キッティングとは?設定の手順まとめと作業を効率化させる2つの方法

キッティングとは、パソコンなどのデバイスを業務ですぐに使える状態に準備することです。

キッティングを正しく行うことは、社員に通常業務をスムーズに実施してもらうほか、社内のIT資産を管理する上でもとても重要です。

キッティングの方法は「1台ずつ手作業で設定する方法」と、「マスターPCから複数台にコピーする方法」の2種類があります。

社内に情シスがない場合は担当者への負担が大きいので、ツールやアウトソーシングで効率化するのがおすすめです。

本記事では、キッティングについての基礎知識や具体的な手順、効率化する方法について詳しく解説します。

本記事を参考にすれば、トラブルを起こさずにスムーズにキッティングを行うことができるようになります。

目次


キッティングとは、パソコンやスマートフォンのセットアップ作業全般のこと

キッティング(kitting)とは、パソコンやスマートフォンなどのセットアップ作業全般のことで、パソコンやスマートフォンを業務ですぐに使える状態に準備することを指します。

具体的な作業としては、オフィスに届いたパソコンやスマートフォンなどのデバイスを箱から出すところからはじまります。

その次にユーザー設定やWifi設定などの初期設定や、業務で必要とするソフトウェアのインストールといったデバイスを使うための設定を行うのが基本です。

これらのデバイス内部の設定を行い、社員やスタッフがすぐに業務を開始できる状態にまで準備します。


キッティングの作業方法の種類

キッティングには、「手作業」と「クローニング」の2種類の方法があります。

  • 手作業:1台ずつ手作業で設定する
  • クローニング:マスターPCを設定し、複数の機器にコピーする

手作業の場合、セットアップするデバイスさえあればすぐに着手できます。ただし、そこまで数が多いと対応しきれませんし、ミスが起こる可能性もあります。

クローニングは一度に数多くのセットアップが可能なので、効率的にキッティングが進められるのがメリットです。その一方で、マスターイメージの作成に時間を要する点や、専門知識が必要になる点などがデメリットとして挙げられます。

キッティングを行う数が数台程度であれば手作業でも良いですが、10台を超える場合はクローニングで行うのが良いでしょう。

種類メリットデメリット向いている場合
手作業・事前準備不要ですぐに作業開始できる・作業が属人化しやすい
・人的な作業ミスが起こりやすい
・人件費がかかる
・数台の設定の場合
・人員や工数が確保できる場合
クローニング・一度に大量のセットアップができる
・PCの品質を均一にできる
・万が一の場合にバックアップがあるので安心
・マスターイメージの作成〜検証に1ヶ月は必要
・専門知識が必要
・導入機種が異なる場合に個別設定が必要
・10台以上の設定の場合
・作業を効率化したい場合

参考:ビジネスPCのキッティング時に気を付けるべきポイントとは? – PIT-Navi|NECキャピタルソリューション株式会社

手作業の場合の手順

キッティングを手作業で行う場合は、以下の手順を踏み、1台ずつ設定していきます。

PCの場合もスマートフォンやタブレットの場合でもほぼ同様の手順ですが、スマートフォンやタブレットの場合のみ、SIMカードの設定が必要となります。

PCの場合スマートフォン・タブレットの場合
1.開梱し、電源を入れる1.開梱し、デバイスを充電する
2.ログインユーザーの作成2.SIMカードを設定する
3.ホスト名、IPアドレスなどの設定3.メールアドレス、パスワードを設定
4.アプリケーションをインストールし、ライセンス認証を行う4.言語設定
5.セキュリティ設定、省エネ設定、ブラウザ設定5.Wifiなどのネットワーク設定
6.セキュリティパッチの適用6.セキュリティ設定、省エネ設定、ブラウザ設定
7.ラベルの貼付・台帳への記帳7.アプリのインストール・アンインストール
8.ラベルの貼付・台帳への記帳

以下では、PCの場合で詳しく説明していきます。

1.開梱し、電源を入れる

キッティングは、デバイス本体を箱から出すことから開始します。

新規導入の際に、箱に同梱されていたマニュアル類は、後から見返す場合に必要なことがあるため、管理場所を決めておくとよいです。

2.ログインユーザーの作成

PCが起動した初期画面で、ログインユーザーの設定を行います。

なお、パソコンのハードウエアを管理するプログラムであるBIOS(バイオス)を設定する場合もありますが、通常のPCであれば、初期設定で適切な状態になっているため、特別な操作をする必要はありません。

