失注分析とは?具体的な分析手順とありがちな要因別の対策まとめ

「失注分析」とは、営業活動が受注につながらなかった要因を分析することです。

企業の営業活動では、受注数や受注率が「成果」を測る指標として重視されがちです。

しかし営業プロセスを根本的に改善するためには、なぜ受注に至らなかったかを把握することが必要になります。

そのための手法が、失注要因を分析する「失注分析」です。

失注分析により、自社商材について客観視することや、営業パーソンが苦手なポイントを改選することができるようになります。営業時の提案を改善し、受注率を高めることも可能です。

そこで本記事では、営業活動の改善に欠かせない失注分析について、重要性や具体的な方法を解説します。

この記事を読むことで、失注分析の基本を理解して営業活動の改善に活かせるようになるでしょう。

目次


失注分析とは、商談が成約に至らなかった要因を分析すること

失注分析をひとことで説明
「失注分析」とは、営業活動で受注に至らなかった案件について、その失注要因を分析することです。

失注分析により、自社のマーケティング戦略と顧客ニーズの間にある、方向性のズレを明確化できます。

その結果、営業のどの段階に問題があるか、見込み顧客が離れた要因などを把握できるのです。

このような失注要因が分かれば、同じ失敗を繰り返さないように対策できるうえに、営業プロセスの改善により業務効率化も見込めます。

失注分析は、成約率の改善に直接つながるため、成果を出すために重要です。


失注分析が重要な理由

営業活動において失注分析は重要度が高いです。その理由として、主に以下の3つのものがあげられます。

  1. 自社のイメージや扱う商材を客観視できる
  2. 営業が弱いポイントを自認できる
  3. 営業時の提案を改善できる

1.自社のイメージや扱う商材を客観視できる

失注分析を行うことで、自社のブランドや商材の現状を客観的に把握できます。

失注分析では、市場や顧客を網羅的に分析するため、自社商品・サービスの改善に役立つ情報が得られます。

これらの情報は、市場や顧客のニーズを満たす商材開発に活かせるでしょう。

マーケティング・営業活動では、以下のようなポイントを把握することが大切です。

  • 自社商材の機能やサービス内容は十分か
  • 市場やターゲット層を適切に選択できているか
  • 自社商材への脅威となる競合製品があるか

2.営業が弱いポイントを自認できる

失注分析では、営業活動のボトルネックも把握できます。

営業活動のフェーズごとに失注率を算出すれば、どのプロセスに課題があるかが分かります。

業務プロセスを改善することで、より効率的な営業活動が行えるようになるでしょう。

また、営業担当者に焦点を当てた分析を行うことで、担当者ごとに課題があるフェーズも分かります。

パフォーマンスが低い担当者に適切なサポートを提供すれば、全体的な営業成果も高まりやすくなるでしょう。

3.営業時の提案を改善できる

営業時の提案を改善できることも失注分析のメリットです。

失注分析により、商談先への提案に何が不足していたかを具体的に把握できます。

例えば「価格が高い」と感じた商談先が多かった場合、次回の提案時に価格の妥当性を説明する材料を用意したり、価格設定を見直したりすることで、より多くの商談先のニーズに応える提案ができるようになります。

このように失注分析を活用することで、営業の提案内容を継続的にブラッシュアップし、より多くの商談先との成約を目指せます。


よくある失注要因とその対策

失注要因とその対策について、以下の9つのパターンに分けて見ていきましょう。

  • 商談先の求める機能が備わっていない
  • 競合他社より魅力が劣る
  • 導入する時期にズレがある
  • 顧客のベネフィットをきちんと説明できていない
  • キーパーソンにアプローチできていない
  • 顧客の不満に沿った提案ができていない
  • 投資効果を十分にアプローチできていない
  • 稟議のサポートが不足・決裁が下りない
  • 見込み客の不安を解消できていない

