ビジネスモデル別のLTVの計算方法と合わせて覚えたい2つの指標

LTVの計算方法がわからないけれど、いまさら誰かに聞くのも……と思い、本記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

一般的なLTVは「顧客の平均購入単価 × 平均購入回数×継続期間」という計算式に当てはめることで求めることができます。

しかし、LTVの計算式は複数あり、ビジネスの目的や性質に応じて使い分ける必要があります。

本記事では一般的なLTVの計算式と、ビジネスモデル別のLTVの計算式をそれぞれ説明します。また、LTVを計算するうえでおさえておきたい指標や、LTVを正確に計算するためのポイントについても解説しています。

本記事を読むことでLTVを正確に計算できるようになり、ビジネスの収益性を向上できるようになります。


LTVの計算方法

LTVの基本となる計算式は以下のとおりです。

LTV=顧客の平均購入単価 × 平均購入回数×継続期間

例えば、顧客の平均購入単価が5,000円で1年間の購入回数が合計で5回、継続期間が3年の場合は以下の計算になります。

5,000円×5回×3年=75,000円

さらにCAC(顧客獲得コストを加味することで、より正確なLTVを計算し、顧客獲得にかけるコストを改善してLTVを上げる施策を行うこともできます。

LTV=顧客の平均単価×粗利率÷チャーンレート(解約率)

例えば、CACが8000円かかっている場合のLTVは以下の計算になります。

テキスト5,000円×5回×3年-8,000円=67,000円

このように、LTVを計算することで自社の経営状況を判断でき、改善すべきポイントを理解することができます。


ビジネスモデルごとのLTVの計算方法

LTVはビジネスモデルによって計算方法が異なります。

ここからはビジネスモデルごとにLTVの計算方法を紹介します。

  • サブスクリプション型のLTV計算式
  • BtoB型のLTV計算式
  • リピート商材型のLTV計算式

サブスクリプション型のLTV計算式(SaaS含む)

サブスクリプション型のビジネスでは以下の計算式でLTVを求めます。

LTV=顧客の平均単価×粗利率÷チャーンレート(解約率)

粗利率・チャーンレートはそれぞれ以下の計算式で求めることができます。

  • 粗利率=原価÷売上
  • チャーンレート=一定期間内に解約した顧客数÷期間前の総顧客数

サブスクリプションサービスやSaaSの場合は顧客がサービスを登録している間は定額の利益が見込めますが、解約されることも考慮した上でLTVを計算する必要があります。

BtoB型のLTV計算式

BtoBでは以下の計算式を使用します

LTV=顧客ごとの年間取引額×収益率×顧客の継続年数

上記の計算式では1社あたりのLTVを計算できます。

マーケティングや顧客獲得のためにかかった費用を加味した上で計算したい場合は以下の計算式を用います。

LTV=平均顧客単価×平均継続期間×収益率÷新規顧客獲得コスト(CAC)

これを求めることで新規顧客獲得にかかりすぎているコストを抑えたり、顧客維持にコストを振り分けたりと、コストの調整ができるようになります。

リピート商材型のLTV計算式

リピート商材では以下の計算式でLTVを求めます。

LTV=購入単価×購入回数×継続期間

例えば、購入単価5,000円×購入回数年8回×継続期間2年の場合のLTVは120,000円となります。

リピート商材型のLTVを計算する際の値は全て平均値で計算することで、顧客全体のLTVを計算することができます。

リピート商材型は販売している商品や時期によって顧客単価や購入回数が変わってくるため、入念な顧客分析が必要です。

顧客の購買行動の分析については以下の記事を参考にしてください。

参考:購買データとは?分析するメリットや導入しやすい代表的な購買データを紹介 | LISKUL
   売上アップに重要な「顧客分析」6種の方法と最新トレンドを解説 | LISKUL


LTV計算に欠かせない2つの指標

LTVの計算には欠かせない2つの指標が「チャーンレート(解約率)」「CAC(顧客獲得コスト)」です。

計算式の解説でもたびたび見かけた単語ですが、これらの指標を活用することで、より正確なLTVを計算できます。

参考:LTVの計算方法をサービス別で解説!活用方法・改善策まで丸っと理解|BeMARKE(ビーマーケ)

チャーンレート(解約率)

チャーンレートとは自社顧客のうち、どれだけの割合の顧客がサービスを解約したかを示す数値のことです

SaaSやサブスクリプションサービスは、月額料金が利益になるので、事業を存続させるためには顧客の継続利用が最も重要です。

チャーンレートには次の2種類があります。

種類計算方法活用ケース
カスタマーチャーンレート顧客数ベースサービスの価格が一律の場合
レベニューチャーンレート収益ベース複数の価格プランがある場合

SaaSやサブスクリプションビジネスの場合は、ここで割り出したパーセンテージを前述した「サブスクリプション型のLTV計算式(SaaS含む)」のチャーンレートの部分に当てはめます。

