社員研修とは?具体的な種類や成果を出すためのポイントを徹底解説!

社員研修

社員研修とは、企業が社員を育成するために行う教育を指します。

社員研修を行うと、専門知識・コミュニケーションスキル・ビジネスマナーをはじめ、業務に欠かせない重要な技術を効率的に習得させることが可能です。従業員の意識改革にも役立ちます。その結果、業務の効率化や会社としての一体感の向上、利益向上などが期待できます。

本記事では社員研修の目的やメリット、成果を出すためのポイントなどについて解説します。この記事を最後まで読むと、社員研修をやるべきか、社員研修をやるとしたらどのような研修をすれば良いか理解できます。

目次


社員研修とは従業員のスキル向上と企業成長のための教育手段

社員研修とは、企業が従業員の知識や技能を高めるために行う教育のことです。研修を通じて、商品知識の向上、コミュニケーション能力の強化、コンプライアンスの確立などを目指します。

社員研修は主に2つの研修方法があります。

  1. OJT(On-the-Job Training): 実務を通じて行う実践的な研修
  2. OFF-JT(Off-the-Job Training): 業務外で行う理論的な研修

社員研修は、従業員の成長を支え、企業の利益向上にもつながります。そのため、目的に合わせた適切な研修プログラムの選択が重要です。

参考:社員研修の種類・形式まとめ|目的別のおすすめ研修例と内容を詳しく解説 |playse.eラーニング | 株式会社manebi
   社員研修とは?内容やプログラム例、おすすめサービスを解説|HR Brain


社員研修を行う3つの目的

社員研修の目的は以下の3つです。

  • 業務効率の向上
  • 組織の一体感を高める
  • 社員の働きがいを創出

それぞれについて詳しく解説します。

1. 業務効率を向上させる

社員研修は業務効率の向上を目的としています。従業員に専門知識や業務に必要なノウハウ・スキルを体系的に教えることは、業務効率の向上につながります。

コミュニケーションスキル、ビジネスマナーを教えると、それらを知らないために起こりうる上司や顧客、同僚との摩擦やトラブルが大幅に減少します。

例えば、正しい訪問マナーを知らない従業員がいた場合、営業先で顧客とトラブルになる可能性があるでしょう。事前に正しいマナーを教育しておけば、このようなトラブルを未然に防止できます。

適切な社員教育を行い従業員の成長を促すことは、企業の利益につながります。

2. 組織の一体感を高める

組織の一体感強化も社員教育の目的の1つです。

社員研修で「チームビルディング」などを実施すると組織の一体感を強化できます。社員教育で従業員に企業文化を浸透させ、「働く目的」を共有すると、社内に良い雰囲気が生まれ、コミュニケーションの活性化が見込めるでしょう。

企業に一体感がなく従業員が同じ方向を向いていない場合、社内の雰囲気が悪くなりコミュニケーションに問題が生じます。例えば、「上司に声がかけづらい」「部下が話を聞いてくれない」「部署内で情報交換しづらい」などの問題が発生することがあるでしょう。その結果、生産性や業務効率、利益の低下が懸念されます。

組織の一体感強化や価値観の共有で、業務効率や生産性、利益の向上が期待できます。

3. 社員の働きがいを創出する

社員の働きがいを創出してモチベーションを高めることは社員研修の目的の1つとして挙げられます。

「モチベーション研修」では、従業員本人が自分でモチベーションを高める「セルフモチベション法」や上司が部下のモチベーションを高める「モチベーションマネジメント」などを学ぶことができます。

仕事に対するモチベーションが低下すると働きがいを感じなくなります。そのまま放置すると、離職につながることもあるため注意が必要です。研修によるモチベーションややる気の向上は既存社員の定着率向上につながります。

参考:【モチベーション研修】社員のやる気を損なわないために大切なこと | 会議HACK!


