ワークエンゲージメントとは?高める方法や測定方法を丁寧に解説

ワークエンゲージメントとは_アイキャッチ

ワークエンゲージメントとは、従業員が働きがいを感じ、熱心に仕事に取り組んでいる状態を指します。

仕事へのモチベーション維持や、それに伴う生産性の向上に効果が見込まれるため、昨今注目を集めているキーワードです。

「仕事に前向きに取り組めない・やる気が出ない」と感じている従業員は、ワークエンゲージメントが低下している状態と言えるでしょう。

あなたの会社も、従業員の生産性や離職率、働き方多様化への対応に課題を持っていませんか。

仕事に対してポジティブな状態であるワークエンゲージメントを向上させると、こうした組織の文化や環境を改善することにもつながります。

ワークエンゲージメントを高めるキモは、「組織に貢献したいという従業員の気持ちに働きかけること」です。

本稿では、ワークエンゲージメントが注目される背景や測定方法、取り組むべき企業の特徴、高める方法や企業導入事例について解説します。

生産性向上や離職率低下を目指してワークエンゲージメント向上に取り組みたい方は、ぜひ本記事をご覧ください。

目次


ワークエンゲージメントとは

ワークエンゲージメントをひとことで説明
ワークエンゲージメントとは、従業員が働きがいを感じ、熱心に仕事に取り組んでいる状態を指します。

もともとは、オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らが提唱した概念です。

ワークエンゲージメントは、従業員が自分の仕事を楽しんで取り組み、エネルギーを注ぐことができているかどうかを示す指標となります。

ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事に対して積極的で、日々の業務を楽しみながら取り組みます。組織への帰属意識が強まる傾向にあるので、離職率の低下にも効果があると言えるでしょう。

こうした従業員が増えると、個々の生産性を高めるだけでなく職場全体の士気を向上させる好循環につながります。

ワークエンゲージメントの3要素

ワークエンゲージメントの3要素を解説

「仕事に誇りややりがいを感じている(活力)」、「仕事に熱心に取り組んでいる(熱意)」、「仕事から活力を得ている(没頭)」の3要素が揃った状態が、ワークエンゲージメントであるとして定義されています。

  • 活力は、仕事に取り組む際のエネルギッシュで前向きな感覚を指します。活力が高い従業員は、難しいタスクにも意欲的に取り組み、業務に支障の出る疲れやストレスを感じることが少ない傾向にあります。
  • 熱意は、仕事に対する情熱や誇りを表します。熱意のある従業員は、自分の仕事にプライドをもって取り組み、評価されることで満足感を得ているため、結果を出すことに強い関心を持っています。
  • 没頭は、仕事に深く集中し、時間を忘れて取り組むことができる状態です。没頭できる従業員は、細かい作業から大きなプロジェクトまで、すべてに集中力を持って取り組むことができます。

ワークエンゲージメントが高い従業員の特徴

ワークエンゲージメントが高い従業員の大きな特徴は、仕事に対する強い熱意と充実感、そして組織に対する高い貢献意欲を持っている点です。

ワークエンゲージメントの高低により行動や意識がどのように異なるかは、この画像をご参照ください。

ワークエンゲージメントが高い従業員と低い従業員の特徴を比較して紹介

従業員エンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントの違い

混同されがちな言葉ですが、簡単に説明すると、「ワークエンゲージメント」は仕事への集中度、「従業員エンゲージメント」は会社への愛着度を示しています。

ワークエンゲージメントは、従業員が自分の仕事に集中し、喜びを感じることを重視します。

一方、従業員エンゲージメントは、組織への帰属意識や、組織のビジョンや価値観への共感など、より幅広い要素を含んでいます。

自分の会社に対して強い愛着心を持っている人や、チームコミュニケーションを重視して周囲と関わる人は、従業員エンゲージメントが高いと言えます。

参考:従業員エンゲージメントとは?エンゲージメントを高めるメリットと具体的な調査方法│LISKUL


ワークエンゲージメントが注目される背景

ワークエンゲージメントは、仕事へのモチベーション維持や、それに伴う生産性の向上に効果が見込めるとして関心を集めています。

注目された背景には、 厚生労働省による「令和元年版 労働経済の分析」において、その重要性が説かれた点が挙げられます。日本の労働人口減少や人材の流動化によって優秀な人材の確保・定着が困難になり、従業員の離職率を課題とする企業が増えたことも一因です。

