採用計画とは?自社に合う人材を確保するためのプラン策定方法

採用計画とは、事業目標を実現するために「いつ・どの部署で・どんな人材を・何名採用するか」を明文化した人材確保の設計図です。

計画を立てて採用活動を行うことで、必要なスキルを持つ人材を適期に確保しやすくなります。その結果、採用コストの最適化や定着率の向上、事業成長スピードの加速などが期待できます。

一方で、採用計画が不十分だと人員ギャップや採用遅延が発生しやすく、事業推進にブレーキがかかる恐れがあります。また、無計画な採用は離職率や人件費の膨張などのリスクも高めるため注意が必要です。

そこで本記事では、採用計画の基礎知識から策定手順、新卒と中途の具体的な進め方、フォーマット例、計画後に取るべきアクションまでを一挙に解説します。

採用活動の精度を高めたい方は、ぜひご一読ください。

目次

※本記事は株式会社bサーチ提供によるスポンサード・コンテンツです。


採用計画とは

採用計画とは、事業目標を実現するために「いつ・どの部署で・どんな人材を・何名採用するか」を可視化した“人材確保の設計図”です。

あらかじめ人員構成・必要スキル・採用手法・予算・評価指標を整理することで、採用活動を場当たり的な判断にせず、「最小のコストで最大の成果を得られる状態」をつくり出します。

計画があることで、人材不足による事業停滞や、逆に過剰採用による人件費の浪費を抑えられます。また、現場部門と人事が共通ゴールを共有できるため選考スピードが向上し、適材の取り逃し防止が可能です。

さらに 評価指標を設定しておけば、採用活動のボトルネックを定量的に把握し、次年度へ改善サイクルを回すことも可能になります。

採用戦略や採用スケジュールと混同されがちですが、採用計画はそれらを包含する上位概念に当たります。

戦略は「どこで誰に自社を訴求するか」、スケジュールは「いつどの工程を実施するか」を指すのに対し、採用計画は人数・予算・役割分担・KPI までを一元管理する包括的フレームワークです。

選考活動だけでなく、入社後の定着率向上まで視野に入れる点が大きな特徴と言えるでしょう。


採用計画が注目される背景にある3つの要因

採用計画に注目が集まるのは、人材市場の構造変化によって「計画を持たない採用」が通用しなくなりつつあるためです。企業は事業拡大と人件費抑制を両立させるために、採用人数・時期・手法を事前に設計し、データで管理する姿勢を求められています。

1.労働人口の減少と人材争奪戦の激化

生産年齢人口の縮小が続くなか、経験者や専門職を中心に候補者の争奪が常態化しています。

採用ターゲットを早期に定義し、最適なチャネルへ投資計画を立てておかなければ、人手不足が直接事業計画を揺るがす可能性があります。

2.働き方の多様化による候補者ニーズの細分化

リモート勤務、副業容認、成果連動型報酬など、働き手が重視する条件は多岐にわたります。

企業が魅力的な労働条件や待遇を提示するには、候補者像ごとに選考フローや提示条件を設計する必要があり、その前提として採用計画が欠かせません。

3.HRテクノロジー普及によるデータドリブン採用への移行

採用管理システムやオンライン面接ツールが普及し、採用活動で得られるデータ量は飛躍的に増えました。

投資配分やKPIを計画段階で設定すれば、現状のボトルネックを数値で把握でき、翌期の計画へ確実にフィードバックできます。


採用計画が必要な3つの理由

採用計画は「人を採る」行為を事業成長の仕組みに昇華させる働きを持ちます。計画がないまま採用活動を進めると、必要な人材を逃すだけでなく、コストや組織運営にも思わぬ負担がかかります。