社員研修を実施するメリット

社員研修には手間やコストがかかりますが、それを上回るメリットがあります。主なメリットは次の通りです。

  • 社員の能力アップが見込める
  • 社員の帰属意識を高められる
  • 社内意識の改善につながる

参考:社員研修のメリットとその効果を最大化するためのポイント & ITツール・Webサービス比較サイト| STRATE[ストラテ]

社員の能力アップが見込める

社員研修の大きなメリットは、社員のスキルアップが見込めることです。

本人の自主性に任せていると、いつどのようなスキルを身に付けるか把握できません。従業員によって、能力やスキルに大きな差がつくことも考えられます。会社として研修プログラムを組むと、その知識やスキルに対する研修参加者全員のスキルアップが期待できます。

個人のスキルが上がると、企業全体の競争力を高められます。

能力アップを目的とした研修として以下のようなものが挙げられます。

  • マインドセット(物事の見方や考え方)
  • ポータブルアビリティ(業種や職種が変わっても通用するスキル)
  • 特定業務に必要なスキル(IT、簿記など)
  • 企業にとって必要なスキルを従業員が効率的に習得すると、社員の能力アップが見込めるでしょう。

    社員の帰属意識を高められる

    「企業理念浸透」などの社員研修を行うと、従業員の帰属意識を高められるため、チームワーク強化や企業文化が浸透します。

    帰属意識が高まると、社内のコミュニケーションが活発化し生産性の向上や業務効率化につながります。離職率の低下も期待できるでしょう。

    帰属意識を高めるための研修として以下のものが挙げられます。

    • 企業理念浸透研修
    • インナーブランディング研修

    社内意識の改善につながる

    社員研修を実施すると、社内意識の改善が期待できます。

    普段の業務の中では、ゆっくりと自分の意識や考え方について考えることは難しいでしょう。研修を受けること、自分の考え方や意識とじっくり向き合えるようになります。

    例えば、ビジネスマインド研修は、仕事に対する姿勢や考え方を見直すきっかけになります。インナーブランディング研修で自社の企業理念を改めて考えることで、理念を中心にして仕事が行えるようになるでしょう。その他の研修でも、普段の業務では考えなかった視点や意見を目にするケースがあります。社員の意識改革によって、コミュニケーションの促進や組織風土を変えるなど、労働環境の整備・向上が期待できます。

    社内意識の改革につながる研修には次のものがあります。

    • ビジネスマインド研修
    • モチベーション研修
    • インナーブランディング研修

    社員研修の実施に伴うデメリット

    社員研修に伴い発生するデメリットは次の通りです。

    • 研修の運営構築にコストがかかる
    • 研修の質や効果の測定が難しい
    • 研修後のフォローなしでは逆効果になりえる

    それぞれについて見ていきましょう。

    研修の運営構築にコストがかかる

    社員研修の運営構築には時間面、費用面の両方のコストがかかります。ただし、予算を制約すると、質の低い研修しか受けられず期待した効果が得られない可能性もあるため注意が必要です。

    時間の節約を行いたい場合は外注を利用しましょう。その際は過剰に予算を制約しすぎないようにすることが大切です。

    外注する際は口コミを活用し、業者や講師の質をしっかり吟味しましょう。

    研修の質や効果の測定が難しい

    社員研修は質や効果の測定が難しい点がデメリットです。生産性の向上や業務効率向上などは、研修の成果であると判断することが難しいためです。

    研修効果の測定としては受講者に対するアンケートやテストを実施すると一定の効果を測定できます。

    全ての研修をカバーできませんが、研修内容によっては、「売上」「販売数」「クレーム数」など計測可能なものをピックアップして、研修前と研修後の変化を計測することで、改善傾向を掴むことができるでしょう。

    研修後のフォローなしでは逆効果になりえる

    研修後のフォローがない場合、逆効果の可能性がある点を把握しておきましょう。

    研修の内容によっては、学んだ内容が実践に移されず、逆に混乱を招くケースが見られます。また、研修の実施をゴールにすると、「面倒な研修を受けさせられた」「無駄な研修時間だった」と感じ、従業員のモチベーション低下を招き、スキルが定着しない場合もあるため注意が必要です。

