
インバウンドビジネスとは、訪日外国人を対象に商品やサービスを提供するビジネスのことです。
観光業をはじめ、小売、宿泊、飲食、体験サービスなど幅広い業種で展開されており、訪日客の多様なニーズに応えることで、新たな収益源の確保や地域経済の活性化が期待されています。
一方で、言語や文化の違い、国際情勢の影響、人手やコストの負担など、取り組みにあたって注意すべき点も多く存在します。
そこで本記事では、インバウンドビジネスの基本から、注目される背景、主な業種と領域、成功のポイント、今後の展望までをわかりやすく解説します。
訪日外国人との接点を事業に活かしたいとお考えの方は、ぜひご一読ください。
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目次
※本記事は合同会社DMM.com提供によるスポンサード・コンテンツです。
インバウンドビジネスとは
訪日外国人を対象に商品やサービスを提供する取り組みが「インバウンドビジネス」です。
近年では観光業にとどまらず、小売や医療、地方体験サービスなど、さまざまな業種で展開が進んでいます。
もともと「インバウンド(Inbound)」とは「内向き」や「外から内に入ってくる」という意味を持ち、ビジネスにおいては主に「外国人が日本に訪れることによって生まれる経済活動」を指します。政府が観光立国を推進していることもあり、個人旅行客(FIT)の増加、リピーター層の拡大、多様化するニーズへの対応が求められる時代になっています。
単なる一時的な観光収益ではなく、長期的な視点で外国人との接点をどうつくり、どう継続していくかが重要です。そのため、企業や自治体にとっても「収益源の拡大」や「地域活性化」の観点から、今あらためて注目されている分野といえるでしょう。
参考:インバウンドとは?外国からの訪問者を引き寄せるインバウンド対策ガイド|LISKUL
インバウンドビジネスが注目される背景にある4つの要因
訪日外国人の増加と消費拡大を背景に、インバウンドビジネスは多くの業界で注目を集めています。
政府の後押しや個人旅行の普及、そして新しい観光ニーズの登場により、今や一過性のブームではなく、成長戦略の一環として捉えられつつあります。
1.訪日外国人の回復と消費力の高さ
コロナ禍で一時的に落ち込んだインバウンド需要は、2023年以降着実に回復しています。特にアジア圏を中心に再び多くの観光客が日本を訪れており、1人あたりの消費額も高水準を維持しています。
宿泊・飲食・小売など広範な分野で経済効果が期待されています。
参考:訪日外国人動向2024 – 観光統計 – JTB総合研究所
2.政府の観光政策とビザ緩和の影響
日本政府は「観光立国」を目指し、ビザ発給の簡略化や免税制度の整備、空港・交通インフラの強化などを継続的に実施してきました。
これにより、日本旅行のハードルが下がり、多国籍な観光客の流入が実現しています。
3.個人旅行(FIT)の増加とニーズの多様化
近年は団体旅行よりも、自由度の高い個人旅行(FIT)が主流となっています。訪問先の選定や体験の好みに大きな違いがあり、都市圏だけでなく地方の観光資源にも関心が集まっています。
結果として、地域の中小企業にもインバウンドの波が届くようになりました。
4.持続可能性や新しい観光スタイルへの関心
コロナ禍以降は「密を避ける」「地域との共生を重視する」観光スタイルが重視されるようになっています。
エコツーリズムや地域資源を活かした体験型コンテンツなど、サステナブルな視点を取り入れたインバウンドビジネスも増加傾向にあります。
インバウンドビジネスの主な業種と領域6つ
インバウンドビジネスは、観光業だけにとどまらず、幅広い業界で展開されています。 訪日外国人のニーズが多様化・高度化する中で、宿泊・小売・交通・医療・美容・エンターテインメントなど、あらゆる分野で新たな価値提供が求められています。
また、都市部だけでなく、地方の中小企業や自治体にとっても大きなビジネスチャンスが広がっており、地域活性化にもつながっています。
1.宿泊業(ホテル・旅館・民泊など)
宿泊業は、インバウンド需要の中核を担う領域です。 訪日外国人が日本に滞在するうえで避けて通れないため、安定した需要が見込まれます。