ここでは採用計画が不可欠となる3つの理由を説明します。

1.事業目標との人員ギャップを解消する

事業計画に紐づく必要人員を事前に数値化しておけば、売上目標を達成できるだけの人材を適切に配置できます

逆に計画がなければ、業務拡大フェーズでの人手不足や、不採算期の人員過剰といったアンバランスが生じやすく、経営判断そのものを鈍らせる原因になります。

2.採用コストと期間を最適化する

計画段階でターゲット職種・採用手法・選考フローを整理しておくと、成果が出づらい広告出稿や面接設定の手戻りを減らせます

結果として一人あたりの採用単価が下がり、採用活動に要する期間も短縮。早期に戦力化できるため、機会損失の低減にも直結します。

3.定着率と組織力を高める改善サイクルを回せる

採用人数だけでなく入社後の活躍度や離職率をKPIに組み込むと、採用活動が「入れたら終わり」ではなく「活躍させて初めて成功」という視点へ変わります

PDCAのサイクルが定着すれば、組織は常に最適な人材ポートフォリオを維持でき、事業環境の変化にも強い体制を築けます。


採用計画の基本項目7つ

採用計画を機能させるには、目的や人数だけでなく、採用手法から評価指標までを多角的に整理することが欠かせません。

ここでは計画書に必ず盛り込みたい主要項目を紹介します。これらを押さえることで、採用活動がぶれず、実行と改善のサイクルを回しやすくなります。

1.人員計画(ヘッドカウント)

事業計画と連動させ、いつまでに何名の人材が必要かを部署・職種ごとに数値化します。

前年度の離職率や組織拡大の見通しを加味し、季節変動やプロジェクト単位の増減も含めて算出すると、過不足のリスクを抑えられます。

2.採用ターゲットと要件定義

ポジションごとに求めるスキルセット、経験年数、行動特性を言語化し、ペルソナとしてまとめます。

ターゲット像を明確にすると、求人票や選考基準が一貫し、面接官間で評価の軸がぶれにくくなります。その結果、ミスマッチの少ない採用につながり、早期離職のリスクも抑えられます。

3.採用チャネルと施策

自社サイト、求人メディア、リファラル、エージェントなど、ターゲットに最もリーチしやすいチャネルを組み合わせて計画します。

チャネルごとのコストと応募効果を試算し、優先順位を付けることで投資効率が高まります。

4.スケジュールと選考プロセス

募集開始から内定承諾までの工程と期限をガントチャートで整理します

書類選考、一次面接、最終面接など各フェーズの担当者と所要日数を事前に設定しておくと、現場と人事の連携がスムーズになり、リードタイムを短縮できます。

参考:プロジェクト管理とは?具体的な手法と成功するためのポイントを紹介|LISKUL

5.予算とリソース配分

広告費、エージェント手数料、面接交通費、採用担当の工数などを洗い出し、年間総額と月別の配分を設定します

計画時点で上限を定めておくと、想定外の支出を防ぎ、投資対効果を検証しやすくなります。

6.KPI・評価指標

応募数、面接通過率、内定率、採用単価、入社後半年の定着率など、プロセス指標と成果指標を組み合わせて設定します

進捗を定期的に可視化し、数値に基づいてチャネルや選考手法を修正することで、計画の精度が向上します。

7.オンボーディングと定着施策

採用活動の最終ゴールは入社ではなく活躍です。入社初日からの研修プログラム、メンター制度、定期フォロー面談などを計画に含めると、早期離職を防ぎ、人材投資の回収期間を短縮できます。

参考:メンターシップとは 導入のメリットと 実施ステップまとめ|LISKUL


新卒の採用計画を策定する方法6ステップ

新卒採用は「年次サイクルの全体設計」と「学生接点の質量調整」をセットで行うことで、計画どおりの人数と適合度を実現できます。

以下では年間カレンダーを基軸に、ペルソナ設定から内定フォローまでを段階的にまとめています。

また、中途の採用計画について知りたい方は、次章をご覧ください。

ステップ1|年間採用目標とカレンダー設計

まず事業計画から逆算して、卒業年度別の必要人数と配属部署を決定します。

次に大学の長期休暇・学内イベント日程を調査し、インターンシップ開始、エントリー受付、面接実施、内定出し、フォロー施策までをガントチャート化します。

この時点で現場面接官のアサインや評価会議の日程を確保しておくと、繁忙期でも選考が滞りません。

ステップ2|ターゲット学生ペルソナの設定

求める専攻・保有スキル・価値観・就活行動パターンを言語化し、ペルソナシートに落とし込みます。

エンジニア職であれば「プロダクト志向」、営業職であれば「論理的思考力」や「対人折衝力」など、職種ごとに重視する要素を整理することで、求人情報や選考基準に一貫性が生まれます。

