MAツールはマーケティング施策の選択肢を増やしてくれるーープロが教える本質と選び方

ある日、上司から「マーケティングオートメーションツール(以下、MAツール)を導入してほしい」と突然のお達しが……。相談できる相手もおらず、孤軍奮闘するマーケティング担当者にとっては一大事。今のMAツールのトレンドって? 結局、MAツールって何ができて、自社ではどう選べばいいの? 他の会社ではどうやっているの? こういった疑問や悩みは尽きません。

そこで今回は、MAツールを選ぶなら絶対に知っておきたいポイントを、導入のプロに教えていただくことにしました。お話を伺ったのは、1200社以上へMAツール導入の支援をしてきたtoBeマーケティング株式会社代表取締役CEOの小池智和さんです。

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【連載】BtoBマーケティングとは? (まとめ記事

当サイトLISKULでは「BtoBマーケティング」のポイントを複数の記事で説明しています。(全体概要を把握したい方は「まとめ記事」がおすすめ)

 

  1. BtoBマーケティングとは?すぐに結果が出やすい3つの手法を解説
  2. 毎月200件リードを獲得する、BtoBマーケティングのノウハウを公開!
  3. 新規顧客を獲得するための3つのチェックポイントと6つの開拓方法
  4. Webコンサルティングの診断資料を公開。事例で学ぶBtoBサイトの改善点
  5. BtoB製造業のマーケティング事例8選!広告・販売促進のデジタル活用術
  6. BtoBマーケティング|見込顧客を獲得するリスティング広告活用法
  7. BtoBホワイトペーパーの作り方。ラクに出来て効果抜群の方法と要素別テクニック5選
  8. リードマネジメントとは|マーケティング成熟度による課題整理と解決方法
  9. リードジェネレーションとは?見込み顧客のリードを獲得する手法9選!
  10. 【実例公開】リードジェネレーションに有効なBtoBサイトの改善ポイント
  11. リードナーチャリングとは?実践するための5つのプロセスまとめ
  12. インサイドセールスとは?Withコロナ時代に必須となった営業手法の基本~実践導入完全ガイド
  13. BtoB領域でのマーケティングオートメーション活用事例5選と5つのおすすめツール
  14. MAツールはマーケティング施策の選択肢を増やしてくれるーープロが教える本質と選び方
  15. 年間1000商談を生み出すマーケティングオートメーションツールベンダーのMA活用法とは?~CPA200円、アポ率80%、成約率30%の秘訣~


中小企業でも、MAツール導入が一般的になってきた


<プロフィール>小池智和さん toBeマーケティング株式会社 代表取締役CEO。株式会社リクルートで企業の販促支援事業の営業を担当。株式会社セールスフォース・ドットコムに入社し、パートナー支援や地域スキームを構築した。2014年8月より2BC株式会社の設立に参画し、マーケティングオートメーションシステムの導入支援を中心に事業を推進。そこから分社し、toBeマーケティング株式会社を設立した。著書に、『マーケティングオートメーション 最強の導入手法』(KADOKAWA)がある。

―― まず、最近のMAツールを取り巻く状況について教えてください。

小池:大手企業ではMAツールの導入はすでにかなり進んでいます。とはいえ、最近は中小企業を中心に当社へのMAツール導入の問い合わせが非常に多くなっています。多くの企業が、デジタルマーケティングへ積極的に取り組み始めたと強く感じます。

特に、経営者はMAツールのことをよく理解してくださる方が多いです。ただ、MAツール担当者に導入目的が共有されなかったり、そもそも担当者がいなかったりするケースもあり、そこはサポートが必要だなと感じています。

―― なぜ、MAツールはここまで注目されているのでしょうか。

小池:BtoBビジネスでは近年、企業のWebサイトの情報を見ずに商品やサービスを購入することが稀になりました。つまり、何か得たい情報や課題がある顧客は、必ずWebサイトを見て購入を検討しているのです。

