1on1ミーティングが社内に定着しない5大原因とその解決策

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「1on1ミーティングを導入したが社内になかなか定着しない」
「これから導入するが、どうすれば皆がきちんと取り組んでくれるのか知りたい」
という人事担当の方は多いはずです。

本記事では、1on1ミーティングが定着しない5つの主要原因と、理由別の解決策をご紹介します。

それぞれのボトルネックを見直し、自社の1on1ミーティング定着を実現させてください。


1on1が定着しない原因1. 実施の目的・背景が十分に説明されていない

1on1ミーティングが定着しない一番の原因は、実施する目的や導入を決めた背景を、社員に十分に説明していないことにあります。

1on1ミーティングを導入すると聞いた上司・部下は、その段階ではあまり前向きに受け止めてはくれません。

例えば上司・部下は以下のように考えています。

<共通>

  • 忙しくてやる暇がない
  • 面倒くさい
  • 新たに仕事が増えるのは嫌
  • やる意味あるんだろうか?

<上司視点>

  • 部下に不満を言われたくない
  • あまり得意じゃない部下がいる
  • 十分コミュニケーション取れているから必要ない

<部下視点>

  • 今の上司とはあまり話したくない
  • 過去に詰められた経験があるからやりたくない

このようにさまざまな理由により、1on1ミーティングに対して後ろ向きな状態です。

このような状態で無理に導入しても、1on1ミーティングが定着するのは難しいでしょう。

そのため、なぜ1on1ミーティングを実施するのか、その目的・背景を十分に説明する必要があります。

そうして初めて、やったほうが良いかも、一度やってみようかなというマインドに変えていくことができます。

解決策.1on1の目的を共有する

説明が不十分なことによる非定着を防ぐには、当然1on1の目的を共有することが解決策となります。

一般的に1on1ミーティングで得られる効果としては、以下が挙げられます。

  • 上司と部下の信頼関係構築
  • 課題の早期発見
  • 部下のモチベーション向上
  • 評価に対する納得性向上
  • 部下のキャリア形成の手助け
  • 急な離退職の減少

参考:1on1の導入で得られる4つの効果と効果を最大化するテクニック

しかしこれをそのまま伝えても、社員には1on1の必要性を感じられません。

自社が抱える経営課題を、1on1を導入することでどう解決していきたいのか、1on1によってどういう未来を目指していきたいのかを、自分の言葉で語る必要があります。

ポイント1.他の人事制度との補完関係を説明する

説明の際のポイントとして、他の人事制度とどういう補完関係になっているのかを説明することが挙げられます。

人事評価とどう結びつくのか、1on1を実施しない場合にどういう評価が下されるのかなどです。

たとえば1on1のリーディングカンパニーである「ヤフー株式会社」では、「社員の才能と情熱を解き放つ」という基本理念があり、それを実現するために「経験学習」という学習モデルを採用しています。

そしてこの経験学習を実現するための手段として、1on1ミーティングを導入したわけです。

参考:部下育成の効果的な方法「1on1ミーティング」の経験学習サイクル|Yahoo!JAPAN

このように、他の人事制度とどういう補完関係になっているのか、また経営課題・経営理念とどう結びついているのかを説明することで、社員は導入目的をより理解・納得しやすくなります。

