LangChainとは?できることからRAGやLLMとの違いまで一挙解説

LangChainとは、複数の大規模言語モデル(LLM)や外部データベース、APIを組み合わせて、高度なAIアプリケーションを短期間で構築できるオープンソースのフレームワークです。

このフレームワークを活用することで、プロトタイプ開発の高速化や運用コストの削減、RAG(Retrieval Augmented Generation)をはじめとする最新アーキテクチャの実装容易化などが期待できます。

一方で、急速なバージョン更新への追従や複数モジュールの適切な管理といった課題も存在するため、採用にあたっては注意が必要です。

そこで本記事では、LangChainの基礎概念、内部コンポーネントの仕組み、RAGやLLMとの違い、メリット・デメリット、代表的なユースケース、導入ステップについて一挙に解説します。

「LLMを業務に応用したいが、何から手を付ければよいかわからない」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次


LangChainとは

LangChainは、大規模言語モデル(LLM)を中核に据えつつ外部データベースやAPI、社内ドキュメントなどを自在に組み合わせ、業務で使えるAIアプリケーションを短期間で構築できるオープンソースのフレームワークです。

公式サイトでも「LLMアプリケーションのライフサイクルを一括で簡素化する」ことを目的に掲げており、プロトタイプから本番運用までの開発ステップを大幅に圧縮できます。

2022年にHarrison Chase氏らがGitHubで公開して以降、わずか数年で世界的なコミュニティが形成され、累計スター数は10万件を超えました。

企業・個人を問わず採用が広がっている背景には「コード量を抑えながらLLMと外部ツールを連携できる」「ライセンスが商用利用可能(Apache2.0)」という分かりやすい価値提案があります。

LangChainの特徴は、Models/Prompts/Chains/Agentsといったモジュールが分離設計されている点です。これにより、たとえばモデルをGPT-4oから独自モデルに差し替える、プロンプトだけ改良する、といった部分的な更新が容易です。

さらにRetrieval Augmented Generation(RAG)やベクトル検索のための抽象化レイヤーも備わっており、検索エンジンやFAQボットなど“外部知識とLLMを組み合わせた機能”を標準部品だけで実装できます。

2024年以降は観測・評価基盤のLangSmithや、並列フローを宣言的に記述できるLangGraphなど周辺ツールが急速に充実しました。

直近のInterrupt2025ではエージェントのツール使用状況やレイテンシを可視化する新メトリクスが発表され、運用フェーズでの信頼性担保や改善サイクルがさらに回しやすくなっています。

なお、LangChainはPython版だけでなくJavaScript版、追加パッケージ群(PostgreSQL統合や各種ベクトルストア連携など)が細分化されており、必要な機能を最小構成で導入できるのも魅力です。

プロジェクト開始時は依存パッケージのバージョン固定とアップデート方針を決めておくと、後述するメリットを最大化しつつ互換性リスクを抑えられます。


LangChainの仕組みと主要コンポーネント

LangChainは「LLMを中心に据えた処理フローをモジュールの組み合わせで記述し、そのまま運用までスケールさせる」ことを目指して設計されたフレームワークです。

開発者は用途ごとに用意された部品を繋ぎ合わせるだけで、対話エージェントやRAGアプリケーションを短時間で形にできます。

4層構造で成り立つLangChain

中核となるのは〈Models〉〈Prompts〉〈Chains〉〈Agents〉の4つのレイヤーです。ModelsがGPT-4oなどの基盤モデル呼び出しを抽象化し、Promptsがテンプレートと入力値を安全に結合します。

Chainsは複数ステップを直列または並列に連結するレイヤーで、たとえば「ユーザー入力→検索→要約→再質問」の手順を宣言的に表現可能です。

Agentsは外部ツールやAPIを自律的に選択して動的なフローを構築し、単純なシナリオではChains、複雑な意思決定が必要な場合はAgentsを使い分ける形になります。

開発を支える補助コンポーネント

Memory、Callbacks、Retrieverといった補助的な部品が上位レイヤーを支えています。

Memoryはチャット履歴や一時変数を保持して連続対話に文脈を与え、Callbacksはログ記録やモニタリングを実現します。

Retrieverはベクトルストアや検索エンジンに対する統一インターフェースとして機能し、RAGを組み込む際にデータソースごとの差異を意識させません。

LangChain Expression Language(LCEL)

