方法、データの閲覧権限、セキュリティに関するルールなどをすり合わせ、作業における責任の所在などもあらかじめ決めておくと良いでしょう。

特にどちらの責任かを明確にしておくことは、作業の品質管理・リスク管理の観点からも重要です。

「内製への切り替え」を考えない

ITアウトソーシングを実施する際、途中で内製に切り替えようと思うとうまくいきません。

前提としてITアウトソーシングを途中で終了して内製に切り替えるのは簡単ではありません。業務マニュアルの共有やレクチャー・引継ぎ依頼などは、委託先企業にとってメリットがないので、お断りされるケースが多いです。

また、専門的な知識を必要とするIT業務を依頼している場合、社内で巻き取る体制を作るほうが負担がかかる場合もあります。

「軌道に乗ってから内製に切り替えよう」という考えはうまくいかないので、委託先を選ぶ際は最初から信頼できるかどうかを意識して進めましょう。

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まとめ

ITアウトソーシングとは、名前の通りITにまつわる業務をアウトソーシング(外部委託)することを指します。

ITアウトソーシングを活用することで、IT業務の品質向上・生産性向上・コスト削減などのメリットがあります。

ただし、外部に委託することで「ノウハウの蓄積ができないこと」「情報漏洩のリスクが発生すること」といったデメリットがあります。

ITアウトソーシングに向く業務としては以下の3点が挙げられます。

  • 繁閑期が明確に分かれている
  • ルールの変更がなくマニュアル通りに進められる
  • 技術の進歩が速い

委託先を検討する際、最低限「情報取り扱いに関するポリシーが明記されているか」「情報漏洩保険に入っているか」「依頼したい業務内容に対応しているのか」は確認しておきましょう。

また委託する際は「コストだけで委託先を判断しないこと」「業務内容を明確にしておくこと」「最終的なゴールを内製に置かないこと」の3点を意識してください。

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