    例えば「既に知っていることなのに研修を受けさせられた」「自分には興味がない」という気持ちで研修に臨んでいる場合、研修効果は期待できません。

    事前に、研修目的や実施する理由や狙いなどを明確にし、研修効果を高めることが必要です。研修後のフォローをし、実りある研修となるよう意識しましょう。


    社員研修は大きく分けて2タイプ

    社員研修は大きく分けて次の2タイプになります。

    種類内容効果コスト
    OJT研修通常業務の中で業務知識を身に付ける業務内で行うため、すぐに実践できる業務内で行うため、OFF-JTと比べて低コスト
    OFF-JT研修通常業務から離れて研修し、必要な知識を身に付ける体系的に知識やスキルを学ぶことができるOJTと比較して費用がかかる

    それぞれについて詳しく見ていきましょう。

    OJT研修

    OJT研修とは、通常業務の中で様々な知識を身に付けることです。上司や先輩社員が、業務を行いながら若手や新人に知識や技術を伝えます。

    例えば、営業部の社員が上司と共に顧客のところに行き上司の接客方法を見て学ぶ、工場内で上司に教わりながら自分でも実際に作業を行う、などが該当します。

    実際の業務を見ながら学ぶため、すぐに実践できるので早く身につくのが特徴です。OFF-JTと比較した場合、低コストで実施できます。

    OFF-JT研修

    OFF-JT研修とは、通常業務から離れて研修し、必要な知識やスキルを身に付けることです。OJTと比べ、体系的に効率よく必要な知識やスキルを習得できるのが特徴です。

    外注することも多いため、OJTと比較してコストがかかります。外注しない場合でも、研修の場所代や教材費などのコストが必要です。また、研修参加者は研修時間中、通常の業務を行えない点もデメリットと言えるでしょう。

    OFF-JTの主な種類は次の3つです。

    • 集合型
    • オンライン
    • e-ラーニング

    それぞれについて見ていきましょう。

    集合型

    集合型の研修とは、会議室などに集まって受講するタイプの研修を指します。集合型には、一方的に講師の話を聞く講義型と自分たちで身体を動かすワークショップ研修があります。

    それぞれのメリットは次の通りです。
    講義型:必要な知識を短期間で学べる
    ワークショップ研修:自分の頭で考え周囲の人とコミュニケーションが取れる

    講義型の研修は、知識を深めることに向いています。ワークショップ研修は、課題解決や知識の習得に向いています。

    オンライン

    オンライン型とは、受講生と講師のPCをオンラインでつないで行う研修です。ZoomやMicrosoft TeamsなどのWeb会議システムを利用し、受講します。集合型とは違い、受講生同士が同じ場所に居なくとも同様の講義を受講できます。
    オンライン型のメリットは次の通りです。

    • 受講生や講師の移動が不要
    • 双方向的にやり取りできる

    e-ラーニング

    e-ラーニングとは、配信される動画を聴講する受講スタイルです。インターネットを利用し、好きなタイミングで研修を受講できます。受講者は一か所に集まることなく、自分の好きなタイミングで研修を受けることが可能です。

    e-ラーニングのメリットは次の通りです。

    • 場所を問わず受講できる
    • 自分のタイミングで利用できる

    ただし、オンライン講義とは違い、講義中に双方向的なやりとりはできません。


    社員研修の種類と受講のタイミング

    社員研修には多くの種類があります。ここでは、実施されることの多い15個の研修について、種類や目的、ターゲットについてまとめます。

    階層研修名目的
    全社員コミュニケーションコミュニケーション能力の向上
    企業理念浸透理念やビジョンなど、企業の考えを浸透させる
    モチベーション向上モチベーションを維持・向上する手法を知る
    新入社員ビジネスマナービジネスマナーを知る
    OAスキルExcel、Wordなどのスキルを身に付ける
    若手社員セルフマネジメント自分自身で目標設定や管理・目的達成できる力
    問題解決能力ロジカルシンキングを身に付ける
    中堅社員フォロワーシップリーダーを支援する人材になる
    メンターメンターとしてのスキルを身に付ける
    リーダーシップチームをけん引する力を身に付ける
    女性社員女性のキャリア(女性活躍推進)育児と子育ての両立しながらキャリアアップする手法を知る
    管理職マネジメントマネジメントスキルの習得
    労務コンプライアンス管理労務やコンプライアンスについて知る
    経営層・役員経営戦略経営戦略について学ぶ
    財務・会計財務や会計の知識を身に付ける
    組織・人事戦略組織や人事について知り、経営戦略と人事戦略の連動性を高める

