10年営業して分かった、正しいWeb広告の報告会のあり方・ポイント

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Web広告の報告会についてお困りの方から、下記のご相談をよくいただきます。

  • 何を話せばいいのか分からない
  • レポートのどこを見たらいいのか分からない
  • そろそろ話すネタがなくて困っている

報告会は単なる報告の場ではなく、先方に提案する貴重な機会です。
報告のみで終えてしまっていてはもったいないです。

本記事では、Web広告の報告の流れや報告会のコンテンツ例、また報告会で意識すべきことを解説しています。

筆者は10年以上にわたり、Web広告の営業として現場に立ってきました。

そのなかで得た知見をお伝えすることで、皆様がこれからの報告会をブラッシュアップしていただければ幸いです。


Web広告の報告の流れ

Web広告の運用の世界では、月次や四半期ごとに運用結果の報告をします。

月初に前月の運用結果を報告するという代理店が多く、それに合わせて予算も月単位で設定されています。

Web広告の報告に至るまでの流れは以下の通りです。

  1. レポートを作成する
  2. 課題と改善策を考える
  3. 報告会

1.レポートを作成する

まずは、運用結果をまとめた広告レポートを作成します。

良い広告レポートとは、以下を満たしたものです。

  • 誰が見ても配信結果が一目瞭然
  • 誰が見ても配信結果について、正確な共通認識を持つことができる
  • 今後の改善施策を打ち出すために必要な情報が得られる

また、広告代理店では運用者が一人で数十社も担当しているケースもあります。

そのため広告レポートをいかに効率よく、また品質の高いものを作れるかが大きな課題になります。

そうした課題を解決するためには、レポートツールの活用が不可欠です。

このような広告レポートの作成方法については、下記で詳しく解説しています。
無料で広告レポートのテンプレートも配布していますので、ぜひご活用ください。

参考:【無料テンプレート配布】広告レポートの作成方法&効率化ガイド

2.課題と改善策を考える

レポートの内容と管理画面、あるいは計測ツールの数値を駆使しながら、配信結果を分析し課題を考察します。

またそれらの課題に対する改善策もあわせて考えます。

この工程がWeb広告運用の肝といえるもので、運用者として力の見せ所になります。

次章「課題から考える改善策の例」にて、課題に合わせた改善策を導き出すフローチャートをまとめておりますので、ぜひご活用ください。

3.報告会

作成したレポートと、課題・改善策をまとめて報告を行います。
レポートは月初に事前にお送りするケースもあります。

報告会には、普段やり取りをしている現場の担当者だけでなく、その上長なども参加する可能性があります。

参加者を事前に把握し、想定される質問の回答を用意しておけると良いでしょう。

報告会の内容やポイントについては、「報告会のコンテンツ例」以降で解説します。


課題から考える改善策の例

レポートや管理画面から課題を発見したら、要素分解して施策を考えていきます。

下記はCPAが高騰した場合の一例です(実際にはまだまだ施策がありますが記事の関係上割愛しています)

課題改善点実施施策
CPA高騰 CPC改善 入札価格の調整
キーワードの追加・停止
品質スコア(①推定クリック率)の改善
品質スコア(②ランディングページの利便性)の改善
品質スコア(③広告の関連性)の改善
除外キーワード設定
効果が悪いキーワードの停止
CTR改善 キーワードの追加・停止
オークション分析による競合の把握
広告文検証・他競合広告文の分析
サイトリンク・クリックリンクオプション追加
構造化スニペット表示オプション追加
CVR改善 キーワードの追加・停止
ターゲティングの絞り込み
指名キーワードにおける競合排除
ランディングページの改善
RLSA(検索広告向けリマーケティング)の設定
全て デバイス別の広告効果を確認
時間帯別の広告効果を確認
曜日別の広告効果を確認
性別・年齢・その他デモグラ別の広告効果を確認
予算配分の変更

CPA(獲得単価)は、因数分解すると下記のようになります。

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この数式から、CPAを下げるには以下の2つを目指せば良いことになります。