3.ホスト名、IPアドレスなどの設定

ホスト名やIPアドレス、Wifi設定など職場環境に合わせた初期設定を行います。

4.アプリケーションをインストール、ライセンス認証を行う

社内の連絡で使用しているチャットツールやWebミーティング用のツールなど、業務に必要なアプリケーションをインストールし、必要に応じてライセンス認証を実施します。

5.セキュリティ設定、省エネ設定、ブラウザ設定

PC内部のセキュリティ設定や省エネ設定、ブラウザの画面の明るさの調整など、快適に作業ができる環境を整えます。

6.セキュリティパッチの適用

PCの弱点を補うための更新プログラムである、セキュリティパッチを適用します。

セキュリティパッチを適用しないままでいると、OSやソフトウエアの脆弱性を狙ったサイバー攻撃の標的になってしまうからです。

何らかの問題があるソフトウエアにパッチを適用することによって、ウイルスに悪用されることを防ぐことが可能になります。

不正アクセスによる被害や情報漏えいのリスクをなくすために、必ず設定するようにします。

参考:不正アクセスの対策方法とは?主な手口と防止策について解説 | LISKUL

7.ラベルの貼付、台帳への記帳

最後に、管理番号をつけたラベルをPCに貼り付け、台帳に記載して管理するようにします。

どのPCに不具合が生じているのかを把握しやすくなりますし、会社の資産として管理しやすくするためです。

多くの場合、導入するPCは一定以上の品質が保たれていますが、持ち運ぶ場合が多いとか、会社の共有PCであまり使用しないなど、状況や頻度によって不具合が生じる場合もあります。

そのような場合のトラブル状況や対応を記録していけば、より管理しやすくなります。

参考:オフィス備品の管理方法を徹底解説|備品管理を効率化するコツとは?

クローニングの場合の手順

クローニングでキッティングを行う場合の作業手順は、以下の通りです。

  1. マスターPCの作成
  2. SYSPREPコマンドでPC内の固有情報を削除
  3. マスターイメージ(標準イメージ)の抽出
  4. 各PCのブートオーダーの変更
  5. クローニング
  6. 個別キッティングの実施
  7. 動作評価の実施

1.マスターPCの作成

全てのPCにコピーする元となるマスターPCを作成します。

OSのセットアップ後に表示される初期設定画面で、[Ctrl] + [Shift] + [F3]を押下し、OSにログインします。

その後、手作業でキッティングする場合と同じ作業手順を実施して設定します。

2.SYSPREPコマンドでPC内の固有情報を削除

OSに付属しているSYSPREP(System Preparation=システム準備、読み:シスプレップ)で、マスターPC内にあるユーザー情報やネットワーク設定、ライセンスといった固有情報を削除(初期化)し、クローニングできる状態にします。

SYSPREPを実行せずにデバイスを複製した場合、デバイス固有の情報がコピーされてしまい、Windowsのライセンス違反となってしまうので必ず行ってください。

3.マスターイメージの抽出

マスターとなるイメージを抽出します。

具体的には、Windowsのシステムイメージエラーを修復するコマンドラインツールである「DISM」や、OSをネットワーク経由でOSを大量展開できる「WDS」といったツール、クローニングツールを使います。

