購買データとは、顧客情報や購買履歴がわかるデータのことです。購買データを分析することで顧客の購買傾向や顧客ニーズ、顧客像などを確認でき、マーケティングに活かせます。
ただし、購買データを所持しているだけでは成果につなげにくいため、「行動トレンド分析」や「クラスター分析」といった手法を活用し、顧客理解やニーズの分析が必要です。
そこでこの記事では、購買データの意味や役割、購買データを分析するメリットをまとめた上で、購買データの分析方法や活用方法をご紹介します。
「購買データを価値あるデータにしたい」と考えている方は、この記事を参考にしてください。
目次
購買データとは顧客情報や購買履歴が分かるデータ
購買データとは、顧客の購入商品や購入費用、購入日などを収集したデータのことです。
過去の購買データを分析することで、購買予測や収益アップにつながる施策を見つけられます。
購買データは以下の3つの種類に分けられます。
購買データの種類 | 内容 | 収集できる情報 |
---|---|---|
POS | 商品販売時に購入日時などを記録するシステム。スーパーやコンビニのレジなどが該当する | ・購入日時 ・購入商品 ・購入費用 ・個数 |
ポイントカード等の会員カード | ポイントの付与や利用などを行う会員カード。カード作成時の顧客情報や購買履歴を入手できる | ・購入日時 ・商品/費用/個数 ・顧客の年齢 ・性別 ・購買履歴 |
クレジットカード・キャッシュレス決済 | クレジットカード・キャッシュレス決済利用時のデータを入手できる | ・決済番号 ・取引日時 ・取引金額 |
日々の商品販売では「購買情報」を取得でき、ポイントなどを付与する会員カードを導入している場合は、顧客の属性まで確認できます。
購買データを分析することで得られる4つのメリット
購買データを分析することで以下のメリットが得られます。
- 顧客の購買傾向がわかる
- 顧客ニーズを確認できる
- 顧客満足度向上につながる
- ターゲティングの精度を高められる
購買データを分析すれば、顧客理解につながり、今後売れる商品や顧客の求めている商品を見つけるのに役立ちます。
顧客の購買傾向がわかる
購買データを分析することで、顧客の購買傾向を把握できます。
「Aの商品を購入する人はBの商品をセットで買うことが多い」というように顧客が購入する商品をあらかじめ予測することができます。
顧客の購買傾向を把握することで、売れる商品、売れない商品を把握でき、季節や時間、シーズンに合わせて最適な商品を販売し、売り上げアップにつなげることが可能です。
実際にアメリカの大手スーパーマーケットが発見した「おむつとビール」に関連性があるという分析結果があります。
一見すると関連性のない2つの商品に思えますが、購買データを分析したところ「赤ちゃんの父親がこのセットをよく購入する」ということがわかっています。
参考:おむつとビール(おむつとびーる):情報マネジメント用語辞典 – ITmedia エンタープライズ
そのほかにも、購買データにある購入日の天気や気温のデータを活用することで「雨の日は長靴や傘がよく売れる」「気温が35度以上になったらアイスクリームがたくさん売れる」など、購買数の増減の把握が可能です。
顧客ニーズを確認できる
購買データを分析することで、顧客ニーズを確認できます。
顧客の購入履歴から「どんな商品が売れているのか」「逆に選ばれていない商品はどれか」を把握できれば、ニーズにあった商品を提供できるだけでなく、不人気の商品の生産をストップさせ、コストを削減することも可能です。
そのほかにも、顧客ニーズが明確になることで、新規顧客を獲得するためのアプローチを発見することにもつながります。
顧客満足度向上につながる
購買データの分析結果を元にターゲットの求める商品を開発・提供し、顧客ニーズを満たした運用を行うことで顧客満足度が向上します。
顧客満足度が向上することで期待できる効果は以下です。
- 口コミが広がって新規顧客の増加につながる
- リピーターの増加により収益向上・安定化を図れる
- ブランド力が向上しイメージがよくなる
ターゲティングの精度を高められる
購買履歴や属性といった情報を分析することで顧客層が明確になり、ターゲティング精度向上につながります。
