新規事業立ち上げの6ステップと最低限抑えておきたい4つのポイント

新規事業立ち上げ

新規事業の立ち上げは企業にとっても大きな選択なので、立ち上げのかじ取りを命じられた担当者には相当なプレッシャーがかかっているはずです。

しかし、新規事業の立ち上げの際にそもそも何から始めたらいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。

今回はそんな方のために、新規事業を立ち上げる上での入門編として、新規事業の立ち上げステップと、事業立ち上げ時に最低限おさえておくべきポイント、新規事業を立ち上げる上での初期段階で活用できるフレームワークをご紹介していきます。

この記事を読むことで新規事業を立ち上げる際の考え方や、全体像がイメージしやすくなります。

目次


新規事業を立ち上げるための6ステップ

新規事業を立ち上げるフローを説明

新規事業を立ち上げる際は、以下の6つのステップに分けて進めていきます。

  1. 事業コンセプトを決める
  2. 事業のアイデアを生み出す
  3. 市場調査を実施する
  4. 環境(資金・人材)を整備する
  5. 事業計画を立てる
  6. 行動計画を立てる

1.事業コンセプトを決める

事業コンセプトを明確に設定することで、チームが一貫した方向に進むことができます。顧客の課題と自社の強みを中心に、事業が提供する価値とその実現方法を定義します。

顧客の課題を見つける

事業コンセプトを決める際、まず最初に重要なのは「顧客の課題発見」です。

市場に存在する課題や顧客のニーズを理解し、事業が提供する価値を明確にすることで、魅力的な製品やサービスを開発する土台を築くことができます。

具体的には、顧客インタビュー、アンケート調査、市場データの分析などを通じて、顧客が直面している問題点を明らかにします。

自社の強みを明確化する

事業コンセプトでは顧客の課題の発見と並行して、「自社の強みの明確化」を行いましょう。

自社が持つユニークな強みや競争優位性を理解し、それを活かした事業コンセプトを構築することが重要です。

従業員のスキルや経験、技術力、ブランドイメージ、既存の顧客基盤など、様々な側面から分析を行います。

2.事業のアイデアを生み出す

次に事業アイディアを立案します。

立案する際に心がけるポイントは、事業が顧客の抱えている課題を解決できるかどうかという点です。できるだけ多くのアイディアを立案して複数の選択肢を用意し、その中から顧客の課題を解説できそうな案をピックアップします。

アイデアを出す際はプロジェクトメンバー内だけではなく、社内外からアイデアを募集するようにしましょう。多様な視点を取り入れ、革新的なアイデアを生み出すことができます。数多くのアイデアを集めるには、コンテストの実施やインセンティブの設置が効果的です。

3.市場調査を実施する

市場調査を通じて、アイデアの実現可能性や市場のニーズを確認し、事業化の方向を定めます。また、これから参入する市場において競合他社を徹底的にリサーチして、他社の強みや弱みを探り差別化できる部分を見つけ出します。

競合がどのような商品をいくらの価格で販売しているのか。その商品の評判や購入後のメリット、デメリット、機能性やデザインなどを細かくチェックします。

リサーチした結果を分析し、商品ターゲットやコンセプトが被ってないか、商品は改良の余地があるのか、参入できる環境があるのか等、様々な視点から確認します。

参考:5分でわかる市場調査とは?4つの種類と代表的な7つの方法を徹底解説│LISKUL
   初心者がマーケティングリサーチで失敗しないための主な方法、コツ、相場のまとめ│LISKUL