4.各PCのブートオーダーの変更

マスターPCから各PCに同時にコピーできるようにするために、コピー先の各PCのブートオーダーを変更します。

ブートオーダーとは平たくいうと「OSの起動順序」のことで、各PC本体のハードディスク上で変更作業を行います。

参考:オペレーティングシステムのブート順序を変更するには?|remo SOFT WARE

5.クローニング

マスターイメージを各PCに配信し、クロージングを実施します。

6.個別キッティングの実施

PC1台ずつ個別にキッティング作業を行います。

マスターPCには入れていない、ホスト名やIPアドレスなどの設定、業務に必要なアプリのインストールなどを実施します。

7.動作評価の実施

最後に、問題なくキッティングが完了しているか、動作評価を実施します。

マスターPCで設定した項目が反映されているか、業務に必要なアプリケーションがインストールされ、作業開始可能な状態になっているか確認します。

参考:キッティングとは?【作業内容】必要な知識、手順、注意点|カオナビ人事用語集


キッティングを自社で行う際の注意点2つ

キッティングを自社で行う際には、以下の2つの注意点があります。

  • スケジュール管理を万全に行う
  • セキュリティ対策を徹底する

スケジュール管理を万全に行う

キッティングは、万一トラブルが生じて作業に遅れが生じても期日までに完了させられるように、スケジュール管理を万全にしてください。

キッティングは、1台でもある程度まとまった時間が必要ですし、複数台実施する必要があるならなおさら、まとまった作業時間が必要になるからです。

一概には言えないものの、標準的なWindowsのPC1台で1〜4時間が必要となります。

作業を担う情報システム部門や社内インフラ担当者は、通常業務と並行してキッティングを行うことが多いです。予想外の緊急業務が発生しても対応できるよう、スケジュール管理をしっかりと行いましょう。

セキュリティ対策を徹底する

キッティングを自社でする場合、セキュリティ対策を徹底しましょう。

社員やスタッフが、業務に関係ないサイトにアクセスして不要なアプリケーションをダウンロードした結果、ウイルスに感染して情報漏洩が発生するといったことは絶対にあってはいけません。

