プロダクト戦略とは?売れる製品を生み出す基礎からフレームワークまでご紹介

プロダクト戦略

プロダクト戦略(製品戦略)とは、製品やサービスの開発、市場投入、成長を成功させるための全体的な計画や方針を広く指す言葉です。

マーケティング戦略と重複する要素も多く、製品のポジショニングから、価格設定、プロモーション、販売チャネルといった要素を総合的に考慮し、企業の目標達成に寄与するよう設計する必要があります。

またプロダクト戦略には、消費者のニーズやトレンドを把握し、それに基づいた製品開発を行うことも重要です。

このように学ぶことの多いプロダクト戦略ですが、本記事では、売れる製品を生み出すために知っておくべきプロダクト戦略の基礎知識や、マーケティングとの違い、フレームワークなど、成功を勝ち取る戦略を構築するためのヒントとなる情報をご紹介します。

製品の開発や改善に携わる方から基本を学びなおしたい方はぜひご覧ください。


プロダクト戦略とは製品を成功させるための計画や方針のこと

プロダクト戦略(製品戦略)とは、製品やサービスの開発、市場投入、成長を成功させるための全体的な計画や方針を広く指す言葉です。

プロダクト戦略を成功させるためには、製品のコンセプトや機能だけでなく、顧客が当然のように商品に期待するものを提供したり、アフターサポートやカスタマーサポートなどの付加価値など多くのことを考える必要があります。

マーケティング戦略や販売戦略などの概念やフレームワークと重なる部分も大きく、少しとっつきづらい印象を受けますが、基本は製品を通じた顧客への価値提供であることを念頭に置いておけば混乱を防げると思います。


プロダクト戦略とマーケティング戦略の違い

プロダクト戦略とマーケティング戦略の違いをひとことで表すのは難しいです。

その理由は、定義が定まっておらず、狭義と広義で包括関係が逆転するからです。

狭義:プロダクト戦略は、マーケティング戦略の一部(4PのProduct)である
広義:プロダクト戦略は、大部分のマーケティング活動を含む全体的な計画や方針である

含まれる要素を例に挙げて整理すると以下のような関係にあります。

要素プロダクト戦略マーケティング戦略
製品の特性
価格設定
販売チャネル
プロモーション
目標市場
ポジショニング
ブランディング
競合分析
カスタマーサポート
研究開発

このように一例をあげただけでもマーケティングと重複するところもかなり多いですが、成功を収めるには避けて通れないと思いますので、本記事では広義のプロダクト戦略について解説していきます

それでは、それぞれの定義から見ていきましょう。

狭義でのプロダクト戦略は4PのProductを指す言葉

狭義でのプロダクト戦略はマーケティング戦略の「4P」(Product、Price、Place、Promotion)の「Product(製品、製品戦略)」部分を指す言葉です。

ここでいう「Product(製品、製品戦略)」の役割は、顧客のニーズや期待に応える製品やサービスの提供で差別化を図り、顧客価値を創造することです。

4P(マーケティングミックス)について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

参考:マーケティングミックス(4P)とは?事例から学ぶ活用のポイント│LISKUL

広義でのプロダクト戦略は4PのProduct部分を指すわけではない

広義でのプロダクト戦略は、マーケティング戦略の「4P」(Product、Price、Place、Promotion)の「Product(製品)」部分を含みますが、それだけではありません。

製品やサービスが市場で成功し企業の目的を達成するための全体的な方針や計画を定めるものであり、そこには製品のポジショニングや価格設定などの多くの要素も含まれます。

つまり4Pはプロダクト戦略に含まれます。

実際に皆さんもプロダクト戦略について調べるとマーケティング用語やフレームワークが散見された経験があると思いますが、そもそもなぜこのようなことが起こるのでしょうか?

4PのProductだけを考えていても売れる製品は生み出せない

前述の疑問への回答は、「マーケティングミックス4PのProductだけを意識していても実際に売れる製品を生み出せないから」です。

売れるプロダクトを生み出すには、コンセプトを固めるだけでなく、継続的かつ柔軟に市場や顧客にフィットしていく必要があり、それにはマーケティング戦略に含まれる様々な要素についても検討しなければなりません。