4.事業計画を立てる

商品コンセプトや販売ターゲットを明確化し競合をリサーチしたら、今後の事業計画を策定します。具体的には、収支計画と投資計画、人員計画の3つを出します。

収支計画とは、毎月の商品の売り上げなどの収入と開発費用、人件費、広告費用などの支出の月次・年次計画です。

投資計画は、実際に販売した結果を踏まえて、次にどの程度販売するのか計画し、具体的な投資金額や投資スケジュールを策定します。

人員計画の策定では、同じく実際に販売した結果を踏まえて人員の数を調整します。新たに人員を採用したり不要な人員を削減することにより、事業に適切な人員を確保します。

5.環境(資金・人材)を整備する

事業をスムーズに進めるために必要な環境整備のステップです。具体的には「資金」と「人材」の確保です。

資金調達

資金調達を始める際、事業の立ち上げにどれぐらいのコストがかかるかを計算しましょう。

  • 新規事業立ち上げにかかる初期投資の計算
  • 利益が出始めるまでの期間と、必要な資金の計算
  • 成長計画に沿った資金

そのうえで資金調達の方法別の違いや業界ごとの水準と照らし合わせながら、細部を調整していきます。

資金調達の方法として、以下が挙げられます。

  • 銀行からの融資
  • 補助金・助成金
  • 公的機関からの融資
  • VC・投資家からの投資
  • クラウドファンディング

各調達方法の詳細についてはほかの記事で詳しく解説しています。

参考:事業資金の調達方法全10選!資金調達のコツや注意点まとめ│LISKUL
   即日・急ぎで事業資金を調達できる方法!必要書類・注意点と合わせて紹介│LISKUL
   【2023年最新版】ビジネスローンおすすめ25選を比較!選び方も紹介│LISKUL

人材の確保

新規事業を成功させるためには、適切な人材の確保が不可欠です。

必要な人材の数や種類は、事業の規模や目標、計画によって異なります。事業計画をもとに、どの部門でどれだけの人員が必要かを明確にし、必要なスキルセットと役割を特定します。

社内に適任者がいない場合、育成や採用が必要です。特に重要な役割やスキルセットを持つ人材を優先して確保することが重要であり、将来の成長を見据えた採用計画も考慮に入れる必要があります。

社外の人材を選出する際は即戦力となるメンバーを探すのに苦労するかもしれません。マッチングプラットフォームなどで募集をかけることも視野に入れることも検討すると良いでしょう。

6.行動計画を立てる

新規事業の立ち上げでは、計画的かつ戦略的なアプローチが求められます。行動計画を立てる際には、以下のステップを踏むことが重要です。

  • 目標設定
  • タスクの分解と優先順位付け
  • マイルストーンの設定

目標設定

事業の成功を目指す上で、まずは達成すべき具体的な目標を設定します。

現実的かつ明確な目標を設定しましょう。目標を明確にすることで、チーム全体の方向性が統一され、モチベーションの向上が期待できます。

目標設定のフレームワーク「SMARTの法則」を活用すると、具体的で明確な目標設定ができます。

参考:SMARTの法則とは? 目標設定の重要性、目標の立て方、具体例について – カオナビ人事用語集

タスクの分解と優先順位付け

目標達成に必要な要素をタスクに分解し、優先順位を設定する必要があります。

タスクの分解と優先順位の設定を行うことで、プロジェクトの進捗状況を可視化しやすくなり、チーム全体で共有しやすくなります。これにより、チームメンバーが自分の役割と責任を明確に理解し、効果的に協力して作業を進めることが可能です。

まず、全体の目標をより小さなサブゴールに分割し、それぞれのサブゴールを達成するために必要なタスクをリストアップします。この際、各タスクがどのように連動しているかを把握し、依存関係を明確にします。

各タスクの緊急度と重要度を評価し、それに基づいて優先順位を設定します。緊急かつ重要なタスクを最優先にし、緊急ではないが重要なタスクは計画的に進めるようにします。

マイルストーンの設定

マイルストーンはプロジェクトの重要な節目となるポイントであり、プロジェクトの進捗を測るための指標です。マイルストーンを設定することで、プロジェクトの目標達成に向けての道筋が明確になり、チーム全体のモチベーションの向上につながります。

マイルストーンを定める際は、プロジェクトの全体像を把握し、どのフェーズでどのような成果が求められるのかを理解します。プロジェクトのスケジュールを考慮しながら、重要な成果物が完成するタイミングや、重要な意思決定が必要なタイミングをマイルストーンとして設定します。

マイルストーンは具体的で達成可能な目標であるべきであり、それぞれに明確な期日を設定します。これにより、プロジェクトの進捗状況を一目で把握することができ、計画通りに進んでいない場合は早期に対策を講じることが可能となります。


新規事業を立ち上げる際に最低限おさえておきたい4つのポイント

新規事業を失敗させないために覚えておきたいことは多々ありますが、最低限押さえておきたいのは以下の4点です。

  • 新規事業は、今後の市場の伸び率だけで判断しない
  • スタートアップ・中小企業はリーンスタートアップで立ち上げを進める
  • WebサービスなどのITプロダクトもスモールスタートから始める
  • 事業撤退ラインを決めておく

