「1on1ミーティングを導入したいが、きちんと活用してもらえるか不安」
「どうやったらスムーズに社内に導入できるのか」
1on1の導入にあたって、このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、1on1の導入方法を事例をまじえて解説致します。また起こりがちな失敗や、成功のためのポイントもあわせて解説します。
この記事を読めば、1on1導入にあたっての不安を解消し、実際に導入に動き出すことができるでしょう。
目次
1on1ミーティングの導入の流れ
1on1ミーティングを導入する方法としては、大きく以下の3つに大別されます。
- 人事部主導で全社導入
- 人事部内で試験導入⇒全社導入
- 人事部内+特定部署で試験導入⇒全社導入
1つ目のケースのようにいきなり全社導入するのは、失敗のリスクを考えるとなかなか難しいでしょう。
そこで人事部や特定部署で試験導入し、社内の反応を見ながら運用改善してブラッシュアップしてから、全社導入の目処が立ったら全社展開するのが良いでしょう。
試験導入の流れ
さて、その際の試験導入の流れは以下の通りです。
- ステップ1.導入目的の整理
- ステップ2.実施フローの整理
- ステップ3.マニュアルの作成
- ステップ4.社内説明
- ステップ5.運用開始
とりあえず始めてみたいという方からすると、ややステップが多いと感じるかもしれません。
しかし、なぜやるのか・やり方をきちんと考えずに始めてしまうと、多くの場合失敗してしまいます。
理由としては、以下が挙げられます。
- 忙しいなか1on1ミーティングを追加でやらなければならないので、目的を理解・納得できないと前向きに取り組めない。
- やり方が分からないと効果が実感できない。
前向きに取り組めず、効果も実感できないとなると、どうしても優先度が下がって形骸化してしまいます。
せっかく導入して1on1ミーティングを実のあるものにしていきたいのであれば、ぜひ上記の5つのステップに沿って導入を進めていただければと思います。
1on1ミーティングの導入ステップ【試験導入編】
まずは試験導入する際の導入手順を解説します。
人事部主導で進める場合も、現場の部署が主導で進める場合も、基本的な流れは同じです。
ステップ1.導入目的の整理
まずは1on1ミーティングを導入・実施する目的を整理しましょう。
この工程が最も重要です。
なぜなら、1on1ミーティングが定着しない最も大きな原因の一つに、実施の目的・背景が十分に説明されていないというものがあるからです。
参考:1on1ミーティングが社内に定着しない5大原因とその解決策
いきなり1on1を実施するといわれても、多くの社員からすればポジティブには受け止められません。
なぜなら、これまでやったことのないよく分からない仕事を「追加」でしなければならないからです。
社員は以下のように考えるはずです。
- 忙しくてやる暇がない
- 新たに仕事が増えるのは嫌
- 十分コミュニケーションはとれているから必要ない
そうした社員の思いを理解した上で、それでもなぜ1on1ミーティングをやるのか、また実施することでどういう未来を描きたいのかを語る必要があります。
導入・実施の目的は、自社あるいは自組織の抱える課題によって異なるでしょう。
ただし考える際の参考として、日本における1on1ミーティングの先駆者である「ヤフー株式会社」の事例を紹介します(ヤフー株式会社の事例は「1on1ミーティングの導入事例」でもご紹介します)。
「ヤフー株式会社」では、「社員の才能と情熱を解き放つ」という基本理念があり、それを実現するために「経験学習」という学習モデルを採用しています。
経験学習は、業務での具体的な経験を「内省」により振り返り、それにより得た学びを次に活かすというものです。
この経験学習を実現するための手段として、1on1ミーティングが最適であったため導入されました。ぜひ参考にしてください。
参考:部下育成の効果的な方法「1on1ミーティング」の経験学習サイクル|Yahoo!JAPAN
参考:「1on1ミーティング」で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション|Yahoo!JAPAN
ステップ2.実施フローの整理
続いて1on1ミーティングを実施するフローを整理します。
ここで考えるべきこととして、例えば以下の内容が挙げられます。
種類 | 内容 | 推奨 |
---|---|---|