チャーンレートのくわしい計算方法やチャーンレートを下げて継続顧客を増やす方法については以下の記事が参考なるので、ぜひご一読ください。

参考:チャーンレート(解約率)とは?SaaS重要指標の計算方法・下げ方 | LISKUL

サービスの価格が一律の場合に使うカスタマーチェーンレート

カスタマーチャーンレートは、顧客数をもとにした計算式で、サービスの価格が一律の場合の計算式に使います。

カスタマーチャーンレートの計算式は以下のとおりです。

カスタマーチャーンレート = 一定期間内に解約した顧客数 ÷ 期間前の総顧客数

例えば、100人の顧客数から10人解約した場合のカスタマーチャーンレートは10÷100=10%になります。

レベニューチャーンレート

レベニューチャーンレートとは、収益をもとにした計算式で、複数の価格プランがある場合に使います。

レベニューチャーンレートの計算式は以下のとおりです。

レベニューチャーンレート = サービス単価 × 一定期間内に解約した顧客数 ÷ 一定期間内の総収益

以下のケースで計算してみましょう。

  • 通常プランが月額5,000円、プレミアムプランが月額10,000円のサービス
  • 1月末の登録者は通常プラン・プレミアムプランともに10人
  • 3月にプレミアムプランを5人が解約した

サービス単価10,000円 × 解約数5 ÷ 総収益(5,000円×10 + 10,000円×10) = 33%

このケースをカスタマーチャーンレートで計算すると、5÷20=25%になるので、ベース次第でチャーンレートが変わることがわかります。

より正確にチャーンレートを計算するためにはカスタマーチャーンレート、レベニューチャーンレートの理解が必要になります。

新規顧客の獲得にかかる費用を明確にするCAC(顧客獲得コスト)

CAC(獲得顧客コスト)とは、新規顧客、または1社獲得のためにかかったコストのことです。

「LTV÷CAC」を計算することで、顧客一人あたりの採算性を算出できます。これをユニットエコノミクスと呼びます。

ユニットエコノミクスの数値が高ければ高いほど、ビジネスの採算性が高く、利益が出ている状態です。

ユニットエコノミクスが健全な状態かを判断する目安は以下のとおりです。

  1. ユニットエコノミクス(LTV÷CAC)>3
  2. CACの回収期間が12か月以内

算出したユニットエコノミクスが3以上かつ、CACを12か月以内に回収できるのであればビジネスの採算性が高く、健全であるということです。

例えば、一顧客のLTVが30万円で、CACが10万円の場合は「30万円÷10万円」で計算すると3になるので、ユニットエコノミクスは健全となります。

10万円の顧客獲得コストで顧客平均単価が原価を差し引いて月に1万円以上ある場合は10か月以内にCACを回収できるため、上記の目安1と2の両方を上回ることになります。

算出結果が目安の1と2の両方を下回る場合は、ユニットエコノミクスが健全ではないので、顧客獲得にかかるコストを調整するなどの改善が必要になります。


LTVの計算にはデータの精度の高さが重要

LTVを正しく計算するためには自社顧客のデータを保存・整理できる環境が必要です。

特にSaaSやECサイトのように顧客1人あたりの購入数や利用月を求めるには、正確なデータもとにすることが重要です。

インターネットではLTVを計算できるExcelのテンプレートが配布されていますが、より正確に計算をするなら顧客情報を管理しやすいCRMツールなどの利用がおすすめです。

CRMツールは顧客情報を自動で整理・分析してくれるため、Excelのように手動でデータを管理する必要はありません。

マクロを組み込めばExcelでも処理の自動化はできますが、手間を考えるとCRMツールの方がデータを整理・分析する点では軍配が上がります。

CRMツールや顧客管理の方法については、こちらの記事にくわしく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

参考:CRMとは?活用の目的や機能、活用のコツをわかりやすく解説 | LISKUL
   初心者でも簡単にできる顧客データベースの作り方・管理の方法 | LISKUL
   【2023年最新版】CRMツールおすすめ15選を比較!選び方も紹介 | LISKUL
   顧客管理をすべき理由とは?Excelと顧客管理システムの違いまで解説 | LISKUL


まとめ

この記事では、LTVの計算方法やLTVを向上させるポイントについて解説しました。

LTVの計算式はビジネスモデルによって異なるため、自社の事業に合わせた計算式を用いる必要があります。

しかし、データの精度が低い場合は、売上につなげるためのLTV計算にはなりません。

LTV計算で正確な数値を出し、自社の事業に役立てるためには、自社顧客の購買行動や利用状況をまとめたデータの精度が、大変重要です。ExcelやCRMツールを活用して、自社顧客のデータを正確に取得することから始めましょう。