    社員研修には多くの種類があるためどれを選べば良いか迷うケースも少なくありません。階層別に詳しくみていきましょう。

    参考:社員研修(講師派遣) | SMBCコンサルティング 教育サイト
      【必見】社員研修とは?知っておくべき研修の種類と導入効果 | 社員研修のアチーブメントHRソリューションズ

    全社員

    全社員に向けて行いたい研修は数多くあります。その中でも欠かせないものは次の3つです。

    • コミュニケーション
    • 企業理念浸透
    • モチベーション向上

    それぞれについて見ていきましょう。

    コミュニケーション

    コミュニケーション研修は、従業員のコミュニケーション能力の向上を目的としています。コミュニケーションスキルは、上司・同僚・取引先など様々な場面で活用できる重要なスキルです。

    コミュニケ―ション研修で身につく具体的な主なスキルは次の通りです。

    • 話す力・聞く力を身に付ける
    • ビジネスマンとして基本的なマナーを身に付ける

    新入社員、管理職など、それぞれの階層に適したコミュニケーション研修があります。必要に応じて使い分けると良いでしょう。

    社内のコミュニケーションを活性化したい場合は、コミュニケーションスキルを検討してみましょう。

    企業理念浸透

    企業の理念やビジョンなどを全社員に浸透させるための研修です。理念やビジョンを浸透させると、仕事の中で判断が必要になった場合、ビジョンや理念を基準にできるため、判断に迷いやブレがなくなります。また、同じ目的に沿って仕事を進めるため、社内の統一感向上にもつながります。

    企業理念浸透研修で身につく具体的な知識は次の通りです。

    • 理念やビジョンの必要性
    • その企業の理念やビジョンの内容
    • 理念やビジョンの活用方法
    • 理念やビジョンの浸透方法

    企業理念の浸透に不安がある場合や従業員の帰属意識を高めたい場合に検討してみましょう。

    モチベーション向上

    仕事に対するモチベーションを向上させるための研修です。自分の仕事にモチベーション高く取り組むと、生産性の向上や業務効率化につながります。

    モチベーション向上研修で身につく、スキルや知識の一例を見ていきましょう。

    • 仕事を行うためにモチベーションを保つ方法
    • 自分の強みや軸など、自己理解を深める
    • 部下のモチベーションを上げる方法
    • モチベーションを保つための目標設定方法

    従業員のモチベーションを向上させたい、生産性向上につなげたいと考えている場合に検討してみましょう。

    新入社員・内定者

    新入社員や内定者に対して行いたい研修は次の2つです。

    • ビジネスマナー
    • OAスキル

    それぞれについて詳しく見ていきましょう。

    ビジネスマナー

    社会人の基本である様々なビジネスマナーを身に付ける研修です。ビジネスマナーが身についていなければ、顧客や取引先、上司との対応でトラブルが発生する場合もあるでしょう。

    不要なトラブルを避けるためにも、新入社員に対するビジネスマナー研修は欠かせません。

    OAスキル

    業務でExcelやWordなどを利用する時に役立つのがOAスキル研修です。既に身に付けている人ばかりならあえて行う必要はありません。

    しかし、業務上で知っておくと時短につながるようなスキルも数多くあります。新入社員の知識やスキルを確認したうえで導入するとレベル感のあった有意義な研修が行えるでしょう。

    若手社員(入社2~5年目)

    入社2~5年目の若手社員に対して行いたい研修は次の2つです。

    • セルフマネジメント
    • 問題解決能力

    それぞれについて見ていきましょう。

    セルフマネジメント

    セルフマネジメント研修は自己管理力を向上させるための研修です。目標達成や自己実現に向けて、自分の行動・思考・感情の整理が必要になります。

    自分自身やチーム内の目標達成のために、具体的にどう動けばよいか理解できるようになります。若手社員の目標達成に難を感じている場合に検討してみましょう。

    問題解決能力

    問題解決のために欠かせない、論理的思考力を身に付ける研修です。論理的思考力を身に付けると感情や主観を排除し客観的にものごとを見つめることが可能になります。問題が生じた場合の解決方法が身につくのはもちろん、プレゼン能力の向上にもつながります。