ステップ3|母集団形成チャネルの選定と投資配分

ペルソナごとに効果的なチャネル(採用サイト、就活プラットフォーム、学内セミナー、SNS、サマーインターン、リファラル)を絞り込み、チャネル別予算と応募目標数を設定します。

チャネルミックスは3か月ごとに費用対効果を分析し、リソースを再配分する仕組みを組み込むとで、歩留まりの改善につなげやすくなります。

ステップ4|選考フロー設計と評価基準の統一

筆記試験やグループディスカッションを含む多段階の選考フローを設計し、各工程の評価項目を五段階など定量スコアで定義します。

面接官向けの評価シートを事前に共有し、合議制の基準を定めれば「面接官による評価バラつき」が減少し、候補者体験も向上します。

オンライン選考を併用する際は通信環境チェックや面接官の視線位置など、事務オペレーションを標準化しておくと実施負荷を軽減できます。

ステップ5|内定フォローと入社前育成プラン

内定から入社までの空白期間に対し、辞退防止策を計画段階で具体化します。

定期面談、同期オンラインイベント、メンター交流、技術課題提供など複数のタッチポイントを設け、エンゲージメント指標(例:イベント参加率、アンケート満足度)をモニタリングします。

加えて入社後の立ち上がりを想定し、eラーニングや短期インターンで基礎スキルを事前に補強すると即戦力化が早まります。

ステップ6|KPI設定とデータドリブン改善

応募数、説明会参加率、面接通過率、内定承諾率、内定辞退率、入社半年後の定着率を主要KPIに設定し、ATSやBIツールでリアルタイム共有します。

期末にはチャネル別コスト、工程別リードタイム、評価項目との相関を分析し、次年度のカレンダーと投資配分へ反映します。

こうした継続的なPDCAが、採用競争の激しい市場で計画達成率を高水準に保つ鍵となります。


中途の採用計画を策定する方法7ステップ

中途採用は「不足する戦力を最短期間で補うこと」が目的です。採用市場では即戦力人材の動きが早く、選考スピードと提示条件の魅力度で計画成否を左右します。

以下では、効果的な採用計画を立てるための7つのステップを解説します。

ステップ1|人員ギャップの特定と優先順位付け

まず事業計画と現行組織を照合し、どの職種・レベルが不足しているかを定量化します。急務のポジションは「採用期限」を設定し、達成できなかった場合の事業リスクをあらかじめ明確にしておきます。。

実施することで経営層や現場が採用活動への協力度を高めやすくなります。

ステップ2|ターゲット要件と魅力訴求ポイントの整理

必要スキル、経験年数、成果事例、カルチャーフィットの要素を細かく定義し、求人票と面接評価基準に反映させます。

同時に候補者が転職で重視する動機(キャリアアップ、リモート勤務、報酬モデル、ワークライフバランスなど)を調査し、自社が提示できる強みを整理しておくとクロージングが容易になります。

ステップ3|チャネル選定と母集団形成プラン

ダイレクトリクルーティング、専門エージェント、求人媒体、リファラルなどチャネルごとに「採用単価」「採用スピード」「質」を比較し、優先度を決定します。

たとえばハイスキルエンジニアはダイレクトアプローチ比率を高め、営業やバックオフィスは求人媒体を中心に展開するなど、職種ごとにチャネルミックスを最適化します。

ステップ4|選考フローの高速化と一貫性確保

面接官のスケジュールを事前に確保し、一次面接から最終面接までを2週間以内に収める設計が望ましいです。選考スピードが遅いと他社に先を越されやすく、優秀な人材ほど短期間で複数の内定を得る傾向があるためです。