参考:令和元年版 労働経済の分析|厚生労働省

実際に、ワークエンゲージメントが離職率低下に貢献することを裏付ける、株式会社リクルートが実施したアンケートがあります。

従業員規模300名以上の企業における20~40代の会社員624名対象を対象としており、「個人の幸福感」「組織や仕事への適応感」「離職意向」の3つとワークエンゲージメントとの関係は、ワークエンゲージメント高群(上位33%)と低群(下位33%)間に有意な差が見られることが分かっています。つまり、ワークエンゲージメントが高いほど、離職意向を示す割合は低いということです。

参考:高いワーク・エンゲージメントは、離職意向低下や個人の幸福感向上につながることが明らかに「ワーク・エンゲージメント」実態調査結果を発表│リクルート

このようにワークエンゲージメントの重要性が説かれている一方で、2023年に米ギャラップ社により実施された調査では、日本は熱意あふれる(エンゲージメントの強い)社員の割合は6%という結果で、対象139カ国中最低レベルが続いています。

ワークエンゲージメント向上は、今後の日本企業の取り組みが期待される領域です。

参考:「日本の社員エンゲージメントは世界最低」と米ギャラップ社│alterna


ワークエンゲージメントがもたらすメリット

ワークエンゲージメントの向上が企業にもたらすメリットを、特に影響の多い3点に絞ってご紹介します。

1.熱心な従業員の働きによる生産性の向上

ワークエンゲージメントが高い従業員は、仕事に対して熱心で目標達成のために主体的に動くので、自然と生産性が上がります。

取り組むべき企業の特徴

  • 目標達成が遅れている、または効率が悪いと感じている企業
  • 新しい技術やツールの導入が進んでいない企業
  • 部署間やチーム内でのコミュニケーションが不足している企業

目指す企業のイメージ

  • 明確な目標設定と評価システムがあり、従業員の目標達成意欲を高める企業
  • 生産性向上のために最新のツールや技術を積極的に導入する企業
  • チームワークを重視し、協力し合う風土が根付いている企業

2.従業員の満足度向上による離職率の低下

仕事に対するやりがいや達成感を感じることで、従業員の満足度が高まります。満足度が高いと、職場への愛着心が強くなるので、離職率低下も期待できます。

取り組むべき企業の特徴

  • 離職率が高く、従業員の定着に悩んでいる企業
  • キャリアパスや研修制度が不十分で、従業員の成長が阻まれている企業
  • 働きにくい環境(長時間労働や過度なストレス)が問題になっている企業

目指す企業のイメージ

  • キャリアパスや研修プログラムが充実しており、従業員の成長を支援する企業
  • フィードバックを重視し、定期的に従業員の声を聞く機会を設ける企業
  • 働きやすい環境(福利厚生の充実やワークライフバランスの推進)を提供する企業

3.新しいアイデアの発信による企業成長

ワークエンゲージメントが高い環境では、従業員が新しいアイデアを出しやすくなり、企業の競争力を高めて成長させることに役立ちます。

取り組むべき企業の特徴

  • 従業員から新しいアイデアが出にくいと感じている企業
  • 既存の製品やサービスのアップデートが進まない企業
  • 業界内での競争力が低下していると感じる企業

目指す企業のイメージ

  • 上司と部下の間で円滑なコミュニケーションが行われ、従業員の意見が反映されやすい企業
  • 失敗を恐れずに新しいチャレンジを奨励する企業
  • 異なるバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用し、多様な視点を活かす企業