商談先の求める機能が備わっていない

代表的な失注要因のひとつが、商談先の求める機能が自社の商品・サービスに備わっていないことです。

市場や商談先が必要としている商材を開発できていなければ、必然的に競合他社の商材が選ばれるようになります。

このようなケースでは、より充実した商品・サービスの開発や、効果的なマーケティング戦略に注力する必要があります。

また、機能が不足している商材であっても、ほかの機能の魅力をアピールできれば商談先が納得して受注につながることもあるでしょう。

競合他社より魅力が劣る

自社商材が市場・顧客のニーズを満たしていても、競合他社のものがより魅力的であれば失注要因となります。

このケースでは、顧客に対して「競合の提案内容」や「選んだ理由」について、ヒアリングしてみるといいでしょう。

競合他社の方針が分かれば、自社商品の差別化を図ることや、自社ならではの強みをアピールしやすくなります。

その結果、競合他社よりも魅力的な提案が可能になり、失注を防ぎやすくなります。

導入する時期にズレがある

導入する時期がまだ遠い顧客へのアプローチも、失注要因になり得ます。

そのため、営業プロセスの早い段階で顧客の「BANT条件」をヒアリングして、「T(導入時期)」が遠い顧客は後回しにする判断が大切です。

この場合は、後述するSFAやCRMなどのシステムを活用して、各顧客の導入予定時期を適切に管理しましょう。

導入時期が近づいた段階で、再度アプローチをかけると受注につなげやすくなります。

「BANT条件」とは、「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(必要性)」「Time frame(導入時期)」の4つの要素を指します。

