アプリを開発・もしくは導入したけど、利用者を増加させる上で次のように悩まれる事業責任者の方も多いのではないでしょうか。
「アプリマーケティングとはそもそも何か知りたい」
「企業として行うべきアプリマーケティングを知りたい」
そんな担当者の方に向けて、本記事ではアプリマーケティングの概要やポイント、また設定すべきKPIについて詳しく解説していきます。
本記事を最後までお読みいただくことで、アプリマーケティングの概要や具体的な方法を正確に理解し、自社のマーケティングに活用できるようになります。
目次
アプリマーケティングとは、アプリの利用者増加と継続利用を促進する活動
アプリマーケティングとは、自社で運営するアプリケーションの利用者増加と継続利用(エンゲージメント)を促す活動を指します。
しかし、アプリマーケティングの定義は、以下のように、企業によって異なる場合があります。
- 自社で開発したアプリの利用者数を増やし、エンゲージメントも向上させたい
- アプリを活用して、企業や店舗の集客やリピーターを増やしたい
どちらの場合でも「アプリの集客とエンゲージメントを高め、収益をアップすること」を大前提の目的とするといいでしょう。
アプリを通じて企業・店舗の集客やリピーターを増やしたい場合でも、アプリの利用者数とエンゲージメントをあげる必要があることには変わりないからです。
参考:顧客エンゲージメントとは?計測の方法とエンゲージメントを獲得する3つのポイント
アプリマーケティングが必要とされる理由
スマートフォンが登場して以来、スマホユーザーの数は世界規模で増加の一途をたどっており、インターネットも身近なものとなりました。
2019年の総務省による通信利用動向調査で、20代〜40代のスマートフォン利用者の8割以上がWebブラウザよりもアプリを利用しているというデータが出ています。
また、2021年の新規アプリダウンロード数は2300億本、アプリストアでの消費支出額は1700億ドルまで成長しております。市場のモバイルシフトやその経済的な大きさからアプリはユーザーとのコミュニケーション手段として無視できない存在となっていると言えるでしょう。
アプリマーケティングを行う方法
アプリマーケティングの方法として、特に効果が見込めるものを7つピックアップしたので、ぜひ参考にしてください。
- ASO(アプリストア最適化)の実施
- プッシュ通知の設定
- オウンドメディアやLPで宣伝
- SNSで宣伝
- インフルエンサーマーケティングの実施
- 運用型広告の実施
- メルマガの運用
ASO(アプリストア最適化)の実施
ASO(App Store Optimization)は、アプリストアでの検索上位と同時に、詳細ページの最適化によるダウンロード率の上昇を狙えるため、非常に効率の良い手法といえます。
ASOとは、Apple StoreやGoogle Playといったアプリストア内で「自社運営のアプリケーションを上位表示させる」手法です。
イメージとして、検索エンジン最適化を指す「SEOのアプリ版」と捉えておけば問題ありません。
アプリストアの検索結果は、以下の要素が影響しています。
- キーワード:ユーザーがアプリストアで検索したワードと、コンテンツ内に存在するキーワードが一致しているか
- アプリのダウンロード数:どのくらいの人にダウンロードされているのか
- アプリの利用率:どのくらいそのアプリが利用され続けているのか
- レビューの数:どのくらい多くの人にそのアプリを利用されているか
- レビューの点数の平均値:アプリの品質は高いか
しかし、アプリの利用率やダウンロード数、レビュー数は意図して変えられないため、ほかの方法でASO最適化を図ることが必要です。
- どのキーワードでアプリ検索されているか調査し、キーワード名を含むアプリ名、説明文を使用する
- アプリの利用中のスクリーンショットや動画を掲載する
- アプリ内で、ユーザーにレビューへ誘導する
たとえば、上記のような対策をすれば、アプリストアが改善され、上位表示される可能性もあります。
プッシュ通知の設定
プッシュ通知の設定は、アプリ登録者の継続利用を促す効果があります。
そもそもプッシュ通知とは、特定のセグメント限定で「デバイス上にメッセージをポップアップ表示」させるリマインド形式の手法です。
アプリを開いていなくてもメッセージが見れることから、アプリ利用の継続率が上がりやすいというメリットがあります。
しかし、通知が多すぎると、ユーザーにとっては「迷惑なだけのメッセージ」になってしまい、逆にアンインストールに繋がるリスクがあります。
こういった状況を未然に防ぐためには、プッシュ通知の通知頻度の調整が必要です。
まずは週に1~2回程度の頻度から試してみると、できるだけアンインストールを防げます。
参考:おすすめWebプッシュ通知サービス9社の比較と3つのポイントを紹介
オウンドメディアやLPで宣伝
自社のブログやLP(ランディングページ)でアプリを宣伝し、顧客にアプリをダウンロードしてもらう手法です。
