いまさら聞けない「定性調査」とは?情報を引き出す質問のポイントも大公開

定性調査とはユーザーの行動原理や具体的な心理などを把握するために行う調査手法です。

定性調査で得た情報はユーザーの潜在ニーズを把握して売上を伸ばしたり、新商品の開発のヒントにつなげたりします。

しかし定性調査を実施しようと思って動き始めたものの、どうやって調査すればいいのか、調査上の注意点はあるのか、予算はいくら必要か、など気になる点が続々とでてきてしまったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、定性調査をおさらいしつつ、調査の方法や相場、調査時におさえておくべきポイントなどをまとめました。

定性調査を絶対に成功させたいという方は必見です。


定性調査とは、ユーザーの心理状態など数値化できないデータを収集する調査方法

定性調査は、ユーザーへのインタビューや面談などを実施して顧客の行動原理や生の声をを知るために行う調査手法のことです。

データからは見つけにくい、顧客の深層心理に触れることができるので、顧客が潜在的に抱いている課題を抽出したり、仮説を作る上での素材集めなどに利用されます。

近年ではOne to Oneマーケティングなど、個人を深く追求することマーケティングが重視されるようになり、定性調査の必要性が増しています。

定性調査のメリットとデメリット

定性調査はユーザーから具体的な回答を得ることできるので、データだけではわからない発見を手に入れることができます。しかし、定性調査にはメリット・デメリットがあります。そのため、市場調査の目的と照らし合わせて、定性調査が最適な手法なのかを精査することが重要です。

次に、定性調査のメリットとデメリットを紹介します。

定性調査のメリット

  • 調査結果により、顧客の本音や価値観に触れることができる
  • ユーザーの状況にあった、現実味のあるヒントが得られる

定性調査はユーザーに対して具体的な質問を投げかけることによって、ユーザーの本音を引き出すことができる点にメリットがあります。会議をするだけでは見えてこなかった新たな視点が見えてきます。

ユーザーの生の声がデータとして蓄積できるので、消費者目線のリアリティのある意見を集めるのに最適です。実際の情報が、新たな市場開拓や商品開発のヒントとなる可能性も十分考えられます。

定性調査のデメリット

  • 定量調査よりも費用や手間がかかる
  • サンプルデータの数が少ないので、統計上のの信頼性は低い
  • プライバシーを第三者に知られたくないため、調査内容によっては、本音が引き出しにくい
  • 調査設計者やインタビュアーの信頼性と力量により、結果に大きな差が出ることもある

定性調査は定量調査と比べると手間・時間がかかります。そのため、定性調査で何もヒントが得られなかった場合のダメージが大きいです。

また、複数人を対象にしたインタビューでデータを集めるので、集まるサンプル数がは定量調査と比較して圧倒的に少なく、統計学的な信頼性は薄いです。

調査内容の中にはユーザーが答えにくくなるケースもあり、信頼関係が成り立っていないと本音が引き出せない可能性があります。

インタビュアーの力量や、対象となるユーザーとの信頼関係に左右される面もあります。経験が浅かったり、マーケティングの知識が少ないインタビュアーでは、思うような調査結果が得られないかもしれません。


定性調査は仮説の構築や原因把握に適しているが、実態の把握には不向き

市場調査は大きく分けて「定性調査」と「定量調査」の2つの方法があります。ここからはそれぞれ調査法の違いについて解説していきます。

定性調査は「なぜ商品を購入したのか(why)」「どのようにして商品を選んだか(how)」など、ユーザーの深層心理を探るために行う調査です。対面でのインタビューや家庭への訪問などでユーザーから具体的な回答を集め、分析していきます。

一方の定量調査は、数多くのユーザーを対象に情報を吸い上げ、「何を選んだか(what)」といった割合や件数などを数字的に把握するために行われる調査です。幅広いユーザーに対してアンケート調査を実施してデータを収集して分析していきます。