都市部のホテルだけでなく、最近では地方の旅館やゲストハウス、古民家をリノベーションした民泊などが人気を集めています。
「日本らしさ」や地域独自の体験を求める傾向が強まっており、宿泊施設そのものが観光資源になっているケースもあります。
加えて、宗教や文化的背景に配慮したサービス、英語・中国語などの多言語対応、キャッシュレス決済への対応など、国際基準のサービス提供が求められる点も特徴です。
2.小売業(ドラッグストア・百貨店・専門店など)
買い物は、訪日観光客にとって欠かせない楽しみのひとつです。 化粧品、医薬品、家電、食品、キャラクターグッズなど、日本ならではの商品が人気です。
特にドラッグストアでは、免税対応やまとめ買いによって1人あたりの購買額が大きくなる傾向があります。百貨店や空港内店舗などでも、外国人対応を意識した接客やプロモーションが進んでいます。
また、近年ではQRコード決済やAlipay、WeChat Payといった訪日客に馴染みのある支払い方法を導入する店舗が増加しています。
商品の魅力だけでなく、言語や決済面での「ストレスのなさ」が売上に直結するようになっています。
3.飲食業(レストラン・屋台・食体験など)
和食文化への関心が高まる中、飲食業もインバウンドの恩恵を受けています。 寿司、ラーメン、天ぷらといった定番料理に加え、居酒屋やローカルフードを楽しむ観光客も増加しています。
一方で、ヴィーガンやベジタリアン、ハラール対応といった食の多様性への対応が課題となるケースもあります。
アレルゲン表示や多言語メニューの整備など、細やかな配慮が求められる領域です。
最近では、味覚だけでなく「調理体験」や「酒蔵見学」など、体験型の飲食サービスも人気を集めています。
4.交通・観光サービス(ガイド・ツアー・体験プランなど)
訪日外国人の行動範囲が都市部から地方へと広がる中で、交通・観光サービスの重要性が高まっています。 地域をスムーズに巡るための周遊バスや観光タクシー、多言語対応ナビアプリなどの整備が進んでいます。
また、着物体験や陶芸教室、農業体験など、「モノ消費」ではなく「コト消費」に焦点を当てた体験型ツアーの需要も拡大中です。
これらのサービスは、地域との接点を生み、顧客満足度を高める要素として重要視されています。
5.医療・美容・健康サービス
医療ツーリズムや美容体験を目的に来日する外国人も年々増えています。 がん健診や人間ドックなどの高度な医療サービスから、美容整形やエステ、温泉療養まで、提供される内容は多岐にわたります。
この領域では、医療通訳や多言語によるカウンセリング対応、プライバシー保護など、高度なホスピタリティが求められます。
信頼性と安全性を重視する外国人に対し、日本の医療水準やサービス品質をどう訴求するかが成功のカギとなります。
6.地方創生・地域ビジネス
訪日客の関心は、いまや東京・大阪・京都といった定番観光地にとどまりません。 四国や九州、東北などの地方にも注目が集まっており、観光資源を活かした地域発のビジネスが数多く生まれています。
農業体験、郷土料理、伝統工芸、地元のお祭りなど、地域ならではの「ストーリー性ある体験」は、リピーターや個人旅行客に特に支持されています。
自治体と企業が連携して地域全体をブランド化し、持続的に訪問客を呼び込む取り組みも進んでいます。
参考:建前として地方創生を語る企業ではなく地域愛があふれる本音の8社|LISKUL
インバウンドビジネスの成功事例4つ
インバウンドビジネスで成果を上げている企業や自治体には、共通した工夫や取り組みがあります。 ここでは、実際に訪日外国人の支持を集めている成功事例をいくつか紹介しながら、そのポイントをひも解いていきます。
事例1:京都・着物レンタル店の多言語&SNS戦略
京都市内のある着物レンタル店は、多言語対応の予約サイトとSNS広告を活用することで外国人観光客の集客に成功しています。 英語・中国語・韓国語に対応したサイトと、InstagramやYouTubeを活用した「着物体験」の発信が人気の要因となりました。
さらに、スタッフの外国語対応や駅からのアクセスの良さ、明瞭な価格設定も評価されています。