参考:ランディングページ(LP)とは?10分でわかるLPの目的・メリット・作り方
LPは検索エンジンや広告との相性が良く、アクセスもされやすいため、そこにApp Store・Google Playなどのリンクを貼り、顧客にインストールを促すのが主流となります。
加えて、自社ブログにSEO記事を掲載し、検索上位を狙うのも、オウンドメディア運用における効果的な手法の1つといえるでしょう。
SNSで宣伝
自社が運用するSNSメディア(Twitter、Instragram、YouTube、Tiktokなど)を活用して、顧客にアプリをダウンロードしてもらう手法です。
SNSは、比較的簡単に投稿できる上に、新規顧客層へリーチし、商品・サービスの認知度向上も期待できるでしょう。
さらに、ほとんどのSNSにはコメント機能が搭載されているため、他の方法では得られないような直接的なフィードバック・レビューを収集することも可能です。
参考:SNSマーケティングとは?6つの事例から学ぶ始め方と成功させるコツ
インフルエンサーマーケティングの実施
アプリと親和性の高いインフルエンサーに自社アプリを宣伝してもらう「インフルエンサーマーケティング」は、もはや主流といっても過言ではない手法の1つです。
自社のターゲット層と一致するオーディエンスを持つインフルエンサーを起用することで、極めてピンポイント且つ効果的にアプリを訴求できます。
上手くバズれば高い費用対効果が得られる反面、人気が高いインフルエンサーほど報酬が高額になる点に注意しましょう。
また、アプリと親和性が高いインフルエンサーを選定するためには、フォロワーの属性や世界観がマッチしているかどうか見極める必要があります。
どのインフルエンサーの選定やオファーが難しい場合は、インフルエンサーマーケティング会社に依頼してみるのがおすすめです。
参考:【2022年最新版】インフルエンサーマーケティング会社9選!代理店選びの3つのポイント
運用型広告の実施
リスティング広告やディスプレイ広告などの運用型広告を活用して顧客にアプリをダウンロードしてもらう手法です。
参考:初心者でもわかるリスティング広告とは?費用から運用のやり方まで徹底解説!
特にアプリのリリース直後に有料広告を利用してDLキャンペーンなどを宣伝すると、新規ユーザーの獲得が効率的に行えます。
運用型広告は多くの媒体が存在するため、媒体選定や実運用は専門の広告代理店に外注するのが一般的です。
メルマガの運用
特定のセグメントに向けて、キャンペーンやお知らせをメルマガで送り、アプリの利用を促す手法です。
比較的古典的ですが、プッシュ通知よりも詳しい情報をユーザーに届けられるだけでなく、ある程度セグメント分けした上で一斉送信できる点も大きな魅力といえます。
参考:メールマガジン(メルマガ)とは?配信ステップや効果的な書き方を紹介
成果の出るメルマガの作り方・便利なテンプレートを使って簡単作成
アプリマーケティングの事例3選
ここからは、上記のようなアプリマーケティングを効果的に実施し、成果を収めた企業を3社解説します。
自社と親和性の高い成功モデルを見つけて、今後の目標にしてみてください。
メルカリ – インフルエンサーを活用した集客
メルカリは、スマートフォンから誰でも簡単に品物を売買できるフリマアプリであり、2021年には1,900万人もの月間アクティブユーザーを獲得することに成功した人気プラットフォームです。
有名タレントをTVCMに起用し、マスメディア向けのブランディングを意識したコミュニケーション施策が絶大な効果を発揮しました。
実際に、メルカリのプロモーションは商業施設等の実店舗、TVCM・SNSといった、日常生活の至る所に散りばめられており、運営サイドも「人の目に触れる全て」をコミュニケーションチャネルとして捉えています。
参考:フリマアプリの業界リーダーメルカリが取り組む、オンラインとオフラインを融合させたアプリ起点のマーケティングを実現する4つのポイント – Liftoff
無印良品 – ポイント付与によるエンゲージメント向上
生活雑貨や家具などでお馴染みの無印良品は「MUJI Passport」というモバイルアプリを運営し、「MUJIマイル」というポイント制度をつけたことによってアプリの利用率の向上に成功しました。
MUJI Passportは、購入・来店時のポイント付与、最寄り店舗・在庫検索などの機能を備えており、レビューの投稿などでもポイントがもらえるお得感がエンゲージメント向上に繋がっています。
実際に、アプリ会員の購入単価は「非会員の2倍」と明らかな効果を示しており、アプリマーケティングによってロイヤルカスタマーを獲得したモデルといえるでしょう。
参考:「MUJI passport」-公式アプリを使った戦略|SHOP DX | 店舗経営のDX(デジタルトランスフォーメーション)を科学するウェブマガジン
カインズ – 商品の陳列場所がわかる機能を搭載し、エンゲージメントの向上に成功