本来はWeb広告の予算を確保し、何度も広告配信を行って効果測定を行いながらターゲティングの精度向上を目指しますが、購買データを分析することで事実データを元にした精度の高いターゲティングの実現が可能です。
ターゲティングの精度が上がると、Web広告を配信する際に効果の出やすいターゲットに的確に広告配信を行えます。
購買データを活用して成果をあげた事例2つ
購買データの活用方法は企業によって様々です。
ここでは、購買データ活用の参考になる企業事例を2つご紹介します。
広告接触者の購買率を非広告接触者の約1.3倍にしたCCCMKホールディングス株式会社の支援事例
約7,000万人のTカード利用者のデータを元に企業の課題解決をサポートするCCCMKホールディングスは、Tポイントの購買履歴データを活用しデジタル広告の成果アップを実現しました。
同社は「栄養ドリンク」のデジタル広告を、その商品や競合銘柄を購入したことがあるユーザーにしぼって配信しました。さらに、Tポイントの購買履歴データと広告接触者データを突き合わせて、広告の効果測定も行いました。
これにより、広告接触者の購買率は非広告接触者の約1.3倍にアップしました。
この事例は、購買データを活用してデジタル広告の成果をアップさせるだけなく、広告への接触が購買に繋がったかまで検証したことがポイントです。
購買データの分析結果を元に新商品を開発し15~20%の売り上げアップに成功した株式会社ヤクルト本社の事例
飲料や食品などの製造・販売を行う株式会社ヤクルト本社では、購買データを分析し、ターゲットやシーズンごとの購買頻度の分析の結果を元に新製品の開発を行い、15〜20%の売り上げアップに成功しています。
同社が行ったのは、購買データによる顧客属性の把握や気象データ、Googleの検索結果を活用し、顧客の購買行動を徹底的に分析しました。
これにより顧客ニーズを把握でき、ニーズに合わせた新商品を開発することで15~20%の売り上げアップに成功しました。
この事例は、購買データを分析することで顧客ニーズを把握し、それに合わせて新商品を開発したことがポイントです。
参考:新製品の売上約20%増:ヤクルト(オランダ)のTIBCO Spotfire活用事例 – TIBCO | NTTコム オンライン
ビッグデータ活用事例集|12業界の実例から知識を得よう
平均購入率を12倍向上させた株式会社ローソンの事例
コンビニエンスストアを運営する株式会社ローソンでは、顧客の購買履歴を元にAIが顧客に合ったクーポンや広告を記載したレシートを発行することで、平均購入率を12倍に向上させることに成功しました。
同社はこれまでにも会員データによる購買履歴を元に顧客が興味を持ちそうなクーポン券やレシート広告を発行していました。
その上でさらに効果を高めるために、AIを活用して顧客が過去に購入した商品のクーポン券や興味を持ちそうな商品をレシートに印字し、発行しました。
その結果、ローソンを利用する会員全体の平均購入率が12倍以上高くなりました。
この事例は、顧客の購買データを元に興味を持ちやすい商品を提案することで、商品購入率の向上を促したことがポイントです。
参考:ローソン/2022年3月からAI活用のレシート広告配信 | 流通ニュース
購買データ分析・活用する手順
購買データ分析・活用する手順は以下の通りです。
- 購買データを収集する
- 購買データを整理する
- 分析手法を活用して購買データを分析する
- 分析結果を反映し仮説検証を行う
詳しく解説します。
購買データを収集する
まずは購買データを収集することから始めましょう。
ECショップであれば顧客の購買履歴を確認します。店舗の場合POSシステムを確認し、購買データを収集します。
会員証などを発行している場合は、顧客ごとの購買履歴のデータを抽出しておくことで、詳細な分析が可能です。
購買データを整理する
購買データを収集後は、分析時のエラーをなくすためにデータの整理を行います。
具体的には、データの重複情報などを削除し、データの抽出や分析がしやすくなるよう整理していきます。
データの整理はエクセルなどの表計算ソフトでもできますが、データ量が膨大で手作業で整理できない場合は名寄せやデータクレンジングなどのデータ整理ツールを利用するのがおすすめです。