  1. CPCを下げる
  2. CVRを上げる

この2つを更に分解していくと、ようやく上記のような施策までたどり着けます。

注意点としては、最終的な目標(売上アップなど)を達成するためであることを忘れないことです。

例えばCVRを上げるために、獲得見込みの高いユーザーに配信を絞ると、CVRは上がりますがCV数は減ってしまいます。

CPAは改善したけど売り上げは変わってない…では意味がありません。

見かけの指標にだまされないように注意しましょう。


報告会のコンテンツ例

実際の報告会において、コンテンツとして用意されていると良いものを順番に紹介していきます。

  • 目標・運用方針の再確認
  • 配信実績
  • 前回の課題と実施施策
  • 配信をしたうえでの課題
  • 課題に対する施策
  • 媒体のアップデート情報・トレンド

目標・運用方針の再確認

配信実績を共有する前に、目標や運用方針を再確認しましょう。

どういうゴールを目指して配信を行ったのか。
その結果がどうだったのか。
課題は何で、その改善策としてこれを提案します、という流れで報告をします。

最初に目標・運用方針の認識を合わせておかないと、その後の議論もぶれてしまいます。
当たり前の内容に思えるかもしれませんが、重要ですので留意してください。

配信実績

レポートと共に配信実績を報告します。

数値を基に客観的な事実をお伝えしましょう。

特に結果が悪かったときにありがちですが、少しでも良く見せようと主観的な意見を盛り込みがちです。

その結果が良かったか悪かったか最終的に判断するのは先方です。
その手助けをするために、客観的な事実=数値の報告をすることに努めましょう。

また、前月や前年との前後比較があると、良し悪しの判断がしやすくなります。

<例>
獲得件数:〇件(前月比〇%、前年比〇%)
配信金額:〇〇円(前月比〇%、前年比〇%)
獲得単価:〇〇円(前月比〇%、前年比〇%)

前回の課題と実施施策

前回の定例の場で挙がった課題と、それに対して実施した施策を共有します。

施策の振り返り

前回の定例の場で提案した施策の実施結果をお伝えします。

提案だけして実施してなかった、ということが無いようにすべきであることは言うまでもありません。

配信をしたうえでの課題

今回の配信結果から見えてきた課題を共有します。

前章でお伝えしたように、課題を要素分解してお伝えすると良いでしょう。

単にCPAが高騰していることが課題というよりも、なぜCPAが高騰しているのかその原因が課題となります。

必ず課題と要因はセットです。

課題に対する施策

上記の課題に対する施策を提案します。

この課題と施策の考察、また施策の実行力というのが運用者の力量が問われる部分になります。

image1

上図のように、目標と現状のギャップを埋めるために実施するのが提案です。

ですので、提案なくして目標の達成はありえないですし、提案がなくても達成できる目標は、目標として正しくない可能性があります。

また、下記の情報はマストで入れたい内容です。

  • 課題と実施すべき施策
  • 施策の優先順位
  • 想定される結果
  • スケジュール(いつまでに実施するのか。検討期間はいつまでか)
  • 担当者(だれがやるのか)

自社が提供できるアセットでの打ち手はもちろんですが、自社の対応領域を超える部分でも、先方が取り入れた方がいいと考えられることは、フラットにお伝えすることが重要です。