収集できるデータ調査の目的
定量調査統計学で分析できる数値化できるデータ仮説検証
実態把握
定性調査言葉や行動などの非数値化のデータ仮説構築
原因把握

定量調査と定性調査は組み合わせて調査するのが理想

定性調査と定量調査で得られる情報は限定的なことも確かで、それぞれから得られる情報は必ずしも正確とは言い切れません。より正確な調査を行うためにはそれぞれを組み合わせて行うのが理想でしょう。

定性調査をすることで顧客の心理や傾向を把握し、定量調査につなげる手法が一般的です。定性調査でユーザーのトレンドを把握したうえで仮説を作り、定量調査をすることで仮説を検証する、という流れです。

また最近では定量調査を先に行って、明確な課題を抽出し、定性調査で深掘りを行うという手法も増えています。先に定量調査を行い、課題を明確にしておくことで、定性調査を進める上での指針となります。


定性調査の主な方法

定性調査の代表的な方法は以下の4つです。

  • フォーカスグループインタビュー(FGI)
  • インデプスインタビュー
  • 行動観察調査(オブザベーション調査)
  • ミステリーショッパー

リサーチ会社に依頼するケースを想定して費用の相場や納期の目安についてもまとめていきます。

調査方法費用目安納期目安
フォーカスグループインタビュー(FGI) 2グループ:100万円~
1グループ:約10万円
4週間程度
インデプスインタビュー3名:50万円~
5名:約40万円
4週間程度
行動観察調査(オブザベーション調査)3名:200万円~
60サンプル:41万円~
2ヵ月程度
ミステリーショッパー30サンプル:65~100万円程度6週間程度

フォーカスグループインタビュー(FGI)

フォーカスグループインタビューとは、雑談会のような形式で一カ所に複数人集まり行うインタビューです。企業側が用意した司会者1名が、複数の消費者に対して質問をし、意見交換を行います。

一度に複数の情報を収集できることが最大のメリットです。また複数人でディスカッションをするため、1人では言えないような意見なども上がりやすくなります。

フォーカスグループインタビュー(FGI)の費用目安

  • 2グループ:100万円~
  • 1グループ:10万円~

内訳は、参加者への謝礼、会場費、モデレーター費用、運営スタッフの人件費、インタビューフロー作成費、対象者募集を含めた初期手配費用、受付対応費用、報告書作成費、雑費、管理費などです。

その他には、場合により、録画や録音費用、対象者に提供する飲食費、観察者用の飲食費、通訳費なども必要です。

フォーカスグループインタビュー(FGI)の納期目安

企画をしてから報告書を作成するまでは、4週間程度が目安です。次のようなステップで進めます。

  1. 企画と設計
  2. リクルート(対象者の選定など)
  3. 調査
  4. 回収・整理
  5. 集計・分析
  6. 報告書作成

インデプスインタビュー(IDI)

インデプスインンタビュー(IDI)は、消費者1名に対して質問する面談形式の調査方法です。「デプスインタビュー」と略して呼ぶこともあります。

グループインタビューと比べると収集できる意見の総数は少ないですが、1人の意見を長時間吸い上げることによって、より深く消費者の行動原理や深層心理を調査できます。また1対1のインタビューなので、他人の回答に影響を受けて意見が変わることもありません。

質問者以外の人間を用意し、別室でインタビューの様子をモニタリングすることもあります。様子を探りながら、臨機応変に質問を追加・変更して、より良い意見を収集することが可能です。

インデプスインタビュー(IDI)の費用目安

  • 3名:50万円~
  • 5名:40万円~

内訳は、参加者への謝礼、会場費、モデレーター手配、打ち合わせにかかる費用、インタビューフロー作成費、書記手配費用、受付業務費用、報告書作成費などです。

インデプスインタビュー(IDI)の納期目安

企画をしてから報告書を作成するまでは、4週間程度が目安です。スケジュールの内容は、フォーカスグループインタビュー(FGI)と変わりません。

企画と設計→リクルート(対象者の選定など)→調査→回収・整理→集計・分析→報告書作成

行動観察調査(オブザベーション調査)