「観光地にある」だけではなく、体験価値を明確に打ち出した戦略が功を奏した好例です。
事例2:高山市・地方体験型ツーリズムの成功
岐阜県高山市では、都市部では得られない農村体験や文化体験を提供することで、インバウンド需要を呼び込んでいます。 外国人観光客向けに和菓子作りや農業体験、古民家宿泊などをパッケージ化したツアーを展開し、高い満足度を得ています。
観光協会と地元事業者が連携し、予約サイトや多言語パンフレットの整備、現地での通訳スタッフの配置など、受け入れ体制も強化されています。
「地域ならではの体験」が成功のカギとなった好事例です。
事例3:家電量販店・決済と接客の徹底強化
都市部の家電量販店では、訪日客によるまとめ買いを想定した売場づくりや、QRコード決済・免税手続きの自動化などを積極的に導入しています。 また、各国言語に対応できるスタッフを常駐させることで、安心感と利便性の両立を実現しています。
さらに、商品説明や使い方を動画で補足するなど、購入後のトラブルを防ぐ工夫もされています。
販売数を上げるだけでなく、訪日客の「不安」を徹底的に取り除いた点が成功につながっています。
事例4:福岡市・ラーメン店のハラール対応とメディア戦略
福岡のある人気ラーメン店は、ムスリム観光客の取り込みを狙って、ハラール認証を取得したメニューを開発しました。 英語・アラビア語のメニュー表記、礼拝スペースの案内なども整備されており、安心して利用できる環境が支持されています。
さらに、ムスリム向けのグルメガイドブックや旅行メディアへの掲載、インフルエンサーとの連携により、海外からの知名度が急上昇。
「誰に」「どのように届けるか」という明確なターゲティングが功を奏した事例です。
インバウンドビジネスのメリット4つ
インバウンドビジネスには、国内市場だけでは得られない成長機会が多く存在します。
訪日外国人の消費を取り込むことで、売上向上はもちろん、ブランディングや地域活性化といった副次的な効果も期待できます。
本章では、代表的なメリットを4つ紹介します。
1.新たな収益源の確保
インバウンドビジネスの最大の魅力は、国内需要とは別の新しい収益源を得られる点です。 特に少子高齢化により国内市場が縮小する中、訪日外国人の消費を取り込むことは事業の安定性や成長性を高める手段となります。
また、訪日客の平均消費額は日本人に比べて高い傾向があるため、客単価の向上にもつながります。
2.ブランド価値の向上
外国人観光客が自社商品やサービスを評価し、SNSや口コミサイトで紹介してくれることで、グローバルな視点でのブランド認知が広がります。 「外国人にも選ばれるブランド」という信頼感は、国内外問わず企業価値の向上につながります。
とくに、地方の中小企業や老舗企業にとっては、自社の強みや地域の魅力を再発見するきっかけにもなります。
参考:ブランド価値とは?基礎や構成要素と価値を高めるテクニックをご紹介|LISKUL
3.地域経済への波及効果
観光客が地域を訪れ、宿泊・飲食・交通・お土産などにお金を使うことで、地域経済に広く恩恵が及びます。 インバウンド需要を取り込むことで、地域内での雇用創出や事業の多角化が進み、人口減少に悩む地域の再活性化にもつながります。
また、地元住民との交流を通じて「地域らしさ」が見直されるなど、観光以外の側面にも好影響をもたらします。
4.従業員の意識改革・スキル向上
インバウンド対応を進める過程で、従業員が語学スキルや異文化理解を深める機会が増えます。 グローバルな接客や柔軟な対応力が求められるため、社内のサービス品質全体が底上げされることも珍しくありません。
これは、将来的に海外展開や外国人採用を視野に入れる企業にとって、大きなメリットとなるでしょう。
インバウンドビジネスのデメリット4つ
インバウンドビジネスには多くの魅力がありますが、一方で無視できない課題やリスクも存在します。 短期的な流行に依存しすぎたり、対応力が追いつかなかったりすることで、事業が不安定になるケースも少なくありません。
ここでは、代表的なデメリットを4つ紹介します。
1.需要の変動が大きい
インバウンド需要は、国際情勢・為替・自然災害・感染症など、外部要因の影響を受けやすいのが実情です。