話す内容 | 1on1で話す内容 | 雑談、メンタルケア、業務課題、目標設定、キャリア、戦略方針など。業務の進捗確認はしない。 |
実施頻度 | どれくらいの頻度で実施するか | 最低月1回。できれば週1回。 |
実施時間 | 1回の1on1の長さ | 30分~60分 |
実施場所 | どこで実施するか | 会議室 or オンライン会議(2人しかいない空間) |
スケジュール設定 | 誰がスケジュール設定をするか | 上司 |
実施対象者 | どの階層まで実施すべきか | 上位役職者も実施 |
データの集計方法 | 実施状況のログをとるか。またどうやって集計するか。 | ツールの活用 |
好きにやってください、ではどうやれば良いのか分からず進まないので、これらの内容を整理して共有するようにしましょう。
また1on1は現場のメンバーだけでなく、上位役職者も1on1を自身の上司と実施すべきです。
上位役職者自身が1on1を実施しないケースでは、経営層のコミットメントがされていないと感じられ、現場の温度感が下がる傾向にあります。
ステップ3.マニュアルの作成
実施する上での手助けとなるマニュアルを作成しましょう。
チームで試しにやってみたいという方からすれば、マニュアルというと身構えてしまうかもしれませんが、何十ページもの冊子を作れと言うわけではありません。
やっていく上で疑問に思う点に対してあらかじめ答えを用意しておければ、やり方が分からないからやらないという事態を防ぐことができます。
簡単にでも用意しておくと良いでしょう。
マニュアルに必要なものは、以下が挙げられます。
- 話す内容
- 実施頻度
- 実施時間
- 実施場所
- 事前の準備内容
- 実施手順
- 必要スキル
- ツールの使い方(導入時)
- よくある質問(FAQ)
- 理解を深めるための推奨図書リスト
事前の準備内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。
参考:事前準備で成否が決まる!1on1ミーティングの事前準備の内容
1on1の実施手順については、こちらの記事をご参照ください。
参考:部下の会話を引き出す1on1ミーティングのやり方・進め方・質問例
よくある質問については「1on1ミーティングの導入時によくある質問と回答例」で解説します。
ステップ4.社内説明
目的・実施フローの整理、マニュアル作成ができたら、それらを用いて社内に説明をします。
なぜやるのかを伝えるのはもちろん、実施していくうえでの不安点(どうやればいいのか)を解消するフォロー体制があることを伝えていきましょう。
部署・チーム全体での会議だけでなく、あまり納得いただけていないようであれば非公式の場で個別に説明するなど、あらゆるチャネルを活用して説明していきましょう。
参考:1on1ミーティングが社内に定着しない5大原因とその解決策
ステップ5.運用開始
ここまで進めたら実際に運用を開始します。
まずはどれだけ実施されているのか、実施してみてどう思っているのか、また実施する上で困ったていることや懸念点はがないかを確認します。
1on1ミーティング用のツールを活用することで、これらを効率的に実施することができますが、テスト段階でツールを導入できないという場合はアンケートを取るようにしましょう。
アンケートは上司(管理職)と部下の両方に実施すべきです。
上司がうまくできていると思っても、部下視点では全然話させてもらえない、話しても否定されてしまうなど、ネガティブに捉えているかもしれません。
アンケートでは、たとえば以下を聞くと良いでしょう。
- 実施頻度
- 実施時間
- 上司・部下が話していた比率
- 総合的な満足度(5段階評価)
- 実施して良かったこと
- 実施する上で困ったこと
- 今後も続けていきたいか(5段階評価)
- その他要望など(フリーコメント)
アンケートの結果が評価に影響しないことを伝えた上で、正直に書いてもらうようにしましょう。
アンケートで集まった意見を基にして、改善を施していきます。
アンケートの実施方法として、また匿名でアンケートを実施するケースも、記名で実施するケースも両方あります。
記名の場合は、実施状況や挙がってきた困りごとがどの部署でのことかを把握できます。
匿名の場合は、記名よりも正直な回答が期待できるメリットがあります。
上記のそれぞれのメリットを踏まえた上で、自社に合った方法を選択してください。
1on1ミーティングの導入ステップ【全社展開編】