2024年に導入されたLCELは、前述の部品を関数合成のように簡潔な記法で連結できるDSLです。

可読性とテスト容易性が向上したことで、複数人の共同開発やCI/CDパイプラインへの統合が加速しました。

LangGraphで描く複雑フロー

LangGraphを使うと、一連のChainを有向グラフとして宣言でき、分岐や並列実行を含む複雑なデータフローをコード最小限で表現できます。

これにより、従来は手作業で書いていた状態遷移ロジックを図示する感覚で実装でき、保守も容易です。


LangChain、RAG、LLMの違い

LLMは「文章を生成する頭脳」、RAGは「その頭脳に専門知識を後付けする手法」、LangChainは「頭脳と手法を組み合わせ、業務アプリを組み立てるための開発キット」という位置づけになります。

つまり層が異なるため競合関係ではなく、組み合わせて利用することで相互に補完し合う点が特徴です。

比較軸LLM(Large Language Model)RAG(Retrieval Augmented Generation)LangChain
役割・目的汎用的な文章生成エンジン外部知識を取り込んで生成精度を向上させる手法LLM/RAGを含む処理フローをモジュール化し、アプリとして組み立て・運用する開発基盤
位置づけ(層)モデル層アーキテクチャパターン層フレームワーク/オーケストレーション層
主な構成要素学習済みパラメータ、モデルAPI検索エンジン/ベクトルDB+LLMModels/Prompts/Chains/Agentsなどのモジュール、LCEL、LangGraph
入力と出力プロンプト → 生成結果ユーザー入力 → 検索結果 →LLM出力任意のイベント/API→ 組み合わせたワークフローの最終出力
外部データ利用基本的になし(学習時点の知識のみ)あり(検索でリアルタイム・社内データを注入)あり(RAG/API/DBなどを自由に統合)
主なメリット汎用性、高精度の自然言語生成最新情報やドメイン知識を簡単に付加開発スピード向上、保守容易、運用機能を標準装備
主なデメリットドメイン特化・最新情報には弱い検索品質に依存、パイプライン実装が煩雑バージョン更新が速い、オーバーヘッド調整が必要
代表例・ツールGPT-4o、Claude3などPinecone+LLM、Elasticsearch+LLMなどLangChain(Python/JS)、LangSmith、LangGraph

参考:大規模言語モデル(LLM)とは?仕組みや活用方法を一挙解説!|LISKUL
   RAGとは?仕組みや主なユースケースから導入方法まで一挙解説!|LISKUL

用語の立ち位置を整理

LLM(Large Language Model)は、GPT-4oやClaudeなど、数十億〜数兆パラメータ規模で訓練された生成AIモデルそのものを指します。

プロンプトを入力すると自然言語で回答を返す「基盤技術」です。RAG(Retrieval Augmented Generation)は、検索エンジンやベクトルデータベースから関連情報を取得し、その結果をLLMにコンテキストとして注入して出力精度を高める「アーキテクチャパターン」です。

製品名ではありません。LangChainは、LLM呼び出し・RAG実装・外部API連携をモジュール化し、PythonやJavaScriptから再利用できる「アプリ開発フレームワーク」です。

LLMは、基盤モデルそのもの

LLMはプロンプトを解釈し、学習済みパラメータに保存された知識をもとに文章を生成します。

汎用性は高いものの、社内マニュアルやリアルタイム情報といった“閉じたデータ”にはアクセスできないため、業務シナリオでは「知識の鮮度」や「専門性」が不足しがちです。