たとえば新型コロナウイルスの流行時には訪日客がほぼゼロとなり、依存度の高い事業ほど大きな打撃を受けました。
観光客数が増えているときでも、国や地域ごとの来訪者数に偏りがあると、特定層に頼るリスクが高まります。
2.言語・文化の壁への対応が必要
外国人を相手にするには、言語対応はもちろん、宗教や文化の違いへの理解も不可欠です。
たとえば、ハラール対応やアレルゲン表示、接客時のマナーなど、見落とすとトラブルや顧客満足度の低下につながる場面が多くあります。
このような対応には、一定の教育コストやマニュアル整備、人材育成が必要となります。
3.人手とコストの負担が増える
インバウンド対応には、予約システムの多言語化、キャッシュレス対応、案内サインの整備など、初期投資が発生します。 また、繁忙期には短期間で大量の人手が必要となり、スタッフの確保やシフト管理が課題になることもあります。
外国人対応に慣れたスタッフを育成するにも時間がかかり、人材の流動性が高い業界では、継続的な課題となりがちです。
4.地域住民との摩擦が生じることも
観光地では、外国人観光客による騒音やごみの問題、交通渋滞などが地域住民のストレス要因になるケースがあります。
特に住宅街や文化的な場所では、マナーや価値観の違いがトラブルの原因となることもあります。
持続的にビジネスを続けるには、地域との共存を意識し、情報発信やルール整備を進める必要があります。
インバウンドビジネスを成功させるポイント6つ
インバウンドビジネスを軌道に乗せるには、単に訪日外国人を受け入れるだけでは不十分です。 「どんな顧客を、どう満足させ、どう再訪につなげるか」を逆算して考える視点が不可欠です。
特に現在は、国籍・年齢・旅行目的が多様化しており、画一的なサービスでは選ばれにくくなっています。
ここでは、インバウンドビジネスを成功させるうえで押さえておきたい主要なポイントを6つ紹介します。
1.ターゲット国・ターゲット層を明確に設定する
成功の土台となるのが、ターゲットの絞り込みです。 「外国人観光客」という大きなくくりではなく、「どの国の」「どの年代の」「どんな旅行目的を持った人か」を明確にする必要があります。
たとえば、東南アジアからの若年層であればSNS映えを重視し、欧米のシニア層は文化体験や安全性を重視する傾向があります。
ターゲットを明確にすれば、打ち出すメッセージや広告媒体、メニュー構成、体験内容など、すべてに一貫性を持たせることができます。
また、訪日客の来訪国は時期や政策によって変動するため、統計データ(例:JNTOや観光庁の資料)をもとに戦略を柔軟に見直すことも重要です。
2.多言語・多文化対応の「深さ」が差を生む
多言語対応は、単なる翻訳や表記ではなく「異文化理解を伴った設計」が鍵です。 Webサイト、店頭サイン、商品説明、接客、問い合わせ対応など、すべての顧客接点でわかりやすさと安心感を提供できているかが問われます。
たとえば「翻訳アプリ任せのスタッフ対応」では不安を抱かれることもあるため、接客フレーズの定型化や、現地文化の理解を含めた教育が有効です。
また、宗教上の制限(豚肉やアルコールの有無)やマナーへの配慮が、信頼構築の決め手になるケースもあります。
3.デジタル環境とキャッシュレス対応の整備
訪日外国人は、スマートフォンを前提にした情報収集・予約・決済を行うのが一般的です。 そのため、モバイルファーストのWeb設計、オンライン予約対応、電子クーポンの発行、マップ連携などが有効に機能します。
また、支払い手段ではAlipay・WeChat Pay・銀聯・VISA・Mastercardといったグローバルなキャッシュレス対応が必要です。
特に中国・台湾・韓国の旅行者は、QRコード決済への依存度が高く、導入の有無が売上を左右する場面も少なくありません。
加えて、レシート・保証書・マニュアルのデジタル対応(PDF配布、QRコード案内など)も、安心感と利便性を高める要素です。
4.SNS・口コミメディアの戦略的活用
インバウンドビジネスにおいて、SNSと口コミサイトは「無視できない集客チャネル」です。 InstagramやYouTubeをはじめ、Tripadvisor、Googleマップ、Reddit、XiaoHongShu(小紅書/中国圏)など、地域や属性ごとに有力なプラットフォームは異なります。