部署レベルでの試験導入を終え、十分に効果が得られる・継続できる目途が立ったら全社展開を進めていきます。
ただし人事部門でテスト導入してうまくいったが、現場の部門では同じやり方ではうまくいかないということもあります。
そうならないように、現場レベルでの試験導入もするようにしましょう。
さて前章を踏まえて、全社展開していく際の流れは以下の通りです。
- ステップ1.運用フローの見直し
- ステップ2.社内説明(全社)
- ステップ3.運用開始(全社)
- ステップ4.研修プログラムの用意
大きな流れは変わりません。なぜ1on1ミーティングを実施するのかを伝え、実施する上での問題点を解消することに尽きます。
ステップ1.運用フローの見直し
前章の「ステップ5.運用開始」にて実施してアンケートで集まった意見を基に、運用フローの見直しを行います。
着目するべき点は以下の通りです。
- きちんと実施されているか
- 効果を実感してもらえているか
- 実施する上で困っていることは何か
そもそも実施されていない場合は、以下のいずれかに該当している可能性が高いでしょう。
- 目的が理解できていない(腹落ちしていない)
- やり方が分からない
- 必要なスキルがない
- 忙しい(優先度が低い)
1on1の目的を理解していない、腹落ちできていないのであれば、根気強く説明をする必要があります。
またやり方が分からなかったり、スキル不足が原因であるならば、マニュアルの整備、FAQの整備、必要なスキルのレクチャーをする必要があります。
あるいは1on1のフォーマットを用意し、それに沿って会話を進めてもらうというのも手です。
実施状況を確認し、ボトルネックになっている原因を改善していくようにしましょう。
ステップ2.社内説明(全社)
試験導入時と同様に、全社に向けて1on1実施のための説明をしていきます。
全社会議やイントラネット、その他非公式な場も活用しましょう。
ここで重要なのは、経営層、特に経営トップの協力を得ることです。
全社で実施するほどの重要な人事施策となれば、やはり経営トップから1on1への想いを語ってもらう必要があります。
なぜやるのかはもちろんのこと、他の人事制度とどういう補完関係になっているのか、企業理念と1on1ミーティングがどう結びつくのかも伝えるべきです。
また、試験導入時の社員の声を伝えることも非常に重要です。
実際にやってみて良かった、こういう効果を実感しているという生の声は、なによりも社員を前向きにしてくれるはずです。
全社会議の場だけでなく、社内広報としてあとから見られる形に残しておければ、今後入社される方にも見てもらえるのでおすすめです。
参考:1on1ミーティングが社内に定着しない5大原因とその解決策
ステップ3.運用開始(全社)
社内説明を終えたら実際に運用を開始します。
こちらも基本的な流れは試験導入時と同じです。
実施率や満足度といった指標を設定し、定期的にモニタリングします。
また社員の声を基に、1on1ミーティングの実施・定着を阻害する要因を改善していきます。
企業規模にもよりますが、Googleフォームなどの簡易的なツールでは、アンケート・データの管理が難しくなってくるケースもあります。
その場合は、1on1ミーティング用のツールの導入を検討すると良いでしょう。
ステップ4.研修プログラムの用意
最後に研修プログラムを用意することも考えましょう。
1on1ミーティングは、傾聴(アクティブリスニング)など効果を出すために必要なスキルがあり、それらを習得するためには研修を通して身につける必要があります。
研修を実施する際は、研修サービスを活用することも検討しましょう。
ゼロからの研修プログラムの構築は時間がかかり難易度も高いため、専門家の力を借りるのも手でしょう。
他にも、外部にコンサルティングを依頼するという方法もあります。
おすすめは、社内にエヴァンジェリスト(伝道者)を選出し、彼らを育成することです。
1on1に必要なスキルを習得した方々が、社内に研修・布教をすることで、より効果的に社内定着を図ることができます。
外部サービスを活用するにはコストが掛かるため、コストを抑制する点でもおすすめです。
1on1ミーティングを定着させるための導入時のコツ
1on1ミーティングは導入して終わりではなく、社内に定着させて社員にしっかりと活用してもらわなければ意味がありません。
そこで、1on1ミーティングを定着させられる導入のコツをご紹介します。
人事による運用支援体制を構築する
