ストレスマネジメントとは?企業主導のやり方と具体例を紹介

ストレスマネジメント_アイキャッチ

ストレスマネジメントとは、日々の生活や仕事の中で感じるストレスを効果的に管理し、心身の健康を維持するための方法です。

ストレスによる不調は会社の業務に支障をきたす可能性があります。そのため、ストレスマネジメントは、個人で行う取り組みだけでなく、企業による取り組みとしても注目されています。

とはいえ、実際に自分の所属する企業やチームで取り組む場合、どのように行えば良いのか、そもそも実際に効果はあるのか、などの不安が浮かぶのではないでしょうか。

労働者が上手くストレスと付き合うために企業が行うべきことは、ストレス緩和を目指した「サポート」です。

そこで本記事では、ストレスマネジメント推進のメリットや企業における成功事例、実践方法をご紹介します。

ストレス由来で業務に影響を生じさせないためにも、状況に合わせて導入しやすい実践方法を厳選してお伝えしますので、ぜひご一読ください。


目次

ストレスマネジメントとは「ストレスと上手に付き合い対処すること」

ストレスマネジメントとは、心や身体に悪影響を及ぼすストレスと上手に付き合い、状況に応じて適切に対処していくことを指します。

ストレスは日常生活で誰でも受けるものです。たとえば、適切な緊張感を与えるストレス(ユーストレス)はパフォーマンスを向上させますし、ポジティブなものごとによって発生するストレスもあります。

一方で、負担が大きいストレス(ディストレス)が与えられると、メンタルや体調に悪影響を及ぼしてしまうので、そのときどきに合わせた適切な対処が必要になります。

こういった過剰なストレスによって不調をきたした労働者は、仕事に前向きに取り組めず業務に支障が出る場合があるため、企業による取り組みも注目されています。

厚生労働省による労働安全衛生調査では、ストレスの影響を受けた心の健康(メンタルヘルス)対策に取り組んでいる企業の割合を確認できます。平成23年度時点では43.6%でしたが、令和4年度では63.4%を記録しており、平均的に増加の傾向にあります。

参考:令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

近年の働き方改革やウェルビーイングの推進といった意識変容の中で、社員のストレス管理は企業課題として注目されています。

参考:ウェルビーイングとは?個人と企業が行うべき対策のまとめ│LISKUL

ストレス原因(ストレッサー)への理解は事前防止につながる

ストレスの原因(ストレッサー)の種類を知ることは、ストレスの発生やそれによる悪影響を事前に防止することにつながります。

ストレッサーに合わせた対処を取ることは、ストレスマネジメントへの第一歩となります。

そもそもストレッサーとは、人がストレスを感じる原因となる外界からの刺激を指します。主に4種類に分けられるストレッサーの特徴を押さえていると、予防的な対策や具体的なストレス軽減法を導入しやすくなるので確認しておきましょう。

ストレスの原因(ストレッサー)について、例を挙げて説明

ストレス反応への理解は心身の負担軽減につながる

ストレスが発生したときの反応は、持続性や強度によって身体と心に大きな負担をかけるので、その軽減に努める必要があります。

ストレスマネジメントにおいてストレス反応を重視する理由は、個々の健康と生活の質を直接的に左右する点です。早期にストレス反応を認識し、適切な対処法で症状を緩和させるといった働きかけが重要です。

下の表は、主なストレス反応のパターンとその影響や例をまとめたものです。予防策を講じやすくするためにも、各パターンの特徴を押さえておきましょう。

ストレス反応について、影響と具体例を挙げて説明

参考:ストレスとは ストレス軽減ノウハウ – こころの耳


ストレスマネジメントがもたらす効果

ストレスマネジメントを実践することで得られる効果を、大きく分けて2点ご紹介します。

心身ともに健康になり生活の質が向上する

ストレスマネジメントは、心身の健康を促進し、生活の質を向上させるために役立ちます。

ストレスを効果的に管理することで、不安やイライラといった精神面の不調が収まりやすくなり、頭痛や筋肉の緊張などの身体面の症状軽減にもつながります。規則正しい睡眠やバランスの取れた食事、適度な運動が取り入れやすくなるので、日常生活全般において幸福感が高まり、生活の質が大きく向上します。

具体的な効果は下記が挙げられます。

  • 不安やうつ病の症状を軽減予防
  • 集中力向上による仕事や学習の効率化
  • 不眠症や睡眠障害が改善
  • 血圧の上昇や心拍数の変動を抑え、心臓病のリスクを低減
  • 胃腸など消化器系の不調が改善