それでは次にプロダクト戦略に関連するフレームワークをいくつかご紹介します。


プロダクト戦略のフレームワーク

前述のとおり、広義のプロダクト戦略にはマーケティング戦略と重なるところも多いため、関連するフレームワークは多岐にわたります。

そこで本記事では、フレームワークを以下の3つに分類して紹介します。

  • プロダクト戦略として紹介されることが多いもの
  • マーケティング戦略として紹介されるもの
  • 販売戦略として紹介されることが多いもの

プロダクト戦略4つのフレームワーク

プロダクト戦略の基本は製品を通じた顧客への価値提供であり、それを分類しつつ、それぞれのレベルで改善を行うという形が一般的です。

製品コンセプトとなる3要素を整理するフレームワーク

プロダクト戦略の一番基礎となるのが製品コンセプトとなる3つの要素です。

誰が(ターゲット)、いつ・どこで・どのように利用することで(利用シーン)、どのような価値(ベネフィット)を得るかを考えます。

【例】
誰が:食事をとる時間がないビジネスマンが
利用シーン:商談先への移動中に駅中のジューススタンドで購入した商品を飲むことで
ベネフィット:短時間で栄養を取ることができる

この製品コンセプトは以降で紹介するモデルの核の部分にもなるので覚えておきましょう。

プロダクト3層モデル

プロダクト3層モデルは、顧客への価値を基準に製品を3つのレベルで整理し、改善を行うフレームワークです。

プロダクト3層モデルのイメージ

製品の中核

顧客が製品に求める根本的な機能、製品が解決するべき基本的な問題やニーズを指します。(例:スマホの電話機能)

製品の実態

顧客が実際に手にする製品です。品質、デザイン、ブランド、機能などの要素が含まれます。(例:スマホのカメラ機能)

製品の付随機能

製品に付加される付加価値を指します。保証やカスタマーサポートなどが含まれます。(例:スマホの画面が割れた際のサポート)

プロダクト3層モデルを基準に製品の価値を整理することで、価値が不足している部分が明確になります。

またマーケティング戦略の概念のひとつである「製品ライフサイクル(プロダクトライフサイクル、PLC)」とともに紹介されることも多く、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」において求められる価値が異なる点にも注意しましょう。

  • 導入期:中核の価値をつつがなく提供することに注力
  • 成長期:実態部分の価値を増やしていく
  • 成熟期以降:付随機能や価値が差別化の鍵となる

ホールプロダクトモデル

ホールプロダクトモデルとは、顧客の製品購入時の期待と実際に体験した際のギャップのない理想の製品を提供することを目的としたモデルです。

プロダクト3層モデルとは異なり、顧客の期待を切り口とした4層構造となっています。

ホールプロダクトモデルのイメージ

コアプロダクト

コアプロダクトとは、企業が最初に市場へ投入した製品(セット)のことです。3層モデルの中核のように基本的な機能を含んでいます。(例:初めて市場へ投入したスマホ)

期待プロダクト

期待プロダクトとは、製品を購入した顧客が製品に当然期待する要素を指します。(例:スマホの充電器やインターネットを利用できる機能、発熱しない安全なものなど)

拡張プロダクト

拡張プロダクトとは、顧客の期待を超える付加価値を提供できる要素のことです。(例:高画質のカメラ、高音質のスピーカー、無料のアフターサービスなど)

理想プロダクト

理想プロダクトとは、顧客が期待する要素や、期待以上の要素が網羅的に踏襲された文字通り理想的なプロダクトを指します。(例:上記を要素が揃っているもの)

もちろん理想プロダクトを生み出すことは現実的には難しいでしょう。しかし、顧客へ提供する全ての価値を製品ととらえ、各レベルで不足しているものを補足・調整し、製品を理想プロダクトに近づけていくことができます。