1つ目は、人事による運用支援体制を構築することです。
1on1を人事主導で導入したが、運用を現場任せにしてしまい定着しないケースがあります。
忙しい現場任せにしてしまうと、既存の業務を優先して後回しにされ、実施されなくなることは多々あります。
また効果的な1on1を行うためには、1on1への正しい理解や傾聴などのスキルが求められますが、こうしたものを取得するためのサポートを人事がする必要があります。
人事が運用支援をする体制を構築し、それを社員に周知して知ってもらい、効果を実感してもらい社内に定着するようにすべきです。
経営層を巻き込む
2つ目は、経営層を巻き込むことです。
特に全社展開する上で経営層の協力が必要なことは「ステップ2.社内説明(全社)」でお伝えした通りです。
会社のトップが本気で取り組めば、社員にもその想いが伝わるはずです。
また社内研修を実施する際は、経営層にも参加してもらうと良いでしょう。
経営層が研修に参加しているのを社員が見たら、それだけ本気なのだと思うでしょう。
また経営層自身も、研修を通して効果を実感し、前向きに捉えてくれるはずです。
全社へ展開したいのであれば、経営層を巻き込むことが必要です。
スキル習得の機会を設ける
3つ目は、スキル習得の機会を設けることです。
1on1ミーティングの真髄は、上司と部下の関係性を良質なものにし、両者のコミュニケーションを通じて学習や成長を促進することにあります。
1on1ミーティングを、通常のミーティングや会話の延長線と捉えると失敗してしまいます。つい上司が話したいことを話してしまったり、内省を促すべき場面で答えを提示してしまったりするためです。
1on1には効果を得るための所定のやり方があり、またスキルが必要となります。
1on1に必要な代表的なスキルは以下の通りです。
- アクティブリスニング(傾聴)
- ティーチング
- コーチング
- フィードバック
上記の必要スキルについては、以下で詳しく解説しています。
参考:1on1ミーティングが社内に定着しない5大原因とその解決策
これらを習得するための機会を設けることで、より1on1の効果を高め、前向きに取り組んでくれるようになります。
スキル習得については先述の「マニュアルの作成」や「研修プログラムの用意」によって支援しましょう。
1on1ツールを活用する
4つ目は、1on1ツールを活用することです。
本記事でご紹介した、実施フローや運用スキームの構築をゼロから自分でやるのはやはり大変です。
これらをツールを活用することで効率化することができます。
1on1ツールを導入するメリットは、主に以下が挙げられます。
- 1on1の導入を手助けしてくれる
- 実施状況を可視化できる
- 仕組み化により1on1の質を高められる
- 1on1のスキル不足を補える
また主な機能は以下があります。
機能 | 内容 |
依頼機能 | 指定の日程で1on1を依頼、スケジュール化する |
トピックの事前提出 | フォーマットに話したいトピックを記入して事前に提出することで、整理された状態でスタートできる |
テンプレート作成機能 | テンプレートを作成できる |
履歴機能 | 話した内容をログとして残せる。いつでも参照可能。 |
共有機能 | 1on1の内容を自由に共有できる |
フィードバック機能 | 上司から部下にフィードバックできる |
360度フィードバック | 360度フィードバックを実施できる |
1on1ミーティングの導入時によくある質問と回答例
1on1ミーティングの導入時によくある質問と、回答の例をまとめました。
回答例は必ずしも正解ではないので、参考にしつつ自社にあった回答を用意してください。
Q1.1on1は本当に効果があるのでしょうか?
何を成果とするかが問題です。
売上や利益などへの直接的な貢献を成果指標とすると、計測ができず失敗します。
上司と部下のエンゲージメント指数、従業員満足度、退職数など、計測可能な中間指標を設けることで効果が可視化できて、継続的に実施し効果を実感することができるでしょう。
参考までに、一般的に1on1ミーティングでは以下の効果が得られるとされています。
- 上司と部下の信頼関係構築
- 課題の早期発見
- 部下のモチベーション向上
- 評価に対する納得性向上
- 部下のキャリア形成の手助け
- 急な離退職の減少
参考:1on1ミーティングの効果は測定できるの?導入後の組織像を考える|TeamUP MAGAZINE
Q2.普段からコミュニケーションが取れていれば不要でしょうか?