ワークエンゲージメント向上に取り組むフロー

具体方法に入る前に、会社全体でワークエンゲージメントを高める流れを一度ざっくりとご紹介します。

ワークエンゲージメント向上に取り組むフロー

ワークエンゲージメントの向上意識を社内で定着させるためには、この流れを定期的に繰り返して実施することが大切です。

あくまでもワークエンゲージメントは「従業員の状態」なので、良くも悪くも変動が起きるものであることを踏まえ、長期的に構えて取り組みましょう。


ワークエンゲージメントの測定方法3選

ワークエンゲージメント向上にむけて動き出す前に、自社の現状を知るための測定方法をご紹介いたします。

下記の尺度を利用して、従業員の職場に対する満足度を測るために従業員アンケートを実施しましょう。

参考:従業員アンケートとは?基礎・作り方と本音を引き出す設計のコツ│LISKUL

ワークエンゲージメントの測定方法3選

1. UWES(Utrecht Work Engagement Scales)

UWESは、仕事に対する「活力」、「熱意」、「没頭」の3つの要素を測定します。従業員がどれだけ仕事に熱中し、エネルギーを感じているかを評価することができます。

大企業や国際的な企業において、従業員一人ひとりの仕事に取り組む姿勢をはかり、分析したい場合に向いています。

「活力」「熱意」「没頭」の3つの因子について17項目の質問で測定します。
その他、UWESでは3つの因子を3項目ずつ、合計9項目の質問で測定できる短縮版、合計3項目の質問で測定できる超短縮版も開発されています。

質問例

「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」(活力)
「私は仕事に熱心である」(熱意)
「私は仕事にのめり込んでいる」(没頭)

測定方法

いつも感じる:6点
よく感じる:4.5点
時々感じる:3点
めったに感じない:1.5点
全く感じない:0点

合計したスコアが高いほど、ワークエンゲージメントが高い状態です。

2019年の正社員調査をまとめた厚生労働省の報告によると、正社員全体のワークエンゲージメントスコアの平均は「3.42(6点満点)」となっています。ワークエンゲージメントを構成する要素別の平均スコアは、熱意:3.92、活力:2.78、没頭:3.55です。

年齢別では、加齢にともなってワークエンゲージメントが高くなっており、職位・職責では、その責任が重くなるほどワークエンゲージメントが高くなる傾向にあります。

参考:令和元年版 労働経済の分析(第3章 P178)|厚生労働省

2. MBI-GS(Maslach Burnout Inventory-General Survey)

MBI-GSは、従業員のバーンアウト(燃え尽き症候群)を測定するための方法ですが、その反対の指標としてワークエンゲージメントも測定できます。

ワークエンゲージメントとバーンアウトの関係を4象限で説明

MBI-GSでは、「疲弊感」(仕事に関する疲弊感)、「シニシズム」(仕事に対する熱意や関心を失い、心理的距離を置く)、「職務効力感の低下」(仕事に対する自信、やりがいの喪失)の3つの項目から、エンゲージメントのレベルを把握できます。

合計16の質問項目から構成されており、それぞれ「疲弊感」が5項目、「シニシズム」が5項目、「職務効力感」が6項目です。

労働時間が長い傾向にあり、仕事への責任によるストレスが生じやすい職場(医療・教育など)での実施が適しており、従業員のバーンアウト防止策としても活用できます。

質問例

1日の仕事が終わると疲れはて、ぐったりすることがある(疲弊感)
自分がしている仕事の意味や大切さがわからなくなることがある(シニシズム)
自分は職場で役に立っている(職務効力感)

測定方法

バーンアウトの程度を測る尺度のため、傾向が強く出るほどバーンアウトに近い状態です。反対に、傾向が低ければワークエンゲージメントが高い状態といえます。

似た尺度

似た尺度として、「日本語版バーンアウト・アセスメント尺度(BAT‐J)」が挙げられます。

計33の質問(疲弊感8項目、精神的距離5項目、認知コントロールの不調5項目、情緒コントロールの不調5項目、心理的苦痛5項目、心身の不調5項目)から判断する方法です。