ジョブ理論

ジョブ理論とは、顧客が何を達成しようとしているのか、何を解決しようとしているのかを3つのカテゴリに分類し理解するためのフレームワークです。

具体的には「ジョブ」とは顧客の目標や問題を指し、これを解決することで価値を提供します。

機能的なジョブ

機能的なジョブとは、製品やサービスが果たすべき基本的な機能や利益のことです。例えば、掃除機は部屋を掃除するという機能的なジョブを担っています。

社会的なジョブ

社会的なジョブとは、人間関係や社会的立場に対する影響を指します。ブランドの服を着ることで社会的なステータスを向上させることがこれに該当します。

感情的なジョブ

感情的なジョブとは、顧客の感情や心地よさに関わる部分です。音楽を聴いて心を落ち着かせることが例として挙げられます。

これらのジョブを理解することで、顧客のニーズに沿った形での製品やサービス提供が可能となり、結果としてより良い顧客体験を生み出すことができるでしょう。

マーケティング戦略のフレームワーク

次にマーケティング戦略と販売戦略のフレームワークをご紹介します。

全て説明するととても長くなってしまうので概要のみとなります。

それではマーケティング戦略のフレームワークから見ていきましょう。

モデル名説明
4P製品(Product)、価格(Price)、場所(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの主要な要素を指し、これらを最適に組み合わせることで市場における競争力を強化できる
Ansoffの成長マトリックス市場と製品の新規性をもとに、成長戦略を定義するモデル
BCGマトリックス製品や事業を「スター」「キャッシュカウ」「問題児」「負け犬」の4つのカテゴリに分けて位置付けるモデル
FABE分析製品の特長(Feature)、それによる利点(Advantage)、利点から得られる恩恵(Benefit)、そしてその証拠(Evidence)を分析する方法
PLC(製品ライフサイクル)製品が市場に投入されてから撤退するまでの一連のフェーズを示し、各フェーズごとに適したマーケティング戦略が求められる
STP市場をセグメントに分け(Segmentation)、ターゲット顧客を選定(Targeting)、製品やサービスを適切に配置する(Positioning)三つのプロセスから成る
SWOT分析自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を明らかにし、戦略策定の助けとなる分析手法

参考:新規事業開発のステップごとに活用したい30のフレームワーク|LISKUL
   STP分析とは?有利なビジネスを展開するための事例や手順まで!│LISKUL
   SWOT分析とは?定義から具体例、方法までわかりやすく解説|LISKUL

販売戦略のフレームワーク

次に販売戦略のフレームワークをご紹介します。こちらも全て説明すると長くなるので概要のみとなります。

戦略説明
APIプラットフォーム戦略他のサービスと連携できるようAPIを提供し、製品の価値を高める戦略です。
アップセル戦略既存の顧客に対して、より高価な製品やサービスを購入させる方法です。
オール・イン・ワン戦略多様な機能を一つの製品やサービスに統合して提供する方法です。
クロスセル戦略既存の顧客に関連する製品やサービスを提供する方法です。
セルフサービスモデル顧客が自ら製品やサービスを選んで購入する方法です。
ニッチ戦略特定の市場セグメントに焦点を当て、競合と差別化する戦略です。
ハイタッチ・サービス戦略顧客満足度を高めるために高品質なサービスやサポートを提供する戦略です。
パートナーシップ他の企業と提携し、共同で製品やサービスを提供する方法です。
フリーミアムモデル基本的な機能を無料で提供し、付加価値のある機能を有料で提供するビジネスモデルです。
ベスト・オブ・ブリード特定の分野で最高の製品やサービスを提供する方法です。
ローコスト戦略低価格で市場に提供し、コストリーダーシップを獲得する戦略です。
ランド&エキスパンド小規模な取引からスタートし、徐々に拡大していく方法です。
直販モデル製造者が直接消費者に製品を販売する方法です。

参考:売上を伸ばす販売戦略の立て方と代表的な4つの手法|LISKUL
   アップセル・クロスセルとは?顧客単価や満足度を高めるポイントを解説|LISKUL
   フリーミアムの勘所が5分でわかる!【成功事例6選と失敗事例2選付き】|LISKUL


プロダクト戦略のプロセス

プロダクト戦略のプロセスといっても、前述のとおり関連する要素が多く、どこから手を付けるべきか悩むと思います。

また実行のためのプロセスはフレームワークごとに異なります。

そこで本記事では、3層モデルの中核であり、ホールプロダクトモデルのコアプロダクトに位置づけられている共通項である根本的な価値(製品コンセプト)から見直すことと、継続的に改善を行うための調査方法をご紹介します。

コンセプトがブレていないかを確認する

製品の価値について考える場合、何よりも先にコンセプトを確認しましょう。

コンセプトがブレていては、その上にどのような付加価値を乗せても意味がありません。

誰の、どんな悩みを解決するために、どのようなものを提供するのかを考えましょう。

(ふるさと納税のAmazonギフトのように中核以上に付加価値が主張するケースも稀に目にしますがひとまず置いておきましょう。)

コンセプトを整理することで、関連するマーケティングや販売戦略との連動性も生まれやすくなるので、施策同士のかみ合わせが悪いと感じている方はぜひ実践してみてください。