新規事業は、今後の市場の伸び率だけで判断しない

新規事業を考えるにあたって、自社の既存の知見などが活用できるような市場を選びましょう。儲かりそう、今後市場が熱くなりそう、という目線だけでは失敗につながります。

もちろん全く自社と関連性のない、新たな事業を始めることもありますが、うまくいかないことが多いです。

例えば今まで飲食店をやっていたのに、「これからは人材活用の時代だから、人材系の事業を立ち上げよう」と考えるのは非常に危険です。

当たり前のことのようですが、意外と市場の規模や未来ばかり見て、自社との親和性を考えずに失敗するケースも少なくありません。

スタートアップ・中小企業はリーンスタートアップで立ち上げを進める

新規事業を立ち上げる際にリーンスタートアップのアプローチを採用する企業が増えています。特にリソースが限られているスタートアップ企業や中小企業にとって有効な方法です。

限られたリソースと低いコストで事業をスタートさせ、市場の反応を素早くキャッチしながら事業方針を調整していきます。

リーンスタートアップでは、大規模な投資をせずに小さく始めることで、市場のニーズを把握しやすくなります。事業の方向性を細かく調整しながら進めることができ、失敗のリスクを最小限に抑えることが可能です。

一般的に新規事業と言えば、大きな予算を投じて売上を伸ばしていくイメージがありますが、リーンスタートアップではその逆を行います。小さな失敗から学びながら、徐々に売上を伸ばしていくスタイルを取ります。これにより、精神的な負担を軽減しつつ、スピード感を持って事業を拡大していくことが可能です。

参考:新規事業のリーンスタートアップとは?その意味や手順を解説

WebサービスなどのITプロダクトもスモールスタートから始める

最初から大規模な投資を行うのではなく、小規模で始める「スモールスタート」が推奨されます。市場の反応を確認しながらリスクを抑えつつ、プロダクトを改善していくことが可能となります。

スモールスタートのアプローチでは「MVP開発」を意識して進めると良いでしょう。MVPとは、ユーザヒアリングや仮説検証を目的とした「実用最小限の機能のみを実装したシンプルな製品」を言います。

プロダクトをつくると多大な費用が発生するので、そのひな型でテストしていくのです。上司やクライアントに実物を見せれば、プレゼンの説得力もあがるでしょう。

事業撤退ラインを決めておく

あらかじめ、事業の撤退ラインを定めておきましょう。

新規事業は必ず成功できる保証はなく、市場の変化などさまざまな要因から撤退を迫られます。撤退ラインを決めておかないと見極めが遅れて経営に大きなダメージを与える可能性があります。

撤退のラインは「KPI・KGI」「PL」や、市場・競合状況を判断の軸に設定すると良いでしょう。

参考:痛手になる前に!新規事業の撤退基準の決め方・有名企業の事例をもとにご紹介! – Aidiotプラス


新規事業の立ち上げに活用できるフレームワーク4選

新規事業を立ち上げる際、何から始めたらいいかわからない……という方は、とにかく多くのフレームワークに触れましょう。事業の立ち上げに役立つフレームワークは多く、実際に事業を進めていくにあたってどんなフレームワークを使って、どんなことをすべきかをイメージしておきましょう。

今回は新規事業の方向性や市場の把握などに活きてくる4つのフレームワークをご紹介していきます。

参考:マーケティングをまるごとフレームワーク化!押さえるべき8つの枠組み

SWOT分析を使って自社の強みを正確に把握する

SWOT分析は新規事業の立ち上げ段階に用いるフレームワークで、自社の強み・弱みを客観的に判断する際に効果的です。

参考:SWOT分析とは?|定義から方法までわかりやすく解説

SWOT分析は自社の長所・短所を内部環境と外部環境の二軸でとらえる分析手法です。分析項目の4つの頭文字をとって、SWOTと名付けられています。

    内部環境

  • 強み(Strength):他社よりも勝っている部分
  • 弱み(Weakness):他社よりに勝てていない部分
    外部環境

  • 機会(Opportunity):自社のビジネスチャンスを拡大させる外部環境の変化のこと
  • 脅威(Threat):自社の強みをスポイルする、競合や市場の変化のこと

SWOT分析ではまず自社内部の状況と、市場や競合の状況をリサーチします。自社が市場でどのような立ち位置なのか、ユーザーはなぜ自社商品を選ぶのか、今後起こりうる外部環境の変化の仮説構築などを行いましょう。

そのうえで、実際にそれぞれの項目を分析していきましょう。手順としては外部環境から分析を始め、そのあとに内部環境へと移っていきます。

クロスSWOT分析で、自社の強みを生かした新規事業の戦略を考える

SWOT分析のあとに行うべきなのが、「クロスSWOT分析」を行って新規事業を立ち上げるための計画を決めていきましょう。SWOT分析で抽出したデータをもとに、具体的な戦略・戦術の策定を行います。