6つの要素から、心身ともにバーンアウトの傾向があるかを確認することができます。

3. OLBI(Oldenburg Burnout Inventory)

OLBIは、バーンアウトとエンゲージメントの2つの側面を簡潔に測定できる方法です。「疲弊感」と「離脱」の2つの軸で、従業員のストレスとやる気を評価します。

中小企業やスタートアップなど、迅速かつ簡単な測定で十分な規模において実施する場合に有効です。

「疲弊感」は心身の疲れを、「離脱」は仕事への関心の低下を示しており、それぞれ4項目ずつ、合計16項目から成り立っています。

質問例

自分には長い休息が必要だ(疲弊感)
今の仕事量はしっかりこなせている(疲弊感)
自分にとって仕事は挑戦である(離脱)
他の職業は考えられないと思う(離脱)

測定方法

全くそう思わない=1
そう思わない=2
そう思う=3
とてもそう思う=4

数値の合計が高いほどバーンアウトの傾向が強く、低いほどワークエンゲージメントの傾向が強いと判断されます。


ワークエンゲージメントを高める2つの要因

ワークエンゲージメントを高める要因は、「仕事の資源」と「個人の資源」の2つです。

簡単に言うと、「仕事の資源」とは職場でのサポートや環境、「個人の資源」とは自分自身のスキルやエネルギーを指します。

ワークエンゲージメントを高める2つの要因を比較して説明

職場からのサポートと従業員自身の性格や資質がうまく組み合わさることで、仕事に対するやる気や熱意(ワークエンゲージメント)が高まります。

従業員が仕事に対して積極的に取り組むためにも、「仕事の資源」と「個人の資源」のバランスをとれるようにサポートすることがカギです。

仕事の資源(Job Resources)

「仕事の資源」とは、職場で従業員が利用できるさまざまなサポートや条件のことを指します。

従業員が仕事に対するポジティブな感情を持つことは、エンゲージメントを高めるために重要です。

仕事の資源の具体例は、下記が挙げられます。

  • 同僚や上司からの助けやアドバイスがあり、安心して仕事に取り組むことができる
  • 自分の仕事の役割や期待される成果が明確で、効率的に仕事が進むことでストレス軽減できる
  • 上司や顧客からのフィードバックがあり、自分の仕事の良し悪しを理解して改善に努められる
  • スキルアップや昇進のチャンスがあり、将来への期待から仕事に積極的に取り組むようになる
  • 快適で安全な作業環境があり、仕事に集中しやすくなる

個人の資源(Personal Resources)

「個人の資源」とは、従業員自身が持っているスキルや考え方、感情的な強さを指します。

従業員が仕事に対して主体的に取り組む姿勢のもととなり、エンゲージメントの向上につながります。

個人の資源の具体例は、下記が挙げられます。

  • 自分には仕事をやり遂げる力があるという自信が高いと、困難な仕事にも積極的に挑戦できる
  • ストレスや失敗から立ち直る力が強いと、逆境にも負けずに仕事を続けることができる
  • 将来に対してポジティブな見方をすると、問題が生じても前向きに捉えて解決策を見つけられる
  • 自分の仕事に対する明確な目標や意義を持っていると、仕事に対するモチベーションが高まる

ワークエンゲージメントを高める方法6選

ワークエンゲージメントを高めるためには、自社のエンゲージメント傾向を踏まえたうえで、実行可能な取り組みを行うことが重要です。

前述したワークエンゲージメントにおける2つの資源「仕事の資源・個人の資源」を踏まえて、どの企業でも生産性を上げやすい方法をご紹介します。

項目対象
1. 人事評価制度を見直す評価基準が曖昧な企業
2. キャリア開発や成長機会につながるセミナーを提供する中堅社員の成長停滞や離職率が課題の企業
3. メンター制度を導入して若手従業員をサポートする若手の成長停滞や入社後定着率の低さが課題の企業
4. 仕事の自動化を推進する時間外労働が多い企業
5. 社内コミュニケーションを活性化するツールを導入する縦横斜めのつながりが活発ではない企業
6. 福利厚生の充実を図る健康やワークライフバランスが課題の企業