名寄せやデータクレンジングについては、以下の記事が参考になります。
参考:名寄せとは?顧客データを見やすくまとめる主要ツール7選を紹介
データ分析に必要な「データクレンジング」とは?実施すべき理由と手順
分析手法を活用して購買データを分析する
データを整理したら、分析手法を活用して購買データを分析しましょう。
分析手法 | 利用シーン |
---|---|
行動トレンド分析 | 季節・曜日・時間帯・シーズンごとに顧客の行動を分析したい時 |
クラスター分析 | 類似する顧客を1つの集団にまとめたい時 |
デシル分析 | 顧客の購入金額を10段階に分けて優先すべき顧客とそうでない顧客を振り分けたい時 |
RFM分析 | 収益につながる優良顧客を見つけ出したい時 |
バスケット分析 | 特定の商品と一緒に売れている商品を見つけたい時 |
分析方法はそれぞれ利用シーンが異なります。
分析する前に「どんな情報が欲しいか」を明確にした上で分析手法を活用すれば、「分析結果を試したけど効果がなかった」などの失敗を防ぐことができます。
分析方法の詳細については下記記事にまとめてありますのでご確認ください。
参考:売上アップに重要な「顧客分析」6種の方法と最新トレンドを解説
分析結果を反映し仮説検証を行う
データを分析したら、その結果を元に仮説検証を行いましょう。
例えば、バスケット分析で「牛乳を購入する人は特定のお菓子を購入する人が多い」という分析結果が出たら、関連商品を牛乳を置いている陳列棚の近くに配置するなど、仮説検証を行います。
仮説検証を繰り返すことで、自社顧客にあったECショップや店舗運営を行えるようになります。
購買データを活用して成果を上げる3つのポイント
購買データを活用して成果を上げる3つのポイントは以下の通りです。
- 購買データの分析結果を元に顧客の状況に合わせたアプローチを行う
- 購買データを元にターゲティング広告を出稿する
- 購買データを元にアップセル・クロスセルを狙う
購買データの分析結果を元に顧客の状況に合わせたアプローチを行う
購買データの分析結果を元に、顧客の状況に合わせたアプローチを行いましょう。
購買データを分析することは自社顧客の理解につながるだけでなく、購買プロセスを明確にでき、適切なタイミングで商品の告知や提案を行えるようになります。
具体的には、顧客の状況に合わせて以下のようなアプローチが可能です。
- 過去購入者、潜在顧客層に向けた新商品認知のためのメッセージ・広告配信
- 購買日を元にした「買い忘れはありませんか?」などのメッセージ配信
- リピーター顧客に合わせた次回購入を促すキャンペーン配信
これを行うためには、「デシル分析」や「RFM分析」を活用し、顧客の利用状況を可視化する必要があります。
顧客の状況に合わせたアプローチを行うためには、顧客が購入に至るプロセスを可視化するカスタマージャーニーマップを作成するのも効果的です。
カスタマージャーニーマップの作成方法や活用方法については以下の記事を参考にしてください。
参考:5分でわかるカスタマージャーニーとは?取り入れ方や分析のコツを事例とともに解説
購買データを元にターゲティング広告を出稿する
購買データを元にターゲティング広告を出稿するのも効果的です。
購買データは自社商品の販売で得た事実を元にした情報であり、それを元にターゲティングを行うため、データ精度が高いです。
これを利用することで、見込み客に絞った広告配信が可能になります。
Web上から集めた推測データよりも精度の高いターゲティングができるので、購買データを元にターゲティング広告を出稿しましょう。
広告配信については以下の記事も参考になります。
参考:広告運用者必見!意外と簡単な広告シミュレーションの考え方・作り方
現役運用者が教えるリスティング広告の効果を改善する超基本ポイント
Yahoo!広告のサーチターゲティングとは?キーワードの選び方
ジオターゲティング広告とエリア配信の違い、適切な選び方
Facebook広告のターゲティングの種類と狙ったターゲットに届けるための3つのコツ
インスタ広告でできるターゲティングの種類と成果を挙げる設定のポイントを解説
YouTube広告のターゲティングの方法と、事例からわかった成果を挙げるコツ