重要なのは「ユーザーが体験したくなるような情報発信」をすることです。
商品の説明だけでなく、体験中の写真やスタッフとの会話など、リアルなストーリーを含めた投稿が好まれます。
さらに、現地インフルエンサーとの提携やUGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用も、費用対効果の高い手法として注目されています。
参考:UGCとは?CGMとの違いや、ビジネスでの活用メリットを解説!|LISKUL
5.スタッフ教育と組織体制の整備
どれほど戦略が優れていても、現場での対応が追いついていなければ顧客満足度は上がりません。 そのため、スタッフへの研修や対応マニュアルの整備が欠かせません。
具体的には、以下のような教育内容が有効です。
- よくある質問への多言語対応フレーズの暗記
- 文化・宗教に関する基礎知識の習得
- 緊急時対応のルールと報告体制
- 接客品質の統一(誰が対応しても一定水準以上になる)
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また、予約管理・免税処理・在庫対応など、バックオフィス業務でもインバウンド対応が必要になるため、組織全体での理解と仕組みづくりが求められます。
参考:社内研修とは?知識・スキルが定着する設計方法と対象者別のテーマ例を紹介|LISKUL
マニュアルの作り方でおさえておきたい5つのポイント|作成ツール厳選5選|LISKUL
FAQの作り方6ステップ!「よくある質問」の例も120個掲載|LISKUL
6.「体験価値」の明確化と差別化
価格や立地といった表面的な差別化ではなく、「なぜここでしかできない体験なのか」が明確に伝わる設計が重要です。
たとえば、地元の食文化をストーリーで伝える、スタッフとの交流を前面に出す、製造工程を見学できるなど、体験そのものに付加価値をつけることが求められます。
そのうえで、他店舗との違いやリピーターに向けた特別対応など、継続的に選ばれる工夫も必要です。満足した外国人観光客は、SNSや口コミを通じて新たな顧客を連れてきてくれる「宣伝者」にもなり得ます。
今後の展望と5つのトレンド
インバウンドビジネスは、今後も成長が見込まれる分野です。
ただし、単なる観光客の受け入れではなく、持続可能性や体験価値の向上、多様なニーズへの対応が求められる時代へと進化しています。
社会情勢や技術革新も踏まえ、どのような変化が起き、どこにビジネスチャンスがあるのかを把握しておくことが重要です。
1.持続可能な観光(サステナブルツーリズム)の浸透
大量の観光客を一時的に受け入れる「マスツーリズム」から、地域や環境に配慮した「サステナブルツーリズム」へのシフトが進んでいます。
たとえば、混雑を避けた分散型観光の促進や、地域文化を大切にする体験プログラムの提供、環境負荷の少ない移動手段の導入などが注目されています。
観光客の満足と地域の持続性を両立する視点が、今後のインバウンド施策では重要なテーマになるでしょう。
2.地方へのインバウンド需要の拡大
従来は東京・大阪・京都などの都市圏が中心でしたが、近年では地方への関心が高まりつつあります。背景には、SNSや口コミでローカルな魅力が拡散されやすくなったこと、個人旅行(FIT)の普及、そして「密を避けたい」という意識の変化があります。
観光地化されていない農村や漁村、伝統工芸の町などにもチャンスが広がっており、地域資源を活かしたビジネスモデルの構築が求められます。
3.デジタル技術の活用と無人化・省人化の推進
人手不足が深刻化する中、インバウンド対応でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が進みつつあります。
たとえば以下のようなテクノロジーは、外国人観光客へのストレスを減らすと同時に、事業者側の業務効率化にも寄与します。
- AIチャットボットによる多言語対応
- 自動翻訳端末・アプリの導入
- スマートチェックイン・セルフ注文機の活用
- 顧客データを活用したパーソナライズ対応
