「シニア層・高齢者向けのおすすめのネット広告の媒体やメニューを教えて欲しい」というご質問をいただきます。
結論から申し上げますと、「シニア層」という定義の仕方では抽象度が高く、おすすめの媒体・メニューを提示するのは難しいです。
そこからもう一つ踏み込んで、どういうシニア層なのかを定義することで、ターゲットユーザーの解像度を一段階上げることができます。
本記事では、シニア層向けのネット広告を実施・提案する方向けに、媒体・メニューの選定の考え方について解説します。
執筆者
SO Technologies株式会社 LISKUL五代目編集長
広告運用者⇒広告レポートツール『ATOM』カスタマーサクセス⇒LISKUL編集部。 「日本のすみずみまでWebマーケティングの力を」モットーに日々活動しています。(執筆記事一覧 )
「シニア層向け」だけでは、媒体・メニューの選定は難しい
「シニア層向け」という括りだけでは、広告媒体やメニューを選定するのは難しいです。
本章ではその理由を3つご紹介します。
理由1.「シニア層」は日本の3割を占めるほど大規模
つい「若者向け」や「シニア層向け」といったざっくりとした分類をしてしまいがちですが、それでは規模が大きすぎて、ターゲティングとしては不十分です。
シニア層(高齢者)の定義は、60歳以上だったり65歳以上だったりとマチマチですが、ここでは65歳以上と仮に定義します。
内閣府が発表している「高齢社会白書」によれば、65歳以上人口は日本の28.9%と、約3割となっています。
つまり、シニア層向けというだけでは、日本人の3割をターゲットとすることになってしまい、あまりに広すぎます。
ターゲット像が抽象的だと、それにマッチする媒体・メニューも選びにくいです。
10代は共通項が多いが、65歳以上はバラバラ
小学校から中学校と義務教育を経て、日本人の約99%が高校に進学します。また大学や専門学校などの高等教育への進学率は71%となっています。
このように、10代の人たちは共通した環境下にあるため、その興味・関心などにも共通項が多くなっています。
そのため、TikTokやInstagramといった若者のなかでの流行りが生じやすく、広告媒体としてもそれらが有効になってきます。
しかし65歳以上となると、そのバックボーンがバラバラで、興味・関心も人によって様々です。
そのため誰もが利用する媒体というのが少なく、年齢だけでなくもう一つ踏み込んだカテゴライズが必要になります。
自分がシニア層と自覚していない人も多い
上図は、何歳以上を「シニア」だと思うかを年代別に調査したものです。
この調査によると、特に60代において、自分より上の年代をシニアだと考えている傾向にあるとのことです。
つまり、自分のことをシニアだと認識していない人が多いというわけです。
そういうなかで、シニア層向けという広告を実施しても、自分事と捉えてもらえずメッセージが届かない可能性があります。
50代との違いに明確な理由がないことが多い
50代と60代の違いを明確に説明できる方は少ないのではないでしょうか。
「高年齢者雇用安定法」によって、2025年以降は65歳までの雇用確保が義務になるといった社会の動きもあり、60代になっても働き続ける方が増えています。
両者の違いはあいまいなものになってきています。
ですので、安易に年齢で区切るのは危険です。
シニア層向けと考えていた商材が、実は50代の方にも売れるという可能性はあります。
「シニア層」という分類に固執すると、機会損失を生んでしまうかもしれません。
理由2.主要なプラットフォームのほぼすべてで年齢セグメント配信が可能
主要なプラットフォームのほぼすべてで年齢セグメント配信が可能となっています。
なので、60歳以上や65歳以上といったターゲティングの仕方では、どの媒体でも良いということになってしまいます。
年齢でのターゲティングができることが前提で、そこからどういうセグメントで切り分けていくのかが重要です。
理由3.詳細属性によってはネット広告では接触できない可能性がある
狙いたいユーザーの詳細属性によっては、ネット広告では接触できない可能性もあります。
たとえば普段テレビや新聞を観ていて、パソコンもスマートフォンも持っていない高齢者にアプローチする場合、ネット広告を実施しても届くことはありません。
「なぜネット広告を実施するのか」のそもそもの意図をしっかりと考えることが重要です。
たとえば健康器具の広告を実施するとして、文字や図だけではその魅力を伝えきれないとなれば、まず選択肢に挙がるのがテレビCMです。
そして、そのテレビCMの素材を流用して、動画広告を実施するというのはアリでしょう。
この場合、YouTubeなどの動画媒体が選択肢に挙がります。
このように、ネット広告の実施目的を明確にすることで、媒体選定に活かすことができます。
以下の記事では、YouTube広告とテレビCMの相乗効果について解説しています。
是非こちらもご参照ください。
参考:事例から学ぶテレビCMとYoutube広告の併用のメリット・コツ
「シニア層向け」の広告メニューの考え方
前章では、「シニア層向け」だけでは抽象的すぎて、媒体・メニューを決められないというお話をしました。
しかしそれだけだと結論が出せませんので、「シニア層向け」の広告メニューの考え方を3つほどお伝えします。