参考:訪問せずにすぐ商談!営業効率を上げるインサイドセールス部隊の立ち上げ方│LISKUL

顧客のベネフィットをきちんと説明できていない

顧客が得られるベネフィットを十分に伝えられないことも、失注要因のひとつです。

例えば、「予算が合わない」ことが理由で失注した場合は、単純に価格が原因だと考えることはできません。

安易な値引きを行うと、競合他社との価格競争に巻き込まれてしまうでしょう。

このようなケースでは、「自社商材でどんな効果が得られるか」「どのような課題を改善できるか」といった、ベネフィットを分かりやすく提示することが大切です。

例えば、自社のシステムを導入することで業務のデジタル化が進み、業務効率の向上やコスト削減が見込めるなどです。

実際の導入事例も紹介すると、より顧客が提案内容に納得しやすくなるでしょう。

キーパーソンにアプローチできていない

キーパーソン(決裁者)にアプローチできていないことも、失注要因として考えられます。

商品やサービスの導入を最終的に決定するのは、部門長などの役職者です。

例えば現場の担当者に熱心な営業をかけても、キーパーソンに伝わらなければ受注にはつながりません。

そのため、営業プロセスの初期の段階から、可能な限りキーパーソンに同席してもらうことが大切です。

ただし、必ずしも役職者がキーパーソンとは限らず、影響力が強い従業員がいる場合もあります。

先方の様子を見て、「誰が会話の流れを変えているか」を見極めて、そのキーパーソンにアプローチするようにしましょう。

商談時のキーパーソンが不在の際は、担当者に「上司の同席」を求めるのはあまり効果がないことです。

まずは目の前の担当者を味方につけて商談を進め、先方が「キーパーソンを出さざるを得ない状況」にするといった戦略が必要になるでしょう。

顧客の不満に沿った提案ができていない

顧客の課題やニーズに沿う提案ができなければ、どれだけ自社商材が優れていても失注要因となります。

「これなら課題を解決できる」と顧客に感じてもらえるように、適切な提案を行いましょう。

そのためには事前に入念なヒアリングを行い、「顧客が何を必要としているか」を見極めることが大切です。

例えば、商談先が業務効率化に課題を抱えている場合、コストカットに役立つ商品・サービスを提案しても先方には刺さりません。

まずは業務効率化に役立つ設備やシステムを提案し、「業務効率化の結果コスト削減も可能です」とアピールすることで、商談先を引き付けることができるでしょう。

投資効果を十分にアプローチできていない

自社の商品・サービスの「投資効果」について、顧客が十分に納得できなければ失注要因になります。

投資対効果に関して説明するときは、「コスト削減」や「売上向上」などのキーワードを出すことが一般的です。

しかし、ものですが、具体的な数値や指標を提示できないこともあるでしょう。

提案時に投資対効果を明示しづらい場合は、自社と近い業界・類似する商材の成功事例を見せることが効果的です。

商談先から事前に要件が開示されていない場合でも、導入事例から幅広く説明することで、顧客の要望を引き出すことができるでしょう。

稟議のサポートが不足・決裁が下りない

最終的に「決裁が下りない」ことが、失注要因になるケースもあります。

前述したように、キーパーソン(決裁者)に十分なアプローチができなかったことが、主な理由として考えられます。

営業プロセスの初期段階から、決裁者に同席してもらうことが大切です。

なお、決裁者の同席が難しい場合は、決裁者に提案する方法を検討しましょう。

例えば、決裁者に提案するための資料作成や、導入事例の用意などです。

こうした代替策を講じることで、自社商材の導入意義を決裁者が認識しやすくなります。

見込み客の不安を解消できていない

顧客の不安を十分に解消できなければ、失注要因になり得ます。

営業プロセスのあらゆるフェーズで、顧客との信頼関係を築くことを意識しましょう。

自社商材を強くプッシュするのではなく、お役立ち情報を提供することが大切です。

また、顧客が必ずしも疑問点・不安点を質問するとは限らないことに、注意が必要です。

営業担当者のほうから、プレゼンや提案後に確認することを心掛けましょう。

よくある質問や不安点については、あらかじめ提案書に記載しておくことも効果的です。


失注分析の方法4つ

失注分析は、主に以下の4つの方法で行います。

それぞれの手法の特徴や重要ポイントについて、詳しく見ていきましょう。

  • 失注が多いステージを分析する
  • 失注に至る企業の属性を分析する
  • 営業パーソンごとに失注ステージを分析する
  • 競合企業が選ばれる理由を分析する