コンセプトを整理するうえで最もシンプルな事例を3つご紹介します。

プロダクト戦略(製品コンセプト)3つの事例

コンセプトを練る際のヒントとして、キレのあるコンセプトで成功した製品やサービスを3つご紹介します。

事例1.ウィダーインゼリー

誰が:忙しいビジネスマンが
利用シーン:移動中に
ベネフィット:10秒でエネルギーをチャージできる

事例2.焼肉ライク

誰が:一人で手軽に焼肉を楽しみたい人が
利用シーン:ランチやディナーに
ベネフィット:一人でも気軽に本格的な焼肉を楽しむことができる

事例3.Anytime

誰が:忙しいビジネスマンや主婦、学生が
利用シーン:自分の都合の良い時間に
ベネフィット:24時間いつでもアクセスできるジムで、無理なく運動習慣を身につけることができる

もちろん上記の成功は製品コンセプトのみが要因というわけではないですが、成功している製品やサービスのコンセプトは一言で説明できるぐらいにわかりやすいことが多いと思います。

自社の製品やサービスを一言で説明できないかもと感じた方は、ぜひこの機会に整理してみましょう。

継続的に実態の調査を行う

製品を理想プロダクトへ近づけて行くには改善を繰り返すしかありません。

どのような改善のアイディアが出せるかは、経験や力量や調子次第かもしれませんが、その前段階の調査や分析はいつでも行うことができます。

作り手の思い込みで製品や機能を作り、それを顧客に押し付けてしまっていないか、実態を調査・分析しましょう。

代表的で有効な調査手段としては以下のようなものが挙げられます。

代表的な4つの調査方法

1.満足度調査

製品やサービスへの顧客の満足感を計ることで、製品やサービスの強みや改良が必要な部分を特定し、顧客の期待により適切に応える製品へと改善するためのヒントを得ることができます。

参考:顧客満足度調査とは?実施のメリットと、調査を成功させるための6つのコツ|LISKUL

2.利用率調査

製品やサービスがどの程度利用されているかを分析し、その人気や市場での地位を知ることができます。

利用率が低い場合は、その要因を究明するための手がかりにもなります。

3.市場調査

市場の規模やトレンド、消費者のニーズを解析することで、製品の位置づけや販売戦略を考える上での有益な情報を得ることができます。

新製品やサービスの開発時にも、市場のニーズや機会を掴むために不可欠です。

参考:5分でわかる市場調査とは?4つの種類と代表的な7つの方法を徹底解説|LISKUL

4.競合調査

競合他社の製品やサービス、価格設定、販売方法などを調査・分析することで、自社製品の競争力を評価し、差別化や改善点を見つけることができます。

また、市場の変動や競合の動向を把握し、柔軟な対応策を考えるための重要な情報も得られます。

参考:競合分析とは?分析の手順と役立つフレームワーク7選|LISKUL

アイディアを出すための5つの方法

最後に課題や分析を踏まえてアイディアを出すための代表的な方法を簡単にご紹介します。

1.ベンチマーキング

他業界や異なる分野での成功事例を分析し、それを自社の製品やサービスの向上に役立てる方法です。この分析を通じて、自社のポジショニングを見直し、改善点を発見することができます。

2.ブレインストーミング

参加者が自由にアイディアを出し合うことで、新しい視点やアイディアを得る手法です。

この方法は、多様な意見を収集することができ、革新的な解決策を見つけるのに役立ちます。

3.5W1H

「Who(誰が)」「What(何を)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の6つの要素を問いかけることで、問題の構造を明確にし、解決策を見つける手法です。

この方法は、問題解決のプロセスを体系的に整理し、より効果的な解決策を見つけるのに役立ちます。

4.KJ法

アイディアや情報をカードに書き、それをグループごとに整理することで、問題の本質を理解し、解決策を見つける手法です。

この方法は、情報を視覚化し、関連する情報を一目で把握するのに役立ちます。

5.マインドマップ

キーワードやテーマから連想される言葉やアイディアを図や線で結びつけることで、多様なアイディアを視覚的に整理しやすくする方法です。

この方法は、アイディアの関連性を明確にし、新しい視点を見出すのに役立ちます。


まとめ

プロダクト戦略(製品戦略)とは、製品やサービスの開発から販売までを成功させるための全体的な計画や方針を広く指す言葉で、プロダクト戦略を成功させるためには、製品のコンセプトや機能だけでなく、カスタマーサポートなどの付加価値まで考慮する必要があります。

しかしそれを整理するための3層モデルや、ホールプロダクトモデルといったフレームワークも沢山あるので、まずは自社の製品に当てはめて情報を整理してみましょう。

また情報の多さにどこから始めてよいものかお悩みの方や、新製品の開発を検討中の方は製品コンセプトの整理から行ってみましょう。