名前の通り、4つの分析項目を掛け合わせて、計画などを練っていきます。

  • 強み×機会:プラス要因を掛け合わせてどんなことができるか、理想の状況の想定
  • 強み×脅威:強みを活用して、外的脅威を乗り越える方法
  • 機会×弱み:弱みによって市場機会を逃さない具体的な戦略
  • 弱み×脅威:弱みと脅威というマイナス要因が同時に起こった時の対策

SWOT分析とクロスSWOT分析については以下記事で詳しく解説していますので、興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

参考:SWOT分析とは?定義から具体例、方法までわかりやすく解説│LISKUL

3C分析で事業の方向性を定める

3C分析は、新規事業の立ち上げの検討や、今後の事業の方向性を定めるために行うフレームワークです。

「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つを分析することから3C分析と名付けられています。

この分析では、3つの観点で新規事業を検討してきます。

Customer:顧客(市場)ニーズの変化
Competitor:競合は顧客ニーズの変化に合わせた対応法
Company:上記2点を踏まえて、新規事業を成功させるための具体案

参考:3C分析のやり方-マーケティング環境分析

ポジショニングマップで、市場における自社の立ち位置を定める

ポジショニングマップは市場において、自社がどの位置を目指すのかなどを明確にするためのフレームワークです。ポジショニングマップを作成することで、競合が少なく勝率が高そうな分野が見えてきます。

ポジショニングマップ
まず縦軸と横軸を決定します。軸に選ぶ内容は顧客が商品を購入するうえでの選定基準などを入れると良いでしょう。

軸が決まったら、実際に企業をマッピングしていきましょう。企業はどの位置にいるのかなどを正確に記載していきます。慎重かつ正確なマッピングのためにアンケート調査を実施しても良いでしょう。

作成したポジショニングマップを見ることで、ブルーオーシャンな市場を見つけることができます。

参考:ポジショニングを変えるだけで売上8倍?! 事例で学ぶポジショニングの活用手順


新規事業立ち上げに関するよくあるご質問

新規事業の立ち上げを検討中の方に役立つQ&Aをまとめています。

Q. 新規事業のための資金調達方法にはどのようなものがありますか?

A.資金調達方法には、銀行融資、クラウドファンディング、エンジェル投資家からの出資などがある可能性が高いです。

詳しくは以下の記事を参考にしてください。

参考:事業資金の調達方法全10選!資金調達のコツや注意点まとめ

Q. 新規事業立ち上げの際に必要な法的手続きは何ですか?

A.新規事業を始める際には、会社設立手続きや許認可の取得、税務関連の手続きが含まれることが多いです。

Q. 新規事業立ち上げにおいて、マーケティング戦略はどのように策定すればよいですか?

A.ターゲット市場を明確にし、競合分析を行った上で、ブランドのポジショニングとメッセージを構築することが重要です。

ポジショニングについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

参考:ポジショニングとは?差別化を図り競争優位を獲得する方法

Q. 新規事業の失敗を防ぐためにはどうすればよいですか?

A.リスク管理と綿密な計画が重要です。また、市場の動向を常に把握し、柔軟に対応する姿勢が求められることが多いです。

Q. 新規事業のためのビジネスプランはどのように作成すればよいですか?

A.市場分析、ターゲット顧客、収益モデル、マーケティング戦略、財務計画を包括的にまとめることが求められます。

Q. 新規事業を成功させるためのパートナー選びのポイントは何ですか?

A.信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。事業のビジョンを共有できるかどうか、専門知識を持っているかが判断基準となることが多いです。


まとめ

新規事業の立ち上げの流れと、有効なフレームワーク、立ち上げ時に意識すべきポイントをまとめました。

新規事業の立ち上げフローは以下の6ステップです。

  1. 事業コンセプトを決める
  2. 事業のアイデアを生み出す
  3. 市場調査を実施する
  4. 環境(資金・人材)を整備する
  5. 事業計画を立てる
  6. 行動計画を立てる

立ち上げ時には以下4つを意識して進めると良いでしょう。

  • 新規事業は、今後の市場の伸び率だけで判断しない
  • リーンスタートアップで始めるのが今のトレンド
  • WebサービスなどのITプロダクトもスモールスタートから始める
  • 事業撤退ラインを決めておく

新規事業の立ち上げに有効なフレームワークは多くありますが、立ち上げ初期には以下の4つのフレームワークの活用がおすすめです。

  • SWOT分析
  • クロスSWOT分析
  • 3C分析
  • ポジショニングマップ

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