ポイント1.掛け合わせる属性を考える
最も重要なのが、シニア層という年齢属性と、どういう属性を掛け合わせるかです。
属性とは、ウォーキングが好き、囲碁・将棋が好きといった興味関心や、家族構成や世帯収入といったユーザー属性などです。
例えばハイキングをする高齢者をターゲットとする場合、Google広告なら「キャンプ、ハイキング用品」の購買意向が強いユーザーというセグメントがあります。
またYahoo!広告なら「アウトドア、キャンプ、登山」というセグメントが用意されています。
さらに、Facebook広告なら「ジョギング」に興味関心が強いユーザーというセグメントがあります。
これらを比較すると、Yahoo!広告よりもGoogle広告とFacebook広告の方が、用意されているセグメントがターゲットに近そうなので、この2つを実施してみるのが良さそうです(ただし、実際に配信してみたらYahoo!広告の方が効果が良いという可能性はあります)。
このように、掛け合わせる属性を明確にすることで、選定する媒体やメニューが決めやすくなります。
ポイント2.狙うべきターゲットが適切かを再考する
そもそもの話として、シニア層向けというターゲット像が適切なのかどうかを考える必要があります。
たとえば「健康不安」を抱えるシニア層に向けて広告を実施したいとします。
しかし健康不安を抱えるのは、必ずしもシニア層だけではありません。
50代、あるいは更に下の世代にも健康不安を抱えている人は多いので、彼らもターゲットになりえるかもしれません。
もし40代や50代もターゲットになるのであれば、当然実施する媒体の選択肢も変わってきます。
自社の商材と照らし合わせて、シニア層というターゲティングが適切かを再考してください。
実は「シニア層」ではなく「富裕層」である可能性も
「シニア層」を狙いたいと考えているが、実は狙うべきは「富裕層」である可能性はないでしょうか。
内閣府の「高齢社会白書」によれば、60歳以上の1世帯あたりの貯蓄高が2,000万円を超えており、50代以下のそれを大きく上回っています。
つまりシニア層というのは、一定の経済的余裕がある、富裕層に近い存在だといえます。
自分たちが狙いたい「シニア層」というのが、本当は「富裕層」なのではないのか考えてみてください。
たとえば世界旅行という高額商材の広告を実施する場合、時間に余裕があるシニア層向けに広告を配信するのは悪くないですが、それよりも富裕層向けと定義して媒体選定をした方が良いかもしれません。
混同しやすい点なので注意しましょう。
ポイント3.各種メディア・デバイスの活用状況を把握する
「理由3.詳細属性によってはネット広告では接触できない可能性がある」で述べた通り、なぜネット広告をやるのかという目的を明確にすることが重要です。
もしかすると、ネット広告よりもマス広告(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の方が有効な可能性もあります。
またネット広告を配信するデバイス(パソコンやスマートフォン)の活用状況も把握しておくべきです。
シニア層はまだまだテレビや紙媒体を活用している
以下は、総務省が発表している「主なメディアの行為者率・行為者平均時間」のデータです。
60代では、まだまだテレビや新聞を観ている人が多いことがわかります。
この調査には含まれていませんが、70代以上はさらにその傾向が強いと思われます。
また上図は、テキスト系メディアの活用状況を年代別に示したものです。
このデータでも、60代では新聞や書籍・雑誌といった紙媒体をよく利用していることが分かります。
なぜネット広告を実施するのかを考えたうえで、無理にネット広告をせずにマス広告を実施したほうが良いケースもあるので注意しましょう。
参考:マス広告とは?デジタル広告との違い・効果を高める併用メソッド
シニア層もスマートフォンの活用が活発的
総務省の「通信利用動向調査」によれば、60代以上でもスマートフォンの方がパソコンよりも活用されています。
スマートフォン向けの広告媒体・メニューは、シニア層向けでも有効です。
またSNSも広く利用されており、なかでもLINEやFacebookの利用率が高くなっています。
SNS広告がシニア層向けとして十分選択肢に入ること、またLINEやFacebookが有力な選択肢であることを認識しておきましょう。
最後に、急速に利用者が増えているYouTubeについても触れておきます。
SBIエステートファイナンスによれば、シニア層のYouTube利用率は9割弱で、その62%がパソコンでの視聴をしているとのことです。
シニア層もYouTubeを視聴しているので、動画広告媒体として有効な選択肢であることを認識しておきましょう。
まとめ
「シニア層」というセグメントでは抽象的かつ規模が大きすぎるので、どういうシニア層に向けて広告を実施するのか、掛け合わせる属性を考えることが重要です。
そのためには、「シニア層向け」の広告を実施したいとクライアントに言われたら、どういったターゲットに、どういった目的で実施したいのかをヒアリングして、ターゲットの解像度を上げるようにしましょう。
解像度が上がれば、自ずと活用すべき媒体・メニューも見えてくるはずです。
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