課題提出やリファレンスチェックは並行して行い、評価シートで合否基準とスコア配分を統一すると、人材の取りこぼしやミスマッチを抑制できます。

ステップ5|オファー条件とクロージング戦略

即戦力人材は複数社からオファーを受けることが多いため、最終面接段階で報酬レンジとキャリアパスを具体的に提示できる準備が必須です。

入社後6か月で担当プロジェクトや評価指標を示し、成果連動報酬やリモートワーク制度など差別化できる要素をセットで提示すると、承諾率が向上します。

ステップ6|入社日調整とオンボーディング準備

転職者は現職の引き継ぎ期間が発生するため、内定承諾後から入社まで平均1〜2か月を見込んでスケジュールを逆算します。

入社日までに人事部門が主導でPC・アカウント発行、オリエンテーション資料配布、関係部署紹介を行い、初日からスムーズに業務を開始しやすくなるように、準備を行います。

ステップ7|KPI設定と継続的改善

応募数、書類通過率、面接通過率、オファー承諾率、採用単価、入社後半年のパフォーマンス評価を主要KPIにし、ATSやBIツールで可視化します。

四半期ごとのレビューでチャネル別ROIとリードタイムを分析し、課題チャネルの投資縮小や面接工程の短縮など改善策を次期計画へ反映します。

これにより採用活動がPDCAで機能し、事業フェーズに応じた即応力を持つ組織が実現します。


採用計画策定で押さえるべき8つのポイント

採用計画は「人数だけを決めるシート」ではなく、採用活動全体をビジネス成果へつなげる設計図です。以下8つのポイントを意識して策定・運用すれば、計画倒れやミスマッチを防ぎ、投資対効果を高められます。

1.データドリブンで母集団を予測する

前年の応募数・通過率・入社後の活躍度などを分析し、各選考ステップの歩留まりを把握することで、「何名の応募があれば何名採れるか」を逆算します。数値根拠があると予算やスケジュールに説得力が生まれ、経営層の合意も得やすくなります。

2.採用ブランディングと情報発信を連携させる

求人票だけでなく、採用サイト・SNS・社員インタビューを統一メッセージで設計し、「どのチャネルに触れても同じ魅力が伝わる」状態を作ります。ブランド認知があるほど選考フェーズの歩留まりが向上します。

3.現場巻き込みと役割分担を明確化する

面接官や現場マネジャーを早期に指名し、評価項目・質問例を共有しておくと、選考スピードが保たれ、評価基準もブレません。採用責任を人事だけに集中させないことが成功の鍵になります。

4.選考フローを短縮し、意思決定を迅速化する

人気職種ほど候補者の意思決定が早いため、面談間隔を詰めたり、最終面接後に迅速にオファー面談を実施したりするなど、リードタイム短縮を計画段階で組み込むと内定辞退を減らせます。

5.離職リスクを見越したフォロー施策を含める

入社前後のオンボーディング計画、メンター制度、目標設定面談を採用計画にあらかじめ盛り込むと、早期離職やミスマッチが低減し、人材投資を確実に回収できます。

6.多様な採用チャネルを試し、投資を最適配分する

求人広告、エージェント、リファラル、ダイレクトリクルーティングを組み合わせ、四半期ごとに採用単価と質を比較。成果が低いチャネルを素早く見直し、成績が良いチャネルへ集中投資します。

7.外部リソースとツールを効果的に活用する

ATSや面接自動日程調整ツール、評価フォーム自動集計などを導入して採用業務を省力化します。外部エージェントや採用コンサルを使う場合は、KPIと成果報酬条件を明確に契約へ落とし込むと良いでしょう。

8.KPIを定期レビューし、次年度計画へ反映する

応募数、面接通過率、採用単価、定着率といったプロセスと成果の両面からなるKPIを月次で可視化し、改善点を四半期ごとにまとめて次期計画へフィードバックします。PDCAを徹底すれば、採用活動は組織学習として蓄積され、年々効率が高まります。


採用計画のフォーマット

ここでは「誰が見てもすぐに運用できる」ことを目的に、採用計画書を 1 枚にまとめる標準フォーマットを紹介します。ファイルはエクセルやスプレッドシートで作成し、年度ごとにタブを分けて管理すると更新が容易です。