「特定のアプリ以外は使用できないようにする」「万一の盗難紛失の際のロック機能の設定」など必要な対策を講じる必要があります。


キッティングを効率化する方法

キッティングは、継続的な業務ではないものの個人情報や企業の機密情報の保持の観点でも重要で手間がかかる作業です。

特に、社員の入社が集中する時期や大規模端末を導入する際には、担当者に大きな負担がかかってしまいます。

これらを減らし、キッティングを効率化する方法としては以下の2つが挙げられます。

  • アウトソーシングする
  • クローニングツールを活用する

アウトソーシングする

1つ目は、キッティングを専門的に実施する企業にアウトソーシングする方法です。

その道のプロに作業を任せることで、高い品質を保てることはもちろん、作業効率が上がりますし、担当者が本来の業務に集中することが可能になります。

社員やスタッフの数が多いほど、作業時間は膨大になるので、その場合はアウトソーシングを検討するのが賢明です。

具体的なメリットとしては、例えば以下が挙げられます。

  • 作業効率が向上する
  • PC以外のセッティングも可能
  • セキュリティ対策が万全
  • IT資産管理がしやすい

作業効率が向上する

まず第一に、作業効率が向上することが挙げられます。

専門的に請け負ってくれる企業は専用の施設を持っているため、安定した品質でスピーディーな作業を実施してくれます。

自社対応の場合は、作業スペースも限られている上、通常業務との並行作業となるため、スケジュール管理をしっかりと行う必要があります。

また、数十台と台数が多い場合も担当者にとって負担となります。

これらをプロに任せることによって解決できるのは大きなメリットです。

PC以外のセッティングも可能

さらに、PC以外のセッティングも可能な点も挙げられます。

多くの企業では、スマートフォンやタブレットなどのPC以外のデバイスを業務に利用することが増えており、それぞれにキッティングが必要になります。

アウトソーシングによってこれらの作業負担を減らし、本来の社内業務にリソースを振り分けることができます。

セキュリティ対策が万全

さらに、セキュリティ対策が万全であることも大きいです。

最新のOSやPCに関する専門知識を持ったプロがキッティングを行うため、対応ミスがなく、セキュリティなど細かい設定も任せることができるからです。

経験が少ない社内担当者の場合、ソフトウェアのインストールやWindowsのバージョンアップ対策などに不安が残りますし、工数も多く必要となってしまいます。

常に最新情報に基づいた対策を行っているプロに任せることで、セキュリティ対策の質を向上させることができます。

IT資産管理がしやすい

キッティング作業をアウトソーシングすることで、IT資産管理がしやすくなるのもメリットです。

自社で手動でキッティングを行う際も、各PCに管理番号を付与し、購入時期や使用者を管理することができます。

しかし、セキュリティなど専門知識に精通していないと大切な資産を失いかねません。

例えば購入時期が古く、最新のOSやセキュリティソフトがインストールできないパソコンは、新しいものに買い替える必要があります。

これらの管理を実施してくれるため、次回以降のスケジュールも立てやすくなります。

参考:失敗しない情シス業務のアウトソーシング方法・適切な委託先の選び方 | LISKUL

アウトソーシングはパートナー選びに注意

キッティング作業をアウトソーシングする際に注意すべきなのが、パートナー選びです。

アウトソーシングすることによって、かえって作業が増えたり工数がかかりすぎたということにならないようにする可能性があります。

クローニングを使ったキッティングでは、マスターPC作成は、社内情シスや担当者が行うことが前提となっている場合が多いです。

そのため、委託する前段階で、キッティングのどの作業をお願いできるかやデータの閲覧権限などを明確にし、あらかじめ取り決めを行っておくと良いです。

そのほかアウトソーシングにあたって確認したい場合、以下の記事に詳しく解説していますので、参考にしてください。

参考:IT業務のBPOで依頼すべき業務内容と外部委託に失敗しないための3つのポイント | LISKUL
   ITアウトソーシング(業務委託)のメリットと委託先選びのポイント | LISKUL
   PCキッティングのアウトソーシングで情シス担当の仕事効率化|KitPost

クローニングツールを活用する

キッティングを効率化するもうひとつの方法は、クローニングツールを活用することです。

クローニングツールとは、マスターPCと同じ構成内容を別のPCにコピーするといったクローニングを簡単に行うことができるツールのことです。

メリットは以下のようなものがあります。

  • 簡単かつ短時間でできる
  • 無料のツールもある

簡単かつ短時間でできる

クローニングツールを使えば、簡単かつ短時間で作業を完了することができます。

手作業で生じがちな初期設定時の手間や作業漏れといった人的ミスをなくせるので、効率的に作業を完了することができます。

無料のツールもある

Windowsなら「SYSPREP(システム準備)」、Macなら「ディスクユーティリティ」といったOSに搭載されている無料ツールを活用することも可能です。

また、数台のキッティングで良い場合は、クローンソフトも市販されているので以下の記事も参考にしてみてください。

参考:【2022年最新版】クローンソフトのおすすめ人気ランキング10選【無料版も】|gooランキング


キッティング に関するよくあるご質問

キッティングでお悩みの方に役立つQ&Aをまとめています。

Q.キッティング作業の外注化のメリットとデメリットは?

A.外注化のメリットには、専門知識の活用や時間の節約がありますが、デメリットとしては、外部業者とのコミュニケーションの手間や、セキュリティ面のリスクが挙げられます。企業のニーズに応じて、適切な判断が求められます。

Q.キッティングサービスの選定ポイントは何ですか?

A.キッティングサービスを外注する際には、サービス提供会社の信頼性、対応スピード、柔軟性、コストパフォーマンスなどを考慮する必要があります。また、自社の業界特有の要求に対応できるかどうかも重要なポイントです。

Q.キッティング作業で発生しがちなトラブルは?

A.キッティング作業では、アイテムの欠品や誤梱包、設定ミスなどのトラブルが発生することがあります。これらを防ぐためには、在庫管理の徹底や作業フローの標準化が必要です。

Q.キッティング作業に必要なスキルや知識は?

A.キッティング作業には、正確な手作業や細部に注意を払う能力が求められます。また、製品や部品の仕様を理解し、適切に管理するための在庫管理スキルや、簡単なツールの操作知識も必要です。

Q.キッティング作業を効率的に進めるためのプロセスマネジメントとは?

A.キッティング作業を効率的に進めるためには、各作業工程の見える化と標準化が重要です。プロセスマネジメントを活用して、作業の進捗状況をリアルタイムで把握し、問題が発生した際には迅速に対応できる体制を整えます。


まとめ

キッティング(kitting)とは、パソコンやスマートフォンなどのセットアップ作業全般のことです。

具体的な作業としては、箱を出してからすぐに作業を開始できる状態まで整えるまでの一連の作業があり、全てを整えて社員やスタッフがスムーズに業務に取り掛かってもらえるよう準備をします。

実際の作業方法としては1台ずつ手作業で設定する「手作業」とマスターPCを設定して複数の機器にコピーしていく「クローニング」の2つがあります。

キッティングは手間がかかる作業ですので「アウトソーシング」「クローニングツール」を活用して効率化することをおすすめします。

キッティングを行うには、どんな作業が必要なのかを把握した上で、自社にあった対策を検討してください。

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