ホームセンター事業でお馴染みのカインズは、2014年に自社アプリのリニューアル時に「ユーザーが求める商品を見つけやすくする機能」の搭載とプッシュ通知を設定したことによって、エンゲージメントの向上につなげることができました。
実際のところ、カインズの取り扱い商品は非常に多いため、顧客にとっては特定の商品が見つけにくい環境となっており、店舗スタッフにも売り場案内や在庫確認が大きな負担となっていました。
しかし、アプリの新機能によって問題が一気に解消し、顧客と従業員双方がストレスを感じない買い物体験を実現することができました。
また、アプリのプッシュ通知を設定したことによって、ユーザーの来店を促すことができ、結果的にエンゲージメントの向上に成功したと言えます。
参考:カインズが快進撃続ける3つの理由|DX戦略や支持されるポイントを解説 |口コミラボ
アプリマーケティングで見るべきKPI数値
ここからは、アプリマーケティングで見るべきKPI数値を確認していきましょう。
集客(利用者数の獲得)とエンゲージメント(継続的にアプリを利用するユーザーの獲得)の2軸で解説するため、ぜひ参考にしてください。
集客のKPI | エンゲージメントのKPI |
---|---|
・インストール数 ・CPI ・ROAS/ROI | ・課金率 ・DAU/WAU/MAU ・リテンション率 ・ARPU ・アプリストアでの評価値 ・LTV |
参考:KPIの管理手順と漏れなく管理するためにおさえるべき4つのポイント
集客のKPI
まずは、アプリの利用者数向上のために押さえておくべきKPIを3つ見ていきましょう。
- インストール数:アプリがインストールされた回数
- CPI:アプリが1件インストールされるまでにかかるコスト
- ROAS/ROI:アプリの広告費に対する売上、もしくは利益効果
最も基礎的なKPIとなるため、しっかり把握しておいてください。
インストール数
ストアからアプリがインストールされた回数を基準に評価しましょう。
インストール数は、一般的には新規ユーザーのインストールを意味し、新規ユーザーをどれだけ獲得できているのかを確認する指標です。
ほかの競合アプリと比較してみることで、インストールが多いのか足りていないのかが把握できます。
CPI
CPI(Cost Per Install)とは、アプリが1件インストールされるまでにかかるコストです。
CPIは、【PR用の広告費/獲得したユーザー数】の式で算出することができます。
このPR用の広告費とは、広告に限らず、アプリをインストールしてもらうためにかかったコスト全般のことを指します。
このCPIの数値が高ければ、広告の費用対効果が低いということになります。
CPIを明確にすれば、インストール数を上げるために要する広告費を正確に算出できるでしょう。
ROAS/ROI
ROAS(Return On Advertising Spend)は、広告費に対してどれだけ売上があったのかを示す指標であり、ROI(Return On Investment)は広告費に対する利益効果を意味しています。
参考:ROIとは?指標の役割や算出時の計算法、ROASとの違いを解説
それぞれの数値は、以下の式で算出することが可能です。
- ROAS=【売上/広告コスト】
- ROI=【利益/広告コスト】
いずれも簡単に算出できる一方、重要度の高いデータとなるため、週次・月次で定期的に収集しましょう。
エンゲージメントのKPI
アプリプロモーションにおいては、エンゲージメントに関するKPIも必要不可欠です。
ここからは、特に有用な指標を5つ解説するため、ぜひ参考にしてください。
- 課金率:アプリ内で課金するユーザーの割合
- DAU/WAU/MAU:1日・1週間・1か月あたりのアクティブユーザー数
- リテンション率:ユーザーのアプリの継続率
- ARPU:1ユーザーあたりの平均的売り上げ
- アプリストアでの評価値:アプリストア上でユーザーが入力した星やレビューなどの評価
- LTV:ユーザー1人当たりから得た生涯収益を平均した値
課金率
課金率とは、アプリをインストールしたユーザーの内、「どれだけの人がアプリ内課金したのか」を示す数値です。
計算式は【課金ユーザー数÷インストール数】とシンプルで、ゲームアプリなら5〜10%ほどが平均的でしょう。
より精度を高めるために、1ユーザーごとの課金額とは別でチェックするのがおすすめです。
DAU/WAU/MAU
アプリのアクティブユーザーの合計数を日・週・月で示した指標です。
- DAU(Daily Active User)…1日あたりのアクティブユーザー
- WAU(Weekly Active User)…週間アクティブユーザー
- MAU(Monthly Active User)…月間アクティブユーザー
それぞれの数値は、以下の式で算出することができます。
【(1日あたり・1週間あたり・1か月あたり)のアクティブユーザー数/サービス登録者数】