    問題解決能力やプレゼン力を高めたいと考えている場合に検討してみましょう。

    中堅社員

    中堅社員に行いたい研修は次の3つです。

    • フォロワーシップ
    • メンター
    • リーダーシップ

    それぞれについて見ていきましょう。

    フォロワーシップ

    リーダーを支援する人材になるための研修です。フォロワーシップを身に付ければ自分の仕事だけでなく、上司を補佐しチーム全体を見ながら仕事を進められます。

    中堅社員に対し、管理職のフォローや手助けができていない、中堅社員としての意識が足りないと考えている場合に検討してみましょう。

    メンター

    メンター制度を取り入れた場合に、育成担当者となるメンターを対象にした研修です。メンター制度とは上司とは別に、年齢の近い先輩社員が新入社員をサポートするための制度です。メンターは育成担当者(メンティ)の悩みや話しを聞き、必要に応じてサポートします。

    メンター制度の導入を検討している場合に必要な研修です。

    リーダーシップ

    指導者としてチームをまとめ統率力、指導力を身に付けるための研修です。リーダーシップを身に付けると、部下やチームを引っ張り、適切な指導が可能になるでしょう。

    会社によって異なりますが、中堅社員または管理職のいずれかに必要な研修です。部下の人数などによって導入時期を決めると良いでしょう。

    女性社員

    女性社員に対して行いたい研修は「女性のキャリア(女性活躍推進)」です。出産や育児など多くのライフイベントが発生しがちな女性の中には、長期的なキャリアビジョンを抱けない人も少なくありません。

    ワークライフバランスを考えながら仕事を進めるためにどうしたらいいのか分からない人も多いでしょう。

    そのような状況下で役立つスキルや知識を身に付けられます。女性だけでなく、女性社員のキャリア向上のためにどう取り組めばいいのかわからないという、管理職や人事部の男性社員にとっても欠かせない研修です。

    管理職

    管理職に対して行いたい研修は次の2つです。

    • マネジメント
    • 労務・コンプライアンス管理

    それぞれについて見ていきましょう。

    マネジメント

    部下の管理・育成を行う際に必要となるスキルを高めるための研修です。チームの目標のために部下をどう育てるか、業績面で成果を上げるにはどうすればいいかなど、管理職として必要な知識やスキルが身につきます。

    部下を適切に育てるためにも、これから管理職となる人に対して行うべき研修といえるでしょう。

    労務コンプライアンス管理

    労務に関するコンプライアンスを学ぶための研修です。労務トラブルが起きると、会社としての信用を損なう可能性が生じます。

    労務トラブルが起きている、労務トラブルを未然に防ぎたい、管理職の労務に関するコンプライアンス意識を高めたいと考えている場合に研修を行いましょう。

    経営層・役員

    経営層や役人に行いたい研修は次の3つです。

    • 経営戦略
    • 財務・会計
    • 組織・人材戦略

    それぞれについて見ていきましょう。

    経営戦略

    企業の目的を達成するために必要な戦略を身に付けるための研修です。自社の強みの活かし方、優先順位の付け方、経営理念に基づいた戦略の立て方、実践方法などを学びます。

    自社の経営戦略について強化したい場合などに検討してみましょう。

    財務・会計

    決算書の読み方、予算の立て方、財務分析の知識などを身に付けるための研修です。財務・会計知識を身に付けると経営者視点で業務改善への取り組みが可能になります。取引先の財務諸表を読み解くことも可能になります。

    経営戦略を立てるために財務・会計知識を深めたい場合などに検討してみましょう。

    組織・人事戦略

    組織や人事を戦略的に組み立てるための手法を学ぶための研修です。今の組織を見直し新制度を検討する際などに役立ちます。

    人材を今以上に有効に活用したい、社員のエンゲージメント向上を考えているといった場合に検討してみましょう。


    社員研修で成果を出すための7つのポイント

    社員研修で成果を出すためには気を付けるべきコツが7つあります。

    • 研修による効果を事前に周知させる
    • 事前に個々の課題・目標を洗い出す
    • 受講者に主体性を持たせる形式をとる
    • インプット・アウトプットを交互に行う
    • 研修後に受講者の意見を聞く
    • 3ヶ月後にフォローアップ研修を開催する
    • 初めての研修は外注がおすすめ