1.人事評価制度を見直す

従業員が公正に評価されていると感じることは、ワークエンゲージメントの向上につながります。

現行の人事評価制度を見直し、成果だけでなく、プロセスやチームワークも評価する仕組みにすることで、従業員のやる気を引き出せます。

従業員が自分の役割や目標をいつでも確認できるようにし、評価では、それが企業全体のビジョンや成果にどう結びついているかを説明することで、所属意識や貢献認識を強めましょう。

成果に応じた報酬や表彰制度を設けることも、従業員が努力に対する対価を実感しやすくなるのでおすすめです。

参考:人事評価の基本と流れを解説!部下の力をのばす評価の仕方とは?│LISKUL

この方法は、評価基準が曖昧な企業に適しています。

実施手順

  • 現行の評価制度の課題を明確にするため、従業員からフィードバックを収集する
  • 外部の専門家やコンサルタントの助言を取り入れて、新しい評価基準を策定する
  • 新しい評価制度を全社的に導入し、その運用状況を定期的に見直す
  • 実施例

    • 個人の成果だけでなく、チーム全体の協力姿勢や貢献度も評価基準に含める
    • 評価基準を見える化し、従業員が自分の評価プロセスを把握できるようにする
    • 定期的な360度評価を導入し、上司、同僚、部下からのフィードバックを取り入れる

    実施するときのコツ

    • 透明性を高め、評価基準を全社員に理解させる
    • 評価者に対して、評価方法のトレーニングを徹底する
    • 制度導入後は、従業員の満足度を定期的に確認し、必要な改善を行う

    2.キャリア開発や成長機会につながるセミナーを提供する

    従業員が自身のキャリア計画を行い、自己成長を意識してスキルアップを図るためのプログラムを提供することで、仕事へのモチベーションが高まります。

    キャリア開発プログラムは、従業員が自分の成長を実感しやすくし、長期的なエンゲージメントの向上に寄与します。定期的なトレーニングやスキルアップの機会を提供し、従業員が自己成長を実感できる環境を整えましょう。

    参考:社員研修とは?具体的な種類や成果を出すためのポイントを徹底解説!│LISKUL

    この方法は、若手や中堅社員の離職率が高い企業や、ノウハウが横展開されておらず、自己流で仕事している従業員が多い企業に有効です。

    実施手順

    1. 従業員のキャリア目標を把握し、それに合ったプログラムを設計する
    2. 内部または外部の専門家を招いて、スキルアップのための研修を実施する
    3. プログラム終了後、成果を評価し、次のステップを計画する

    実施例

    • 最新の情報をキャッチアップできる業界トレンドや最新技術に関するセミナーを開催する
    • リーダーシップの基本やチームマネジメントの技術に特化したワークショップを開催する
    • キャリア相談や目標設定のセッションを提供し、個々のキャリア目標に対するアドバイスを行う

    実施するときのコツ

    • プログラムの内容が従業員のキャリア目標に直結するよう工夫する
    • 従業員一人ひとりに合わせた個別のフィードバックを行う
    • 定期的にプログラムの効果を見直し、必要に応じて内容を更新する

    3.メンター制度を導入して若手従業員をサポートする

    新入社員や若手社員に対して、経験豊富な先輩社員がメンター・OJTとしてサポートする制度を導入することで、社員同士のコミュニケーションが活発になり、ワークエンゲージメントが向上します。

    個々の事情に即したサポートが充実すると、従業員は自分の成長を実感しやすく、仕事に対する意欲につながります。

    メンターがポジティブなフィードバックと建設的なアドバイスをバランスよく提供することで、やる気を引き出し、ワークエンゲージメントを高めましょう。

    この方法は特に、若手の成長停滞に課題を抱えている企業や、入社後3年の従業員定着率が低い企業におすすめです。

    参考:OJTとは?新人を早期戦力化するための基本を一挙ご紹介│LISKUL

    実施例

    • 初めて取り組む業務は、進捗を都度把握してアドバイスし、成功体験を積ませる
    • 朝会や夕会で困っていることはないか確認し、適切なサポートを提供する
    • 新入社員が取り組むプロジェクトを設定し、実践的な学びの場を提供する
    • 定期的な1対1の面談を設け、新入社員の悩みや目標について話し合う
    • メンターによるスキルアップの勉強会を開催し、専門知識の習得を支援する