心の余裕が生まれ、仕事のパフォーマンスが向上する

ストレスの適切な管理は、心の余裕につながり、集中力の高まりやポジティブな思考によって仕事のパフォーマンスを向上させます。

ストレスが軽減されると疲労感が減るため、仕事へのモチベーションを維持することができます。こうした意識の中で仕事をすると職場での人間関係も良好になりやすく、チーム全体の生産性向上が期待できるようになります。

具体的な効果は下記が挙げられます。

  • 自己理解が深まり、自分の強みや弱みを認識
  • 自己肯定感が高まり、自信が向上
  • 冷静な判断ができ、対人関係が円滑化
  • 管理能力の向上により、ワークライフバランスが取れた生活

ストレスマネジメントを取り入れた企業成功例

本章では、ストレスマネジメントを取り入れたことで効果が確認できた事例を3つご紹介します。

労働者が抱える心身の健康の揺らぎや、それに伴う業務への影響を避けるためにも、企業側からのサポートを実施することはおすすめです。

ストレス対処への関心度を向上させた公務職場での検証

2010年に実施された公務職場での比較試験によって、ストレス対処への関心度向上がストレスマネジメント研修などによってもたらされることが分かっています。

具体的な試験内容は下記のとおりです。

  • 目的:認知行動療法を応用したストレスマネジメント教育の効果を明らかにする
  • 対象:公務職場の事務職員140名
  • 方法:介入群と待機群に分け、介入群には4週間ごとに認知行動療法を応用した3回の講習会とセルフモニタリングを実施
  • 内容: 1回目はストレスとコーピング(対処法)の講義
        2回目は問題解決と認知再構成法のトレーニング
        3回目はリラクゼーションとグループ討論
  • 確認方法: 介入前後、終了1ヶ月後と6ヶ月後に自記式質問紙調査を実施
           介入群54名と待機群63名を対象に二元配置分散分析を用いて介入効果を解析

このプログラム終了直後に介入群には問題解決能力や前向きな思考方法、そしてソーシャルサポートへの意識の向上が確認できました。

さらに継続して、1ヶ月後には問題解決能力と前向きな思考方法、6ヶ月後には問題解決能力と健康への理解が増加しました。ストレス管理行動への関心も明らかな変化が見られて維持されているため、ストレスマネジメント研修は労働者への取り組みとして有効である可能性を示しています。

参考:公務員を対象にした認知行動的ストレスマネジメント教育の効果に関する非ランダム化比較試験

自然豊かなオフィスでストレス緩和に成功したトヨタ自動車

日本を代表するモビリティカンパニーであるトヨタ自動車株式会社は、オフィスに自然を取り入れることで労働者のストレス緩和に成功しています。

もともとは、心身ともに健康になってほしいという目標のもと、「空間」に新しい価値を提供する研究「Genki空間®」において、植物のリラックス効果を検証するために導入されました。植物の葉の形状によってもつ異なる傾向を活用し、場所によって適切な種類の葉を設置するという取り組みです。

実際に職員に実施したアンケートでは、植物のない部屋に滞在していると疲労感と倦怠感が上がったのに対し、植物のある部屋(とくに小さい葉や細長い葉の部屋)では、疲労感も倦怠感も下がりストレス緩和効果が認められました。

参考:第4回 Genki空間®研究の取り組み~Genki空間®は本当に人を元気にしているか~

休職者のフォローアップ体制を整え復帰率を向上させた味の素

味の素株式会社は、「健康は最も重要な、個人の、そして会社の資源」という健康理念のもと、ヘルスケアの重要性にフォーカスした健康経営を推進しています。

産業医面談の機会を定期的に設けることで心身の健康管理に注力するほか、「メンタルヘルス回復プログラム」で休職者のフォローアップ体制を整えているのが特徴です。

復職までに5つのステップを設けているため、自身の考えやストレス対処の傾向を掴み、再発防止のためにも仕事ができる状態まで回復してから職場復帰します。

こういったストレスマネジメント支援のもと、休職したほとんどの人は1年以内で復帰し、再休職者も減少しています。

参考:第42回 味の素のメンタルヘルス回復プログラム 早期の発見・治療・休業で必ず職場復帰


企業におけるストレスマネジメント実践の流れ

この章では、企業におけるストレスマネジメントの実践をフローチャートでご紹介します。

従業員がストレスに適切な対処をできるようになり、心身ともに健康に働くためには、企業は下図のような「サポート」部分での取り組みが必要となります。

企業においてストレスマネジメントを実践する場合のフローチャート

※2015年12月改正の労働安全衛生法によって、労働者が 50 人以上いる事業所では、毎年1回すべての労働者に対してストレスチェックを実施することが義務付けられています。