    それぞれについて詳しく見ていきましょう。

    参考:社員研修とは?内容やプログラム例、おすすめサービスを解説|HR Brain
       社員研修の目的は?階層別に研修のプログラム例を紹介 | 記事・トピックス一覧 | 法人のお客さま | PERSOL(パーソル)グループ
       意味がないと言われてしまう研修とは?効果のある研修をする10のコツ|alue

    研修による効果を事前に周知させる

    社員研修を何のために行うのか、目的や効果を事前に周知させる必要があります。目的意識がなく研修に参加しても、ただ聞き流すだけになってしまいます。

    そのため、研修のゴール、効果、成果を先に定義しなければなりません。研修内容が従業員の業務にどのように活用できるのか、事前に受講者に伝え、理解したうえで受講してもらうことが大切です。

    事前に個々の課題・目標を洗い出す

    研修前に 各従業員が持つ課題や目的を洗い出しておきましょう。従業員が「自分はこの分野については詳しい」「既にスキルがあるから研修は必要ない」と思い込んでいるケースもあるでしょう。

    実際の業務内の課題を把握してもらうことが欠かせません。事前に従業員に対し、今抱えている課題や目標をヒアリングします。、事前に洗い出した問題の解決に解決につながると把握したうえで研修に参加すると高い効果が期待できます。

    講義内容に適したスタイルをとる

    研修の内容によっては、受講者に主体性を持たせるような研修を採用することが大切です。講師が一方的に話し、受講者が聞くだけのスタイルの研修では、聞き流してしまう人も見られます。また、知識は身についたものの、実際の現場ですぐに活用することが困難な場合も少なくありません。

    講義内容や目的によって「受講型」「ワークショップ型」と研修を使い分けましょう。

    インプット・アウトプットを交互に行う

    インプットとアウトプットを交互に行うことが大切です。これにより、研修で教わった知識をしっかり定着させることができるためです。

    例えば、ビジネスマナーについて「Off-JT」で研修し、その後上司と共に顧客を訪ね「OJT」の形を取り、実際に習ったビジネスマナーを活用します。

    インプットだけで自発性を育てるのは困難です。研修の際は、インプットとアウトプットのバランスも意識してみましょう。

    研修後に受講者の意見を聞く

    研修後はアンケートを取り、受講者の意見を聞きましょう。社外研修の場合、講師の質や内容なども把握でき、次回の開催の有無を検討する際に役立ちます。

    研修直後のアンケートだけでなく、しばらくした後「身についたかどうか」確認すると、研修の効果を推し量ることができます。

    フォローアップ研修を開催する

    フォローアップ研修を開催すると研修の成果アップにつながります。一度講義を聞いただけで全ての知識を身に付け、実際の業務に活用するのは困難でしょう。

    例えば、新入社員研修の場合は仕事に馴染んだかどうか判断できる3ヵ月後と1年後のフォローアップ研修が有効だと言われています。

    継続して研修を実施すると、定着し実際の業務に活用が可能になります。

    フォローアップ研修の主な種類は次の2つです。

    1つは、前回の研修内容をどう実践したのか発表し、成果を共有して質の向上を目指すものです。もう1つは、前回の研修で学んだ内容を再確認し、現在の課題を把握した上で今後のアクションプランを策定するものです。

    研修の内容や種類に応じて、フォローアップ研修を行いましょう。

    初めての研修は外注がおすすめ

    初めてOFF-JTの研修をする場合は、外注を検討してみましょう。社内研修をする場合は準備に手間がかかりますが、外注するとそのような手間が不要です。プロの講師から高品質な講義を受講できるでしょう。

    外部委託するメリットは次の通りです。

    • 社内の労力を他のことに活用できる
    • 質の高い講義が受けられる
    • いつもとは違う刺激を受ける

    法人に依頼する場合の費用の目安は、半日で10~20万円程度です。

    参考:外部研修とは?実施の目的や研修効果を高める6つのコツ|LISKUL
       社員研修の平均費用と料金相場|早見表つき【2023年最新版】|アイミツ


    社員研修を開催する際の流れ

    社員研修を開催する流れは次の8ステップです。

    • ステップ1. 研修の目的・対象を明確にする
    • ステップ2. 研修形式を決める
    • ステップ3. 講師・スタッフを選定する
    • ステップ4. 参加者を決める
    • ステップ5. 研修の環境を整備する
    • ステップ6. 研修を実施する
    • ステップ7. 研修の内容を評価する
    • ステップ8. フォローアップ研修の実施