失注が多いステージを分析する

営業プロセスの各フェーズを分析し、失注が多いフェージを把握します。

企業の営業活動は、「初回商談」「ヒアリング」「提案」「クロージング」など、複数のステージに分類可能です。

それぞれの有効案件数や遷移率を確認することで、どのフェーズでボトルネックが発生しているかを把握できます。

例えば、提案の段階でコストが理由となる失注が多い場合は、「提案の方向性を変える」「自社商材の魅力をアピールする」などの改善策が考えられるでしょう。

後述する「営業パーソンごとの分析」と組み合わせれば、より具体的な改善策が見つかります。

失注に至る企業の属性を分析する

「どんな企業の案件が失注しやすいか」といった傾向を分析することで、今後のマーケティング戦略に役立つヒントが得られます。

事前に失注の可能性を軽減し、受注率を高めることができるからです。

例えば、ある業種で失注率が高いことが分かった場合は、失注率が低い業界の顧客開拓に注力することで、効率的なマーケティング戦略が展開できるようになるでしょう。

営業パーソンごとに失注ステージを分析する

営業担当者ごとに、失注が多いステージを分析することも重要です。

失注ステージを把握しておけば、失注しづらい方法でアプローチできるからです。

例えば、「提案内容に不足があることが多い」「競合に負けることが多い」など、さまざまなケースが考えられるでしょう。

こうした営業パーソンの苦手分野が分かれば、適切な指導を行って成果を高めることができます。

また、営業パーソンの得意分野が分かれば、それに合わせた営業リソース配分の最適化も図れます。

結果的に営業活動の効率化が可能となり、チーム全体の成果の最大化にもつながるでしょう。

競合企業が選ばれる理由を分析する

競合企業について分析することで、自社商材が選ばれなかった理由が見えてきます。

競合を分析することで、競合の先を行く提案がしやすくなるからです。

例えば、競合他社の提案内容や顧客が重視するポイントなどを分析すれば、自社のどこにボトルネックがあるか分かります。

例えば、競合Aには導入スピード・競合Bにはコストで負けているなどです。

こうした課題が分かれば、競合ごとに営業やマーケティングの切り口を変えて、臨機応変な対応ができるようになります。

また、顧客企業の業界についても分析すれば、「この業界では競合Aが強い」などの傾向も明らかになり、経営判断にも活用できるでしょう。


失注した後にすべき4つの対策

営業パーソンが失注したあとは、以下の4つの対策を取ることが大切です。

  • 失注分析の結果を社内で共有する
  • 失注直後にアポイントを設定する
  • 失注しやすい顧客について分析する
  • 営業担当者以外にもアプローチする

失注分析の結果を社内で共有する

営業パーソンが失注してしまったら、まずは失注分析を行う必要があります。

しかし、その結果を営業パーソン個人が保有していても、組織全体の成果向上にはつながりません。

そのため、失注分析の結果は全体で共有して、ナレッジを活用していくことが重要です。

情報共有を評価の対象とすることで、失注分析のデータを活用しやすい環境が整うでしょう。

失注直後にアポイントを設定する

自社商材が失注して競合商材の導入が決まった場合は、その日のうちに顧客にアポイントメントの打診をすることが大切です。

時間が経過するにつれて、顧客の「フレッシュな印象や意見」は薄れてしまいます。

ダイレクトで役立つ情報を手に入れるためには、できるだけ早期にアポイントメントを取ることが欠かせません。

顧客へのヒアリング時は、必ず受注につながらなかった理由を確認することが大切です。

ただし、「なぜ自社製品が選ばれなかったか」と直接的に聞くと先方が答えづらいため、以下のような点について確認しましょう。

  • 他社製品を選ぶにあたって特に重視した部分
  • 製品やサービスの選定ポイント
  • どのような点が改善すれば自社商材の導入を検討してもらえたか

営業担当者以外にもアプローチする

案件が失注したあとでも、顧客と継続的なコミュニケーションを取ることが重要です。

顧客とのコネクションを維持することで、新たな課題や不満が生じた際に、改めて自社の商品・サービスを検討してもらえる可能性があるからです。

再検討の機会を活かすためには、1か月ごとなど定期的にコンタクトを取る必要があります。

例えば、顧客の役に立つ情報や業界事例などを送付すれば、自社に対する印象を強めることができるでしょう。

また、失注時に担当した営業パーソン以外が、顧客とのコミュニケーションを取ることも有効です。

特に営業パーソンとの相性が失注要因である場合は、マーケティングやインサイドセールスの担当者にフォローを依頼するのもひとつの手です。


失注分析に使えるSFAとCRMについて

失注分析を行う際は、以下のようなITシステムを活用するのが効果的です。それぞれの特徴やメリットについて解説します。

  • CRMシステム
  • SFA

CRMシステムとは?

「CRM(Customer Relationship Management)システム」とは、顧客関係管理システムのことです。

CRMシステムを導入することで、顧客に関するさまざまな情報を一元管理して、営業やマーケティングに活かせるようになります。

CRMシステムを活用して、顧客とのメールのやり取りや商談の履歴、問い合わせ内容などの情報を収集すれば、失注要因の分析が行いやすくなります。

失注分析を行うためには、営業プロセスや顧客企業など、多様な観点での分析が必須です。

参考:CRMとは?活用の目的や機能、活用のコツをわかりやすく解説|LISKUL
   【2024年最新版】CRMツールおすすめ39選を比較!口コミ付き

CRMシステムに蓄積した情報が、合理的な失注分析に役立つでしょう。

SFAとは?

「SFA(Sales Force Automation)」とは、営業支援システムのことです。

SFAは前述したCRMで収集した顧客情報をもとに、企業の営業活動を効率化するために活用されています。

SFAには、営業プロセスの管理や営業パーソンの割り当てなどの機能があり、営業プロセスの可視化と体系的な管理が可能です。

こうしたSFAの機能を活用することで、営業プロセスのどのフェーズに問題があるか、どこが失注につながりやすいかを把握できます。

そのほかにも、データ入力やメール送信など、営業関連のルーチンワークを自動化できる機能もあるので、全体的な業務効率化にも役立つでしょう。

参考:SFAとは?CRMとの違い、導入のメリット、おすすめツール3選を紹介│LISKUL
   【2024年最新版】SFAツールおすすめ40選を比較!口コミや選び方も紹介│LISKUL


失注分析に関するよくあるご質問

失注分析に関する役立つQ&Aをまとめています。

Q.失注分析を行う際、どの段階を優先して分析すべきですか?

A.営業プロセスの中で失注が多いフェーズを特定し、そのフェーズを優先的に分析することが効果的です。

Q.失注分析を行うのに、どんなデータを収集すればいいですか?

A.商談履歴、顧客からのフィードバック、競合他社の提案内容、営業担当者ごとの成績などのデータを収集することが重要です。

Q.失注後、顧客からどのようなフィードバックを得るべきですか?

A.顧客がなぜ他社を選んだのか、どの要素が決定的だったのか、また自社の提案がどの部分で不足していたかをヒアリングすることが有効です。

Q.失注分析の結果、どのようなアクションを取るべきですか?

A.失注原因に基づいて提案内容の改善、営業プロセスの見直し、または新たな商材開発を行いましょう。

Q.営業チームの失注分析で、どのような指標を重視すべきですか?

A.各営業担当者の成績や、どの段階で失注が多いか(ヒアリング、提案、クロージングなど)を重視して分析します。


まとめ

失注分析を適切に行うことで、顧客に対して適切な提案を行い、受注につながる可能性を高めることができます。

顧客目線の営業・マーケティング戦略を展開することで、「競合より選ばれやすい環境」を作り出せるでしょう。

ただし、失注分析には営業プロセスや担当者に関する詳細な分析が必要なので、手作業で行うのが難しいこともあります。そこでCRMシステムやSFAなどの活用がおすすめです。今回ご紹介した内容を活かして、失注分析にチャレンジしてみましょう。