RAGは、外部知識を取り込み精度を上げる仕組み

RAGはこの不足を補うために検索フェーズを前段に挟みます。

具体的には、ユーザーの質問をクエリとして企業内ドキュメントやWeb検索を実行し、得られたテキストをLLMへ追加情報として渡します。

これによりモデルを追加訓練せずとも、最新かつドメイン特化の回答が得られます。

LangChainは、オーケストレーションと運用を担うフレームワーク

LangChainはLLM呼び出し、ベクトル検索、ツール実行、対話の状態管理を個別モジュールとして提供します。

開発者はこれらを組み合わせてRAGパイプラインやエージェントを宣言的に記述でき、ロギングやリトライなどの運用機能も標準でカバーできます。

フローが明確に記述されるため、複数人開発やCI/CDへの組み込みがしやすい点も特徴です。

ビジネスでの選び方

まずLLM単体で要件を満たせるか検証し、社内データが不可欠であればRAG構成を追加します。

そのうえで開発スピードや保守性を重視する場合にはLangChainを採用し、プロトタイピングから本番運用までの工数を抑える。これが効率的な組み合わせ方です。


LangChainのメリット5つ

LangChainを採用すると、プロトタイピングから運用フェーズまでの手間を大幅に削減しつつ、精度と保守性を両立できます。以下では、ビジネス開発における代表的な利点を5つ紹介します。

1.開発スピードを大幅に短縮できる

既製のModels/Prompts/Chains/Agentsを組み合わせるだけで、対話ボットやRAGアプリを短期間で構築できます。

コード量が減るためレビューとテストの負荷も低減し、PoCの実装から検証結果の取得までが迅速に完了します。

2.再利用性と保守性が高い

モジュールごとに責任範囲が分離されているため、モデルの差し替えやプロンプトの改善など部分的な変更が簡単です。

依存関係が明示的に管理されることで、後から機能を追加しても既存フローへの影響を最小限に抑えられます。

3.運用機能が標準装備で手間を削減

ロギング、リトライ、レート制御、監視といった本番運用に欠かせない仕組みがあらかじめ用意されています。

LangSmithで推論結果のトレーシングと評価を自動化すれば、品質改善サイクルを回しやすくなります。

4.外部ツールとの統合が容易

ベクトルストア、検索エンジン、クラウドサービス、社内APIなどをプラグイン感覚で接続できます。

標準化されたインターフェースが用意されているため、データソースや環境が異なるプロジェクトでも実装方針がぶれません。

5.活発なコミュニティと商用利用可能なライセンス

GitHubでのスター数やコントリビューター数が増え続けており、新機能やベストプラクティスが絶えず共有されています。

Apache2.0ライセンスのため商用案件でも安心して採用でき、社内外の技術者を巻き込んだ長期的な活用が見込めます。


LangChainのデメリット4つ

LangChainは開発体験と拡張性を高める一方で、導入後に想定される運用負荷やコスト、ガバナンス面の調整が欠かせません。

ここでは、主なデメリットを4つ紹介します。

1.アップデート頻度が高く互換性管理が不可欠

LangChain本体と周辺パッケージは月単位でメジャー機能が追加されるため、プロジェクト開始時に固定したバージョンと最新機能のギャップが生じやすいです。

CIで回帰テストを自動化し、依存ライブラリを定期的に棚卸しする運用ルールを先に定めておかないと、思わぬビルドエラーや挙動差分に追われる可能性があります。

2.処理オーバーヘッドやAPIコストが増えやすい

モジュール間を抽象レイヤーでつなぐ設計のため、同じ処理を素直に直書きする場合と比べてレイテンシやリクエスト数が増えることがあります。

特にRAGで外部検索を挟む際は、LLM呼び出し回数と検索クエリ数が掛け算で膨らむため、キャッシュやバッチ処理を併用するなどコスト最適化が求められます。

3.学習コストとチーム浸透の壁

LangChain特有の概念(Chains、Agents、LCELなど)を理解しないまま手を動かすと、ブラックボックス化してデバッグが難しくなる恐れがあります。

LLMやRAGの基礎に加えてフレームワーク独自のベストプラクティスを共有し、ドキュメントとサンプルコードをチームで読み合わせる導入研修が効果的です。

4.セキュリティ・ガバナンス設定が必須

外部APIや社内データベースを横断的につなげる性質上、誤った権限設計やログ設定の漏れが情報漏えいリスクを高めます。

APIキーの暗号化管理、アクセス制御の細分化、トレーシング情報の保護といった基本ポリシーを導入前に策定し、定期的な監査を行う必要があります。


LangChainでできること6つの例

LangChainを導入すると、LLMの文章生成能力に外部データやツール連携を組み合わせた高度な業務アプリケーションを手早く構築できます。

ここでは、6つの代表的なユースケースを紹介します。

1.社内ナレッジ検索チャットボット(RAG)