    実施するときのコツ

    • メンターに対して、事前にトレーニングを提供する
    • 新入社員の成長や課題を定期的に見直し、適切なサポートを行う
    • メンター制度の効果を評価し、必要に応じて改善を行う

    4.仕事の自動化を推進する

    日常業務の中で繰り返し行われる単純作業を自動化することで、従業員がよりクリエイティブな仕事に集中できるようにします。これにより、業務効率が向上し、従業員が仕事に対するやりがいを感じやすくなります。

    この方法は、時間外労働が多い企業や、手作業が多いなど業務プロセスの効率化が求められる企業に有効です。

    実施例

    • 毎月の請求書発行作業を自動化し、担当者が戦略的業務に集中できるようにする
    • 定型的なメール返信を自動化し、カスタマーサポートがより複雑な問い合わせに時間を割けるようにする
    • データ入力業務を自動化し、入力ミスを減らし、データの正確性を高める

    実施するときのコツ

    • 自動化の導入は段階的に進め、従業員の負担を減らす
    • 自動化された業務の品質管理を徹底する
    • 従業員が新しい業務に適応できるよう、適切なサポートを行う

    作業自動化に活用できるツール

    作業自動化に活用できる具体的なツールは、こちらの記事をご参照ください。

    参考:【2024年最新版】DXに役立つおすすめツール15選を比較!選び方も紹介|LISKUL
       【2024年最新版】業務可視化ツールおすすめ18選を比較!口コミも紹介|LISKUL
       【2024年最新版】発注管理システムおすすめ26選を比較!選び方も紹介 | LISKUL

    5.社内コミュニケーションを活性化するツールを導入する

    社内コミュニケーションを円滑にするツールを導入することで、チームの連携が強まり、従業員同士の信頼関係が深まります。これにより、従業員が孤立せず、チーム全体での仕事に対するエンゲージメントが高まります。

    部署やチーム内だけでなく、会社全体のつながりを大切にして従業員が互いにサポートし合える文化を育むことも、エンゲージメント向上に繋がります。

    参考:【2024年最新版】社内SNSツールおすすめ26選を比較!選び方も紹介│LISKUL

    この方法は、縦横斜めのつながりが活発ではない企業や、個人作業が中心の職場、リモートワークなどで対面コミュニケーションを図りにくい職場に効果的です。

    社内SNSツールを選ぶポイント

    1. 初期導入費用やランニングコストが予算内であるか
    2. スマートフォンでも快適に利用できるか
    3. データの暗号化やアクセス制限が充実しており、情報が安全に保護されているか
    4. 直感的な操作ができ、簡単に利用できるインターフェースか
    5. カレンダーやプロジェクト管理ツールなどの他の業務ツールとスムーズに連携できるか

    実施するときのコツ

    • 導入するツールは、業務内容に合ったものを選ぶ
    • 従業員がツールを使いやすいよう、サポート体制を整える
    • 一部の社員やグループから徐々に浸透させる
    • ツールを利用したコミュニケーションの成果を評価し、改善点を共有する

    6.福利厚生の充実を図る

    従業員が仕事と私生活のバランスを保って意欲的に働くためには、福利厚生の充実が重要です。

    健康管理や育児支援、休暇制度の充実など、従業員が生活面でサポートを受けられる環境を整えることで、仕事に対する安心感が生まれ、ワークエンゲージメントが高まります。

    このとき、定期的なアンケートなどで集めた従業員の意見をもとに、職場環境や業務プロセスを改善しましょう。自分の声が反映されたと感じることで、意欲やエンゲージメントが向上しやすくなります。

    参考:【2024年版/比較表つき】福利厚生サービスおすすめ25選を比較!選び方も紹介│LISKUL
       ストレスマネジメントとは?企業主導のやり方と具体例を紹介│LISKUL