業務の進捗報告など、業務に必要なコミュニケーションばかりになっていないでしょうか?
また部下の方は本当にコミュニケーションが取れていると感じているでしょうか?
1on1は上司が部下の話を傾聴し、考えを引き出すことが求められます。
そのような機会が定期的に確保されているのかは、社員にアンケートを取るなどして考え直す必要があります。
Q3.導入しても続けられるか不安です
1on1を導入して定着させるには、運用フローの整備や、人事によるサポート体制が構築できるかが重要になってきます。
また、1on1を通じて得た気づきによって仕事の生産性が上がるといった「小さな成功体験」をすることで、1on1の効果を実感し、より積極的に取り組むようになっていきます。
そうした小さな成功体験を生み出す対話やフィードバックの型を、人事が支援して作り上げていければ、社内に1on1が定着するでしょう。
Q4.どれくらいの頻度で実施すれば良いのでしょうか?
長くても1ヶ月に1回、できれば毎週・隔週で実施すべきです。
例えば評価のタイミングで半年に一回実施するとすると、期間が長すぎてあったことを正確に思い出せません。
1on1を通じて、内省により学習を促進してアクションにつなげ、また1on1で内省をする、という学習サイクルを構築することが重要です。
そのためには、あまり期間を空け過ぎずに頻度高く実施するべきでしょう。
Q5.仕事で忙しくて1on1をする暇がありません
Q3.と同様です。時間がないのではなく、優先度の問題と考えられます。
すなわち、1on1を重要なものと捉えておらず、他の実務の優先度が高い状態と見られます。
部下の成長を促し、チームの成果を最大化することが上司の役目であるとすれば、1on1は自ずと重要な施策であると認識できるでしょう。
Q6.話すことがなくて困っています
事前にテーマに沿って話す内容を準備してから臨むと良いでしょう。
1on1で話すべき内容は以下の通りです。
- プライベート
- 健康状態
- モチベーション
- 業務の課題・相談事項
- 目標設定・評価
- キャリア・能力開発
- 戦略・方針の共有
また上司の方は、自分が話すことが目的ではなく、部下の話を引き出すことが必要です。
「前回からどのようなことがあったのか、成功体験・失敗体験を教えてください」などの質問を用意しておくと良いでしょう。
事前に準備すべき内容は、以下でも詳しく解説しています。
参考:事前準備で成否が決まる!1on1ミーティングの事前準備の内容
1on1ミーティングの導入事例
最後に、1on1ミーティングを導入した企業の成功事例をご紹介します。
導入時の課題や目的、導入の仕方の参考にしてください。
1on1ミーティングの先駆けとなった「ヤフー」
導入目的:経験学習サイクルによる「社員の才能と情熱を解き放つ」の実現
導入効果:経験学習の促進、コミュニケーションの活性化など
「ヤフー」は、日本において1on1ミーティングを活用している企業として最も有名です。
ヤフーでは、2012年に他企業に先んじて1on1ミーティングを導入しています。
ヤフーでは当時、社内コミュニケーションの希薄化など、組織と働く個人のあり方というのが課題になっていました。
そこで「人材開発企業」というスローガンを掲げて、会社員は会社のパートナーであり、会社は給料を払うだけでなく、社員の成長にも貢献すべきであるという考えを形にしました。
その「人財開発企業」を実現するために取り入れられたのが「経験学習」という学習サイクルであり、その具体的な方法が1on1ミーティングでした。
今では全体の90%が1on1ミーティングを「とても役立っている」「まあまあ役立っている」と評価されるほどに受け入れられています。
また社内だけにとどまらず、1on1のリーディングカンパニーとして知られるようになり、「人財開発企業」としての認知拡大にも貢献しています。
参考:部下育成の効果的な方法「1on1ミーティング」の経験学習サイクル|Yahoo!JAPAN
参考:「1on1ミーティング」で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション|Yahoo!JAPAN
参考:「1on1」を始めてみたがうまく行かない!~ヤフーの人材育成「1on1」の舞台裏|DAIMOND online
リモートワークのコミュニケーション不足を解消した「リクルート」