社内ドキュメントをベクトル化して検索し、該当箇所をLLMのコンテキストへ注入することで、ユーザーの質問に最新かつ正確な回答を返すQ&Aボットを作成できます。

問い合わせ削減や教育コストの削減に役立ちます。

2.大量ドキュメントの自動要約・レポート生成

PDF・Word・HTMLなど多様なファイルを取り込み、LangChainのChainで「抽出→要約→構造化レポート化」という連続処理を実装できます。

リサーチ業務や議事録作成の時間を大幅に短縮できます。

3.セールス/サポート向けエージェント

CRMやチケット管理システムとAPI連携し、顧客属性や過去履歴を参照しながら適切な提案文や回答案を生成します。

LangChainのAgentsを用いることで、状況に応じたツール呼び出しやワークフロー分岐を動的に制御できます。

4.外部APIを組み込んだワークフロー自動化

天気・為替・ニュースなどの外部APIとLLMを組み合わせ、定期レポートやアラート通知を自動生成できます。

複数サービスを横断する業務フローも、LCELやLangGraphを使えば宣言的に定義可能です。

5.データベースやBIツールとの対話型データ分析

SQL実行チェーンと自然言語生成を組み合わせ、ユーザーの曖昧な質問からダッシュボードを更新したり、要約コメントを返したりする「チャットBI」機能を実装できます。

非エンジニアでもデータ活用がしやすくなります。

参考:【2025年最新版】BIツールおすすめ21選を比較!口コミ・選び方も紹介|LISKUL

6.多言語対応のコンテンツ生成・翻訳パイプライン

LangChainで翻訳モデルとスタイル変換用プロンプトを連結し、ブログ記事や製品マニュアルの多言語化を自動化できます。

ワークフローに品質チェック用のLLMステップを挟むことで、トーン&マナーを維持したまま大量生成が可能です。


LangChainを導入する方法7ステップ

LangChainを導入する際は、いきなり本番環境へ組み込むよりも「小さく試し、評価し、継続的に磨く」順序が安全です。

ここではプログラミング経験がない方でもイメージしやすいよう、7段階に分けて流れを説明します。

1.目的とKPIを明確にする

最初に「何を改善したいのか」「成功をどう測るのか」を定義します。

よくあるKPIは、問い合わせ対応時間の短縮率、レポート作成工数の削減割合、ユーザー満足度の向上などです。

数字でゴールを示しておくと、PoC(概念実証)の成果を判断しやすくなります。

2.データとセキュリティの前提を整理する

次に、LLMに渡す社内ドキュメントやAPIの利用範囲、個人情報の取り扱い方針を確認します。

アクセス権限を最小限に設定し、ログの保存期間や暗号化方針を決めることで、後工程のやり直しを避けられます。

3.小規模PoC環境を構築する

PoCでは「最小限のデータ」「最小限の機能」で検証します。

LangChainが動くサンドボックス環境(例:クラウド上の仮想マシン)を用意し、代表ユーザーの質問を数十件程度入力して、回答品質や応答速度を確認すると良いでしょう。

4.プロトタイプを作成しユーザーテストを実施する

PoCで手応えを得たら、実際の業務シナリオを想定したプロトタイプを構築します。

たとえばチャットボットの場合、FAQデータベース・検索機能・回答生成の一連フローをLangChainのChainで組み立て、現場担当者に試用してもらいフィードバックを収集します。

5.評価指標で効果を測定し改善する

取得したログをもとに、回答精度や応答速度、操作回数などを数値化します。LangSmithなどのトレーシングツールを使えば、どのステップで時間がかかったかを可視化できます。

改善案を反映し、テスト → 評価 → 改善のサイクルを繰り返します。

6.本番環境へ移行し監視体制を整える

KPIが達成できる見込みになったら本番環境へ移行します。運用開始後は、エラー率やAPIコストを日次でモニタリングし、異常値を自動で検知する仕組みを設定しましょう。