例えばWeb広告だけでなくSEOやSNS運用についても提言する、等です。

内容と伝え方次第ではマイナスに受け取られてしまう可能性はありますので、相手に寄り添った提案を心がけましょう。

媒体のアップデート情報、トレンド

媒体のアップデート情報や、業界のトレンドもこの機会に共有すると良いでしょう。

Web広告は定期的にアップデートがあり、細かいものを含めるとその数は膨大になります。

全部を共有するのではなく、その中から取捨選択をして、他の媒体の成功事例や業界のトレンド、ニュースを共有するようにしましょう。

情報共有の積み重ねが、相手との関係を密にし、信頼関係を築いていくことにつながっていきます。


報告会で意識すべきこと

最後に、筆者が報告会で意識してきたことをご紹介します。

あくまで私の経験からの意見ではございますが、ご参考になる部分はあるかと思います。

結果が悪くても謝りすぎない

私は、Web広告の結果が悪かった時に、あまり謝りすぎないほうが良いと考えています。

もちろん大切なご予算をお預かりしてWeb広告を運用するので、その気持ち・姿勢はとても大事なものですし、結果が悪ければ謝るべきです。

ですが、先方が一番求めているものは謝罪でしょうか。

本当に必要としているのは、改善点や解決策を提案してくれることであり、その先の良い結果ではないでしょうか。

Web広告、特に運用型広告は必ず良い結果が出るわけではないですし、最初は良くてもいずれ頭打ちになるときが来ます。

また悪い結果が出た時にもすぐ改善に着手できるのが運用型広告の強みでもありますし、配信してみて分かることも多々あります。

更に、Web広告だけで解決できる領域は限られており、Web広告ですべてを解決できると思われていたら、それは期待値を上げ過ぎているといえます。

プロとして対等なお付き合いを長く続けていくためには、あまり卑屈になりすぎず、誠実なコミュニケーションを取っていくことが大切です。

ミスも報告する

ミス報告を報告会のときにもした方が良いでしょう。

作業量の多いWeb広告の運用の世界では、ミスは付き物です。
どれだけ対策を施しても、完全に防ぐのは難しいと思います。

ミスが発生したときにはもちろんすぐに報告しなければなりませんが、報告会のときにも改めて報告すべきです。

こうしたマイナスの内容は、場の雰囲気も悪くなるので話したくないと考えたくなりますが、長くお付き合いをしていくためにはきちんと真摯にお話しすべきです。

そうした姿勢が、失った信頼を取り戻すためには必要になります。

また、CPAが目標よりも大きく超過してしまいそうなときなど、悪いニュースは事前にお伝えしておいた方が良いです。

報告会でいきなり聞かされたら「なぜもっと早く言ってくれなかったんだ」と思ってしまいます。

「現状目標CPAを○○円超過の見込みです。打開策として△△を急ぎ実施します」とあらかじめ伝えておけば、同じダメな結果になっても与える印象は違ってくるでしょう。

報告会のその先を意識する

報告会で決まったことが、その後どう進んでいくのかを意識しましょう。

例えばご予算の増額をするとなったときに、その場で確定ということで動き出して良いのか、あるいは先方社内での決裁を待つ必要があるのか。

後者の場合、いつまでに決定し返答をいただけるのかを分かっていないと、仮に先方社内で遅れた時にこちらの動き出しも遅くなってしまいます。
それにより、せっかく予算を増額していただいたのに、全然ご予算分の配信ができなかった、ということにもなりかねません。

こうしたことがないように、報告会のその先の流れを確認しておきましょう。

顧客へのヒアリングも大切に

一方的に報告をするのではなく、先方の直近のニュースやトピックス、動きなどをヒアリングしましょう。

筆者の経験上、このヒアリングからお仕事が拡がったり、実施しているWeb広告に追加するコンテンツや施策につながったりということがありました。

例えばお客様の商品のアップデート情報を、広告文やバナーに反映できるかもしれません。

注意点としては、ヒアリングする時は自分が準備してきたことから話題を振るようにしましょう。

ギブアンドテイクが大事で、テイクだけにならないようにしましょう。


まとめ

Web広告の報告の流れは、以下の3ステップとなります。

  1. レポートを作成する
  2. 課題と改善策を考える
  3. 報告会

また報告会のコンテンツとしては、以下が挙げられます。

  • 目標・運用方針の再確認
  • 配信実績
  • 前回の課題と実施施策
  • 配信をしたうえでの課題
  • 課題に対する施策
  • 媒体のアップデート情報・トレンド

Web広告の報告会は、報告することが目的ではなく、課題を共有し、先方と共にその解決策を生み出していくために実施するものです。

報告会を提案の機会ととらえて、貴方自身のバリューを発揮してください。