ポイント2. 説明は一度では不十分

社内への説明は一度では不十分です。また何度も繰り返すことで、本気度を伝えることもできます。

全社会議や部門会議、イントラネット上での発信など、あらゆるチャネルを活用して伝えていきましょう。

また一方通行の説明だけでなく、社員が疑問に思うであろうことをまとめたFAQを用意することも重要です。

疑問を抱えた状態では社員は前向きになれないので、テストでスモールスタートするなどして、想定される疑問を集めておきましょう。


1on1が定着しない原因2. 経営層の理解が得られていない

続いて、経営層の理解が得られていない場合も全社への定着は難しいでしょう。

前章でお伝えしたように、1on1を導入する目的を社員に伝える必要がありますが、その際に経営層からの説明も必要になります。

特に管理職への説明の際には、より上位の役職にある経営層から伝えたほうが伝わりやすくなります。

しかし経営層の理解が得られていないと、上記の理由から十分に目的を伝えきれなかったり、そもそも説明する機会自体を得られなかったりしてしまいます。

そのため経営層の理解を得ることは必須といえます。

解決策1. 経営層へ説明会を実施する

経営層の理解を得るためには、経営層にも説明会を実施しましょう。

伝えることは前章と同様です。なぜ1on1を実施するのか、どういう未来のために必要なのか、その目的・背景を説明します。

このときに、あらかじめトップである社長・副社長の協力を取り付けておけるとスムーズに進められるでしょう。

解決策2. 経営層にも研修に参加してもらう

経営層にも研修に参加してもらうことで、1on1がどのようなものかを具体的に伝えることができ、その効果をイメージしてもらいやすくなります。

また経営層が研修に参加しているのを見た他の社員に、1on1に対して本気であることを伝えることができます。

前向きでなかった管理職のひとも、経営層がそこまでして進めようとしているなら…とならざるを得ません。

忙しい中予定を入れてもらうのは気が引けると思うかもしれませんが、定着させるためには経営層の研修への参加は大事な施策です。


1on1が定着しない原因3.必要なスキル習得のフォローをしていない

1on1に必要なスキル習得のフォローをしてあげないと、せっかく実施した1on1が上手くいかずに効果を実感してもらえず、定着しなくなってしまいます。

1on1には一定のやり方が存在しますが、それをきちんと伝えないと必ず失敗に終わってしまいます。

例えば以下のようなことになります。

  • 何を話せばいいか分からない
  • 自分の話ばかりしてしまう
  • 話したは良いが何も変わらない
  • 意味あるのかな?

また1on1にはアクティブリスニングなど必要なスキルがあります。

社員のスキル習得のフォローをしていないと、やはり効果的な1on1が実施できず、意味が感じられずにやらなくなってしまいます。

解決策.レクチャー・研修を実施する

解決策として、マネージャーに1on1のやり方とスキルをレクチャーする機会を設けるようにしましょう。

レクチャーや研修というと難しく感じますが、まずはやり方や必要なスキルがあること、またそれがどのようなものかを伝えるところから始めましょう。

研修を実施する際は、研修サービスを活用することも検討しましょう。ゼロからの研修プログラムの構築は時間がかかり難易度も高いため、専門家の力を借りるのも手です。

参考:1on1研修|TeamUp

また1on1に必要な代表的なスキルは以下の4つです。

種類上司の
働きかけ
目的会話の方向性
傾聴(アクティブリスニング)聞ききる部下の話を引き出す上司←部下
ティーチング教える部下にない知識や技術を伝える上司→部下
コーチング引き出す気づきを与えて部下の考えを引き出す上司⇔部下
フィードバック伝える自分がどう見えているかを伝える上司→部下

参考:部下の会話を引き出す1on1ミーティングのやり方・進め方・質問例

まずはこれらが必要なスキルであることを認識し、内容を伝えられるように整理しましょう。

アクティブリスニング(傾聴)

アクティブリスニングは、相手の話を受動的に聞き流すのではなく、会話の中から相手の考えや感情を主体的に読み取る姿勢のことです。
日本語では「傾聴」と訳されることが多いです。