以下の各ブロックを上から順に配置すれば、計画立案から進捗管理、改善まで一貫して運用できます。

1.事業目標/人員目標ブロック

冒頭に来期の売上・開発ロードマップなど事業計画の主要指標を記載し、その達成に必要な総人員と職種別増員数を数値で示します。

これにより、採用人数の根拠と経営インパクトがひと目で分かります。

2.年間カレンダー/採用チャネルブロック

横軸に月、縦軸に職種を置き、募集開始、選考ピーク、内定出し、入社予定を色分けしてガントチャート化します。

同じ欄にチャネルごとの投資比率をパーセントで記入すると、時期とチャネル配分の対応関係が可視化されます。

3.選考フロー/評価基準ブロック

書類、一次、最終と工程を列で並べ、担当者、評価項目、合格基準スコア、リードタイム目標を行に記載します。

フローの横にオンライン・オフライン区分も明示しておけば、面接官調整が円滑になります。

4.予算配分/採用単価ブロック

チャネル別・月別に広告費、エージェントフィー、リファラル報奨などを細分化し、総額と残額が自動で算出される数式を設定します。

右端に職種ごとの採用単価目標と実績を置くと、ROIが一目で比較できます。

5.KPIダッシュボードブロック

応募数、書類通過率、面接通過率、オファー承諾率、採用単価、定着率など主要KPIを月次で入力し、セルに条件付き書式で進捗を色分けします。

ATSやBIツールと連携して自動更新にすると、週次レビューが省力化されます。

6.オンボーディング/定着施策ブロック

入社前オリエンテーション、入社初週の研修、メンター制度、90日OKR設定などをタイムライン形式で配置し、担当部署と実施期限を明記します。

定着率や満足度アンケートの入力欄を設けると、採用後の効果検証まで一気通貫で管理できます。

参考:OKRとは?他の目標管理手法との違いと導入までの全手順|LISKUL


採用計画の具体例

従業員150名の成長中SaaS企業が「来期末までに200名体制へ拡大する」という目標を掲げたケースを例に、人数・スケジュール・予算・KPIまでを網羅した採用計画の組み立て方を紹介します。

自社の規模や業種に合わせて調整すれば、そのまま計画書の骨格として活用できます。

※本記事ではあくまで一例としてご紹介しており、実際の計画は自社の状況に応じて調整が必要です。

1.前提条件と人員ギャップの洗い出し

事業計画では新プロダクト投入と海外展開を予定しており、追加でエンジニア10名、インサイドセールス5名、カスタマーサクセス5名、マーケター3名、バックオフィス2名の計25名が必要と判明しています。

離職率を年5%と見込み、補充枠としてさらに5名を計上。結果として1年間で30名を採用する目標を設定します。

2.年間カレンダーとチャネル配分

Q1は計画策定と選考フローの見直しに充て、Q2をエンジニア採用のピークに設定します。

市場が閑散期となるQ3で営業やCS職を集中的に確保し、Q4で補充枠とバックオフィスを完結させるスケジュールです。

エンジニアはダイレクトリクルーティング比率を60%とし、技術カンファレンス登壇やハッカソン協賛で質を担保します。営業・CSは求人広告とエージェントの併用、マーケターはダイレクトリクルーティングと求人広告からの転換を軸に母集団を形成します。

3.予算計画とROI試算

年間採用予算は2,000万円。40%をエンジニア向けイベントとスカウトツール、30%をエージェントフィー、20%を求人広告とSNSプロモーション、残り10%をリファラル報奨へ配分します。

採用単価目標はエンジニア80万円、ビジネス職80万円、バックオフィス30万円とし、総採用数30名に対する平均採用単価は約76万円を見込んでいます。1名あたり初年度売上貢献額を採用コストの5倍以上に設定し、投資対効果を明確化します。

4.選考フローとリードタイム

書類選考からオファー提示までを最長15営業日に収める設計です。一次面接は人事が担当し、二次と最終は面接官のスケジュールに応じて間隔を空けすぎずに設定します。エンジニアには事前コーディング課題、営業にはロールプレイ評価を組み込みます。

評価シートは五段階スコアリングで統一し、合格ラインを総合3.5以上に設定することで判断のばらつきを防ぎます。

5.オンボーディングと定着率目標

入社前オリエンテーションをeラーニング化し、PCとアカウントを入社前に発送します。

入社初週はメンターが日次で1on1を実施し、三週目に90日間のOKRを設定。定着率KPIは半年後92%、一年後88%とし、月次サーベイでエンゲージメントを測定しながら人事BPがフォローアップを行います。