こういった顧客のWebサイト上の行動は、マーケティングや営業活動につながる重要なヒントといっても過言ではありません。そうした顧客企業の購買行動の変化から、MAツールへの注目が高まっています。

参考:『マーケティングオートメーション 最強の導入手法』:企業の購買活動のこれまでと今

―― Web上の行動を追えるのがMAツールなんですね。

小池:はい。もちろんそれだけでなく、顧客のWeb上の行動データをもとに次のマーケティング施策の実行を自動化できます。例えば、「Webサイトで、顧客が商品Aのページを閲覧したタイミングでメールを自動送信する」といったものですね。

このように、誰に、何を、いつ、どこで、どんなマーケティング施策を実行するのかを設計することが「シナリオ」なのです。

よく勘違いされるのですが、MAツールは自動で全てを判断し、勝手に実行してくれるわけではありません。誰にどういう施策を打つのか、事前に人の手でシナリオ(設計図)を用意して初めて自動で実行してくれる。これは、工場での生産工程の自動化に似ています。

そして、「MAツールを導入すれば、マーケティング部門のタスクが減る」と思われがちですが、実は逆です。MAツールの役割は業務改善ではありません。シナリオやマーケティングプランの設計はマーケター自身行わなければなりませんし、複雑なシナリオであるほど用意するコンテンツの量も増えます。ただ、MAツールを導入すれば、「選択できるマーケティング施策の幅」は格段に広がるんです。

また、Web上での顧客の行動履歴はMAツールで把握できますが、それだけでは営業成果への貢献度は分かりません。CRM(顧客管理システム)と連動させて初めて、MAツールで得たデータに意味をもたせられるのです。


MAツールとCRMの連携で、営業が行動できる情報になる

―― 先ほどの「CRMを連動させて初めて、MAツールのデータに意味が与えられる」とはどういう意味でしょうか?

小池CRMは「顧客の属性情報や顧客と商談した内容・活動の状況」などの情報を主に営業が入力し、社内で共有する顧客管理システムです。CRMの営業情報があってこそ、MAツールの顧客行動履歴は効果を発揮します。

例えば、CRM上では「失注」の記録がある顧客がいたとします。MAツールとCRMが連携していれば、その顧客が自社のWebサイトに3カ月ぶりに訪問したと分かるんです。それは、もしかするとサービスを再検討しているからかもしれません。

―― MAツールとCRM、どちらかだけではダメなのでしょうか?

小池:もしCRMだけ導入し、MAツールを使っていなければ、顧客のWebサイト上での行動が分からず、重要な商談のチャンスを逃すかもしれません。また、MAツールだけ導入してCRMを使っていなければ、顧客のWeb行動を把握できたとしても、それを営業活動に生かせない可能性もあります。どちらもまだ使っていないなら、MAツールとCRM両方の導入を強くおすすめします。

ただ、予算の関係などでどちらかを選ぶ必要があるなら、先にMAツールの導入をおすすめします。例えば、まず顧客情報はExcelなどで管理し、CRMを導入した後に顧客情報をインポートするなどですね。

1点注意すべきなのが、MAツール導入前にWebサイトに訪問した顧客に対しては、Cookieを付与できないということです。つまり、顧客のWeb上の行動履歴は分からないんです。データ蓄積の機会を逃さないためにも、CRMよりもMAツールを先に導入したほうがいいでしょう。

マーケティング担当者の役目は、営業に「いいリード」をパスすること。そのために、MAツールとCRMの関係を知り、合わせて活用していくのがとても大事なのです。


絶対に後悔しないためのMAツール選びのポイントは?

―― MAツールは種類が多く、自社に合ったものを探すだけでも正直大変です……。MAツールを選ぶとき、特に注意すべきポイントはありますか?