こと1on1ミーティングにおいては、相手の話を最後まで聞いて受け止めること、として使われています。

1on1では、部下が自分の経験を自分で言葉にし、深く内省することが重要です。

途中で遮って上司が自分の考えを言ってしまうことは、この内省を阻害することになりますし、部下は自分の考えを言いにくくなってしまいます。

このように、傾聴により部下の意見を引き出すことが、1on1では最も必要になります。

ティーチング

ティーチングとは、知識や技術を伝えることを指します。

1on1の本質は、内省により自己学習を深めることにあるので、ティーチングにより答えを教えてしまうと学習がなされません。

社内の就業規則など、自分で考える必要のないことをティーチングで伝えるのが良いでしょう。

コーチング

コーチングは、対話を通じて部下の中にある答えを引き出す手法です。

一方通行のティーチングとは違い、コーチングは上司と部下の双方向のやり取りとなります。

先述のアクティブリスニング(傾聴)はコーチングの一部であると考えられます。

アクティブリスニングの他にも、相手に問いかけをする「質問」や、無条件に肯定的に受け止める「承認」があります。

フィードバック

フィードバックは、相手の行動やその結果に対して、課題・改善点・評価といった情報を通知し、相手自身に自分の行動を振り返させて、今後の立て直しを行うことです。

周囲からどう見えているのかを伝えることで、相手の成長を促します。

相手に情報を通知することはティーチングに近く、相手の振り返りを促すことはコーチングに近い手法といえます。

このように、両者の要素を持ち合わせているのがフィードバックです。


1on1が定着しない原因4.運用を現場任せにしている

1on1が定着しない4つ目の原因は、運用を現場任せにしていることです。

忙しい現場任せにしてしまうと、既存の業務を優先して後回しにされ、実施されなくなることは多々あります。

また効果的な1on1を行うためには、1on1への正しい理解や先述のスキルが求められますが、こうしたものを取得するためのサポートを人事がする必要があります。

これらを現場任せにしていると、きちんと1on1が実施されなかったり、うまく1on1ができずに効果を実感できなくてやらなくなってしまいます。

解決策.人事による運用支援体制を構築する

解決策としては、人事による運用支援体制を構築することが挙げられます。

人事が運用支援をする体制を構築し、それを社員に周知して知ってもらい、効果を実感してもらい社内に定着するようにすべきです。

1on1の運用方法については、以下の記事で詳しく解説しています。是非参考にしてください。
参考:1on1ミーティングを成功に導く5つの運用・改善施策


1on1が定着しない原因5.運用改善をしていない

1on1が定着しない5つ目の原因として、運用改善をしていないことが挙げられます。

せっかく導入しても、どれだけ活用されているのか、実施する上で困っていることはないかをチェックして、改善していかなければ定着は難しいです。
難しい、どうやったらいいか分からない、やる意味がないと思われたままにしてしまっては、効果を実感することなく実施しなくなってしまうでしょう。

まずは実施状況を可視化しモニタリングすることが必要です。どれだけの人が実施してくれているのか、部署に偏りはないかなどを検証していきます。

また研修などの学習機会を設けたり、FAQや事例、ケーススタディなどのナレッジ共有をして、実施する上での課題を解消してあげることも必要になります。

解決策.ツールを導入して活用データを収集・分析する

1on1の運用をする際は、ツールを導入してデータを収集・分析し、改善していくのが良いでしょう。

数人程度の小規模のチームへの導入であればスプレッドシートなどを活用した運用も不可能ではないですが、それでも管理コストが膨大になり、1on1を実施しなくなる可能性があります。

そこで1on1ミーティング用のツールを導入すれば、管理コストを削減することができます。

また共通のツールを使うことで1on1のやり方を統一し、1on1の品質を全体的に底上げすることができます。

このように、1on1ミーティングの定着にはツールの活用は不可欠といえます。


1on1の定着を手助けしてくれるツール

前章でもお伝えしましたが、ツールを活用することで1on1の定着を促進することができます。

1on1ツールを導入することの主なメリットは以下の通りです。

  • 1on1の導入を手助けしてくれる
  • 実施状況を可視化できる
  • 仕組み化により1on1の質を高められる
  • 1on1のスキル不足を補える

主な機能は以下があります。

機能内容
依頼機能指定の日程で1on1を依頼、スケジュール化する
トピックの事前提出フォーマットに話したいトピックを記入して事前に提出することで、整理された状態でスタートできる
テンプレート作成機能テンプレートを作成できる
履歴機能話した内容をログとして残せる。いつでも参照可能。
共有機能1on1の内容を自由に共有できる
フィードバック機能上司から部下にフィードバックできる
360度フィードバック360度フィードバックを実施できる

また1on1ツールには、1on1専用のツールと、人事向けの総合ツールの一機能として提供されているケースの2つに分かれます。

前者は費用が安く、1on1に特化しているためより高機能になっています。
後者は多機能な分、価格は高くなっています。

自社の状況に合わせて選択する必要があります。


まとめ

1on1が定着しない原因として、大きく以下の5つが挙げられます。

  • 実施の目的・背景が十分に説明されていない
  • 経営層の理解が得られていない
  • 必要なスキル習得のフォローをしていない
  • 運用を現場任せにしている
  • 運用改善をしていない

これらの解決策として以下をご紹介しました。

  • 1on1の目的を共有する
  • 経営層へ説明会を実施する
  • 経営層にも研修に参加してもらう
  • レクチャー・研修を実施する
  • 人事による運用支援体制を構築する
  • ツールを導入して活用データを収集・分析する

導入時に施策を実施することはもちろんのこと、導入後の運用も1on1の定着には重要です。

さまざまな1on1ツールが提供されていますので、ツールを活用して1on1の導入・運用を効率化することをおすすめします。