キャッシュフローが正常な状態でないと、資金繰りの悪化を引き起こし、たとえ利益が出ていたとしても経営危機を招く恐れがあります。
キャッシュフローは営業活動・投資・財務の3つの観点に分かれており、これらの収支のマイナスが常態化している場合は改善に向けて動き出す必要があります。
本記事では、キャッシュフローが悪化している状態の定義や悪化の原因をおさらいしたうえで、キャッシュフローの改善方法を紹介します。本記事を読んだその日から、キャッシュフローの改善に向けて動き出せるようになります。
キャッシュフローが悪い=収入が支出を下回っている状態
キャッシュフローの改善に乗り出すにあたり、キャッシュフローが悪い状態の定義を確認しましょう。
大まかな理解としては、企業の収入(キャッシュイン)が支出(キャッシュアウト)を下回っており、資金繰りが厳しくなる状態が「キャッシュフローが悪い」と考えます。
キャッシュフローには以下の3つの種類がありますが、これらの合計がマイナスになっている場合はキャッシュフローの改善に向けて動き出す必要があります。
- 営業キャッシュフロー:企業の主要な営業活動から生じるキャッシュフロー
- 投資キャッシュフロー:資産への投資によるキャッシュフロー
- 財務キャッシュフロー:企業の資金調達に関するキャッシュフロー
ただし、キャッシュフローが一時的にマイナスになっているからといって、必ずしもキャッシュフローが悪化しているとは限りません。
例えば「新規事業の立ち上げに向けた設備投資」「借入金の返済」「配当の支払い」などで、一時的にキャッシュフローがマイナスになります。
戦略的な投資や健全な財務活動における一時的なマイナスはキャッシュフローが良好でも起こりうることを覚えておきましょう。自己資本を上回る投資や借入額の返済が利益を上回る状態が経常的に起きている場合は注意が必要です。
キャッシュフローが悪化する5つの原因
キャッシュフローが悪化する主な原因としては以下が挙げられます。
- 経営不振:売上の減少/経費の増加により支払いが困難になる
- 過剰な在庫保有:仕入れコストを先払いし、回収目途が立たず、現金が不足する
- 過剰な設備投資:売上に見合わない設備投資により、現金が不足する
- 売掛金回収の遅延・未回収:滞留債権により現金が不足する
- 借入返済額が多い:支払いにより、キャッシュフローのマイナスが常態化する
キャッシュフローの7つの改善方法
キャッシュフローの改善方法を以下にまとめました。
「収入(キャッシュイン)の増加」「支出(キャッシュアウト)の削減」の両面から調整していくことが、キャッシュフローの改善の基本的な考え方です。具体的な方法として、以下の7つが挙げらえます。
- 利益を増やす
- 支払いよりも売上を確保できる仕組みを作る
- 支払サイトをできるだけ遅くするよう交渉する
- 補助金・助成金や融資などを利用して資金調達を行う
- 不良在庫がある場合は早期に現金化する
- 固定資産を現金化する
- ファクタリングを利用して売上債権を現金化する
1.利益を増やす
キャッシュフローを改善する一番の方法は利益を増やすことです。現金が増えれば増えるほど、キャッシュフローは安定します。
利益を増やすには以下のような方法があります。
- 商品単価を上げる
- クロスセル、アップセルの強化
- リピート率の上昇
- 人件費の削減
- 無駄な経費の削減
具体的な利益アップの方法については以下の記事が参考になります。
参考:クロスセルとは?アップセルとの違いや実践ステップを事例を交えて解説
アップセル・クロスセルとは?顧客単価や満足度を高めるポイントを解説
【担当者必見】人件費削減を成功させるための方法5選を紹介
経営者・経理担当者必見!収益を上げるための経費削減のコツとは?
2.支払いよりも売上を確保できる仕組みを作る
キャッシュフローを改善するためには、前払い制を導入することも一つの手です。
支払いよりも先に現金で売り上げを確保することができれば、その売り上げを元手に仕入れを行うことができるため、資金繰りが悪化することはありません。
- 一部を前受金として現金でもらう
- 10万円未満は手形可、10万円以上は現金で支払ってもらう
- 10万円までは前払い、10万円を超える場合は半額分を先に支払ってもらう
- 全額を手形で受け取るのではなく、現金・手形を50%ずつもらう
- 回収サイトを早める代わりに商品やサービスを値引きする
このように複数の支払い方法を検討し、取引先の負担にならない、かつ前払い制で早めに現金を受け取ることができる仕組みを構築しましょう。
3.支払サイトをできるだけ遅くするよう交渉する
支払いサイトを遅くすればするほどキャッシュフローの改善につながります。キャッシュフロー悪化の要因となる支出じゃ買掛金の期限を伸ばしたり、支払いを後払いにして資産を現金として持ち続ける時間を増やすことでキャッシュフローが改善します。
取引先との交渉が必要になりますが、支払サイトを伸ばす際は以下のような交渉が効果的です。
- 支払サイトを伸ばす代わりに取引量を増やす
- 手形支払に変更する
ただし、支払いサイトは伸ばしても支払いは必ず発生し、それを賄える売上を確保しなければキャッシュフローは改善しませんので注意してください。
4.補助金・助成金や融資などを利用して資金調達を行う
銀行や公的機関などから補助金や助成金・融資を利用して資金調達を行えば当面の間は事業を運営できる資金を確保できるためキャッシュフローの改善につながります。
銀行や公的機関からの融資は返済を必要としますが、補助金や助成金は条件次第ではまとまった資金を受け取ることができ、返済も不要です。