参考:改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」の具体的な運用方法を定めた省令、告示、指針を公表します


企業主導ストレスマネジメントのサポート方法7選

企業主導で取り組める、ストレスマネジメントの実践方法を7つご紹介します。

前提として、企業からの働きかけは、職場環境改善や健康管理といった基盤を整える点に留まるため、サポートとしての役割が期待されます。

そのため、企業がストレスマネジメントに取り組む際は、ストレッサーを抑制したり、ストレスを緩和する場を提供したり、本人に対処を促したりすることがおすすめです。

すぐに取り入れられるものから、長期的な視点で効果が見込めるものまで幅広くまとめたので、まだ実践していない施策がある場合はぜひ導入を検討してみてください。

企業が行えるストレスマネジメント実践方法一覧

  1. ストレスチェック:労働者のストレスを集計分析できる
  2. 産業医連携:専門家によるサポートのもと健康管理を行う
  3. 1on1:信頼関係構築やモチベーションアップでストレスを緩和する
  4. メンタルヘルス研修:自分で心の健康を守る方法を知る
  5. アンガーマネジメント研修:マイナス感情と向き合い客観的な視点を得る
  6. 文化形成:ストレスを抱えた人への理解とサポートを浸透させる
  7. オフィス環境整備:パフォーマンスが向上するレイアウトやインテリア

1.ストレスチェック:労働者のストレスを集計分析できる

労働者のストレス状態を知るために、ストレスチェックを活用しましょう。

ストレスチェックとは、労働者が自分のストレスの状態を知り、対処法の検討に繋げることを目的とした、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止する仕組みです。ストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分や部署のメンバーがどのような状態にあるのかを調べられます。

労働安全衛生法の改正に伴い、労働者が 50 人以上いる事業所では、毎年1回、この検査を全ての労働者に対して実施することが義務付けられています。

実際に、ストレスチェックを実施した事業所のうち、所属部署ごとの分析を実施した事業所の割合は72.2%[令和3年調査76.4%]であり、その中で分析結果を活用した事業所の割合は80.2%[同79.9%]です。

参考:ストレスチェック制度導入マニュアル
   【2024年最新版】ストレスチェックサービスおすすめ15選を比較!選び方も紹介

2.医療機関連携:専門家によるサポートのもと健康管理を行う

産業医など医療機関連携の健康管理サービスは、労働者のストレスに対して迅速な対処が可能です。

労働者がストレスを抱えているかの診断だけでなく、ストレス反応として身体に不調をきたしていないかを確認することができます。

たとえば、クラウド型健康管理サービス「first call」では、産業医業務のオンライン対応(職場巡視を除く)が可能な嘱託産業医の選任や、医師への相談窓口など産業医や医師による企業の健康サポートを行っています。

参考:クラウド型健康管理サービスfirst call
   【2023年最新版】健康管理システムのおすすめ15選を徹底比較!│LISKUL

3.1on1:信頼関係構築やモチベーション向上でストレスを緩和する

ストレス状態を判断するだけでなく、発生したストレス反応を軽減させる目的で、信頼関係やモチベーション向上に取り組む1on1はおすすめです。

1on1とは上司部下間で行う1対1の面談のことで、信頼関係の構築や部下の育成、経験学習の促進、モチベーションの向上が見込めます。

こういった面談の活用は、目標やフィードバックの共有などを通して仕事へのモチベーション維持につながるとともに、ちょっとした悩みや相談を話す機会が得られ、アドバイスがしやすい環境づくりを促進できます。

参考:部下の会話を引き出す1on1ミーティングのやり方・進め方・質問例│LISKUL

4.メンタルヘルス研修:自分で心の健康を守る方法を知る

メンタルヘルス研修は、労働者が自分で心身ともに健康な状態を保つために実施します。

メンタルヘルスの基本知識から実践的なストレス管理法まで幅広く伝えることで、社員は自身のメンタルヘルス状態を正確に把握し、問題が発生した際の早期対処を学ぶことができます。

また、研修内グループワークなどを通して社員間のコミュニケーションを促進することで、社内で悩み事を相談しやすい関係構築を促進できます。

5.アンガーマネジメント研修:マイナス感情と向き合い客観的な視点を得る

ストレス反応として出やすい怒りの感情と上手に付き合うために行われるのが、アンガーマネジメント研修です。

マイナス感情を否定するわけではなく、怒るべき場面では相手に自分の伝えたいことが伝わるように意識し、怒る必要のない場面では適切に感情を抑えられるようになることを目的としています。