    それぞれについて見ていきましょう。

    参考:社員研修とは?内容やプログラム例、おすすめサービスを解説|HR Brain

    ステップ1. 研修の目的・対象を明確にする

    研修の目的や対象を明確にします。社内の問題点を把握し、誰を目的にしてどんな研修をするか決めましょう。

    新入社員研修、管理職研修など、時期が来るたびに定期的に行う研修もあるでしょう。それ以外の研修については、自社に必要なものを取り入れることが大切です。

    具体的な研修内容を決めかねる場合は、実際に従業員に悩みや問題点、受けたい研修などをヒアリングしてみても良いでしょう。

    社員のコミュニケーションや一体感が不足している場合は、「コミュニケーション研修」や「インナーブランディング研修」、専門的な知識やスキルが不足している場合はその部署ごとの研修など、課題や悩みを掘り下げ、それに適した研修を選択します。

    ステップ2. 研修形式を決める

    研修形式を決定します。研修の主な形式には次のものがあります。

    • 集合型
    • オンライン
    • e-ラーニング

    また、業務内で行うOJT、業務とは離れた場所で行うOff-JTのどちらが適しているのかも検討しましょう。

    普段の業務に即した内容を上司や部下から教え、実践的な知識や経験を身に付けさせたい場合はOJTを選択します。一方、「ビジネスマナー」や「モチベーション研修」「マネジメントスキル研修」など、普段の業務内で教えるよりも体系立てて学んだ方が良いものは、OFF-JTを選択しましょう。

    社内だけで実施するか、外注するのかも決めなければなりません。

    ステップ3. 講師・スタッフを選定する

    講師やスタッフを決定します。社内で行う場合は従業員から講師やスタッフを選定します。外注する場合は外注先に依頼しましょう。

    社内から講師を選出する場合は、講義に必要なスキルや知識を持ち合わせている人から選定しましょう。社内から講師を選出する場合、研修費用の削減につながる一方で講師に選ばれた人には負担がかかります。

    社内にスキルやノウハウがない、専門的な知識が必要、最先端のトレンド情報を得たい、などの場合は、外注を検討しましょう。

    社外講師を依頼する場合は、業界に精通した人や、豊富な研修実績を持つ人に依頼すると良いでしょう。研修目的に応じて、内容のカスタマイズをしてくれる講師を選ぶと、自社の実情に合わせた研修ができます。

    ステップ4. 参加者を決める

    研修の参加者を決めます。参加者の決め方は2通りあります。

    • 対象者を指定するタイプ
    • 事前に内容を伝え、希望者だけを研修に参加させるタイプ

    研修の目的や内容、ターゲットによって適切な方を選択しましょう。

    例えば、「新入社員研修」「管理者向けのマネジメントスキル研修」「女性社員研修」「コンプライアンス研修」など、該当社員全てに知識やスキルを伝えたい場合は、対象者を指定して研修を行いましょう。

    一方、「ファシリテーター研修」「メンター制度研修」などは希望者だけを参加させた方が効率的です。ファシリテーターやメンターとして活躍を希望する人だけに受講させた方が良いでしょう。

    いずれの場合も、参加者には研修の目的や意図などを事前に伝えることが大切です。

    ステップ5. 研修の環境を整備する

    研修の環境を準備します。オンラインで行う場合は配信環境を整えなければなりません。

    ZoomなどのWeb会議システムの選定、PCに備え付けのマイクやカメラに不備がないことの確認が必要です。従業員が自宅からオンライン研修を受講する場合は、PCだけでなくネット回線を整える必要があります。

    当日不具合があると研修を受けることができません。マイクやカメラ、ネット回線の状況などは前日までに確認しておきましょう。

    オフラインで行う場合は、会議室などの予約が必要になるでしょう。マイクやホワイトボードなど、必要な機材が不足すると研修がスムーズに行えません。事前に打ち合わせをし、必要なものは準備しておきましょう。