    この方法は、特に従業員の健康やワークライフバランスに関する施策が少ない企業に適しています。

    実施手順

    1. 現行の福利厚生制度を見直し、従業員のニーズに合った新しい制度を導入する
    2. 福利厚生に関する情報を従業員に周知し、利用を促進する
    3. 福利厚生制度の利用状況を定期的にチェックし、必要な改善を行う

    実施例

    • 健康診断やメンタルヘルスのカウンセリングサービスで従業員の健康管理をサポートする
    • 育児休暇やフレックスタイム制度を導入し、育児と仕事の両立を支援する
    • 状況に応じてリモートワークを推進し、通勤時間で生じるストレスを軽減する
    • 有給休暇の計画的な取得を推奨し、リフレッシュ休暇を導入する
    • ストレスマネジメントチェックやセミナーを実施する
    • 社内イベントやチームビルディング活動を企画し、従業員同士の交流を促進する

    実施するときのコツ

    • 従業員の多様なニーズに対応できるよう、選択肢を増やす
    • 福利厚生の利用が従業員の健康や生活の質にどう影響しているかを確認する
    • 利用促進のため、従業員へのアピール方法を工夫する

    • ワークエンゲージメントを向上させた企業事例

      本章では、実際に前述した方法を導入したことで、ワークエンゲージメントを向上させた企業事例をご紹介します。

      評価制度見直しで前向きに仕事する従業員が増えた株式会社丸井グループ

      東京都で卸売業を営む丸井グループ(従業員数4,435人)は、評価制度を見直したことで、前向きに仕事する従業員が増えワークエンゲージメントが向上しています。

      2021年から5か年の中期経営計画においてWell-beingとサステナビリティを事業全体の目的としており、KPIを設定したうえで、各事業の具体的な取り組みに落とし込んでいます。

      具体的には、人事評価制度を刷新し、従来の個人成果評価(成果を上げれば評価される)から、個人の働く姿勢評価(言動が経営理念を達成するためのものになっているかどうか)および、チームのパフォーマンス評価の二軸評価に変更しました。

      これにより、従業員のWell-being指標の値が大きく向上し、仕事に意欲的に取り組む従業員が増加しています。

      参考:ワークエンゲージメント取組事例|株式会社丸井グループ

      社員を育てる施策により離職率を低下させた株式会社サイバーエージェント

      インターネット広告事業を展開するサイバーエージェント(従業員数6,337人)は、社員の意見を反映させる施策やキャリア支援により、離職率を約20%低下させています。

      サイバーエージェントは上場直後(2000~2003年)、組織が急拡大する一方で離職率30%という課題を抱えていたため、実力主義・成果主義から、社員を大事にして中長期的に人材を育成する方針に変更しました。

      具体的には、個人の思いや各部署の状況を把握するために、毎月3問のアンケートを実施しています。寄せられたコメントには人事部門が全て返信し、「打てば響く」と感じられる状況を作るとともに、気になる社員がいれば声かけを行い、必要に応じて人事異動を行うこともあります。

      人材育成のため、また社員のやる気を引き出すために社員に期待をかけて任せる「抜てき」を重視し、若手に責任ある立場を任せていることも特徴です。また、毎年の全社表彰で頑張った社員を表彰することで、社員の誇りやさらなるやる気につながり、全社員の目指すべき姿を示す機会を設けています。

      こうした取り組みが会社の風通しの良さにつながり、離職率は2022年時点で8.4%となり大きく減少しています。

      参考:ワークエンゲージメント取組事例|株式会社サイバーエージェント

      コミュニケーション活性化で離職率を低下させた株式会社福井

      創業110年超の老舗企業である福井(従業員数123人)では、社長自らエンゲージメント調査や社員との定期面談を導入して離職率低下を成功させました。

      エンゲージメント調査では労働環境に対する改善を求めるコメントが多く、設備投資や人事制度・運用を変更するなど、経営層が必ず対応しています。提案に対して経営層が対応することから信頼関係が生まれ、企業と社員とがコミュニケーションをとる手段の1つとなりました。