4.高付加価値・体験重視の消費傾向
商品の購入よりも、「ここでしか味わえない体験」を重視する傾向は、今後ますます強まると見られています。
特にリピーターや欧米圏の訪日客は、観光地巡りよりも「学び」や「交流」を伴う体験を求める傾向が顕著です。
茶道・書道・和菓子づくりなどの文化体験、職人との対話がある工房見学、地域の人と触れ合うホームステイ型の企画など、深く関われるコンテンツが選ばれる時代です。
5.訪日客の多様化とマーケティングの複雑化
訪日外国人の出身国・旅行目的・価値観は年々多様化しています。
コロナ禍を経て、健康志向の強い人、富裕層、宗教的制約のある人、LGBTQ+旅行者など、幅広い層への対応が今後ますます必要になります。
そのため、従来のマス広告ではなく、パーソナライズされたプロモーションや、各国・各属性ごとのマーケティング設計が重要になってきます。
インバウンドビジネスに関するよくある誤解4つ
最後に、インバウンドビジネスに関するよくある誤解を4つ紹介します。
誤解1.「外国人観光客はとにかく“爆買い”してくれる」
一時期注目された“爆買い”という言葉から、訪日客=大量消費というイメージを持たれがちです。しかし現在では、旅行スタイルが「モノ消費」から「コト消費」へと移行しており、高価な商品を大量に買う層は一部に限られています。
多くの訪日外国人は、地元の食事、体験、交流などに価値を感じており、無制限にお金を使うわけではありません。むしろ、価格の妥当性や満足度、ストーリー性を重視する傾向が強まっています。
誤解2.「とりあえず多言語対応しておけばインバウンドはうまくいく」
多言語化はインバウンド対応の基本ではありますが、それだけで成功するほど単純ではありません。 外国人の不安を解消するには、翻訳精度だけでなく、接客マナーや文化的背景への理解も必要です。
たとえば、食文化の違いに配慮したメニューの提案や、信仰に配慮した設備の整備など、言語の外側にある対応こそが評価されます。
「翻訳して終わり」ではなく、「伝わって、納得されて、選ばれる」ことが求められています。
誤解3.「都市部の施設でないとインバウンドは集まらない」
東京や大阪、京都といった都市部に観光客が集中していた時代もありましたが、近年はその傾向に変化が見られます。 SNSの普及や個人旅行(FIT)の浸透により、地方の自然や文化、暮らしに魅力を感じる層が増えています。
むしろ都市部では競争が激しく、独自性を打ち出しにくいため、地方の施設が持つ「ここでしか味わえない体験」が選ばれる傾向があります。
地方こそがインバウンドの“伸びしろ”であり、戦略次第で大きな成果を生み出すことが可能です。
誤解4.「インバウンドは一時的なブームにすぎない」
インバウンド需要は、たしかに新型コロナウイルスの影響で一時的に減少しました。 しかし現在は回復が進み、政府も観光立国政策を継続する中で、今後の成長が見込まれる分野です。
特に人口減少・少子高齢化が進む日本国内において、海外からの需要は中長期的な事業成長を支える柱になりつつあります。
一過性のブームではなく、持続的な戦略として捉えることが重要です。
まとめ
本記事では、インバウンドビジネスの定義や注目される背景、関連する業種の特徴、成功事例、メリット・デメリット、成功させるための実践的なポイントや今後のトレンドまで一挙に解説しました。
インバウンドビジネスとは、訪日外国人を対象に商品やサービスを提供する取り組みのことで、観光や小売、宿泊、飲食など多岐にわたる業種が関わっています。
少子高齢化によって国内需要が縮小していく中、訪日外国人の需要を取り込むことは、新たな収益源の確保や地域活性化につながる重要なビジネス戦略の一つといえるでしょう。
ただし、インバウンドビジネスは言語や文化の違い、国際情勢による影響、初期投資の必要性など、いくつかの課題も伴います。成功するためには、ターゲットの明確化、多言語対応、デジタル活用、体験価値の設計など、多角的な取り組みが不可欠です。
インバウンド需要を収益につなげるために多言語対応の土台を築くなら「DMM英会話法人向けサービス」
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