企業が利用できる融資や補助金・助成金の一例は以下の通りです。
資金援助先 | 受給までの期間 | 受給できる費用目安 |
---|---|---|
銀行:プロパー融資 | 3週間〜1ヶ月 | 融資限度額なし (会社の収益や信用度によって変わる) |
銀行:ビジネスローン | 2週間程度 | 10〜1,000万円 (銀行によって変動あり) |
日本政策金融国庫 | 1ヶ月前後 | 14億4,000万円まで |
補助金・助成金 | 2週間〜2ヶ月 | 100〜8,000万円 |
ただし、補助金・助成金も銀行からの融資同様審査が必要となるので、必ず獲得できるものではないことをおさえておきましょう。キャッシュフローの改善に向けて資金調達を検討している方は、以下の記事をご確認ください。
参考:事業資金の調達方法全10選!資金調達のコツや注意点まとめ│LISKUL
【2023年最新版】ビジネスローンおすすめ25選を比較!選び方も紹介│LISKUL
5.不良在庫がある場合は早期に現金化する
損失として計上する不良在庫がある場合は、値段を落として販売するなどの現金化を行うことがキャッシュフロー改善につながります。
不良在庫はすなわち「将来的に販売できる目処がただず、自社の損失になる」もので、不良在庫を抱える限り、仕入れによる支出が発生するため、早期に現金化することで資金繰りを改善することができます。
不良在庫の現金化は以下の方法が挙げられます。
- 値引きをして取引先に販売する
- 不良在庫の買取サービスを利用する
- エンドユーザー向けの商品ならメルカリ等のフリマアプリで販売する
不良在庫は販売・買取してもらうことができますが、売れ残りを出さないような運営を行わなければ、キャッシュフローの改善には至りません。
不良在庫をださないためにも「取引先からの発注を受けた後に仕入れや製造を行う」「システムによる発注予想から仕入れや製造を行う」など商品を作る、仕入れるところから改善する必要があります。
6.固定資産を現金化する
事業使用のために取得したが活用し切れていない固定資産を現金化することで、キャッシュフローの改善につながる可能性があります。
固定資産は所有し続けることで維持コストがかかります。
さらに活用できていないとなると支出だけが発生するため、会社のキャッシュを蝕む金食い虫となります。
会社に現金がない場合は固定資産を売却することで、現金を確保できるだけでなく、維持コストも抑えられるためキャッシュフローの改善に大きく役立ちます。
7.ファクタリングを利用して売上債権を現金化する
売上債権の回収期間が長い場合、ファクタリングを利用して現金化を早める方法があります。
ファクタリングは、売上債権を買い取ることで現金を提供するサービスです。サービスによっては最短即日で資金を調達できるので、「仕入先への支払いが迫っている」「売上債権はあるが手元に現金がない」といった状況にある企業にとって有効な手段となります。
ただし、ファクタリングには手数料がかかり、売掛金を満額で回収できないというデメリットもあります。
ファクタリングには種類やサービスの提供元によって支払わなければならない手数料や現金化のスピードが異なります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
参考:【ファクタリングサービス】仕組みやメリット・注意点、業者選びのコツを解説!
ファクタリングにかかる手数料の相場と、安く利用するための3つのコツ
【2022年最新】ファクタリング会社厳選27社を比較!種類、選ぶポイントも解説
キャッシュフローの改善に関するよくあるご質問
キャッシュフローの改善でお悩みの方に役立つQ&Aをまとめています。
Q.キャッシュフローの改善が企業の信用力に与える影響は?
A.キャッシュフローが改善されると、企業の支払い能力が向上し、取引先や金融機関からの信用力が増します。これにより、将来的な資金調達がスムーズに進む可能性が高まります。
Q.キャッシュフローの改善と財務健全性の関係は?
A.キャッシュフローが改善されると、財務健全性が向上し、企業の倒産リスクが低減します。また、健全なキャッシュフローを維持することで、長期的な成長のための投資が可能になります。
Q.キャッシュフロー改善のための財務分析のポイントは?
A.財務分析を通じて、キャッシュフローのボトルネックを特定し、改善策を講じることが重要です。特に、支出と収入のタイミングを詳細に分析し、キャッシュの流れを改善します。
Q.キャッシュフロー改善のためのコストカットのリスクと対策は?
A.コストカットはキャッシュフロー改善に効果的ですが、過度な削減は業務効率や品質に影響を与えるリスクがあります。適切なバランスを保ちつつ、無駄を排除することが重要です。
コスト削減について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
参考:コスト削減とは?実施手順と成功させるための3つのポイント
まとめ
本記事ではキャッシュフローの改善方法について解説しました。
キャッシュフローが悪化している状態の定義は、「収入が支出を下回っている状態」です。キャッシュフローの種類や期間によっても変わりますが、「収入-支出の値がマイナスの状態」が常態化されている場合は改善に向けて動き出す必要があります。
キャッシュフローが悪化する主な原因としては、経営不振や滞留債権による支払いの遅延、無駄な設備投資などが挙げられます。
改善に向けた対策案としては、「収入の増加」「支出の削減」のどちらかにつながるものが挙げれます。