オムニチャネルとは、実店舗、インターネット、SNSなどのさまざまな手段(チャネル)を一体化させ、どのチャネルからでも一貫した購買体験が提供できるような状態や戦略のことを指します。
マーケティング用語としてよく聞く言葉ですが、理解が曖昧な方も多いのではないでしょうか。
今回は、「オムニチャネルとは何か」「似ているマーケティング用語との違い」「オムニチャネル化すべき企業の特徴」「実際にオムニチャネル化を行うための手順」についてご紹介します。
目次
オムニチャネルとは
オムニチャネルとは、実店舗、インターネット、SNSなどのさまざまな手段(チャネル)を一体化させ、どのチャネルからでも一貫した購買体験が提供できるような状態や戦略のことを言います。
たとえば、店舗で買おうとした商品がなくても、ご自宅に商品を郵送もしくはECサイト上で購入できるようにするのもオムニチャネル化といえます。
各チャネル間で商品やサービスの情報に差があったり、チャネルの違いによって顧客が不便を感じたりする状態はオムニチャネルとは言えません。
オムニチャネル化で店舗やWeb、ECサイトなど、異なる販売経路でも顧客にとって利便性を感じる購買体験ができるようにすることで、販売の機会損失を防げるだけではなく、顧客満足度を向上させられます。
マルチチャネル、O2O、OMOとの違い
オムニチャネルとよく混合されがちなのが「マルチチャネル」と、「O2O」、「OMO」の3つです。それぞれに違いは以下の表にまとめています。
マーケティング手法 | 特徴 | オムニチャネルとの違い |
---|---|---|
マルチチャネル | 複数の販売チャネル(店舗、オンライン、カタログ等)を通じて商品やサービスを提供。 | 各チャネルが独立しているか、統合されているか。 |
O2O (Online to Offline) | オンラインの情報を活用してリアルのオフラインでの行動を促す。 | チャネル間で連携がされているか、されていないか。 |
OMO (Online Merge Offline) | O2Oの進化形で、オンラインとオフラインが完全に統合され、顧客体験はシームレスになる。 | データが統合されているか、されていないか。 |
マルチチャネルは各チャネルが独立していますが、オムニチャネルはすべてのチャネルが一貫性を持ち、顧客がチャネル間で自由に移動できるように統合されています。
O2Oはオンラインとオフラインのあいだの相互作用に重点を置いています。一方、オムニチャネルも複数のチャネルを使用しますが、各チャネルは基本的に独立していて、チャネル間の連携があまりされていないのがO2Oとの違いです。
O2Oの進化系であるOMOは、オンラインとオフラインの行動をデータとして統合し、これらを完全に融合させた一貫した体験を提供する戦略です。しかし、オムニチャネルは各チャネル間のデータは統合せず、それぞれ独立的に運用します。
参考:【OMO事例11選まとめ】事例から見えたOMO成功の3つのポイント
オムニチャネルを導入する3つのメリット
オムニチャネルの導入は、顧客だけではなく、企業側にも大きなメリットがあります。
メリット1 顧客ごとに最適なアプローチができる
さまざまなチャネルの情報を統合すると、顧客の購入履歴等から趣味や嗜好などがより深く分析できます。
そのデータをもとに、顧客ひとり一人に最適なアプローチをすれば、低コストで売り上げを伸ばすことができます。
メリット2 無駄な在庫が減らせる
オムニチャネル化をすることで、商品の在庫が余ることを防げます。
商品情報をひとつにまとめると、実店舗で品切れでも、他店舗やEC用の物流センターなどから、すぐに顧客へ商品を発送できます。
無駄な商品の発注を減らせますし、在庫を抱えることもありません。また、販売機会を逃さずにすみます。
メリット3 顧客にファンになってもらいやすい
オムニチャネル化を実施することで、顧客満足度が向上し、結果的にファンになってもらいやすくなります。
オムニチャネルでは、各顧客がどのチャネルでも利便性が高い購買体験ができるように目指す戦略です。
「店舗に足を運んだのに商品が無くて買えなかった」「ECでの商品情報が不十分」などのストレスを解消できるため、顧客からの評価が高くなりやすいです。