      また、社員との対話機会の不足が離職につながると考え、社員と管理職との定期面談(1on1)を実施することで、管理職と社員の間で互いの理解が深まり、社員の主体性も高まっています。

      「デスクで出来ない話をする」「社員のための時間」「腹を割って話す」ことで社内コミュニケーションを強化し、人材の定着、管理職同士の一体感、会社の雰囲気の改善(社員が教え合う雰囲気)といった効果が見られ、離職者が減少しました。

      採用活動でもワークエンゲージメントの高さをアピールし、多様な社員の採用につなげています。

      参考:ワークエンゲージメント取組事例|株式会社福井


      ワークエンゲージメント向上に取り組むときの注意点

      ワークエンゲージメントに取り組むときは、単に本記事でご紹介した方法を真似するのではなく、注意点を踏まえておきましょう。

      自己肯定の低い回答によって評価時に惑わされる

      日本人は自己肯定の低い回答をしやすく、海外と比べるとスコアが低くでる傾向にあるので、測定結果が低い場合、評価時に注意が必要です。

      16ヶ国のワークエンゲージメントスコアを比較した論文『Shimazu,Schaufeli, Miyanaka, & Iwata(2010)』では、日本のスコアは他国と比較して、相対的に低い状況にあることが分かっています。

      同論文では、日本人は自分に対してポジティブな感情や態度を出さずに謙虚であるほうが社会的に望ましいとされる風潮があるのに対して、欧米では積極的に自己開示することが望ましいとされる風潮がある点を理由として挙げています。

      つまり、集団の調和を重視する文化のある日本社会では、仮に「活力」「熱意」「没頭」が内在されている労働者であっても、ポジティブな感情として表現することを控えている可能性が考えられるのです。

      職場環境改善だけでは効果が見込めないこともある

      仕事とプライベートのバランスが取れていないと、どれだけ職場環境が改善されても、従業員は十分な満足感を得られません。

      私生活の充実は、仕事に対するエンゲージメントにも大きく影響するからです。

      そのため、企業は福利厚生の充実や柔軟な働き方の提供など、従業員が仕事だけでなく私生活でもポジティブな効果を得られるようなサポートを検討することが重要です。

      働きがいを重視しすぎるとハラスメントになる

      働きがいを追求することは重要ですが、それが過度になると「やりがい搾取」というハラスメント問題が発生する可能性があります。

      企業が従業員に「働きがい」を強く求めすぎると、過剰な業務負担や、プライベートを犠牲にした働き方を強いることになりかねません。特に、目標達成や自己成長の名のもとで、無理な業務や長時間労働を強いることは、ハラスメントとみなされる危険性があるので注意が必要です。

      従業員のやりがいやモチベーションを尊重しつつも、適切な業務量とバランスを保ちましょう。

      複数個の施策を同時に行うと従業員が混乱する

      企業文化と異なる施策を導入すると、従業員に混乱を与えたり、逆にモチベーションを低下させたりするリスクがあります。

      ワークエンゲージメント向上施策が効果的であるためには、自社の価値観やビジョンと一致していることが重要です。

      施策を検討する際には、自社の方向性や価値観をしっかりと見極め、それに合ったアプローチを選ぶことが大切です。


      まとめ

      ワークエンゲージメントとは、従業員が働きがいを感じ、熱心に仕事に取り組んでいる状態を指します。

      本記事では、ワークエンゲージメントが注目される背景や測定方法、取り組むべき企業の特徴、高める方法や企業導入事例について解説しました。

      ワークエンゲージメントは、仕事へのモチベーション維持や生産性の向上だけでなく、従業員の離職率低下に効果が見込まれています。

      仕事に対してポジティブな状態であるワークエンゲージメントを向上させる意識は、組織の文化や環境を改善することにもつながります。

      本記事が、生産性向上や離職率低下を目指す企業が、ワークエンゲージメント向上に取り組む際の一助となれば幸いです。