    ステップ6. 研修を実施する

    研修を実施します。配布物が必要な場合は、必要部数印刷して揃えておきます。当日会場設営を行うこともあるでしょう。椅子や机の配置だけでなく、会場内の気温などにも気を配ると参加者は研修に集中できます。

    講師が喋りやすいよう、飲み物の用意もしておきましょう。研修の規模にもよりますが、講師だけに任せるのではなく、スタッフを配置しておくと、タイムキーパーや質疑応答の際のマイクの移動、アンケートの配布・回収などをスムーズに行えます。

    ステップ7. 研修の内容を評価する

    研修内容の評価は欠かせません。受講者の理解度や研修の継続の有無、研修効果を把握するためです。

    主な評価方法は次の通りです。

    • 研修後の受講者の反応(受講者へのアンケート)
    • 研修の理解度を測定する(受講者へのテスト)
    • 行動の評価を行う(上司へのヒアリング)
    • 結果を観測する(成約件数・商談数・ミスの数などを研修前と比較)

    研修効果を確認することで、次回の研修を行う際の参考になります。

    ステップ8. フォローアップ研修の実施

    必要に応じて、フォローアップ研修を実施しましょう。一度受けただけでフォローしないと、研修の効果が発揮できない場合があります。会社が求める知識やスキルが身についているか確認するためにも、フォローアップ研修は欠かせません。


    社員研修で使える助成金一覧

    社員研修をすると助成金が受けられる場合があります。主なものは次の通りです。

    助成金名概要金額
    キャリアアップ助成金(人材開発支援助成金)非正規雇用の従業員を正社員化した場合に支給。スキルアップや人材教育研修の実施で受給可能。中小企業:760円/時(大企業:380円/時)+200円(大企業:+100円)、経費助成あり。
    【認定実習併用職業訓練】20万円(大企業:11万円)+5万円(大企業:+3万円)。
    【有期実習型訓練】10万円(大企業:9万円)+3万円(大企業:+3万円)。
    人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)国の施策に即した人材育成を行うと受給可能。4つのコースがある。中小企業賃金助成:800円/時(大企業:400円/時)、経費助成1/2(1/3)。
    OJT実施助成:600円/時。
    一般型訓練OFF-JT賃金助成:400円/時、経費助成1/3。
    労働移動支援助成金(人材育成支援)再就職援助計画などの対象者を離職後3ヵ月以内に雇用した場合に受給可能。人材育成支援で追加助成。Off-JT賃金助成:900円/時、訓練経費助成:実費相当額 上限30万円。
    OJT訓練実施助成:800円/時。
    社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金都内中小企業が実施する短時間研修に対する助成。社内型スキルアップ助成金:助成対象受講者数×訓練時間数×730円。
    民間派遣型スキルアップ助成金:受講料等の2分の1又は25,000円のいずれか低い額(受講者1人1コースあたり)。
    オンラインスキルアップ助成金都内中小企業等がeラーニングにより実施する従業員教育に対する助成。小規模企業者:助成対象経費の3分の2(上限27万円)。
    上記以外の中小企業等:助成対象経費の2分の1(上限20万円)。
    非正規雇用労働者が受講者全体の2割以上参加した場合:助成対象経費の3分の2(上限27万円)。
    DXリスキリング助成金都内中小企業等がDXに関する職業訓練をした場合の経費を助成。助成対象経費の3分の2(上限64万円)。

    該当する制度があれば利用してみましょう。


    まとめ

    社員研修は従業員の成長を促し、企業の利益向上を目的として行う研修です。社員研修を有益なものにするためには、従業員の課題を洗い出し、必要な研修を見極めることが欠かせません。

    社員研修には、普段の業務内で行うOJTと業務から離れて行うOFF-JTの2種類があります。どちらにもメリット、デメリットがあるため、目的に応じて使い分けることが大切です。

    「新入社員」「中堅社員」「管理職」など、社員の立場によって必要な研修は異なります。社員の立場やタイミングに応じた社員研修を行い、従業員の成長を促しましょう。

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