参考:ECサイトのアプリ化で店頭の売上が27%UP アプリ導入成功事例>>無料
オムニチャネル戦略に向いている企業・向いていない企業
オムニチャネル化には向き不向きがあります。それぞれの企業の特徴について紹介します。
オムニチャネル化に向いている企業
オムニチャネル化は、アパレルや小売業など複数のチャネルを持ちやすい企業が向いているといえるでしょう。
リアル店舗やECサイトなど、多くの顧客接点を統合させることで、顧客の購入体験を向上させられます。
そのため、すでに複数の店舗を持ち、ECサイトも運用している企業が向いています。
オムニチャネル化に向いていない企業
反対に、一つの販売チャネルでビジネスを展開している企業はオムニチャネル化ができません。
例えば整体や美容室など、店舗でしかサービスを体験できない企業の場合は、そもそもほかのチャネルに拡大させることが難しいです。
事例:食品から書籍、医薬品など、グループ全体の商品を横断的に閲覧・購入できる独自のポータルサイト「AEON.com」
オムニチャネル化に成功している企業に、全国に店舗を構える大手総合スーパーのイオングループがあります。
「AEON.com」は、イオングループが運営するオムニチャネルサービスです。グループ全体の商品を一括して提供するプラットフォームで、「顧客が、どんな商品を、どう買うのか」という情報を把握し、顧客の利便性や満足度も高まります。
顧客情報をもとに消費傾向を分析し、売り場の改善やサービス向上を進めて、店舗の競争力を上げています。
オンラインで注文した商品を、ドライブスルーや、専用ロッカーで受け取れるようにするなど、顧客の要望に応えてる施策を行っています。
こうした取り組みは、「買物を手早く済ませたい」「購入した商品を車から降りずに受け取りたい」という顧客の要望に応えるためにできました。
また、店内にあるタブレット端末を使って、オンラインで買い物ができる「タッチゲット」コーナーの導入を進めています。スーパーには展示できない大物家電や家具を中心に、約8,000点がラインナップ。店内に在庫がない商品は、オンラインで購入することができます。
参考:セブン、イオンが先手、「オムニチャネル」はどこまで実現しているのか 食品でも進む販売経路の融合|フーズチャネル
オムニチャネルを始めるための5つのステップ
ここでは、一般的な「オムニチャネル」をスタートさせる、基本的な5つのステップを紹介します。
- 何をすべきか明確化する
- 社内システムの見直す
- 販促方法の見直し
- ロードマップをつくる
- オムニチャネルの認識共有とシステムの統合
それぞれについて解説します。
1.何をすべきか明確化する
オムニチャネルをスタートさせようと考えたとき、まずは何をするべきか明確にしましょう。
具体的には以下の4点を明確にするといいでしょう。
- 何を目的として連動させるのか
- いつまでに完成させるのか
- オンライン、オフラインの情報を連動するシステムを使っているか
- 連動させるチャネルは何か
オムニチャネルを始める大元の考え方が共有されないと、完成までのロードマップも作成できません。オムニチャネル実現のためのもっとも重要なところです。
2.社内システムの見直す
これまで独立していた実店舗とECサイトなどをオンラインを連動させるため、各部署がこれまで以上に強固な連携体制をとることが重要です。
社内のシステムや仕組みも大幅に変更となりますが、各部署が「連携する意識」を持ち、オムニチャネル構築に向かっていくことです。
ここでつまずいて、オムニチャネルを取り入れた後にうまく運営ができなければ初期費用が無駄になってしまうでしょう。
3.販促方法の見直し
オムニチャネルが構築できたら、「販促活動」を見直しましょう。
オンラインとオフラインが統合したことで、顧客との接点も多チャネル化し、新たにできること、さらなる販促活動の可能性が広がるからです。
「どのようなアプローチをすれば、一人ひとりに最適化したサービスを届けられるのか」「実店舗とECサイトがどのように連携すれば、新たな販促活動が可能なのか」を考え、「販促戦略」をたてましょう。
たとえば、オムニチャネルと相性のいいアパレル業界で、いち早くオムニチャネルを取り入れた企業に「ユニクロ」があります。