小池:よくある悪い選び方は、MAツールがもつ機能のチェックリストを作り、有無などを◎、△、☓などで評価し、得点が高いものを選択する選び方ですね。例えば、本来は自社の課題解決に最も必要な機能が付いていないのに、なんとなく得点が高い、使いそうな機能が多く含まれているなどで、適していないツールを選んでしまうケースがよくあります。

MAツールを選ぶ際、確認すべきなのは以下のポイントです。

  • 自社のシナリオを達成できる機能や拡張性、カスタマイズ性があるか?
  • 自社で使っているSFA(営業支援システム)やCRMと連携できるか?
  • MAツール導入後に、必要なサポートをしてくれるか?

小池:もう一つ、絶対に確認してほしいのは、「メールアドレスとCookieがどんな方法で紐付けられるか?」です。Cookie情報とは、いわばWebサイトを訪れた印のようなもの。これはMAツールによって異なります。MAツールで作ったフォームや自社のWebサイトのURLクリックでしかCookieを付与できないMAツールなどもあるので、何を選ぶかは注意が必要です。


MAツール導入成功には、「成果の見える化」が肝心

―― 小池さんがこれまでたくさんの顧客をサポートしてきた中で、MAツール導入の成功と失敗を分けるポイントはありますか?

小池:原則として、MAツールの情報をきちんと活用できれば、ほとんどの企業では成果は上がるはずなんです。そのためには、大前提として「MAツールが営業成果に貢献していると証明すること」が必要になります。

最近は、インサイドセールス(テレビ電話などを使い、客先に行かないスタイルの営業)部門を置く企業が増えています(参考:【徹底図解】インサイドセールスとは?実践方法と受注数3倍の事例も紹介!)。そのため、特にBtoB企業では、マーケティングの早めの段階でインサイドセールスにリードをつなぐ「シンプルなシナリオ」を組むケースが多いです。

例えば、展示会施策やセミナー、eブックや記事などのコンテンツを用意するといったマーケティング施策が商談につながっていると分かれば、「MAツール導入は成功」と会社から判断されます。逆に言えば、実際は貢献していても、営業成果とMAツールを活用した施策の関係を証明できていなければ、MAツールどころかマーケティング活動自体の成果が証明できません。

―― そのためにはどうすれば?

小池:あらかじめ、マーケティング担当者と営業が合意形成をしっかり行うことです。こういったコミュニケーションをしないと、MAツールがただのマーケティング担当者だけの道具になっており、営業活動にもつながりません。残念ながら、MAツールがただの「メール一斉配信ツール」になってしまいがちです。

―― 具体的には、どう改善すればいいのでしょうか?

小池:営業がCRMに顧客情報を登録する際に、「MAツールで実行した施策から得られたリードであることを明記する」などのルール作りが大事です。

もちろん、営業が自分で獲得したアポを無理にMAツールによる成果にするわけではありません。ほとんどの商談や顧客接点は、何らかのマーケティング活動によって生まれているはずです。なので、マーケティング部門は営業チームに向けて、営業活動とマーケティング施策を結びつける意識づくりや連携させるタスクをしっかりと投げかけることが大事です。弊社でも、営業とマーケター間のコミュニケーションを徹底させていますが、ただこれがなかなか難しいのですが……。


マーケティング部門もイニシアティブを取れる

―― 最後に、MAツール導入を検討しているマーケティング担当者へメッセージをお願いします。

小池:繰り返しになりますが、MAツールを入れただけで成果が飛躍的に高まるわけではありません。

MAツールで成果を出している企業は、eブックを1本から10本に増やしたり、Webセミナーの頻度を上げたり、コンテンツや広告を充実させたりするなど、Webサイトを訪問するユーザーの絶対的なボリュームを増やす地道な努力をしています。

現状がもし上手くいっていなければ、失敗の原因は「手数を打っていないこと」である可能性も高いのです。逆に言えば、そこが伸びしろであり、チャレンジできるチャンスになります。


小池:僕は、マーケティング部門はもっと期待をされて高いKPIを背負うべきだと考えています。MAツールをうまく運用できている企業の中には、営業よりもマーケティング部門のほうがイニシアティブを持っている企業もあるくらいですから。

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(執筆:山岸裕一 編集:鬼頭佳代/ノオト 撮影:栃久保誠)

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