行動観察調査は消費者がどのように商品やサービスを利用するかを知るため、調査員が実際に現場に行き観察・調査をする方法です。

購入する際の状況や、なにと一緒に購入するかなど、消費者のありのままの姿を知ることができるため、よりリアリティーのある情報を得られることでしょう。

行動観察調査(オブザベーション調査)の費用目安

  • 3名:200万円~
  • 60サンプル:41万円~
  • 現場に行くまでの手間がかかるうえ、人件費や交通費が必要です。その他、調査の企画準備や報告書作成費用、その他雑費も必要なので、比較的費用がかかる調査方法です。

    また、サンプルは動画にするケースも多く、その場合は動画撮影にかかる費用も必要です。

    行動観察調査(オブザベーション調査)の納期目安

    企画から報告書の作成までは、2カ月程度が目安です。

    ミステリーショッパー

    ミステリーショッパーは、覆面調査ともいわれています。モニターが客に扮して特定の店舗へ行き、実際に購買行動をして従業員のサービスや商品の状況などをチェックする方法です。

    店舗内では客として普通にすごしながら、従業員のサービスや商品の陳列、店舗内やトイレなどの清掃状況などをチェックします。

    ミステリーショッパーの費用目安

    • 30サンプル:65~100万円程度

    費用の内訳は、調査の企画準備費、モニターへの謝礼、調査員募集費、調査にかかった費用(商品購入代や飲食費など)、交通費、報告書作成費などです。

    手間がかかるため、調査会社に依頼するケースが多いですが、その場合は別途費用がかかります。

    ミステリーショッパーの納期目安

    企画をしてから報告書を作成するまでは、6週間程度が目安です。

    調査計画を入念に行ってから、一般モニターまたは専門調査員を募集し、実際に店舗に行き調査をします。調査の報告を受け、調査結果をデータに入力し、報告書を作成するという流れです。


    定性調査を成功させるための、インタビューのポイント

    インタビューは顧客から直接意見を引き出すことができるので効果が高く、手軽に始められるのでリサーチ会社を通さずとも実践できます。

    しかし、インタビューのコツをおさえておかないと、無駄に時間とお金を費やしてしまう可能性もあるので注意しましょう。

    定性調査はインタビュー前の準備が重要

    インタービューの実施前には最低限の準備をしておく必要があります。

    当たり前のことですが、まず調査目的を決めましょう。「新商品の開発」など、具体的な目的を定めてください。

    調査の目的が決まったら、目的達成のためにはどんな情報が必要なのかをまとめておきます。ユーザーから必ず引き出したい情報は何かを決めておくためにも必要です。

    インタビューでは3つの「きく」を意識する

    インタビューをする際は、3つの「きく」を意識したうえで行いましょう。

    1. 訊く:質問を投げかける
    2. 聞く:何を答えたのか表面的に聞く
    3. 聴く:言葉の裏側、核心は何かを読み取る

    まずは質問を投げかけ、その答えを聞き、最後に相手の真意を探りましょう。

    3つの「きく」の中で特に重要なのは「聴く」行動です。

    相手が本当の気持ちを言葉にできていない可能性もあるため、単純に質問に対する答えを聞くだけで終わってしまうのはよくありません。

    「聴く」行動をすることで、質問に対する答えの核心をつくことができます。


    まとめ:定性調査の理解を深め市場調査を上手に活用する

    定性調査には、さまざまな調査方法があります。グループインタビューではたくさんの情報を得る効果があり、インデプスインタビューでは深い内容の情報を得ることができるなど、それぞれに得られる効果が異なります。そのため、目的に応じて調査方法を選ぶとよいでしょう。

    定性調査をすることで、購買意欲の核心やツボを知ることができ、結果として商品開発のヒントや、問題点の改善につなげることができます。

    ただし、定性調査の効果を得るためには、インタビューの質問の仕方や言葉選びに気をつけて、対象者が本音を答えてくれるように工夫をすることが大切です。そのために、しっかりと準備をしてから定性調査を行いましょう。