LINE広告(旧:LINE Ads Platform(LAP))で設定できる全ターゲティングを徹底網羅!オススメや事例も解説
購買データを元にアップセル・クロスセルを狙う
購買データを元にアップセルやクロスセルを狙いましょう。
購買データをバスケット分析やクラスター分析などの手法で分析することで「顧客の購買傾向」を分析することで、アップセル・クロスセルとして提案しやすい商品を把握できます。
例えば、購買データの分析により、「革製品を購入する顧客は、一緒に手入れ用の革用クリームと布を購入している」という結果が出た場合、分析結果を活かしてクロスセルで「革用クリームと布」を提案すれば購入してもらいやすくなります。
クロスセルやアップセルの具体的な方法については以下の記事を参考にしてください。
参考:アップセル・クロスセルとは?顧客単価や満足度を高めるポイントを解説
クロスセルとは?アップセルとの違いや実践ステップを事例を交えて解説
他社の購買データの活用も効果的
自社の購買データだけでは情報量が少なく、分析に活かせない場合は他社の購買データの活用が効果的です。
他社で集められた購買データを活用することで、今まで分析できなかったユーザーのニーズを把握できたり、新しい角度でのマーケティングプランの設計が可能です。
その中でよく使われている購買データは会員数約7,000万人のTカードのデータなどが挙げられます。CCCMKホールディングス株式会社が保有している日本最大級の購買データで、スーパー・ドラッグストア・コンビニなどの購買情報が蓄積されています。
Tカードのデータには約7,000万人のライフスタイルデータがある
Tカードのデータでは、Tカードを利用している約7,000万人のユーザーの性別や年齢、趣味嗜好をはじめ、コンビニ、スーパー、ドラックストアなどTポイント提携先の購買データを活用することができるので、自社にない情報から顧客の購買行動やニーズを分析できます。
Tカードのデータのように、他社のデータをうまく活用することで、売り上げの停滞やマーケティング施策の効果低迷を打破するきっかけになります。
Tカードのデータを活用した具体的な分析事例
Tカードのデータでは、自社の購買データから分析できる「何がどれだけ売れたか」だけでなく、「何歳の人で、男女のどちらが、どの商品を購入したか」まで、具体的に分析できるようになります。
これまでは顧客の購買傾向しか分析できなかったものが、Tカードのデータなどの活用により、精度の高い顧客分析が可能です。
例えば、自社の購買データだけでなく、Tカードのデータにある購買データも合わせて分析することで、顧客のトレンドや新たなニーズをいち早く察知し、ビジネスに活かすことができます。
Tカードのデータは3rdパーティcookie対策になります。
TTカードを利用するには会員登録が必要です。そのためTカードには顧客一人ひとりの年齢や性別といった属性情報が必ず登録されています。
また、会員一人一人にIDを振り分けるシングルID管理のデータのため、「どこを経由して購入に至ったか」という購買トラッキングを行うことが可能です。
そのため、cookieがなくなりトラッキングができなくなったとしても、Tカードのデータを活用すれば「顧客が何をみて、どこを経由して商品購入したか」を正確に分析できます。
Tカードのデータの活用・導入ハードルは低い
Tカードのデータを活用した顧客分析やターゲティング広告を提供するCCCMKホールディングス株式会社は、Tカード利用者の属性や趣味嗜好を分析し、「20代女性で美容に悩みを抱えている首都圏に住むユーザー」など、詳細なターゲティングができるデータベースを活用したサービスを提供しています。
まとめ
この記事では、購買データの役割や目的、分析手法や購買データの活用方法について解説しました。
購買データを分析することで、顧客の購買傾向や顧客ニーズ、顧客像を確認できます。
これを活用することで、アップセル・クロスセルを促したり、客単価向上を狙ったりと、売り上げアップにつながる施策を検討・実施することができます。
購買データは使い方次第で「価値のあるデータ」になるため、購買データをお持ちの方や、これからデータを集める方はこの記事を参考に、購買データをマーケティングに活かしていきましょう。