6.KPI設計と改善サイクル

主要KPIは応募数1,200、書類通過率25%、面接通過率40%、オファー承諾率70%、採用単価50万円以下、半年定着率92%です。

ATSとBIツールを連携してダッシュボードを構築し、週次で進捗をレビューします。四半期ごとにチャネル別ROIとリードタイムを分析し、翌期のチャネル配分やフロー短縮策へ反映することで計画を継続的に最適化します。


採用計画策定後にすべきこと5つ

採用計画が完成した後は、計画を“動かす仕組み”を整えなければ成果につながりません。社内合意形成から面接官トレーニング、ATS設定、オンボーディング準備までを段階的に進めることで、計画どおりに人材を確保し早期戦力化へ結びつけることができます。

以下のプロセスを押さえて実行フェーズへ移行しましょう。

1.社内共有と役割確定

経営層と現場マネジャーに計画の背景と数値目標を説明し、合意を得ます。

そのうえで人事、面接官、リクルーター、現場メンターなど関係者の役割とスケジュールを文書化し、計画書と一緒に社内ポータルで共有すると、実行段階での手戻りを防げます。

2.採用広報と求人情報のローンチ

ターゲットごとに作成した求人票と採用サイトを同時公開し、SNSなどで告知を開始します。

計画で定めたチャネル別予算と応募目標を再確認し、広告出稿やイベント告知のスケジュールをATSと連携させると応募流入の初動を逃しません。

3.選考体制の整備と面接官教育

面接官には評価シートと質問事例を配布し、面接ロールプレイや評価基準のすり合わせを行います。

これにより面接品質が均一化し、候補者の体験も向上します。面接日程はガントチャートに沿ってブロック確保し、リードタイム短縮を図ります。

4.ATSとダッシュボードの初期設定

ATSに職種別のフローとKPIを登録し、チャネルごとの応募数や面接通過率を自動集計できるようにします。

同時にBIツールでダッシュボードを構築し、人事と現場がリアルタイムで進捗を監視できる体制を整えれば、ボトルネックを早期に特定できます。

5.オンボーディング施策の仕込みと定着モニタリング

内定者向けイベント、eラーニング、メンター制度などのフォロー施策を入社日までのタイムラインに組み込み、担当者と実施期限を明示します。

入社後は90日OKRと月次サーベイを設定し、エンゲージメント指標を追跡することで早期離職リスクを低減できます。


採用計画でよくある失敗とその対策5つ

採用計画は完成した瞬間がゴールではなく、運用中に想定外の課題が表面化しやすい領域です。ここでは、計画倒れにつながりがちな典型的な落とし穴と、それを防ぐ実践的な打ち手を解説します。

失敗1.目標設定が曖昧で採用人数だけが独り歩きする

必要スキルやカルチャーフィットを数値で言語化せず、「とにかく20名採る」といった目標だけを掲げると、現場が欲しい人材像と応募者の解像度が揃わず選考が迷走します。

計画段階でペルソナシートと評価シートをセットにし、人員目標と質的要件を同じフォーマットで管理しておくと、採用方針がぶれません。

失敗2.採用スケジュールの遅延が連鎖し事業に影響する

面接官の予定確保が後手に回り、一次面接から最終まで一か月以上の時間を要してしまうケースは少なくありません。その間に候補者が競合へ流れるため、計画どおりの充足が難しくなります。