リトライ設定やキャッシュ戦略を最適化すればコストとレイテンシを抑えられます。

7.継続的な運用とアップデート管理

LangChainはアップデートが速いため、依存パッケージを半年ごとに点検し、テスト環境で互換性を確認してから本番へ反映する運用ルールを作ります。

社内勉強会やドキュメント整備を通じてノウハウを共有し、長期的なメンテナンス負荷を軽減することが成功の鍵です。


LangChainに関するよくある誤解5つ

最後に、LangChainに関するよくある誤解を5つ紹介します。

誤解1.LangChainはPythonエンジニアでないと扱えない

確かに最初に注目を集めたのはPython版ですが、現在はJavaScript/TypeScript版も公式に提供されています。API設計は両言語でほぼ統一されており、フロントエンド寄りの開発者でも導入しやすい環境が整っています。

また、LCELはコードを最小限に保ちながらフローを宣言できるため、プログラム経験が浅い場合でもサンプルを流用すれば短時間で動作確認が可能です。

誤解2.LangChainを使えばハルシネーション問題が解決する

LangChainはハルシネーションを直接抑止する仕組みではなく、RAGやツール呼び出しを組み込みやすくするフレームワークです。

正確性を高めるには、Retrieverで信頼できるデータソースを参照させる、Chain途中にファクトチェック工程を挟むなどの設計が不可欠です。

LangChainはその実装を簡潔にする手助けをしますが、データ品質の担保やプロンプトの最適化は依然として重要な作業になります。

誤解3.LLM APIだけで十分で、LangChainは不要

単発の問い合わせに答えるだけならLLM API呼び出しで足りますが、検索 → 要約 → 再質問のように複数ステップを組み合わせると、エラーハンドリングや状態管理が煩雑になります。

LangChainはモジュール化された部品を連結するだけで複雑なワークフローを記述でき、ロギングやリトライも標準で備えているため、保守工数の削減と拡張のしやすさで差が出ます。

誤解4.LangChainは処理が重く本番運用に向かない

抽象レイヤーが増えるぶんオーバーヘッドがゼロではありませんが、最新バージョンでは非同期実行やキャッシュ機能が強化され、レート制御も細かく設定できます。

ベンチマークを取ると生のAPI呼び出しと比べても遅延は数十ミリ秒に収まるケースが多く、実利用で体感差を生じない範囲に調整可能です。

本番導入時に必要なのは、処理経路ごとの計測とキャッシュ戦略の最適化です。

誤解5.LangChainは商用利用にライセンス費用が発生する

LangChain本体はApache2.0ライセンスで公開されており、ライセンス料を支払わずに商用プロジェクトへ組み込めます。

独自拡張を社内で改変しても公開義務はありません。ただし、連携するLLMや外部APIは別途課金体系があるため、総コスト試算の際にはモデル利用料や検索クエリ料を含めて算出する必要があります。


まとめ

本記事では、LangChainの定義と内部構造、LLMやRAGとの立ち位置の違い、採用することで得られる利点と留意点、代表的なユースケース、導入の手順を一挙に紹介しました。

LangChainは、大規模言語モデル(LLM)の生成力とRetrieval Augmented Generation(RAG)の知識補強をまとめて扱える開発フレームワークです。

まず仕組みとして、Models/Prompts/Chains/Agentsなどのモジュールを組み合わせることで、検索やデータベース連携を含む複合フローを宣言的に記述できます。

この設計により、モデルの差し替えや新ツールの追加が局所的な修正で済み、PoCから本番運用までのスピードが加速します。

一方で、アップデートの頻度や処理オーバーヘッドといった運用面の負荷を無視できないため、CIによる回帰テストやキャッシュ戦略を導入前に設計しておくことが欠かせません。

ユースケースとしては、社内ナレッジ検索ボット、レポート自動生成、セールス支援エージェント、外部APIを絡めた業務自動化、対話型BIなどが挙げられます。

これらは「LLM単体では足りない最新情報や社内データを取り込みたい」「複数ツールをまたいだフローを管理したい」といった場面で効果を発揮します。

導入にあたっては、目的とKPIの設定 → データとセキュリティの整理 → 小規模PoC→ ユーザーテスト → 効果測定 → 本番移行 → 継続運用という7つのステップで段階的に進めると、リスクを抑えながら開発・運用体制を整えられます。

LLMの活用を“試験導入”から“業務に根付いた仕組み”へ発展させたい企業にとって、LangChainは有力な選択肢です。

まずは小さなユースケースで試し、数値で手応えを確認してから全社展開を検討してみてはいかがでしょうか。