インストールしただけで実際には利用していないユーザーの把握に役立ち、後述するリテンション率の分析も行うことができます。
リテンション率
リテンション率は、どれほどの数のユーザーが継続してアプリを使っているのかを示す数値です。
アプリをインストールした翌日の継続率をPR1、7日目の継続率をPR7、30日目の継続率をPR30と表します。
また、リテンション率は【起動ユーザー数÷インストール数】で簡単に算出できます。
ARPU
一定期間において1ユーザーから得られる平均売上であり、一般的には1ヶ月単位で計算することが多くなっています。
ARPUは【売上÷インストール数】で算出することが可能です。
また、顧客の購入額の変化を測りたい場合に、累積ARPUの指標を用いることがあります。
累積額が時間がたつにつれてどう変わるのか把握することで、継続プレイと売上の関係が捉えられるようになります。
アプリストアでの評価値
アプリストアでの評価値とは、App StoreやGoogle Playなどのアプリストア上でユーザーが入力した星やレビューなどの評価を数値化した指標です。
アプリストアでの評価値はASO(アプリストア最適化)に影響するため、評価が高ければ上位表示される可能性は高くなります。
LTV
LTV(Life Time Value)は、アプリをインストールしたユーザー1人当たりから得た生涯収益を平均した値を指します。
LTV は、【 ARPDAU(1日のアクティブユーザーの平均利用額) × ユーザーの平均リテンション率】で計算することができます。
1ユーザーから最終的にどれだけ収益を得られるのか把握することで、売り上げ予測やプロモーション用のCPIの予算を算出できるでしょう。
もしLTVよりもCPIの数値が高ければ赤字となるため、CPIを抑える必要があります。
参考:LTV(顧客生涯価値:Life Time Value:ライフタイムバリュー)とは?計算方法と広告活用での成功事例
アプリマーケティングで成功するためのポイント
ここからは、アプリマーケティングで成功を収めるためのポイントを3つ解説していきます。
理想の結果を得るためにも、しっかり押さえておきましょう。
無理のないKPI設定を行う
アプリマーケティングのKPIは、あまり現実味のない目標を掲げると形骸化するだけでなく、モチベーションを下げる要因にもなります。
そのため、以下のような5つの項目(通称:SMART)を意識して、無理のない範囲で数値を設定しましょう。
- SはSpecific(明確性)
- MはMeasurable(軽量性)
- AはAchievable(達成可能性)
- RはRelevant(関連性)
- TはTime-Bound(期限)
SMARTの意図は、現実的に達成できるKPIを具体的に設定し、その達成具合を計れるようにすることです。加えて、それぞれに期限を設定すれば、より精度が高まり運用にもメリハリが生まれるため、効果的に活用してみてください。
セグメント別に施策を切り分ける
アプリマーケティングには様々な施策・手法がありますが、決してすべてのターゲットに同じものを適用せず、アプリインストール前の流入チャネルや、年齢などのセグメント別に使い分けましょう。
とくにアプリのターゲット層が幅広い場合は、できるだけ細かくセグメントを分ける必要があります。
セグメントはそれぞれ独自の特徴を持っているため、当然適した手法も異なります。定期的に流入KPIをモニタリングし、集客やエンゲージメントで最も効果のでる施策を見極めてみてください。
参考:セグメンテーション|3つの有名事例から5分で活用法を身に付ける
効果の出る施策から実施していく
最後のポイントとして、アプリマーケティングは基本的に「効果のでる施策から実施」するのがおすすめです。
ここまで解説した通り、アプリマーケティングには様々な手法とコツが存在する一方で、大抵の場合予算には上限が設定されている場合がほとんどです。
やみくもに手を出すと、あっという間に資金ショートを起こしてしまうため、自社サービスに合う施策の中でも費用対効果の高いものから予算を投下してみてください。
たとえば、グロース初期でオウンドメディアに注力するよりも、広告やASOなどに取り組んだ方が費用対効果が高いケースが多く、そういった視点を持てばおのずとリソースは最適化されるでしょう。
まとめ
本記事では、アプリマーケティングの基本から効果的な戦略を具体例も併せて解説しました。
多額の開発費かけて有用性の高いアプリを開発しても、ユーザーへ届かなければ意味がありません。そこで重要となるのがアプリマーケティングです。
アプリマーケティングには、集客とエンゲージメントの2軸で考えることが重要であり、どのチャネルで獲得したユーザーがどれほどのエンゲージメントがあるのかをモニタリングするために、SMARTの原則で設定したKPIをモニタリングすることが極めて重要になります。
今回は、メルカリやカインズといった成功モデルも掲載したので、自社と親和性の高い企業を見つけて、具体的なロードマップを敷いてみましょう。