導入目的:社内コミュニケーションの活性化
導入効果:メンバー672人の1on1の質の向上
同じく1on1ミーティングの成功事例として有名なのが「リクルート」です。
2020年当時、グループ企業の「リクルートキャリア」では、新型コロナウイルスの影響によりリモートワークが進んでいましたが、組織コンディションの低下が課題となっていました。
コミュニケーションの希薄化により、モチベーションの低下や離職率の上昇が起きていました。
そこでリクルートキャリアでは、すでに実施していた1on1の質の向上を図るため、合計600時間に及ぶ研修を実施しました。
3か月間にわたり、1回2時間の講座受講・実践・Teamsチャットで相互フィードバックという学習を繰り返しました。
これらの学習により、1on1の質が向上したことはもちろん、組織を超えたヨコのつながりが生まれたということです。
社員も約9割が1on1の変化を実感し、約8割が肯定的に捉えるなど、効果を実感する社員が増えているようです。
参考:リクルートキャリア式1on1──理論と実践をつなぎ、マネジメントに「楽しさ」を|talentbook
遠隔社員との信頼関係構築に活用する「松井証券」
導入目的:離れた拠点にいる社員との関係構築
導入効果:社員が率先して自らの意見を発信するようになった
「松井証券」では、1on1ミーティングを導入することで、離れた拠点にいる社員との関係構築に成功しています。
それまで3ヶ月に一度の評価面談を実施していましたが、期間が空きすぎていたことや拠点が離れていて普段見れていなかったことで、きちんと部下のことを見れていないのではという課題感がありました。
そこで1on1を月一回実施することにしました。
その結果、社員が自ら率先して意見を発信してくれるようになったり、1on1の効果を実感して部下がチーム単位でも実施するようになりました。
リモートワークが広まる現代だからこそ、1on1が有効である好例といえます。
参考:1on1ミーティングで離れた拠点の社員との信頼関係を築く|TeamUp MAGAZINE
参考文献
本記事を執筆するにあたって参考にした本をご紹介します。
「ステップ3.マニュアルの作成」の「理解を深めるための推奨図書リスト」にもご活用いただけると思いますので、是非ご参考にしてください。
本間浩輔『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』
本記事でもご紹介したヤフーの1on1について詳細に紹介されています。
1on1に取り組む目的、得られる効果、導入の仕方、対話の方法論まで非常に詳しく書かれています。
1on1をやる際には必ず読みたい一冊です。
世古詞一『シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング』
1on1ミーティングのノウハウを、最も体系的に記している一冊かと思います。1on1を実施する際には、こちらも必読かと思います。
小倉広『任せるリーダーが実践している 1on1の技術』
元リクルートの著者が、1on1ミーティング導入するための方法論を詳しく解説しています。
1on1の導入の際には是非参考にしたい一冊です。
まとめ
1on1ミーティングの導入は、大きく「1.試験導入」「2.全社展開(本導入)」の2つのステップに分かれます。
まずは特定の部署でスモールスタートして、運用改善して最適化してから導入範囲を広がるのが良いでしょう。
試験導入時の流れは以下の通りです。
- ステップ1.導入目的の整理
- ステップ2.実施フローの整理
- ステップ3.マニュアルの作成
- ステップ4.社内説明
- ステップ5.運用開始
また全社展開する際は、以下の流れで行います。
- ステップ1.運用フローの見直し
- ステップ2.社内説明(全社)
- ステップ3.運用開始(全社)
- ステップ4.研修プログラムの用意
いずれの場合も重要なのは、以下の2点です。
- なぜ1on1ミーティングを導入するのかを腹落ちするまで説明する
- 実施時に不安点・不満点を解消するサポートをする
1on1ミーティング用のツールも多く提供されており、効率化を図りつつ失敗しないように導入を進めることが成功のカギといえます。
ぜひ本記事を参考に、1on1の導入を成功させてください。
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