アンガーマネジメントの具体的手段としては、怒りを鎮めるために時間をおいて感情を整理する「6秒ルール」や、都度感じた怒りを点数化して客観視するといった方法が挙げられます。

6.文化形成:ストレスを抱えた人への理解とサポートを浸透させる

労働者間でケアしあうために会社全体で取り組むものとして、ストレスへの理解を浸透させた文化を形成することは重要です。

サポートが行き届いた職場では、労働者がストレスをシェアしやすくなり、共感と対処方法が自然と提供されることでストレスの軽減につながります

働きやすい社内文化を形成するためにも、ストレスなど心身の健康に対する正しい理解を広げ、ワークライフバランスを推進しましょう。

具体的な取り組み例は、以下が挙げられます。

  • 有給消化推奨など休むときは休む文化
  • フレックスタイムやリモートワークの推奨
  • コミュニケーションとストレス発散活動を同時にできる社内部活動
  • 復職支援プログラムなど職場復帰しやすい制度
  • ストレス管理のためのアプリやツールの普及
  • ワークライフバランスを推進するテーマを扱う社内報

7.オフィス環境整備:パフォーマンスが向上するレイアウトやインテリア

労働者がストレスなく働くことでパフォーマンスが向上する方法として、オフィスの環境整備があります。

物理的・心理的な快適性が向上し、コミュニケーションや作業効率が改善される効果が期待できるため、可能な範囲で取り入れてみると良いかもしれません。

オフィス環境整備は、視覚的に癒し効果やリフレッシュ効果のあるもの、実際に身体を動かしたり休んだり会話を楽しむなどの行動でストレスを緩和するものなどがあります。

企業に合った手段を見つけるために、下記の取り組み例をぜひご活用ください。

  • 集中力向上や癒し効果のある植物設置
  • 自分で場所を選べるフリーアドレス制の導入
  • 疲れたときに休めるリラクゼーション設備
  • 会話を楽しむカフェスペース
  • 自然光を取り入れる窓や照明の配置
  • 集中できる個別ブースやミーティングルームの設置
  • エルゴノミクスに基づいた椅子やデスクの導入
  • 音楽や白色雑音を流すことで集中力を高める音環境の整備
  • 定期的なオフィスの清掃と整理整頓の推奨
  • ストレッチや軽い運動ができるスペースの確保
  • 室内の空気質を改善するための空気清浄機や換気システムの導入

個人でも取り組めるストレスマネジメントの実践方法4選

本章では、個人でも気軽に取り組める、ストレスマネジメントの実践方法を4つご紹介します。

企業からの働きかけは、職場環境改善や健康管理といった基盤を整える点に留まるため、サポートとしての役割が期待されます。

そのため、さらに一歩踏み込んだ具体的なストレス緩和に取り組む場合は、対象者自身が自分のストレスや適切な対処方法を理解し、実践する必要があります。

チームなどの小規模で取り組みたい場合や、ストレスマネジメント関連の研修を実践レベルまで落とし込んで行いたい場合は、下記の方法をぜひご活用ください。

個人でも取り組めるストレスマネジメント実践方法一覧

  1. こころの体温計:ストレス度を2分でセルフチェック
  2. ストレス対処・タイプ診断:自分の対処タイプと傾向が分かる
  3. 1on1:信頼関係構築やモチベーションアップでストレスを緩和する
  4. MeTime:ストレス解消のために自分の好きを実践する

1.こころの体温計:ストレス度を2分でセルフチェック

ストレス度合いをセルフチェックできるサービスに、各自治体が掲示している「こころの体温計」があります。

こころの健康に関心をもつことを目的とし、パソコンやスマートフォン、携帯電話を利用して気軽にメンタルヘルスチェックができるシステムです。

健康状態や人間関係、住環境などの質問に回答することで、水槽の中で泳ぐ赤や黒の金魚、猫など複数のキャラクターが登場し、ストレス度や落ち込み度が分かります。

利用料は無料(※通信料金は自己負担)なので、今のストレス状態を簡単に確認したいときの利用がおすすめです。

参考:「こころの体温計」メンタルヘルスチェックシステム文京区

2.ストレス対処・タイプ診断:自分の対処タイプと傾向が分かる

自分がよく取りがちなストレス対処の傾向を知り、適切な向き合い方を客観視したい場合は、ストレス対処・タイプ診断がおすすめです。

16個の設問に答えると、ストレス対処傾向で分かれている5つのタイプ(回避タイプ、問題解決タイプ、自己開示タイプ、肯定的解釈タイプ、複合タイプ)のうち、自分がどのタイプかが分かります。