面接官を早期アサインし、ガントチャートを共有カレンダーに反映してタイムブロックを確保すると、遅延を最小限に抑えられます。

失敗3.評価基準のブレで合否判断が揺らぐ

面接官ごとに着眼点が異なり、一次で高評価の候補者が最終で低評価になるといった軋轢が生じると、採用スピードも候補者体験も損なわれます。

面接前に評価項目を五段階でスコアリングするテンプレートを配布し、合格ラインを定量で共有すると判断の一貫性が保たれます。

失敗4.予算超過で投資対効果が見えなくなる

チャネルごとの応募効果を検証しないまま出稿を続けると、期末に広告費が想定を上回り、ROIが不透明になります。

四半期ごとにチャネル別採用単価と歩留まりをBIツールで可視化し、成果が低いチャネルは予算をカットする仕組みを組み込んでおくと、予算逸脱を防げます。

失敗5.内定辞退と早期離職が続出する

計画では目標人数を達成したのに、入社前の辞退や半年以内の離職が相次ぐと人員ギャップが解消されません。

内定後から入社までに個別面談や同期イベントを配置し、メンター制度と90日OKRを導入して活躍イメージを具体化すると、辞退率と早期離職率を下げられます。


採用計画に関するよくある5つの誤解

最後に、採用計画に関するよくある誤解を5つ紹介します。

誤解1.採用計画は採用人数を決めるだけで十分

採用計画の核心は「人数」ではなく、事業戦略と連動した人材ポートフォリオの最適化にあります。必要スキルの棚卸しや評価基準の設計、選考フローの高速化、オンボーディングまでを含めて初めて、計画は組織の成果につながります。人数だけを決めても、適合度や定着率が担保されなければ事業成長は望めません。

誤解2.採用計画は人事部だけで作ればよい

計画には現場マネジャーの要件定義や経営層の投資判断が不可欠です。人事が独力で作成すると、求めるスキルや配属タイミングが現場とずれ、採用後のパフォーマンスギャップが生じやすくなります。初期段階から関係部門を巻き込み、採用後の活躍指標まで共有することでスムーズな採用活動を行うことができます。

誤解3.採用計画は年度初に一度立てれば最後まで変えなくてよい

市場環境や事業戦略は四半期単位で変動します。チャネルごとの歩留まりや採用単価も変わるため、計画は定期レビューで更新してこそ機能します。KPIを月次で可視化し、遅延やコスト超過が見えた時点で施策を修正することで、計画達成率が高まります。

誤解4.オンボーディングは採用計画に含めなくても問題ない

採用の最終目標は「入社」ではなく「戦力化」です。内定者フォローや入社後90日間の目標設定を計画に組み込まなければ、辞退や早期離職によって人員ギャップが再発します。オンボーディングを計画へ統合し、定着率をKPIに含めることで投資回収が確実になります。

誤解5.経験と勘があればデータがなくても計画は立てられる

経験は重要ですが、応募数や通過率、定着率といったデータを使わなければ改善サイクルが回りません。データがあれば、どのチャネルにどれだけ投資すべきか、どの工程で歩留まりが落ちるかを定量的に判断できます。経験にデータを掛け合わせることで、再現性の高い計画が実現します。


まとめ

本記事では、採用計画の意義から具体的な策定手順、実行後のフォローまでを網羅し、自社に合う人材を安定的に確保するための考え方と実践ポイントを解説しました。

採用計画とは、事業目標を達成するために「いつ・どの部署で・どんな人材を・何名採るか」を可視化した設計図です。人材市場の競争激化や働き方の多様化を背景に、計画的な人員確保は欠かせません。

計画を持つことで①事業目標との人員ギャップを解消しやすくなる、②採用コストと期間を最適化できる、③定着率を高める改善サイクルを回せるといった効果が期待できます。

そのためには、ヘッドカウント、ターゲット要件、チャネル配分、評価基準、予算、KPI、オンボーディングまでを一貫して設計することが要となります。

新卒採用では年間カレンダーを基軸に学生接点の質量を調整し、内定後フォローを重視することが成功の鍵でした。一方、中途採用ではリードタイムの短縮と魅力的なオファー提示が即戦力獲得の成否を分けます。

策定時にはデータドリブンで母集団を予測し、ブランド発信や現場巻き込み、選考高速化など8つのポイントに注目すると計画倒れを防げます。記事中のSaaS企業の具体例のように、人数・スケジュール・予算・KPIを一枚にまとめたフォーマットを活用すれば、運用と改善がスムーズに進みます。

計画完成後は社内合意形成、採用広報のローンチ、面接官教育、ATS設定、オンボーディング準備を迅速に進め、週次・月次の進捗レビューでPDCAを回してください。

採用は「入社」で終わりではなく「活躍」で完結します。この記事を参考に、計画の立案から実行・改善までを一気通貫で管理し、自社成長を支える人材基盤を築き上げましょう。

※本記事は株式会社bサーチ提供によるスポンサード・コンテンツです。