スマートフォンのアプリで、AIチャットボットが、在庫確認や返品・交換などの質問への回答や、コーディネイト相談など、多くのサービスを提供しています。AIチャットボットはLINEで提供されていて、さらに顧客の利便性を高めるため、AIチャットボットとオペレーターが連携して、顧客からの質問への回答の幅を広げるなど、オムニチャネルの利便性をさらに進化させています。
このようにオムニチャネル化において重要なのは、「オムニチャネルのシステムを使って何をするか」です。
自社の強みを最大限に生かし、お客様により楽しんで購入体験をしてもらうにはどうしたらいいのか、と考え、オムニチャネルが有効に働く店舗構築を目指しましょう。
参考:UNIQLOに学ぶオムニチャネル〜有明プロジェクトについて〜 | AD JOURNAL [アドジャーナル]
4.ロードマップをつくる
販売方法の見直しが終わったら、ロードマップをつくりましょう。
ロードマップとは「いつ・どこで・だれが・なにを・どのように行動するのか」などをまとめたものです。
できるだけ具体的な行動がわかるようにつくりましょう。オムニチャネル化に向けた全体の流れや、「最終的にどうやって、どういう成果が得られるのか」という具体像を、すべての人たちが共有できます。
5.オムニチャネルの認識共有とシステムの統合
ロードマップを作ったら、ペルソナを設定し、「カスタマージャーニー」を策定しましょう。自社とペルソナの関係性を想定し、「最適なアプローチは何か」「どんな方法が有効か」を考えます。
最後に、オムニチャネルの認識共有とシステムの統合です。「オムニチャネル化した自社」に対する「各チャネルの位置づけ」、「役割分担」などを、関係者と共有しましょう。
スマホ×ECサイト、そして実店舗との相性が良いのは「アプリ」です。アプリはユーザーに対してキャンペーンやクーポンなどのお知らせ(プッシュ通知)ができたり、店舗近くに顧客が来ると、自動で通知を飛ばしたりできます。最近はアプリ化するECサイトも増えてきています。以下資料はアプリ化したECサイトの事例がまとめられています。無料でダウンロードできるので、ぜひお手元においてご活用してください。
参考:アプリ導入にかかる本当の費用
参考:マーケターが把握しておきたいアプリ企画〜開発まで
オムニチャネル化するならば、顧客のことを考えよう
オムニチャネルは顧客にも自社にもメリットがある施策ですが、取り入れれば必ずいい結果になるというわけではありません。
1.自社のリソースをしっかり把握する
2.自社の顧客と、顧客が求めているものをしっかり理解する
これら2つの前提を考慮したうえで、適切な施策を行うことがオムニチャネルを成功させるために必須となります。念頭においていただきたいのは、オムニチャネルは「顧客起点」の考え方があってこそ成り立っているという点です。
自社の利益の追求を行うのではなく、顧客の利益を追い求めた結果、顧客が自社についてきてくれるのを忘れないようにしてください。
参考:エンゲージメントがウェブの20倍! ECサイトアプリ導入効果
「オムニチャネル戦略」成功のカギはアプリにあり!
全てのチャネルを統合し、顧客の体験をシームレスにする手段として、アプリ活用がおすすめです!
スマートフォンの普及率が70%を超えた今、アプリは行動の起点となる様々な機能を備えた、コミュニケーションの中核となりつつあります。
ウェブサイトと比較すると、効率に大きな差がでます。エンゲージメントの強化、CVRの向上、売り上げ拡大、顧客ロイヤリティの向上など、アプリは絶大な効果を発揮します。これらの効果を定量的に示した資料をご用意しておりますので、こちらをご一読ください。
参考:数字で考えるアプリ導入の効果【オムニチャネル・O2O編】
EC売上を広告予算を変えずに増加させたROAS改善事例
ECサイトの担当者・責任者であれば、売上や新規獲得は毎日チェックする重要指標でしょう。
今回は広告予算を増やさずにROAS改善でEC売上を伸ばした事例をご紹介します。
1.家具・雑貨EC 注力商品対策で広告経由売上1.5倍
2.女性向けアパレルEC 注力商品対策で広告経由売上2倍
3.事務用品EC 注力商品対策で広告経由売上2倍
など。
無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。