自分がストレスを感じるときや対処するときの傾向に基づいているので、自分がストレスを感じる場面などの解説を含め、タイプ別に異なるアドバイスをもらえます。

人ごとの傾向を客観的に分類できるので、企業やチームでもぜひご活用ください。

参考:ストレス対処・タイプ診断

3.セルフモニタリング:ストレスを感じる傾向を視える化する

自分でおこなう代表的なストレスマネジメントの実践方法として、⾏動や感情を記録し、ストレスを感じる傾向を視える化する「セルフモニタリング」があります。

セルフモニタリングの実践方法はシンプルで、ストレスが生じた状況やその時の考えなどを整理して書き出し、自分の特徴について客観的に理解を深めていきます。

自分がどのような状況でストレスを感じやすいのか、またストレスが生じた際は自身にどういう変化が生じるのかなど、どのようなストレス体験をしているのかに「気づく」ことができる方法です。

認知行動療法における技法にも取り入れられており、習慣化すれば、ストレスマネジメントを自然と行うための基盤を築くことができます。ノートや、スマートフォンのメモ機能などで手軽に実践できるのでぜひ一度試してみてください。

参考:「セルフモニタリング」とは?ストレスを見逃さないための気づきと理解を深める技法

4.MeTime:ストレス解消のために自分の好きを実践する

自分で取り入れられるストレス発散の考え方として、好きなことを実践する私時間「MeTime」が挙げられます。

「Me Time」とは、自分にとって嬉しい楽しいと感じるものを優先するための時間のことで、海外では単なる自分の時間を表す「My Time」とは区別して使われ始めています。

ストレスマネジメントの視点では、「Me Time」を使って自分が本当にしたい好きなことを書き出す方法があります。このとき、「have to=しなくてはならないこと」と、「want=したいこと」を区別することに注意が必要です。

本当にしたいことだけを考えるうえで、自然と、睡眠や食事、運動、趣味、リラクゼーションなどの自分に合ったストレス発散方法が分かるようになります。

参考:時間の使い方は命の使い方「Me Time(ミータイム)」のつくり方


ストレスマネジメントを実践する前の注意点

最後に、ストレスマネジメントに取り掛かるときに注意すべき点をご紹介します。

今まで紹介してきた方法を実践するにあたって、効果が出やすくなるためにも意識してほしいポイントは2つです。

ストレスを完全に無くそうとしない

目標は、ストレスを完全になくすことではありません。ストレスをマネジメント(管理)できるように、選択肢を広げていくという意識が大切です。

日常生活や仕事の中でストレスは必然的に発生するため、完全にストレスのない状態を維持することはほぼ不可能です。完全にストレスを排除することを目指すと、過度な意識や恐れが不必要な不安やプレッシャーを引き起こす可能性があります。

ある程度のストレスは、個人の成長や健康にとって欠かせない要素であり、完全に無くそうとすることは逆効果になり得ます。

問題解決能力や集中力を向上させる効果のある適度なストレス状態(ユーストレス)と、心身に支障をきたす過度なストレス状態(ディストレス)を混在して考えないようにしましょう。

他と比べず、適切なペースで取り組む

自分のストレス状態やその対処法を実践すると、自分と他の人が違ったストレス耐性を持っていたり上手く効果が出なかったりして焦ることがあります。

「ここまで取り組んだのにどうして上手く効果が出ないんだろう」と考えると負担になり、かえってストレスにつながります。

その人やその企業に合った取り組み方とペースがあるので、焦らず取り組むことが肝心です。


まとめ

本記事では、ストレスマネジメントのメリットや企業における成功事例、具体的な実践方法を企業と個人に向けてご紹介しました。

ストレスマネジメントとは「ストレスと上手に付き合い対処すること」です。できるだけ効果のある方法で取り入れるためにも、ストレスの原因(ストレッサー)やストレス反応の関係について理解を深めることは重要です。

労働者のストレス緩和に成功した企業例を参照しながら、自分の所属する企業・チームはどの手法を試すべきなのかぜひ検討してみてください。

また、あくまで企業が行うストレスマネジメントは労働者のサポートにすぎないことを念頭に置いて取り組みましょう。セルフケアに役立つツールや手法を共有するなど、労働者一人ひとりが自分に合ったストレス対処を知ることが大切です。

ストレスマネジメントを実践する際に、本記事で紹介した情報が一助となれば幸いです。

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